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「地方行革の流れ」 革新市政研究会

 5年あまり続けてきた戦後高知市の革新市政の研究会。人権保障を軸にした自治体行政から、94年の松尾市政以後の「都市間競争」に打ち勝つ地域経営体への変質を跡づけるために、8月の例会用に、国レベルでの地方行革の流れを整理したメモ。
 今日の「地域主権改革」もこうした流れから出てきたものである。 

【地方行革の流れ     革新市政研究会 2010.8用】 
 地方「行革」について、80年代の「増税なき財政再建」からはじまり、バブル至る過程を第一期、第二期を90年代のバブル崩壊の後始末と中盤から地域分権の動き、「構造改革」の動きを軸に、消費税増税による不況、大型投資による頓挫、第三期を、90年代中盤以降の構造改革路線を土台に、地方分権一括法、小泉内閣誕生した2000年代を第三期として区切っている。
 
 途中、経済の動きとリンクさせるために財界の提言(◆)を挿入。期毎の全体スケッチについて、研究者のコメントを挿入(★)している。

【第一期】
○1981年 第二次臨時行政調査会(第2次臨調)設置
    増税なき財政再建、民間活力(3公社民営化)、福祉抑制(82年 老人保健法)、人勧凍結
○1985年1月 「地方公共団体における行政改革推進の方針(地方行革大綱)の策定について
◎85年プラザ合意 貿易黒字・円高不況、バブルと破綻、国と地方の借金
◎四全総(86年)、多極分散型国土形成促法(88年)     /86年前川レポート
 総合保養地域整備法(いわゆるリゾート法)(1987年)
 関西文化学術研究都市建設促進法(1987年)
 頭脳立地法(1988年)、地方拠点法(1992年)
 大阪湾臨海地域開発整備法(1992年)と多くの地域開発法が新たに制定。

★「中曽根内閣の臨調行革路線の流れで「行革は国も地方もまったなし」などのスローガンで、国の行革が地方に及んで来た。具体の内容の中心は、色々とあったが、国から地方への高率補助金の削減などが中心になった。  
このときは85年のプラザ合意をターニングポイントとして、アメリカから円高・協調金利・内需拡大等の要求を突きつけられ、バブルを発生させる中で、「行革」としては、竜頭蛇尾に終わった。社会保障と地方歳出(福祉)の削減を目玉としたが、上記の政治的な理由や臨調行革のある種の「中途半端性・歴史的限界」を反映したわけである。」(行方)

★「80年代の「地方行革」の特徴は、革新自治体期に「膨張」した自治体公共部門の「減量」が主たる目的であり、その背景にあったのは、保守系都市自営業者層の、「公共のお世話にはなりたくない」といった旧型の個人主義、古典的な「小さな政府」イデオロギーであった。「行革」が想定している住民像も受益者負担の担い手という、受動的な像であった。」(進藤)

★「第一は、政治的「無風化」現象である。「ばらまき福祉」批判や地方公務員給与批判キャンペーンなどへの攻撃に草の根保守層が動員されたが、これを除くと保守支配層さえ積極的には政治動員されず(投票率の大幅低下)、また審議会などでの住民参加の枠も狭まった。第二は、財政緊縮のなかで、保守系の各種団体や民社党系・創価学会系の中小自営業者層、社会党系の公務員労組などが既得権集団化した。この結果、多くの地方議会では共産党を除く「総与党化」現象がみられた。第三は、これら各種既得権集団の調整役として自治体官僚の役割が高まり、実務家型の首長が顕著に増加した。第四に、この実務家型首長と共産党を除く「総与党」体制のもとで「財政再建」「地方行革」が推進され、既得権集団の利害から相対的に遠い福祉・医療保険・教育などでの分野で歳出削減が行われた。こうした自治体レジームを「財政再建コーポラティズム」とよんでおこう。」(進藤 地方分権「改革」と自治体運動)

【第二期】
○1991年より10年間で430兆円の公共投資計画(90年6月、日米構造協議合意)
○1993年6月 地方分権の推進に関する決議(衆議院、参議院)
○1994年 行政改革委員会、設置。
○1994年 中核市制度(地方自治法改正)
○1994年10月「地方公共団体における行政改革推進のための指針の策定について 」
 入札・契約制度の見直し、空き教室のディ・サービスへの活用、自治体から民間団体への補助助成の見直し、民間への業務委託、課や係の統廃合と部の廃止、「センター」や「所」の統合、職員削減と定員管理の適正化、公共施設の管理改善とそれに関わる第三セクターや外郭団体の運営方法見直しなど「業務」レベルの改善(日本公共政策学会年報1998 山谷「自治体制度改革と政策システム」)
○1994年10月 10年間で630兆円の公共投資計画決定(その後国民の批判で13年間に是正)

