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今さら!? 愛媛県で病院PFI 

 愛媛県立中央病院がPFIで2012年の開院をめざしている。先日、愛媛新聞の方が、県は「後発だから大丈夫」と説明しているが懸念を感じ(「PFI神話の崩壊」を読んでいた)、高知医療センターのPFI契約解除の件で訪ねてきた。
【愛媛県立中央病院のPFI、大成建など1911億円で落札08/8 日経】
【国土交通省が推す「PFI」の活用、現場に早くも漂う疲労感 06/17 東洋経済】

 おおむね以下のような話をした。

 まず、PFIの最大のメリットはリスク分担だが、医療情勢も様々変わる中で、30年にわたってリスク分担をする仕掛けは、そもそも不可能である。

 たとえば赤字が出た場合・・・ 国の診療報酬の影響か、治療が高度化したからか、県民の健康づくりがすすんだからか、医者の評判の影響か、人口源の影響か、SPCの努力不足かなどなど・・・ 仮に、細かな契約をつくっても、その検証と解釈をめぐり、膨大な手間と費用がいる。
 自治体側も企業側の弁護士団に対応できる企業の契約、病院経営に強い弁護士団を雇う必要がでる。 

 先行したイギリスではそれで失敗ずみで「弁護士の仕事をふやしただけ」と言われる。

すでに周辺業務は民間委託しているものが多い。そこにSPCというものが入る。利益を確保するのだから、安くなるはずがない。
 しかも公の側が、直接、周辺業務を担う協力企業に指揮命令できない。ややこしくなるだけ。
ではSPCに病院経営の能力があるのか。だいたいSPCは建設会社や協力企業など関連会社でつくられるので、トータルに判断できる政策医療の専門家はいない。

 性能発注だから「質も保て、課題にも柔軟に対応できる」という謳い文句も、SPCと協力企業の契約が仕様書発注では意味をなさない。
 
 また、業務の質を担保するため(SPCに対する業務評価でもある)、しっかりモニタリングを実施すれば、手間と費用がかかる。

 民間で実施した場合のサービスの価値の高さ(VFM)についても、積み上げた数字ではないし、その時点の数字で、30年間を担保したものではない。
 毎年、そのVFMが現時点でどんな額となっているのか、また達成できているのかどうか、リスク分担ともかかわって、その検証をめぐっても膨大な手間と費用がいる。
 
 建設だけなら、公共の発注でも、昨今の低価格入札で、VFM相当のものはでる。
 
 どんな覚悟をもって愛媛県が臨んでいるのかしらないが・・・ 議会などの議論も「地元企業に仕事を」という話に終始しているとのこと。

 公立病院ガイドラインでも実質的に否定されている病院PFIである。

 「お気の毒」としかいいようがない。

【愛媛県立中央病院のPFI、大成建など1911億円で落札08/8 日経】

愛媛県は29日、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で実施する県立中央病院(松山市)の整備運営事業を大成建設など3社の企業グループが落札したと発表した。落札金額は1911億円。PFI方式の導入は県有施設では初めて。3社は病院施設の建設や維持管理のほか、 ...


【国土交通省が推す「PFI」の活用、現場に早くも漂う疲労感 06/17 東洋経済】

 大臣就任後の7カ月間、私は二つのことをやってきた――。

 4月末、国土交通省が昨年10月から検討してきた成長戦略会議の冒頭、前原誠司大臣はこう胸を張った。一つは、もっぱら景気対策として使われてきた公共事業の抜本的見直し。もう一つが、財政にできるだけ頼らない成長戦略を描くことだ。

 前原大臣の描く二つの政策が交差する地点にあるのが、民間の資金やノウハウを生かして公共施設の建設や運営を行う「PFI」だ。5月の最終報告書では柱の一つに位置づけられた。

 具体的には、国交省関連のPFIによる事業費を2020年までの10年間でこれまでの約2倍、新たに2兆円実施するというものだ。

◆更新期入りの公共インフラ 今後50年間で337兆円
 取りまとめを担当した長安豊・大臣政務官は、「ここまでPFIを明確に打ち出したのは、今の前原体制になってから。少子高齢化や多額の政府債務を考えると、これからは公共事業予算を湯水のごとく使うことはできない」と強調する。

 東洋大学の根本祐二教授によると、高度成長期に整備された道路や橋、上下水道などの公共インフラが相次いで更新期を迎える。その更新に必要な金額は、今後50年間で337兆円。しかも、老朽化の実態は十分に把握されていないという。

 こうした動きと相前後して、PFI制度の見直しを進めていた内閣府の民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)も、事業規模を従来比2倍以上とし、「PFIは日本の成長を支えていくための重要な手法」とする報告書をまとめた。

◆国内PFIで日本企業にノウハウを身に付けてもらい、その後アジアだけで向こう10年間で8兆ドルと予測されるインフラ整備ニーズを取り込んでいく。PFIは、深刻化する財政と低成長から抜け出せない日本経済の、新たな切り札というわけだ。

 これらの動きについて、「どこまで中身のあるものが実現できるか、まだわからないが、これまでの経緯からすると画期的な内容」(経済団体連合会)と注目も集まっている。

 PFIはPrivate Finance Initiativeの略。下図のように、従来型の公共事業では民間企業が担うのは設計や建設が中心なのに対し、PFIでは資金調達から運営、維持管理までを民間が受け持つ。

