小泉「改革」と同根! 「地域主権」法案
「地域主権」法案が、参院で可決されたが、この内容は、暮らし地方を破壊した小泉「改革」の継続である。
【地域主権改革関連2法案の概要 内閣府 2010/3】
小泉政権下の「日本21世紀ビジョン」も「地域主権」確立を掲げており、安部自公政権がつくった「地方分権改革推進委員会」の勧告――福祉関係の国基準の撤廃などをすべて受け入れたもの。民主党の土台が「新自由主義」であることを示したものである。
法案概要には、「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課 題に取り組むことができるようにするための改革」とし、そこには、人権保障もナショナルミニマムの保障という言葉はない。道州制ビジョン懇談会の中間報告も同じだが、「国と地方の役割分担」「地域受益者負担主義」である。
【クラブ活動費、PTA会費も就学援助の対処に】
で紹介したように「他の先進国と比較して日本の地方政府は生活保護や健康保険、介護保険など再分配的歳出規模が大きくなっているが、そういった状況を無視した地方分権の推進は、地方政府の再分配的歳出を抑制させる可能性が高く」(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング(株)経済・社会政策部)と、一般財源化で就学援助の「切り下げの自由」が進んだ状況を示し、危険性が指摘されている。
◆以下、「日本21世紀ビジョン」「地方分権改革推進委員会」の勧告などの資料・・・
「地方分権改革推進委員会」は07年4月、安倍内閣のもとで発足し、政権交代後も作業をつづけ、09年10月第3次勧告、11月に第4次勧告を鳩山首相に提出している。
【生活者の視点に立つ「地方政府」の確立 第一次勧告 08年5月28日 地方分権改革推進委員会】
この時の積極的な談話をみれば、小泉「改革」を流れをまっすぐに引きついでいるのがわかる。
【第三次勧告に対する内閣総理大臣の談話 平成21年10月8日】
「国と地方の協議の場の法制化」や、「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大」を中心とする本日頂いた勧告は、地域主権を実現していく上で大きな意義を有すると考えており、勧告が最大限実現されるよう、内閣を挙げて速やかに取り組む所存である。
【第四次勧告にたいする地域主権推進担当大臣談話 平成21年11月9日】
「地域主権」改革の実現を目指し、スピード感をもって取り組んでいく必要がある。
このため、地域主権政策を更に検討し、推進するための新しい体制をできるだけ速やかに立ち上げたい。これまでの地方分権改革推進委員会の蓄積を活かしつつ、今後は、この体制を中心として、現政権の目指す地域主権を実現していく上での課題の具現化を、政治主導で進めていきたい。
【小泉内閣メールマガジン「日本21世紀ビジョン」 キーワード解説】
● 豊かな公・小さな官
「日本21世紀ビジョン」では、日本が2030年に目指すべき姿として、「豊かな公・小さな官」の実現を掲げています。
「豊かな公・小さな官」とは、
○ 国民が必要とする公共サービスが、多様な主体と手法により豊かに提供されるとともに、政府は、政府でなければできないことに徹している(「小さくて効率的な政府」)。
○ 個人が自発的に自分の可能性を高めながら「公」の活動を担う「奉私奉公」が広がり、企業・NPO・社会的起業家など幅広い担い手が、社会のニーズに対応している(「非政府が担う『公』の拡大」)。
○ 住民が地域のあり方を決め、地域の主体性により生活水準の向上を目指す地域間競争が繰り広げられている(「自立的な分権社会」)。
というような社会です。
「豊かな公・小さな官」の実現のためには、例えば、
(1)小さく効率的な政府を実現する
・ 歳出構造の見直し、定期的な市場化テストの実施などにより、官の効率化を図る。
・ 将来世代への負担の先送りを回避するとともに、財政再建を図る。まず2010年代初頭までに国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化した後、黒字を維持し、公債残高(名目GDP比)を引き下げる。
(2)社会保障制度の持続可能性を高める
・ 今後2年程度の間に集中的に社会保障制度改革の検討を進める。
・ 世代間公平に配慮し、自立支援(健康増進、就労支援)型の社会保障制度に切り替える。
(3)地域主権を確立する
・ 地方分権を徹底し、地域住民が自らの判断で地域における最適な行政を選択できるようにする。
・ 他地域との連携を強化して集住・集積の利益を活用する。
(4)社会的な価値が創造される環境を整備する。
・ 個々の住民が一定の範囲で税金の使途をNPOなどに割り当てることができるなど、NPOなどへの公的助成を進める。
・ 都市整備、教育、文化など、官に依存していた分野でも、社会投資ファンドの活用により国民の側に立った投資を行う。
(5)その他
・ リスクをチャンスにつなげる金融を実現し、多様な金融チャンネルを育てる。
・ 法意識を醸成するとともにルール(法)の実効性を確保する。
ことなどが必要です。
【生活者の視点に立つ「地方政府」の確立 第一次勧告 08年5月28日 地方分権改革推進委員会、より】
◆国と地方の役割分担
(1)「地方が主役の国づくり」に向けた今次分権改革の理念と課題
「国が全国画一的に定める基準を一律にあてはめることは、地域活性化の障害となる危険性がある。」「地域のあり方は地方独自の個性を優先し自ら決定する自治の確立が住民にとって望ましい」
「住民に身近な行政は地方自治体に移譲するとともに、国の法令による地方自治体の諸活動に対するさまざまな義務付け・枠付け、関与等を徹底して見直す。」
・・・ここには人権保障、ナショナルミニマムの保障ということばは一言もない。
(2)国と地方の役割分担
「外交、防衛など国家としての存立にかかわる事務をはじめとする国が本来果たすべき役割を重点的に担うように中央政府の役割を限定し、住民に身近な行政は地方自治体に移譲し地方の裁量と責任のなかで実施することが基本である。」
「これまでの国と地方の役割分担を徹底して見直し、国の出先機関が担う事務・権限を含めて、地方自治体への移譲を推進する必要がある。なお、国と地方を問わず、そもそも行政が直接担う必要がない事務・権限については、国と地方の役割分担を考える以前に、廃止・民営化等を検討すべきである。」
(1)くらしづくり分野関係
・保育所について、「保育に欠ける」入所要件の見直し、直接契約方式の採用等についての総合的な検討に着手し、平成20 年中に結論を得る。
○ 「高齢者の医療の確保に関する法律1」において、医療の効率的な提供の推進に関し都道府県は診療報酬に関する意見を提出することができることとされている(注)。この意見を的確に反映し得る仕組みについて、都道府県の意向も踏まえながら検討し、平成22 年度中に結論を得る。
○ 保育所や老人福祉施設等についての施設設備に関する基準については、全国一律の最低基準という位置付けを見直し、国は標準を示すにとどめ、具体的な基準は地方自治体が地域ごとに条例により独自に決定し得ることとする。
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