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保育制度改革  公立・民間保育所とも懸念

 日本保育協会が各種の調査研究報告書を発表している。そのうち保育のあり方について、公立、民間保育所からの回答が興味深い。「子どもの最善の利益」をキーワードに、安易な市場化への懸念が示されている。
【保育所のあり方に関する調査研究報告書09年度 4/6】
【Ⅰ 保育所版 調査票調査】

 全国の保育所のうち1/10に調査票を配布、856(37%)から回答。調査時点は09年8月1日。
 
 東京一極集中と過疎化、全体としての少子化の中で、研究としては部分的な規制緩和など模索を感じられるが・・・ 以下、気になって点(小見出しは、メモ者)

【新たな保育の仕組みについて】
◇市町村が保育の実施主体であること (必要ない1…必要ある4の4段階)
・実施主体に関しては市町村の必要性がある「3」「4」の累計が8割を越すことはその責任を多く望んでいると考えるべきであろう。またこの点は公営民営にもそれほどの差異がないと見受けられる。

◇現保育保障の補助金から個人給付への変更  必要なしが8割強
・個人給付への変更の必要性がないことが伺われる。必要でない「1」「2」の累計が81%である。しかしこれまた公営の必要でないに対して民営は2倍の開きがあるということは特に民営における個人給付への反発がある。前述の保育文言変更という改革意識が高いと思われる近畿地区が「4」個人給付必要であるのが0%であるのは反転して大変興味深い。

・個人に権利を付与し、個人給付をするという必要性よりも現物給付としての保育保障が良いと思われていることが如実に表れている。

◇公的契約の導入
・公的契約に関しては必要性の度合いが様々である。全体的には必要である「3」「4」49%がないの「1」「2」39%を上回っているが、公営では「2」「3」の項目が多く、民営では意見の違う「1」「4」が1、2位を占めており、その導入の可否に対して賛成反対の意見が拮抗していることを物語っている。

◇企業参入等の促進  必要なしが8割強
・企業参入の促進の必要性は、必要でない「1」「2」の累計が82%であり、全般的に企業参入反対が根強い。しかしこれまた「1」に関して言うと公営の必要でないに対して民営は2倍弱の差があり、その反発は民営が更に強いと推測される。但し、北海道東北(札幌・仙台などの一極集中人口地域が含まれるためか)や関東・近畿は「3」の公営は20%前後の必要性を感じており、地域性を一部表していると思う。近畿地区の「4」が0は有る意味特筆であろう。

◇全国一律の最低基準  必要が7割以上
・全国一律最低基準に関しては「3」「4」の必要であるが73.5%と比較的に高い数字である。
大都市が存在する関東地区での「1 必要でない」が9.1%、近畿地区での「1 必要でない」は4.3%と低い数値であり、逆にいうと全国一律の最低基準の必要性が改めて認識されている。

◇保育の質の更なる向上  9割以上
・質の向上は「3」「4」の必要で有るが94%と非常に高い数字である。近畿地区公営の「4」のみで95%とあるように、論議を待たずに早急に取り組む全国的な課題である。

◇現行の運営委託費の充実・改善 必要9割
・運営委託費の充実改善は「3」「4」の必要であるが90%と非常に高い数字であるが、「4」は充実と改善に緊急性を要すると考えると公営の52%と民営の80%では相当開きがあると思われる。公営は委託費の改善を望んでも一般財源化されている中で直接的影響はないが、民営は直接影響すので充実や改善に対して強い要望があると考えられる。

◇事業者指定制度について 導入すべきてない7割強
・社会福祉法の制定や介護保険制度の導入の影響、また、規制改革の名の下、保育所への民間参入が認められているが、今回の調査では、現在、社会保障審議会少子化対策特別部会で議論されている事業者指定制度について設問を設けてみた。
 全国的にみると、13.8%が事業者指定制度はやむを得ないとし、73.5%が事業者指定制度はすべきでないとの回答である。

◇ 認定保育園について
・公営保育所では肯定的
 公営保育所では「保護者に便利38.3%」、「認定こども園があっても良い32.3%」「子育て支援の拠点としての充実した機能が期待できる26.8%」、「保育と教育が一体的に行われて良い25.6%」の順に肯定的に考えていて、認定こども園に対してかなり理解を示していることがわかる。しかしそうした反面、幼稚園と保育所が一元化施設として完全に統一されることについては、17.3%と最も低率であり、幼保の完全一元化には賛成できかねると考えていることがわかる。

