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「地域主権改革」――地方自治体の新自由主義的再編 進藤兵 備忘録

 「地域主権改革」をどう考えるか 進藤兵・都留文科大学(前衛2010.7号)、備忘録。
この間の動きと論点がコンパクトに整理されている。著者は、「地域主権改革」とは「グローバル国家」戦略にもとづく地方自治体の新自由主義的再編であると指摘し、「住民の福祉の増進」という自治体本来の役割を立脚点にした草の根の運動の必要性を説く。
 とりわけ「集権」「分権」の議論をめぐり、目の前の集権国家は、現代資本主義国家であり、そのもとで、どう福祉の増進、人権保障を実現するかが議論の焦点でなくてはならないと切り込む。
  「chiikisyuken_kaikaku_2010_shindo.doc」をダウンロード

【「地域主権改革」をどう考えるか 進藤兵・都留文科大学】
 (前衛2010.7号)

■「鳩山内閣の一丁目一番地」

・民主選挙公約(09年8月) 
 「明治以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、地域主権国家に転換する」とし/中央政府の役割を外交、安全保障などに限定し、「地方でできることは地方に移譲する」、/「国と地方の協議の場」を設置する、/国が地方に使途を指定する「ひもつき補助金(社会保障・義務教育をのぞく)を廃止し、地方が自由につかえる一括交付金にする。/国の人件費削減のために国の出先機関を「原則廃止」し、「地方分権推進」により国家公務員を地方に移管する、 という政策を発表
・9月16日、政権発足当時の閣議決定で「地域主権の確立」を決定。
 「地域のことは地域に住む住民が決める『地域主権』への転換です。国の権限や財源を精査し、地方への大胆な移譲をすすめるなど、国と地方の関係を抜本的に転換します。それはまた、地域に住む住民の皆さんに、自ら暮らす町や住む村の未来に、自らが責任を持っていただくという住民主体の新しい発想をもとめていく・・・」
・10/16日、所信表明演説
 「国のしばりを極力少なくすることによって、地域で頑張っておられる住民が主役となりうる、そんな新しい国づくり」「国が地方に優越する上下関係から対等の立場で対話していける新たなパートナーシップ関係への根本的転換」
・安倍政権以来活動を続けてきた「地方分権改革推進委員会」を事実上休止させ、「地域主権改革戦略会議」を11月7日設置

~ ここまでは、日本国という主権国家の内部で地域「主権」とは何かを定義できないまま揺れている。

・「戦略会議」第一回会議(12月)で、委員会の第三次勧告にそって「公共施設の設置基準や自治体の計画策定についての義務付け、枠付け」の見直しを内容とする「地域分権推進計画」を決定

*義務付け、枠付けの見直しとは・・・ 
 保育所では、児童福祉法に基づき、保育士1人あたりの児童定員数、保育園の面積について厚労省の「したがうべき基準」(ナショナルミニマム)を定めてきた。/ これを東京都の場合のみ面積基準を「標準」、保育士1人あたりの児童定員数は全国的に「標準」に変更。具体的内容は自治体の条例で定めてよい、とする。/「標準」とは、合理的な理由の範囲で、「従うべき基準」と異なる内容を定めてよい、とするもの。
→ 東京都では、待機児童が多いとの「合理的理由」で、面積基準を下げて、詰め込みをしてもよい。
→ 形式論理的には、合理的理由で「標準」を引き上げたり、地域の実情を「参酌」して上乗せすることも可能だが、実際には、効率化のもとで、福祉水準の切り下げが促進することとなる。
→ こうした「見直し」は
  知的障害児施設の定員(児童福祉法)、特養ホームの定員(老人福祉法)、民間の職業訓練のカリキュラム(職業能力開発促進法)、障害者而立支援施設の定員(障害者自立支援法)、公営住宅入居の収入基準(公営住宅法)など63項目121条項におよぶ

■国と地方の場は民主的か
*工程表」
・「第一局面」
 義務付け・枠付けの見直しと地域主権戦略会議の法制化をもりこんだ「地域主権改革関連一括法案」と「国と地方の協議の場に関する法案」を、地域自治法一部改定案とともに、今通常国会に提出、成立させる。