 日本では1999年に法律が制定され、民間の資金や知恵を活用するプロジェクトが本格的に始まっている。

 PFI推進委員会のまとめによると、09年12月までにPFI方式で実施されたプロジェクトは234件、3兆1135億円(公共負担額の決定ベース)。PFIを採用した結果、従来型の公共事業で整備した場合と比べて、6596億円のVFM(Value For Money、支払いに対するサービスの価値。高いほどよい)が出たという。

◆現実は8割が小規模事業 中止案件でイメージ低下
 国交省やPFI推進委員会が打ち出す目玉の一つが、「コンセッション方式」の導入だ。公共施設の所有権は官が保有しつつ、事業運営・開発権を民間に売却して資金を手当てする新しい仕組みだ。

 公共施設を民間の所有にすると税金がかかる。その欠点を補う仕組みとして考え出され、事業権の売却収入が公的債務減らしにもつながる。国交省では現在、関西国際空港と伊丹空港を経営統合し、コンセッションを導入する案が検討されている。

 ただ過去の実績を見ると、これまでのPFIは学校や庁舎など、建てたら終わりの箱モノ施設が多かった。どちらかと言うと、国より地方自治体のほうが熱心だが、東京都が50件以上の実績を持つ一方で、鳥取県や和歌山県のように実績ゼロの自治体もあり、取り組み姿勢も二極化。

 プロジェクトも、100億円以下の小規模事業が8割近くを占め、大型事業が対象になってきたとは言いがたい。小規模な自治体だと、専門知識を持った職員がおらず、PFIどころではなかったのが実情だ。

 また、PFIそのものの問題ではないが、高知市や滋賀県近江八幡市の病院プロジェクトなど、事業が中止されるケースも散見されており、「PFIはうまくいかない」というイメージも植えつけられた。

 官の意識や制度も追いついていない。20年までのPFI数値目標について、各省庁からは「回答困難」やゼロ回答が相次いでいる。唯一、国交省が2兆円の目標を掲げたが、問題は対象とする事業の範囲をどこまで広げるか。

 既存の法律では、道路や下水道などの管理者は国や地方自治体と定められ、民間が管理することはできない。PFIの対象を広げるには、管理者に民間企業を書き加える必要があるが、国交省にどこまでその覚悟があるかが見えない。

 今のところ、来年の通常国会をメドに法改正案は提出される予定だ。個別法を改正するのか、それとも民間企業が管理者になれるよう、PFI法で包括的に網をかけるのか。各省庁の権限に触れる微妙なテーマだけに、「まだ議論が分かれている」(長安・国交省政務官)という。

 一方で、地方自治体や民間業者の間には、すでに“PFI疲れ”とでも言うべき疲労感が漂っている。

◆「地元にカネが落ちない」 儲からなさに企業も敬遠
 たとえば、横浜市では02年の仮設店舗整備事業を皮切りに、学校整備や浄水場の再整備など、これまで8事業をPFIで実施してきた。VFMは6~40%。民間企業に資金調達を任せることで、「事業費が一括払いでなく、平準払いにできることは市財政にとっても大きなメリット」(同市)だと評価する。

 だが、PFIがなじむのは比較的大規模な事業で、発注は一括となり、おのずと東京の大手企業が受注しがちになる。同市がこれまで実施した8事業は総計37社が受注(コンソーシアム含む)したが、このうち市内にある中小企業はわずか数社にすぎない。

 ありていに言うと、PFI方式では地元にカネが落ちないため、市議会では、地域活性化の名の下に地元業者への分割発注を求める声が相次いでいるのだという。

 日本総合研究所の石田直美主任研究員は、「最近はPFIでVFMを出すのが難しくなっているうえ、企業側も儲からないPFIへの失望が深まっている」と指摘する。

 横浜市の場合、受注する民間事業者も08年入札の3プロジェクトは、いずれも1社(グループ)しか応札がなく、競争性の観点からすると、好ましい現象ではない。

 PFIは通常の公共事業の発注と比べて、仕組みづくりに手間がかかるうえ、「発注者側の『安くするため』という意識が強すぎる」(経団連)。本来は事業のリスクに見合うリターン(利益)を民間企業が得てしかるべきなのに、公共事業で民間企業が収益を得ることはけしからん、という意識が強く、民間企業がPFIを敬遠する一因にもなっている。

 「わざわざ民間企業に資金調達させるより、国や自治体が調達したほうが低金利なのに、なぜ手間をかけてPFIに仕立て上げる必要があるのか」(自治体関係者)。そんな根本的な疑問の声も多く聞こえてくる。

 だが、PFIの本質は、民間が負うことのできるリスクは相応のリターンとともに民間に切り出し、官が最低限負うべき役割を再定義することにある。PFIの資金調達コストが高いのも、公共事業の本当のリスクが国や自治体の信用力の陰で覆い隠されているからにすぎない。

 その公共サービスを官が手掛ける必要はあるのか。民間でできることは民間に任せ、官でないとできない事業のみ税金を使って行う。その線引きを明確にしておかないかぎり、PFIもあだ花と化すだろう。

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