◆「地方分権の実現に向けた政治的決意を期待する」 1994年10月20日  経団連
「本格的な地方分権実現への期待と機運が高まっている。わが国が国際社会における責任ある役割を果たすとともに、国内においては多様で活力ある豊かな経済社会を実現するため、明治以来の官主導・中央集権型の国家システムを、今こそ民主導・地方分権型に抜本的に改革すべきである」

◆1995年 三重県の北川県政誕生 「公務の外部化・民営化」「行政評価制度」を二本柱としてNPM手法を採用。以後、「改革派」首長のもとで爆発的に各地の自治体に広がる。

○1995年 5月 地方分権推進法成立。広域連合制度(地方自治法改正)

◆1995年5月 「新時代の『日本的経営』~ 挑戦すべき方向とその具体策」 経団連
 労働者を「長期蓄積能力活用型グループ」「高度専門能力活用型グループ」「雇用柔軟型グループ」にわけ、労働力の「弾力化」「流動化」を進める。/1999年労働者派遣の原則自由化、04年製造業への解禁。

○1996年 「財政構造改革白書」
 国家財政の危機を地方負担で乗り切る方針。歳出の抑制を具体的に打ち出し、人員配置の抑制・効率化、給与水準の適正化、単独事業の見直し、上乗せ福祉の見直し、使用料・手数料などの確保などが盛られていた。

◆1996年 経団連『魅力ある日本―創造への責任:経団連ビジョン 二〇〇二』 /第二部第二章より
 4 地方分権の推進
「国民の価値観や生活様式・社会活動の多様化が進んだ今日、コミュニティに近い行政主体が、自らの責任を持って様々なニーズの把握・実現に取り組むシステムの構築が必要である。そのためには、国、地方の役割分担を見直し、規制緩和という大きな流れの中で地方分権を推進しなければならない。
 そのためには、権限の委譲とともに、財政基盤の強化と人材の確保が必要不可欠である。これに伴って、地方自治体が自らの行政に対しては責任を担っていくのは当然である。
 同時に、コミュニティ参加型の行政を実現するため、地方政治、行政の透明性を充分確保しなければならない。」
 5.小さな政府の実現
「官から民へ」、「国から地方へ」の改革理念のもとに、行政改革を推進し、透明かつ小さくて効率的な政府を目指すべきである。さらに、内政と外交の整合性の確保、時代の要請に対応した行政を実施していくためには、中央政府はできるだけ大くくりに再編成する。」

◆ 新しい全国総合開発計画に関する提言 1996年   経団連
「急速に高齢化が進行し経済社会の活力低下が危惧されている今こそ、地域は、大競争時代の到来を認識し、住民や企業に選択される魅力ある地域づくりのための具体的な施策を提示するなど、主体的に取り組むべきである。」

○1997年 全閣僚による「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」(以下、関係閣僚会議)設置。
○1997年6月 外部監査制度導入(地方自治法改正)
○1997年11月「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針の策定について」
  地方分権の推進に伴う必置規制の改廃に際し適切な職員配置に努めることなど定員管理の数値目標、給与適 
 正化、民間委託、行政評価制度、透明と公平性の確保
○1998年6月 中央省庁等改革基本法公布
○1999年3月「行政コスト削減に関する取組方針」が閣議決定。目標は10年間で行政コストを3割削減。
○1999年7月(施行)市町村合併特例法大改定(→強力な合併施策へ
○1999年 PFI推進法・公布。NPO法(特定非営利活動促進法)

★94年に「自治体リストラ素案」という形で提起され、97年に指針形式で発表。背景は、第2次橋本内閣が96年に発表した「財政構造改革白書」を発表。
 しかし、97年に消費税率の引き上げによる不況、98年参院選で「大敗北」により、財政構造改革法(97年11月成立、)そのものが「凍結」「廃止」される状況となった。その後は、公共投資の重点的な実行により、国と地方の借金は雪だるま式に増加(行方)