・「第二局面」
 今夏に「地域主権戦略大綱」を策定し、さらなる義務付け・枠付けの見直し /地方への権限委譲/ひもつき補助金の一括交付金化 /地方税財源の充実 /新しい「地域政府基本法」の制定 /自治体合併にかわる「自治体連携」のしくみ /国の出先機関改革 を打ち出し、
 今秋の臨時国会で、「地域主権改革関連一括法案(第二次)」を提出。「大綱」の内容を2013年までに実現。

・「地域主権」でなく「地域主権改革」を定義(内閣法第三条改定)
「憲法の理念の下に、住民の身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自ら判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにする改革」と定義
→ 「自らの判断と責任」/サービスを良くしたいなら、国に頼るのでなく自らの負担で。とう論理につながる

*「国と地方の協議の場に関する法案」
・メンバー 国側 官房長官、総務大臣、財務大臣、担当大臣 /地方側 6団体から各1名
・協議事項 国と地方の役割分担、地方行政。財政・税制、経済財政・社会保障・教育・社会資本整備関連
→ 戦略会議の議論をうけ担当大臣が提案する危険性、地方側は、各一名…多数ある自治体の意見の民主的集約の手続きは定められていない / いまの知事会のように「構造改革」派が地方の意見とされる危険性/ 国と地方の協議の場は必要だが、民主的な制度設計が不可欠

■戦略会議を構成する「構造改革」推進派

・戦略会議のメンバー 構造改革派の首長とそのブレーンなど

・第二回会議(2010.3)で論点決定
①権限移譲は、委員会第一次勧告(08年)、②義務付け・枠付け見直しは第三次勧告(09.)をそのまま引継ぎ、各省庁に実現を迫る。/権限委譲担当の前田氏は、『補完性の原理』を強調し、市町村の連携、「事務処理特例制度」を使った県から市町村への権限委譲を主張

③一括交付金化、担当の神野氏は、公約の「ひもつき補助金」廃止から『除く』としていた社会保障、義務教育についても、「全国画一的な保険・現金給付に対するものに限定して、一括交付金の対象外」(5月、第五回資料)

④出先機関改革では、委員会の第二次勧告(08年)や知事会のWG報告書が参考にされている/ 地方経済産業局、地方運輸局・地方整備局だけでなく、地方法務局、地方農政局、地方労働局までもが廃止、移管の対象に/ 人員の地方自治体への移管については「現在の制度を前提として考えるのかどうか」、と道州制を提起

・その後 ①~④について各省庁から「ゼロ回答」/抵抗する官僚」との「たたかい」演出(事務・権限仕分け)

■地方自治法改定をめぐって

・地方行財政検討会議で議論/2010.1発足、それまでの地方制度調査会は「官主導」として否定
・国と地方の再編めぐる2つの系譜/旧自治省の地方制度調査会と、中曽根・第二臨調を引きづく地方分権の推進委員会が主導争いしてきたが /民主党政権は、明確に後者=戦略会議を優位に置いた

・主な論点
①議員定数の上限廃止、名目は『自由度』を増すだが、極端な削減をする自治体が出てくる危険(川村・名古屋市長・前民主党衆院議員の半減提案)。
②行政機関の共同設置~議会事務局、行政機関、教育委員会、各種審議会まで可能、つまり事実上の自治体合併の推進
③市町村基本構想の策定義務廃止/大局的には、住民参加による科学的・計画的自治体行政の後退の危険

・地方自治法の抜本改定案(または「地方政府基本方針」) 2011年通常国会提出の予定
→ 地方時の解釈改憲というべき方向/ 市支配人制・議院内閣制、設置義務などの規制緩和などなど

