B型肝炎 国の回答は「被害者切捨て」と原告団・弁護団
全国B型肝炎訴の和解協議。全国紙の見だしは、
「B型肝炎、『代替証拠』で立証容認…国が和解案」(読売)、「母子手帳以外の接種証明、国側認める方針 B型肝炎訴訟」(朝日)、「B型肝炎訴訟:初の和解協議 国の救済対象、限定的 予防接種記録求める」(毎日)、「母子手帳の代替を容認 B型肝炎訴訟で初の和解協議」(産経)
毎日をのぞいては政府の「前向き」姿勢に焦点あてたものとなっている。
当事者は「被害者切り捨て」「和解案は到底受け入れることができない」と強い憤りを示している。 その点、「赤旗」の見出しは、主体が国でなく被害者である。
【B型肝炎訴訟・和解協議のおける国の見解について 原告団・弁護団7/6】【B型肝炎訴訟 国が予防接種の証明強要 和解協議 原告「救済 程遠い」赤旗7/6】
【B型肝炎訴訟・和解協議のおける国の見解について 7/6 全国B型肝炎訴訟原告団・同弁護団】1 本日、札幌地方裁判所の和解協議において、被告国から協議に向けての見解が示された。
見解は集団予防接種によりB型肝炎ウイルスに感染したことの証明方法等に関して出されたが、認定基準・認定方法について不当に狭い要件を求めており、札幌地方裁判所の示した「救済範囲を巡る本件訴訟の各争点については、その救済範囲を広くとらえる方向で判断し」との指針に反する「被害者切り捨ての和解案」であると言わなければならない。すなわち、
⑴ 予防接種を受けたことの証明として、国は「母子手帳」の提出を必ずしも要件にしないとしたが、あくまで、それに代わる「予防接種を受けた証拠」を求めており、実質的に極めて困難な証明を求めるに等しいものである。そもそも、予防接種は、刑罰を科して国民に接種を義務付けたものであり、予防接種を受けていない国民は皆無に等しいのであって、予防接種を受けたことの立証を求めること自体が不当と言わなければならないのである。⑵ また、母子感染否定の要件として、母親がすでに亡くなっている場合についても、母親の血液データ以外による代替立証を認めるとするが、年長のきょうだいの血液データによる当然のケースを限定的に認めているにすぎず、この点でも多くの被害者を切り捨てるものである。
⑶ さらに、国は、父子感染の問題及びB型肝炎ウイルスの遺伝子型(ジェノタイプ)の問題をあくまでも和解条件に持ち込むとして、父親の血液検査の提出、原告のウイルスの遺伝子型の提出を求めている。
札幌地方裁判所は、すでに「原告らの父親の検査結果の提出は求めない、原告のウイルスの遺伝子型の提出は求めない」との所見を示しているのであるが、その裁判所の所見に反するものであり、到底容認できるものではない。2 その他、病態・症状の証明のための資料の範囲についての問題に加え、今後の和解協議の進行についても、国は、原告らとの直接協議はしないとの態度を変えず、さらに、裁判所の和解期日についても、最終解決を目指した日程を入れることを拒んでいる。国には早期に被害者救済するとの姿勢がないと言わざるを得ない。
3 以上のとおり、本日提案された国の見解は、救済範囲を狭め、被害者に不当な証明負担を課すものであり、到底受け入れられないものである。
菅内閣が発足して1カ月が経過した。われわれは、菅首相の「最小不幸社会」を目指すとの意気込み、官僚に抵抗して薬害エイズ問題を解決に導いた政治姿勢に期待し、本日の見解を待った。
しかし、その内容は上記のとおり被害者救済に程遠いものであった。われわれは、菅内閣に対して、本B型肝炎問題に対する姿勢を転換し、被害者を1人も切り捨てることなく、本件を全面解決するための和解の実現のため、最大限の努力をすることを、改めて求めるものである。
以上
【B型肝炎訴訟 国が予防接種の証明強要 和解協議 原告「救済 程遠い」赤旗7/6】集団予防接種の注射器使い回しでB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが国に損害賠償を求めている北海道B型肝炎訴訟の第1回和解協議が6日、札幌地裁(石橋俊一裁判長)で開かれました。B型肝炎訴訟の和解協議は全国で初。
この日の協議で国側は、救済対象者の認定要件として、母子手帳の提出か「それに代わる証拠」で予防接種を受けたことを証明するよう求めました。原告側は「予防接種は国民全員に受ける義務があり、証明は不要」と反論しました。
全国原告・弁護団は国側の対応について「不当な証明負担を課すもの」「被害者救済には程遠い」と厳しく批判する見解を発表しました。
北海道原告団の高橋朋己代表は「国はいったい、いつまで解決を先延ばしするつもりなのか。私たちには本当に時間がないのです。政府は責任を果たしてほしい」と怒りをあらわにしました。
全国原告団の谷口三枝子代表は「菅首相は最小不幸社会を実現すると言っていますが、患者は国の誤りで地獄の苦しみを味わっているのです」と早期の救済を求めました。【解説】加害責任の自覚なし
国の案は、予防接種を受けたかどうかの認定について「母子手帳の提示」か、「母子手帳」に代わる予防接種を受けた記録の提示を求めました。
予防接種を受けたかどうかの記録は、予防接種法で定められていて、「母子手帳」のほか、地方自治体が「接種台帳」を作ることになっていました。しかし、保存期間は5年。廃棄されて残っていません。国の主張は「無いものを出せ」という理不尽な要求です。
戦後の集団予防接種は、1948年に制定された予防接種法により、受けないと3千円の罰則が科せられ実施されました。
原告側は、幼児期に日本に住んでいれば集団予防接種を受けており、当時日本に住んでいたことが明確なら、「母子手帳」がなくても救済することを要求しています。
そもそも集団予防接種によるB型肝炎被害の問題は、2006年6月の最高裁判決で国の加害責任が断罪されている問題です。
加害責任を自覚せずに、新たに無理難題を持ち出して解決を引き延ばすことは許されません。
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