教育現場で、民間委託は本質的に不可能 ALT、用務員、調理員
教育現場は、教員、養護教員、事務員、用務員、給食調理員が、1人ひとりの子どもに温かい視線を送り、連携し、子どもとともに作り上げていく場だと思う。そこに、直接指揮命令も、連携、共同作業もできない民間委託(請負業務)は、本質的に不可能である。
【英語助手と先生、授業協力したら違法 契約巡り現場混乱 朝日8/4】
【茂木町の小中学校、用務員7人直接雇用へ 「偽装請負」指摘受け 下野新聞3/11】
外国語指導助手で偽装請負を指導された後の教室の姿が報道されている。
教師は、「授業中に口ははさめません」「レッスンプランの打ち合わせはできません」と、助手の話す内容がわからず子どもが騒いでもスルー。授業としてなりたっていない。
用務員についても、教職員の直接指揮命令でなくて、どうして仕事ができない。ということで偽装請負で是正指導。
派遣でのがれようとしているところもあるが、派遣は「一時的臨時的業務」と業種に対する指定あり(個人を入れ替えても通用しない)。恒常的な仕事には適用できない。
一方、鳩ヶ谷市の学校給食のように、労働局から是正指導させて、「正しく」丸投げした例もでている。
労働局は、市が細かく決めた学校給食調理業務委託契約書、そして仕様書、そして作業基準は偽装請負に触れるおそれがあると判断し指導した。
発注者が請負業務の作業工程に関して仕事の順序、方法などの指示を行ったり、あるいは労働者の配置、労働者一人一人への仕事の割りつけなど口頭であれ、文書であれ、メールであれ行えば偽装請負になる。打ち合わせと称したものでも、その内容が具体的な指示にあたれば同様である。これが厚生労働省の解釈である。
それでどんなことが起こったか。
鳩ヶ谷市は契約書から、
・学校給食の水準維持向上のための請負事務事業者に対する研修の義務を削除
・調理員や業務責任者などの調理員としての経験年数や資格要件を削除
・調理員の健康診断から細菌検査の結果報告義務を削除
・受託事業者による調理業務完了報告に対する学校長の検査確認規定を削除
・調理員や施設整備の衛生管理や調理作業を詳細に定めた鳩ケ谷市学校給食調理業務作業基準を削除
指揮命令の直接的な証拠となった栄養士が調理員にしめしていた「調理業務委託校の調理工程表」も当然なくなり、調理の質も衛生管理も、請負の正しい姿である「丸投げ」となった。
しかし、これで、教育としての学校給食と言えるか。というか学校給食法違反である。
川端文科大臣は「優先順位でいえば、間違いなく、効率化を求めるために食育が犠牲を強いられるということがあってはならないということは大原則であります」と答弁しているが・・・
教育の場で、請負は本質的にはあいいれない。文部科学省も自治体も「子どもの最善の利益」にそって対応すべきてある。
教育行政にかかわる幹部の方々。あなたは教育者の魂を大事にしますか、行政マンで「よし」としますか、そう問いたい。
【英語助手と先生、授業協力したら違法 契約巡り現場混乱 朝日8/4】 英語の授業中、外国語指導助手(ALT)と日本人教員が言葉を交わさない――。ALTを業者への業務委託(請負)で確保する自治体で、奇妙な授業風景が繰り広げられている。2人が協力して授業に取り組むと「偽装請負」(労働者派遣法違反)となってしまうからだ。ルールを守れずに労働局から指導を受ける教育委員会が相次ぎ、教室で混乱が起きている。 「先生、英語ばっかりでわからへん」。関西のある小学校。子どもたちが教室の端で待機していた担任の方を振り返って騒ぎ出した。女性指導助手は早口の英語で授業を始めた。日本語はほとんど理解できなかった。 「日本語がわかる人が来ると思っていたので驚いた」と担任。助け舟を出したくても出せない。「先生じゃなくてALTさんに言って」と子どもに伝えたが、騒々しさは増すばかり。ルール違反を承知で、通訳して一緒に授業を進めるしかなかった。「授業中に口ははさめません」「レッスンプランの打ち合わせはできません」――。
労働局から4月に偽装請負の是正指導を受け、外国人講師の授業が7月初旬までストップした千葉県柏市。授業再開前に各校からの質問が殺到し、市教委が作った一問一答集の項目は100を超えた。業務委託が適法かどうかの分かれ目は、教員が指揮命令しないこと。講師の授業に問題があっても直接言わず、業者から改善指導してもらうように、との注意が繰り返される。◆指導助手の契約は(1)自治体(教委)の直接雇用(2)労働者派遣(3)業者への業務委託の3通り。一定の教委はコストの抑制や人材の安定確保などのため(3)を選ぶ。業務委託の場合は法律上、教員と打ち合わせをしたり、指導助手に指示したりすることができない。だがルールを守らず、労働局から偽装請負の指摘を受ける教委が続出していた。
文部科学省は昨年8月、各都道府県・指定市教委に、ALTが教員を補助する一般的なチームティーチング(TT)は請負ではできない、と通知。問題があれば契約を見直すよう求めた。文科省の調査によると、2009年度に業務委託を採用していたのは670教委(ALT配置自治体の37.7%)。ところが、通知後も多くの教委が見直していない。10年度も4月1日時点で618教委(同35.4%)が業務委託を続けていた。09年度調査では459教委が「契約見直しの予定はない」と答えている。
文科省国際教育課は「文科省としては、担任と指導助手が打ち合わせをしたり、担任から指示をしたりできるほうが語学教育上は望ましいと考えている。しかし学校教育関係法令で業務委託を禁ずる規定はない。労働局の指導を受けたのは残念であり、昨年の通知にそって適正な実施、契約の見直しを指導したい」としている。
【茂木町の小中学校、用務員7人直接雇用へ 「偽装請負」指摘受け 下野新聞3/11】民間に業務委託(請負契約)している学校用務員は「偽装請負」に当たるとの指摘を受け、茂木町は10日、町内全小中学校で各1人いる用務員計7人を、新年度から直接雇用する方針を固めた。用務員の1人が自治労連・栃木公務公共一般労働組合に加入し、申し入れていた。直接雇用となることで、賃金が上がるとともに、同町職員と同じ期間の有給休暇を取得できるようになるという。
同町は2005年度から、コスト削減のため、正規職員だった用務員を業務委託に切り替え、本年度には大新東ヒューマンサービス(東京)と請負契約を結んだ。ただ、請負契約の場合、用務員への指示や勤怠管理などは、学校ではなく、用務員と雇用契約のある同社が行わなければならない。
用務員の1人から「請負では仕事がやりづらく、賃金も低すぎる」と相談を受けた同労組は、改善を求め、同町に申し入れた。厚労省の通達で「職場に1人しかおらず、管理責任者も兼務している場合、偽装請負と判断される」との見解が示されていることから、同労組も「偽装請負に当たる」と訴えていた。
10日夜に行われた団体交渉では、町がこの訴えを受け入れ、現在雇用している用務員を引き続き、嘱託で直接雇用すると回答した。同町の服部公一副町長は「偽装請負という認識はなかったが、雇用情勢の悪化の中で、よりよ良い環境をつくるべきだと判断した」と話した。
総務省によると、全国で用務員を民間に業務委託している市区町村は26%、県内市町では16%という。日本自治体労働組合総連合(東京)は「地方自治体での偽装請負は官製ワーキングプアの温床となっている。茂木町のケースが全国に波及していくと期待したい」としている。
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