ひろがる男性の孤独 家族崩壊時代
なかなか興味深いルポ— 雇用不安、貧困がもたらす心的障害、そして離婚、孤立の深化 … ダイヤモンドオンライン「格差社会の中心で友愛を叫ぶ」 西川敦子さんのルポ
【低収入、ストレス病の夫が捨てられる!? 家族崩壊を招く「謎のうつ100万人時代」5/14】
そうしたルポとシンクロする「高齢社会白書」
【高齢男性の独り暮らし急増、孤立化の懸念も 読売5/14】
【平成22年版 高齢社会白書(全文)】
自殺問題ともつうじる・・・
新自由主義による格差と貧困の拡大、男女イコールフッティングの競争的、自己責任社会がもたらす社会崩壊。男女ジェンダーエクィティの新福祉国家への切り替えが、社会の持続可能性にとって不可欠だとあらためて感じる。
【低収入、ストレス病の夫が捨てられる!? 家族崩壊を招く「謎のうつ100万人時代」5/14】 精神科の待合室が大変な盛況ぶりだ。 近年、うつ病など心の病を抱える人が増えているのは周知の通り。厚生労働省の調べ(平成20年「患者調査」)によれば、気分障害(うつ病など)の患者数はおよそ年間104万人。アレルギー性鼻炎や骨粗しょう症などのほぼ倍だ。 「非番のときもいつ病院に呼び出されるかわからない。トイレでも風呂場でも携帯電話が手放せません。使命感だけでどうにか自分を支えている状態です」と某総合病院の精神・神経科医師は苦笑する。 「うつ病なので診察してください」と、自ら申し出る患者も多いという昨今。だが同医師は、「自分が診察する患者の相当数は“うつ病”ではない」という。 「うつ病というのは言うなれば“バイオロジカルな病気”(記者注:うつ病の発症には神経栄養因子が関与しているなどの説がある)。そうやすやすと社会構造の変化で患者数が増減することはない、という見方もあります。 今、精神科に押し寄せている人々は、たしかに“うつ状態”とはいえますが、ストレスフルな環境に身を置けば、誰でも不眠や不安状態に陥るもの。あえて病名をつけるなら、環境に適応できないために心身の症状が起こる『適応障害』というべき人が多いのです」 しかも、増え続ける患者にはなぜか“単身者”が多い、と医師。妻に逃げられてしまった男性。実家と疎遠な独身者――。家族の支えを得られず、心が折れてしまうのだろうか。 中には最近若年層に増えているという「新型うつ」も含まれているだろう。だが問題は病名よりむしろ、彼らが置かれている孤立無援の状況だ。 「誰かに孤独から救ってほしい。“ルックアットミー”という、切実な心のメッセージを感じます」(同医師) 単身者の間で急増する、うつ病ならぬ“孤立病”。その正体はいったい何なのだろうか。■「年収300万円夫」が心の病で離婚される
この孤立病、じつは根深いところで収入格差と結びついているようだ。
まず、非正規雇用の男性は結婚しづらいことなどもあり、独り暮らしのケースが多い。「いつまでそんなフリーターみたいな生活をしているんだ」「従弟の○○ちゃんのところはもう子どもが生まれたってよ」などと親からせっつかれたりして、実家とうまくいかない人たちも少なくない。
さらに最近では、既婚者といえどいつ単身者に転落するかわからない。低収入の夫に“心の病疑惑”が発生すると、離婚してしまう妻が急増しているからだ。
妻から三行半を突き付けられやすいのは、年収300万円台の男性たち。逆に600万円以上だと離婚には至りにくい――と話すのは離婚110番の代表でカウンセラーの澁川良幸さんだ。
夫が低収入の世帯では、妻が共稼ぎで家計を支えていることが多い。そのうえ子育てもしているとなれば、公私両面で精神的な余裕がないのが実情だ。彼女たちが「今、ここで夫に倒れられたら共倒れになる。見限るしかない」と考えたとしても無理はないだろう。
一方、妻に去られた夫は、仕事のストレスに加えて、プライベート面でも打撃を受け、ますます精神状態が悪化してしまう。
「数年前は、『夫が心の病気になってしまいました、どうしたらいいでしょうか』といった相談が多かった。でも、今は違う。『夫が心の病気になったので離婚したいが、どうすればいいか』といった内容に変化しているんですよ」と澁川さん。
そもそも、“心の病がらみ”の離婚相談の自体が異常に多く、年間相談数1500件のうち「相談者、パートナーのいずれかがうつ状態」というケースは半数以上にのぼるという。■じつは「精神疾患で離婚」はムリ?
