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空前のカネ余り 企業はカネ使え 日英経済紙

 空前のカネ余り・・・景気回復には、これをどう有効活用するか。日経と英エコノミスト誌が問題提起をしている。
「実質無借金」の上場企業5割に迫る 前期末、最高に」(日経7/5)では「企業の貯蓄する資金の有効活用は政策的にも課題」と報じている。
【現金を貯め込む企業:カネを使え! 英エコノミスト誌7/3】では「景気を順調に回復させるには、企業はカネを貯め込むのをやめなければならない。」と・・・

 日経の記事は、2010年3月期末時点で上場企業の47%(過去最高)が有利子負債より手元資金が多い「実質無借金企業」になっていると報じた。
 08年の金融危機以降、企業が投資を控え、手元資金の確保を最優先したことが背景にあり、この結果、企業の手元資金は過去最高水準の65兆円に。達していると報じている。
 こうした資金は成長の見込める海外に投資され、国内での投資は低調。「企業が貯蓄する資金の有効活用は政策的にも課題となりそうだ」と結んでいる。

 新自由主義がもたらした「富と貧困の格差拡大」が、国内消費市場を縮小し、魅力ないものにしてきた。書租税増税で、その国内市場をさらに魅力ないものにし、法人税を下げても、その利益は、成長する海外市場にむけた投資を後押しするだけではないか。
 
 経済ジャーナリストの町田徹氏が、「法人税減税生まれた余力は、国内でなく、海外の投資へ」という大手製造業トップの声を紹介している。

 一企業にとっては道理があっても、日本社会全体にとっては大きなあやまちとなる。
 
暮らしと雇用の安定で、内需の好循環をつくることが大事である。

【現金を貯め込む企業:カネを使え! 英エコノミスト誌 7/3】

景気を順調に回復させるには、企業はカネを貯め込むのをやめなければならない。
折しも各国政府が借り入れの縮小を図ろうとしている時に、民間部門がこのまま熱心に貯蓄を続けていけば、景気が二番底に陥るリスクが高まる。クレジット(信用)に依存した暮らしをした結果、消費者が多額の債務を抱えている先進国では、家計の貯蓄率が長期間にわたって高水準にとどまるのは間違いなさそうだ。
 しかし、民間部門による最近の貯蓄増加の大部分は、消費者ではなく、企業によるものである。多くの先進諸国では、企業は支出を十二分に賄える利益を上げており、その結果生まれた余剰資金が企業内部に蓄えられている。この傾向が続くかどうかが、今後に大きく影響してくる。

◆景気の先行きを大きく左右する企業行動
 もし用心深い企業が貯蓄をさらに積み増すなら、景気回復の見通しは暗い。各国経済は企業の余剰資金が政府の財政赤字を埋めるという、現在の奇妙な構造から抜け出すことができないだろう。一方で、企業が財布の紐を緩めて労働者を採用したり投資したりすれば、政府にも債務を圧縮する余地が生まれるはずだ。

 企業の内部留保の度合いは国によって異なる。英国は企業が最大級の貯蓄を抱えている国の1つだ。英国企業は昨年、GDP(国内総生産)の8%に上る貯蓄超過を記録しており、そのほとんどが非金融法人によるものだった(図1参照)。
 民間部門によるこの貯蓄超過が、GDP比11%に上る英国政府の財政赤字の大部分を相殺した。残りは、1%の経常赤字改善と2%の家計部門の貯蓄超過が埋めた。
 英国企業ほどには倹しくないものの、米国企業も内部留保を貯め込んでいる。米連邦準備理事会(FRB)の「ファイナンシングギャップ(資金差額)」の推計によると、企業の支出に対する収入の不足分は2009年にはGDP比でマイナス0.8%(つまり貯蓄超過)だった。ただし、2010年第1四半期にはこのギャップは狭まった。
 欧州の指標と同じように、海外子会社の内部留保まで含めると、米国企業の資金余剰はさらに拡大する。
 ユーロ圏でも企業の貯蓄性向は急激に上昇している。2008年はユーロ圏の企業の資金収支はGDP比4%のマイナスだったが、2009年には収支トントンまで持ち直した(図2参照)。
 この変化は主にフランスとスペインの企業が大幅な支出削減を実施した結果だ。ドイツでは、2004年に実質賃金が伸び悩む中で企業収益がGDPに占める割合が上昇し始め、それ以来、企業の資金余剰の状態が続いている。
 企業は支出を増やして景気回復を支援する立場にある。何しろ、企業は本来、貯蓄が注ぎ込まれる場であって、貯蓄の源泉ではないはずである。
 楽観的な向きは、預金やMMF(マネー・マーケット・ファンド)、短期および長期国債の形で米国企業が抱えている貯蓄の総額が史上最多の1兆6000億ドルに達したと指摘する。金利がこれほど低いことを考えると、こうした資金はより有益な使途に振り向けられるかもしれない。
 実際、企業は経済危機が最も厳しかった時期に、手元の現金を保持したい一心で支出を削りすぎた可能性がある。アブソリュート・ストラテジー・リサーチのデビッド・バウワーズ氏は、個人消費は恐れていたよりは堅調で、「消費水準に比べ、企業の設備投資、在庫や雇用の水準が低すぎる」と主張している。

