国の責任で少人数学級、正規職員配置 中教審提言案
中教審がまとめた提言案は、国の責任による少人数学級の推進、正規職員の配置促進など教職員増、国庫補助負担金の1/2復活など、全体としては極めて積極的な内容となっている。最終的な「提言」にきちんと反映させる運動が重要である。
【声明-中教審初等中等教育分科会による「今後の学級編制及び教職員定数の改善について(提言)」のとりまとめにあたって ― 国の責任で30 人学級の実現を、教職員定数の抜本的改善を ―
全日本教職員組合中央執行委員会 2010/7/13】
【今後の学級編制及び教職員定数の改善について(提言)(案)】
【学級編制及び教職員定数に関する基礎資料1/5】
「地方分権改革」で、義務付け、枠付けを外す交付金化がすすんでいるが、教育の分野でも「削減の自由」でしかないことも明らかになっている。
「国庫負担限度額まで教職員給与費を確保できず総額裁量制の趣旨を活かしきれていない道府県が、平成18年度以降増加傾向にある」と・・・。06年6、07年11、08年16、09年22と道府県の約半数にまで急増している。
教育の充実を願う声と、おそらく「地域主権改革」の動きに対する教育界の不安、批判を反映したものだのだろう。
【提言のポイント】は・・・
(学級編制の標準の引下げ)
◎新学習指導要領の円滑な実施、生徒指導面の課題等への対応、教員が子どもと向き合う時間の確保等の観点から、学級編制の標準を以下のとおり改善。
○小・中学校の学級編制の標準(単式学級)を、現行の40人から引下げ。小学校低学年については、さらなる引下げを検討。
○小・中学校の複式学級の学級編制の標準も引下げ。
○画一的な取扱いにより学級規摸が小さくなりすぎないよう、柔軟な学級編制を可能とする仕組みにする必要。
(教職員定数の改善)
◎上記と同様の観点から、以下について教職員定数を改善。
○基礎定数の充実/学校運営体制の整備/特別支援教育の充実/外国人児童生徒への日本語指導の充実/生徒指導の充実/児童生徒の心身両面の支援/食育の充実/事務処理体制の充実/読書活動の支援/キャリア教育・進
路指導の充実/高等学校における教職員定数の改善
(市町村教育委員会への権限移譲等)
◎設置者である市町村が主体的に学校の教育条件整備に取り組む観点から、学級編制に関する権限を都道府県教育委員会から市町村教育委員会へ移譲。また、計画的な教職員配置を進め、定数配分の客観性・透明性を高める観点から、加配定数の相当程度を基礎定数に組入れ。
■声明-中教審初等中等教育分科会による「今後の学級編制及び教職員定数の改善について(提言)」のとりまとめにあたって ― 国の責任で30 人学級の実現を、教職員定数の抜本的改善を ―
全日本教職員組合中央執行委員会 2010/7/131.中央教育審議会初等中等教育分科会は、7 月12 日、「今後の学級編制及び教職員定数の改善について」と題する提言(以下、提言)をまとめました。これは、現在、文部科学省(以下、文科省)において検討がすすめられている学級編制と教職員定数の改善方向について、全教を含む教育関係団体のヒアリングなどの内容もふまえて中教審としての意思表示をしたものです。
提言には、全教が提出した意見書の内容・項目も随所に取り入れられており、今後の具体策にむけた作業が注目されます。全教は、今回の提言を積極的に受け止め、文科省での検討と8 月末の次年度政府予算に対する概算要求にあわせてまとめられる具体策に向けて、以下の諸点を要求し、とりくみをいっそう強めていく決意です。2.提言は、「小・中学校の単式学級の学級編制の標準を引き下げることが必要」と国の責任による少人数学級の必要性に言及するとともに、「小学校低学年ではさらなる引き下げも検討が必要」としました。新聞報道では、35 人学級、小学校低学年では30 人学級が検討されていると伝えられており、長年にわたって積み上げられてきた30 人学級実現など少人数学級をめざす運動の貴重な到達点です。全教は、少人数学級への基本方向が示された提言を歓迎するとともに、圧倒的な国民世論となっている30 人学級への決断とさまざまな理由を設けて具体的記述が見送られている幼稚園、特別支援学校・学級、高校における学級編制についても同時に改善することを求めます。
3.提言は、「国が教育条件整備の責務をしっかりと果たし、都道府県が計画的かつ安定的に教職員の採用・配置を行うことができるよう、早急に新たな教職員定数改善計画を定め確実に実施することが必要」と新しい定数改善計画の必要性を明確に打ち出しました。さらに、新しい改善計画の策定に向けては、基礎定数の充実、特別支援教育の充実、外国人児童生徒の日本語指導の充実、生徒指導の充実、児童生徒の心身両面の支援などの基本方向が示されました。これらの点は、2 月10 日付で提出した全教意見書でも強調したものです。改善計画をより充実させる方向での検討を行い、抜本的な定数改善を盛り込んだ具体的な計画の策定を求めます。4.提言は、学級編制と教職員定数の改善にかかわって、「制度的改善事項等」を提起しています。
具体的には、「学級編制権限の市町村教育委員会への移譲」「加配定数の基礎定数化」「教職員定数算定方式への児童生徒数の反映」「学校統合支援のための加配措置」「地域や学校の実情を踏まえた教職員配置等」の5 点が示されています。学校や地域の実情に応じた教職員配置が必要であることは当然です。その際、国の責任によるしっかりとしたナショナルミニマムのうえで考えられてこそ実効性あるものとできるという基本に立った対応策が必要です。また、副校長・主幹教諭などの配置による「教職員間の有機的な連携」は現場実態から離れた指摘であり、「学校統廃合支援の加配」とともに提言の指摘が機械的に扱われることはあってはなりません。5.提言では、「学級編制・教職員定数の改善とともにとりくむべき重要課題」として、「義務教育費国庫負担制度の堅持・拡充」「正規教員の配置促進」など7 点が提起されています。
いずれの項目も、強弱の違いはあっても全教が意見書で提起している内容と重なり合っているものです。なかでも、国の責任による財源確保の観点から義務教育費国庫負担制度に言及され、国の負担率を1/2に復元する方向が示されるとともに、全教が当面の重要な運動課題としてとりくみをすすめている非正規教員問題が、初めて中教審の文書で取り上げられていることは重要です。具体的な改善計画の策定にかかわって、実際に学校に生じている問題を直視し、その解決を図る具体的な対応が求められます。6.今回の提言について、文科省は予算概算要求に盛り込む計画に向けた検討と並行作業との認識を示しています。提言を踏まえつつ、文科省としての計画づくりを主導する方向を示したものであり、当面、8 月概算に向けた文科省へのとりくみがきわめて重要になります。全教は、春以降、全国各地で旺盛にとりくまれてきた「みんなのえがお署名」の最大集約と7・28 中央行動での署名提出に力を注ぎ、引き続き、22 年目を迎える教育全国署名などのとりくみをすすめます。この間の運動によって切り拓いてきた少人数学級実現、教職員定数の改善への圧倒的な世論を実らせ、すべての子どもたちの成長と発達を保障する教育とそれを支える教育条件の確立をめざして奮闘する決意です。
以 上
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