★「日本の行革においても、1980年代上旬の3公社の民営化や、1999年以降の独立行政法人の制度や行政評価法の導入など、他国のNPMでみられたのと類似する手法の適用はみられる。しかし、1980年代~1990年代に行われた改革の大半は、従来型の行政システムの改革手法として位置づけられる「管理・統制方法の改善(役割分担の改善、事前規定の詳細化、定数削減・組織の統廃合、内部規則の強化、議会による直接統制の強化)」に偏っているとおり、これまでのところ、NPMの運営基準である「成果・結果による統制」を実現する構造改革はほとんどみられないのが実情である。」玉村雅敏(慶應義塾大学総合政策学部准教授。専門は公共経営/「ESP」 内閣府・(社)経済企画協会 2003/5)

【第三期~ 地方分権改革、NPMと一体】
○2000年4月 「地方分権一括法」施行 (国と地方の役割分担、機関委任事務の廃止 )
○介護保険法・施行
○2000年12月 行政改革大綱(閣議決定)
 ・行政改革の重要課題の1つとして地方分権を位置付け
○ 2001年 小泉純一郎内閣誕生「聖域なき構造改革」 /情報公開法
○2001年7月 地方分権改革推進会議発足
○2002年 総務省・新たな行政マネージメント研究会『新たな行政マネージメント研究会報告書』
○2002年 「行政機関が行う制作の評価に関する法律」「構造改革特別区域法」施行
○2002年11月 「行政対象暴力対策の推進について」 各都道府県警察へ警察庁から通知
○2003年6月 改正地方自治法成立(公の施設の設置等 / 指定管理者制度)
○2003年6月 骨太2003 「三位一体改革」として06年までに4兆円の国庫補助負担金廃止
○2003年7月 地方独立行政法人法・成立

◆活力と魅力溢れる日本をめざして 2003年 経団連
・ 「公」を担うという価値観が理解され評価される
こうした社会においては、国が「公」<おおやけ>の領域を規定し、隅々まで神経を行き届かせて統治するのではなく、自立した個人が意欲と能力を持って「公」を担っていく。そのためには、個人の多様な必要性や欲求に柔軟に対応できるよう、官と民、国と地方の役割を根本から見直し、地域が主体となって新しい豊かさを発信していく。そのため州制を導入する。
 また、地域の自律を促すためには、「公」を担う意識を持った個人がフラットなネットワークを構築し、協力的市場の形成を通じて、地域にある潜在的な需要を顕在化させていく

○2004年 20.9兆円の交付税削減 / 2.4兆円の税源移譲
○2004年「規制改革・民間開放推進会議」を設置。 主要課題「~官から民へ~官製市場の民間開放」
○ 2005年3月「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」
    総定員5 年間で純減4.6%、民営化の質量ともの拡大、「新しい公共空間」の提起
○2005年4月「地方公務員法」改定  人事行政の状況の公開義務付け
○2005年4月 分権型社会における自治体経営の刷新戦略-新しい公共空間の形成を目指して-研究会報告
○2005年5月 人事院「給与構造の見直し」/地域給、査定昇給制
○2005年6月 パブリックコメント制度制定(行政手続法の改定)
○2006年 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(行政改革推進法)成立。
○2006年4月 障害者自立支援法・施行
○2006年5月 「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(市場化テスト法)成立
○2006年9月 地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会
   (地方自治研究機構 04年6月号「自治体リスクマネジメント」を特集)
○2007年6月 財政健全化法成立(09年より施行)
○2007年 地方公共団体の技能労務職員等の平均給与、民間比較の公表 →総務省の「見直し」通知
○2010年 「平成の大合併」終了
   1999年3月に3232あった市町村数は1727に。

★92~3年頃を境にして、「リストラ」という「用語」も一般生活に入りこみ、企業のグローバル化の進行と平行して、労働力の再編も進んだ。自治体においても、新自由主義的な市場化論理が席巻し、国の財政政策がダッチロール化する中でも、「リストラ」は進行したのであった。93年の行革審の最終報告には、公務員制度の改革の「機が熟した」という認識や道州制の導入論議の必要性などが指摘され、今日の「諸改革」に連動する動きが顕著になったのであった。この流れは、95年以降の「地方分権」の動向とパラレルに進行し、資本のグローバル化を背景とした、新自由主義+大国化(アメリカを頂点とした、階層的・帝国主義的な秩序形成)が進行した。(行方)

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