旧政権と中身は同じ 市場原理の「子育て新システム」
自公政権時代の「構造改革」路線、構想をそのまま引きつぎ、保育を儲けの対象にし、憲法25条に風穴をあける民主連立政権の「新システムの基本方向」について、保育団体から反対や懸念が表明されている。
「子ども・子育て新システムの基本的方向」への意見 全国保育協議会5/19「子ども・子育て新システム」に対する見解 全国保育団体連絡会5/16
子ども・子育て新システムの基本的方向 4/27
全国保育協議会の見解では・・・
・「利用者本位のサービス設計」というが、利用者は「子ども」であり、子どもの最善の利益が保障させる制度であること。
・保育の「質の確保、向上」が担保される仕組みが必要不可欠。
・すんでいる地域にかかわらず、子どもの育つ環境は国の責任で保障すること。など懸念を表明している。
などなど・・・
全国保育団体連絡会は・・・
「保育を権利として捉え、その無償化を図るなど公的保育の拡充をすすめることが、国際的な潮流になっています。保育の規制緩和や公的責任を後退させるような制度「改革」ではなく、国・自治体が責任をもって保育所増設など保育施策の拡充を図ることが求められています。そうした保育の拡充は、地域社会の活性化にもつながります。」と提案する。
それはOECD教育局の一連の話ともつながる。
「幼児期への投資:田熊OECD教育訓練政策課アナリスト寄稿」4/25
子どもの健全な成長を、政策の軸に OECD教育局 2010/4
【「子ども・子育て新システム」に対する見解 全国保育団体連絡会 5/16】
「待機児童解消、すべての子どものすこやかな発達を保障するために私たちが求めるもの」私たちはこれまで、待機児童問題など保育要求が増大するなかで、必要とするすべての子どもたちにゆきとどいた保育が保障されるように認可保育所の新増設や条件整備、保育施策や子育て支援施策の拡大等について、現行保育制度に基づく予算の大幅増額を基本にした国の積極的な対応を求めてきました。いま、保育の拡充を求める声はかつてなく大きくなっており、保育の量的、質的拡充は国民的課題となっています。
◆国民の願いと逆行する子ども・子育て新システム
政府の子ども・子育て新システム検討会議は、2010年4月27日に、今後の保育制度のあり方を示す「子ども・子育て新システムの基本的方向」(以下「新システム」)を確認しました。さらに6月までに方向性をまとめ、2011年の通常国会に法案を提出し、2013年度の施行をめざすとしています。
その内容は、①旧政権が少子化対策特別部会でとりまとめた「新たな保育の仕組み」をそのまま引き継ぎ、利用者と事業者の直接契約制度を基本とする、②幼保一体化をすすめる、③財源を一元化し地域主権を前提に市町村の裁量で給付(サービスの提供など)を行う、などです。これは、児童福祉法に定められた国と自治体の責任による現行保育制度を根底から崩すものであり、質が高く経済的負担の少ない保育の保障を困難にするものです。
以下、よりよい保育の実現を求める国民の願いとは逆行する「新システム」の問題点と、私たちが求める保育・保育制度について明らかにするものです。◆子ども・子育て新システムの何が問題か
「新システム」の問題の第1は、保育に市場原理を持ち込む直接契約制度の導入です。市町村の仕事は認定と給付だけになり、サービスの確保は利用者の自己責任になります。さらに応益負担原則の導入によるサービス利用の抑制、保育所運営の困難化と職員処遇の低下、指定事業者制度の導入による保育の質の低下、などが危惧されます。
第2は、幼保一体化の問題です。成り立ちも機能も大きく異なる幼稚園と保育所を、関係者との議論も充分に行わず、具体的構想や工程も示さないまま一体化するという提案は拙速にすぎます。また、この背景には保育所の待機児童や私立幼稚園の定員割れなどがあり、安上がりな待機児童対策としての幼保一体化であることも見逃してはなりません。
第3は、地域主権改革と一体で保育制度改革が進められていることの問題です。現在国は、保育のナショナルミニマムである保育所最低基準を廃止して地方条例化をすすめようとしていますが、子どもに関わるナショナルミニマムを崩して自治体まかせにすることは、子どもの権利保障の水準を、国が自ら切り下げることに他なりません。さらに「新システム」のもとでは、どのようなサービスをどう給付するかはすべて自治体の裁量となるため、保育・子育てサービスに関する地域格差が大きく広がってしまうでしょう。
第4に、子どもの権利保障の視点からではなく、経済の成長戦略の一環として保育制度「改革」が構想されている点も問題です。そこでは、保育や子どもが利潤追求の道具にされかねない内容が提案されています。◆私たちが求める保育・保育制度
待機児童の解消など、国民の切実な保育要求を実現するためには、旧政権が構造改革路線のもとで続けてきた保育政策の根本的転換が必要です。しかし、保育所が圧倒的に足りず、市町村の財源も不足している現状で、保育制度「改革」と最低基準廃止などの地域主権改革が同時にすすめば、国の責任は大きく後退し、財源保障が不明確なままで保育が委ねられる市町村は、保育事業から撤退することは必至です。都市部では企業参入が一気にすすみ、地方では保育所がなくなるなど、保育は未曾有の危機に陥ることになりかねません。
幼保一体化についても、これまで保育界で長く議論されてきましたが、保育内容・資格など多くの点で課題が明らかにされており、結論に至っていません。幼保一体化は短期間でまとめられるような単純な問題ではありません。
いま、保育を権利として捉え、その無償化を図るなど公的保育の拡充をすすめることが、国際的な潮流になっています。保育の規制緩和や公的責任を後退させるような制度「改革」ではなく、国・自治体が責任をもって保育所増設など保育施策の拡充を図ることが求められています。そうした保育の拡充は、地域社会の活性化にもつながります。
保育制度「改革」にあたっては、乳幼児がおかれている現状を深くとらえたうえで、子どもの権利保障を第一に国と市町村の責任を明確にすること、拙速な結論はさけ当事者の参画による議論をすすめることを求めます。
私たちは、保育を必要とするすべての子どもたちが保育を受ける権利を保障され、すべての子どもたちが豊かに成長すること、保護者が仕事と子育てを両立できること、保育者が子どもと保護者によりそいながら豊かな保育をすすめられること、そんな「保育」の実現をねがっています。私たちは、子どもの最善の利益を保障する「よりよい保育」のあり方をより多くの国民と共有し、保育の量の拡充と質の維持・向上のために力をつくします。「よりよい保育」の実現をめざして支え合い、共同を広げ、さまざまな形で社会的な発信をしながら、地域から創意あふれる実践と運動をすすめていくことを決意するものです。
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