ただし、その訴えは男女で明らかに異なる。「男性は『妻が心の病になり、別れると言って聞かない。自分としてはどうにか思いとどまらせたいのですが』などという。ところが女性は違います。相手がうつ状態とわかると、ぐずぐずせず離婚の準備を始めるのです」家族社会学者の山田昌弘氏は、著書「近代家族のゆくえ」(新曜社)で、「『家族責任を負担すること=愛情表現』という“家族イデオロギー”が一般に広がったのは高度経済成長期」と指摘している。
経済発展により男性の収入が伸びたため、人々はそれまでのように地縁、血縁に頼らなくても、家庭生活が営めるようになった。おかげで、家族愛やマイホームパパがさかんに賞賛される一方、“よそ(他人)”と“うち(家族)”が分断され、周囲との絆は急速に希薄化していった。
だが今や、この“家族イデオロギー”までもが崩壊しつつある。雇用が不安定化し、男性がこれまでのように大黒柱としての役割を果たせなくなっているからだろう。
とくに就職氷河期世代以降の男女は今、親世代には考えられなかった家族の危機に直面しているのかもしれない。とはいえ、支え手もなくひとりでストレスに耐えるには、今の職場環境はあまりにギスギスしている。
不況のせいで業務量そのものは一時に比べ減ったかもしれないが、その分、人間関係はさらに悪化した。給与カットやリストラ不安などで、不満をため込んだ人々が、互いにあらさがしをしたり、パワハラ、セクハラに走ったりする。
孤立無援のワーキングプアたちが行き場を失い、精神科に押し寄せたとしても不思議はない状況だ。■家庭内別居で「時間稼ぎ」を
それでは、離婚の危機にさらされている人が、妻をつなぎとめるにはどうすればいいのか。
澁川さんは「まずは家庭内別居を提案しては」と勧める。「絶対に離婚なんかしないぞ、などと騒ぐと、妻は『これ以上話し合っても時間の無駄』と判断し、一方的に家を出てしまう。そこで、『家事はしなくていいから』『口をきかなくていいから』などと相手に歩み寄ったうえで、同居を続けてもらうのです」
いきなり結論を出さず、とりあえず時間稼ぎする。その間に少しでもうつ状態から回復し、“以前より元気になった自分”をアピールするのだ。
その際、うつ病なら休職してしっかり療養することが望ましいが、場合によっては休職がかえって仇となる。
前出の医師は「適応障害の人々が3ヵ月も会社を休んだらかえって復職が困難となり、立ち直りにくくなる、と私は考えます。休んでもせいぜい1、2週間がいいところでは」と話す。
一方、家族を持てない人、家族を失ってしまった人は、どうすれば孤独を乗り越えられるのだろう。
ひとつの答を提示してくれるのが「コレクティブハウス」などの新しい住居形態である。
コレクティブハウスとは北欧発の集合住宅。それぞれ独立した居住スペースのほかに、リビングキッチンなどが付いた共用スペースがある。入居者同士が一緒に食事やだんらんしたりでき、自宅で孤立することがない。日本ではまだ数は少ないが、NPOが担い手となり、少しずつ模索が始まっている。
若者の間に広まっている「シェア住居」も、孤立を防げる点では魅力的だ。コレクティブハウス同様、リビングキッチンなどの共用スペースがあり、その他、シャワーやトイレなどの水回りも共同で使う構造になっている。中には賃料が格安なだけで入居者同士の交流が見られないところもあるが、一般的にはコミュニケーションの活発な住居が多い。
ただ、心の病を抱えた人にとって、他人との共同生活はストレスになるのでおすすめできない。回復した段階で入居を考えてみてもいいだろう。■「うつ100万人時代」を生き抜く“孤立回避策”とは
タバコの健康被害はよく知られているが、同じように孤立は知らぬ間に心を蝕み、貧困、果ては自殺をも招きかねない。
「特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク」では、自殺の10大要因として、うつ病のほかに、家族の不和、負債、身体疾患、生活苦、職場の人間関係、職場環境の変化、失業、事業不振、過労を挙げており、これらが連鎖しながら「自殺の危機経路」を形成する、としている。
単に医療機関を受診したり、休職するだけでは、この複雑な危機経路をサバイバルするのは難しそうだ。
前出の医師は次のように話す。
「苦しみを抱えているからこそ病院を訪れる、という点ではうつ病も適応障害も同じ。でも、家族に見捨てられ、生きる意味を失いかけた人には治療は通用しません。“意味の回復”を成し遂げられるのは患者さんご本人。我々はただ、悩みに耳を傾けることで、そのお手伝いをすることしかできないのです」
とうとう到来したうつ100万人時代。だが薬で治らない“うつ”には、新たな手立てが要る。
家族崩壊の時代に突入した今、私たちはこれまでとは違うコミュニティを作り直す必要に迫られているのではないだろうか。
【高齢男性の独り暮らし急増、孤立化の懸念も 読売5/14】 政府は14日の閣議で2010年版「高齢社会白書」を決定した。 白書では、高齢者の中で独り暮らしの人の割合が増加し、2030年には男性17・8%、女性20・9%に達するという推計値を提示した。特に男性の増加が顕著だとしたうえで、「男性の独り暮らしは社会から孤立しているものが多い」と懸念を示している。 65歳以上の高齢者は09年10月1日で2901万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は過去最高の22・7%に達した。1980年には男性4・3%、女性11・2%だった独り暮らしの割合は、05年には男性9・7%、女性19・0%となった。 独り暮らしの高齢者は他の世帯と比べて健康や生活費などの心配を抱えている人が多く、内閣府の調査でも「友人との交際が少ない」「日頃の会話が少ない」と回答する割合が高いとした。そのうえで、高齢者の孤立を防ぐため、働く機会を増やしたり、地域に交流の場を設けたりすることを提唱した。
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男性の孤独、はたして女性は孤独ではないのか?
女性のほうが長生きしているのだから、孤独な女性は多いと思うが、社会問題としての対象は男性が多い。
自分が生きるということを
若い時から考える機会を、
家族や友人や学校で取り組む必要があるのではないだろうか、と今更ながら思う。
Posted by: カモメのおばさん | May 15, 2010 10:55 PM
星を守る犬・・だったかな?ものすごく悲しい漫画があります。
家族が幸せなころ犬を飼うのですが、子どもが大きくなり、お父さんが病気失業・・奥さんから離婚を言い渡され、お父さんは犬と車に乗って・・野垂れ死に・・・
最後には犬も・・ああ、こう書いていても泣けます。
犬が・;・・健気です。
私は兎とのたれ死にでしょうか?
Posted by: おりがみ | May 18, 2010 03:52 PM