◆まだ安心して投資できない企業心理
 その通りだとしても、企業はまだ、設備投資や在庫、雇用に大金をつぎ込むことが安全だと思えないかもしれない。というのは、米国企業が貯め込んだ大量のカネも、積み上がった債務と比較すると見劣りがする。
 調査会社スミザーズ・アンド・カンパニーのアンドリュー・スミザーズ氏によると、多額の債務を抱えている場合、企業は手元により多くの現金を貯める必要があるという。こうした債務は、まとまった額での調達と返済が繰り返されるからだ。非金融部門の米国企業は、2010年第1四半期に債務のおよそ23%に相当する流動資産を保有していた。これは過去40年の平均よりわずかに高いが、それでも2006年の水準は下回っている。
抱えている債務の規模と金融システムの脆弱さを考えれば、企業の財務責任者の多くは、通常以上の流動性を維持したいと望むだろう。景気後退が始まる前、英米の企業は、新しい事務所や工場、プラント建設のために資金を借り入れる必要はほとんどなかった。しかし、それでも企業の負債は膨らんだ。
 米国企業は自社株を買い戻すために借入金を利用した。英国企業は、借入金を使って海外企業の株式を購入した。巨額の債務はこうした取引が後に残した置き土産であり、そのため、企業は手元の現金を減らすことや利益をさらに支出に回すことに神経質になっている。現金不足に陥った時には銀行が頼りになると企業が確信できるようになるまでには時間がかかるだろう。

◆不確実性が残る中、緩やかな回復しか見込めない?
 企業支出は、別の不確実性の影響も受けている。先進諸国では、個人消費の見通しが非常に不確実な中で、自信を持って生産能力を拡大できる企業はほとんどない。財政出動を伴う景気刺激策には総需要を高める効果があった。現在の不安は、財政に開いた穴を埋めるために政府が法人税を引き上げ、非金融部門も規制強化の煽りを食うのではないかという点だ。
 企業は成長のためのアイデアが尽きたように見える。直近の投資ブームだった1990年代後半と違い、技術が成長の必須要素というわけでもない。

 このため、企業が今後も蓄積した現金を維持したいと願うことは十分考えられる。だが、さらに余剰資金を蓄積するという計画は、魅力に欠けるように思われる。GDP比で見た企業投資は、これまでにない低水準に落ち込んでいる(図3参照)。
 資本ストックが減損し、緩やかな需要増にさえ対応できなくなるリスクを、企業は冒している。この状況で最も可能性が高い帰結は、企業が過小投資と現金不足という2つのリスクの間でバランスを取ろうとする中で、企業支出がためらいがちに回復していくシナリオだろう。
 銀行が企業活動のネックになり続ければ、企業は銀行を使わなくて済む方法を見つけるかもしれない。6月29日には、ドイツのエンジニアリング大手シーメンスが、自らの手元資金を顧客向け融資に使うために、銀行業の免許を申請したことを明らかにした。それはそれで結構だが、経済のためには、貸し手ではなく借り手になってほしいのである。

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