・民営保育所では否定的
 最も多くの回答が寄せられたのは、「子どもの最善の利益の保障への疑問」であった。公営保育所が35.1%に対して、民営保育所は61.8%とかなり高い割合で、最善の利益が保障できるかどうか疑問に思っているという結果となった。その次に多い回答は「認定こども園については否定的」46.2%で半数近くに及んでいる。その後に「保護者に便利20.1%」「認定こども園があっても良い15.3%」が続き、「幼保の完全一元化」「子育て支援の拠点としての充実した機能が期待」については、ともに8.4%と低率であり、公営保育所が「幼保の完全一元化17.3%」、「充実した機能が期待26.8%」と比較すると、その回答内容に大きな相違がみえる。

・「子どもの最善の利益の保障」については公営私営ともに疑問視
 認定こども園については、概ね公営保育所が肯定的で、民営保育所が否定的であることは調査結果から明らかになった訳だが、そのような中で公営・民営ともに共通していることは、子どもの最善の利益が保障できるかどうか疑問に感じていることである。公営保育所が35.1%に対して民営保育所が61.8%と大きな隔たりはあるものの、公営保育所の回答で2番目に多いという結果からみても、公営保育所においても子どもの最善の利益保障について疑問視していることがわかる。

◇考察から
 少子化の進む地域では、3歳未満児の入園を民営保育所に優先的に入所させることで民営保育所の経営に配慮したり、障害児や見守りが必要な児童虐待を疑われる子どもを、公営保育所が比較的多く引き受けたりして、いわば調整弁的な役割を公営保育所が果たしていたり、それぞれの長所を生かして地域でその役割を分担していた。
 こういった工夫は、現状の厳しい経営環境の中で生まれた知恵でもあるが、こうした現状が続く限り、このような公営民営の適切なバランスのとり方も必要と思われる。
もう一つ公営で気になるのは、補助金の流れが変わったこともあり、公営保育所の質の低下が懸念される点である。自由記述意見の中に、公営保育所の職員の半数以上がすでに非常勤職員で、思うような保育ができず保育士確保に苦労している旨を訴える内容があった。また、別の公営保育所の意見では、新規民営保育所の立ち上げに自治体が補助金を使う分、老朽化する自前の公営保育所の整備が追い付かず格差が増していたりする意見もあった。公営保育所の質の変化はなかなか目に触れにくい部分で、気づきにくい部分だが、公営保育所の保育の質の維持にも今後注意を払う必要がある。

◇認定こども園普及の必要性について 必要なし7割強
 「今後ますます普及させる必要がある」と回答した割合は20.1%であり、公営保育所が33.2%、民営保育所が12.5%と公営保育所が20ポイント以上も高い結果であった。
それに対して「これ以上増やす必要はない」と考えている割合は68.2%と7割近くにも及び、公営保育所が51.1%、民営保育所78.2%と民営保育所がとくに高い割合を示しているものの、公営民営ともに過半数の保育所で増やす必要はないと回答している。

◇考察 認定子ども園
 もっと別なところに進展しない要因があるのではないかと思われる。そもそも認定こども園については、平成15年に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」いわゆる「骨太の方針」の中で、経済財政の観点からスタートしたという背景があり、保育所や幼稚園の現場の声を反映しない形で、つまり乳幼児の健全な育ちを第一義的に考慮したとはいえないままにスタートしたところに進展しない原因があるのではないかと思う。将来の日本を支えていく大切なこどもを、心豊かに健全に育てていくことを第一の使命として考えている保育所や幼稚園にとっては、経済財政政策や規制改革等の観点から議論がおこなわれ制度化された「認定こども園」に対して抵抗を感じたり、疑問に思ったりしている保育関係者や幼稚園関係者は多い。今回の調査からも、とくに民営保育所においては認定こども園に対する厳しい見方が感じられた。

 保育分野における規制改革の中で、株式会社等の参入促進が検討されているが、イコールフッテングということで、社会福祉法人に定められている制限や規制を緩和したり、企業の基準に合わせるべきだという考え方がある。しかし、緩和し始めると歯止めが利かなくなることが考えられ、保育が育児産業化する懸念がある。その結果、質の低下を招く可能性も出てくる。
認定こども園の推進も含めた保育分野の制度・規制改革には慎重に取り組むべきであると考える。

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