■経済界が推進する道州制

・経団連07年・第一次提言、08年・第二次提言、「関西州」をめざす「関西広域連合」の設置運動
・09年10月 経団連「道州制は地域主権改革の究極の姿と考えている。…行政の効率化、合理化が図られる」
に対し。原口大臣「道州制の方向は正しい。経団連と共通のプラットホームをつくり、タクスフォースで一緒に推進していきたい」(日本経団連タイムス2972号)
・2011年通常国会をめどに法制化の考えを総務大臣が経団連に示す(2010年5月)
・経済同友会 「道州制移行における課題」報告書発表(5/19)/東京23区を「特別州」~東京都解体論

■鳩山政権—自民党政権時代と同一の路線

①「地域主権」という新しい言葉を使っているが、自民党時代の地方分権改革と同一
→ この流れは、詳細をきわめる中央諸官庁の地方統制を緩和する側面を持ちつつ、主軸は、第二行革審の「国と地方の関係等に関する答申」(1989年)、第三次行革審答申(93年)以降の国の財政赤字削減、「小さな政府」化のために、社会保障などの補助金の削減、地方交付税の抑制という、負担を地方に押し付けるが、それだけでは地方が納得しないので、対価として、権限を移譲し、義務付けを緩和する
→ 地方における新自由主義路線/ そのもとでの住民の困難増大を「新しい公共」「地域主権」という観念で正当化しようとしている。(詳細は、ポリティーク11号 進藤「地方自治条項改憲論批判」)

②国民最低基準(ナショナルミニマム)保障が希薄/ 国による最低基準設定は『中央集権』として見直しの対象に。/「補助金の一括交付金化」は、使い勝手が自由にはなるが、教育・福祉財源が今より全体として増えるわけではない。(メモ者 「減らす」自由の拡大)

■あるべき地方自治とは

・一般論として集権国家に対し地方分権の主張は否定できないが・・・

 目の前にある「集権国家」は、現代の資本主義国家/ 集権か分権かだけでなく、資本主義経済の中で、住民の福祉・国民の人権をどう実現するかの支店での分権論でなくてはならない
→ 日本資本主義が、多国籍企業とのその利害を代表する勢力がヘゲモニーを握り、経済政策と外交・安保政策で二重の「グローバル国家」戦略(経団連ビション「魅力ある日本」1996年)が、支配的な国家戦略となる中で、これに適合的な経済産業政策、地域開発政策、教育政策、社会保障政策、税制・財政への「構造改革」を実現するために、/ 地方自治体の新自由主義的再編を企図している 
→ それが、地方自治理念の解釈改憲、国の出先機関の地方移管と道州制、市町村合併促進、自治体内部での長と議会の関係の再編、ナショナルミニマム保障の弱体化と自治体条例による基準設定、財務会計の効率化、住民の自助努力や企業参入の強調(新しい公共)、としてあらわれている 
→ 中央では、格差・貧困の拡大が社会問題化して新自由主義政治が破綻し、「構造改革」を叫べなくなったので、地方での構造改革遂行に真剣にならざるを得ない。それが「地方分権」「地方主権」を強調する理由である。

*あるべき姿/ 保育で考えれば、子育てを社会全体で支援する(メモ者、「子どもの最善の利益」を追求も)という社会福祉の観点から、国がナショナルミニマムを定め、具体的な保育行政は、市町村が担い、公立保育所の運営費を国庫補助し、民間(認可)保育所と公立の格差是正や保育士養成学校の設置は都道府県で行うというように、国・都道府県・市町村が連携・分担するのが、あるべき現代地方自治の姿ではないか。

→ 「小さな政府」と地方自治体の自主自立という19世紀西欧の自由主義国家でなく、/住民の福祉増進、国民の人権保障を基礎として、その実現を、国・都道府県・市町村が、行政的にも税財政的にも分担(メモ者、責任分担であり、役割分担ではない)しかつ連携するので20世紀後半以降の現代国家にやける地方自治モデルとなるはず(詳細 進藤「補完性・近接性原理批判」/備忘録あり)

→地方自治法第一条2「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とする」/ここに立脚点をおき、現代的地方自治を「地方分権」「地域主権」への対抗軸として築くこと、そのために草の根から地方自治擁護の運動が大いに必要となる。

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