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給付型の奨学金を 6割が既に授業料減免 あしなが育成会調査

 他の先進国なみに高校授業料の実質無料化がはじまったが、給付型の奨学金創設が不可欠である。あしなが育成会の調査では遺児母子家庭で「既定の制度で授業料減免を受けている者は公立高校生59.7%、私立高校生で55.01%、全体で58.1%と約6割」に達している。
【2010年3月 あしなが育英会高校奨学生調査(解説)― 2009年度学年末生活状況報告書から-4/22】しかも、高校の教育費のうち授業料の占め割合は半分以下。貧困と格差の解消には、無償化だけでは不十分である。
【教育費負担の実態調査を 土佐のまつりごと09/4】

 ところで昨年9月県議会で、給付型奨学金を求める意見書を、自民、公明、民社、社民など日本共産党と緑心会、西風をのぞく他党・他会派は、否決している。

【2010年3月 あしなが育英会高校奨学生調査(解説)― 2009年度学年末生活状況報告書から-4/22】 Ⅰ.意図  2010年4月から「高校授業料無償化」が実施されることになった。しかし、母親の所得が134万5千円で一般勤労者の3分の1以下という遺児母子家庭の現状から推測すると、遺児たちはこの政策によって高校教育費の負担が十分に軽減されて、大学や専門学校進学のための準備に余裕ができるようになるとは考えにくい。  その根拠を示すために、あしなが育英会は、毎年度末に奨学生から回収している「生活状況報告書」の質問項目に、既定の制度による「授業料減免制度の利用状況」や「高卒で就職を希望する理由」などの質問を新たに加えて回答してもらった。

Ⅱ.集計数
 2010年2月中旬に、あしなが育英会高校奨学生4,400人(10年3月卒業予定1,482人、新年度に引き続き奨学金を受ける高校生2,918人)に「生活状況報告書」を送付し、10年3月卒業予定者については3月31日までに回収した1,046人(回収率70.6%)について、10年度も引き続き奨学金を受ける高校生については4月5日までに回収した2,163人(回収率74.1%)について集計した。

Ⅲ.主な発見
   2010年3月卒業の高校奨学生 
1.大学進学率は41.2%で全国平均より12.7ポイント低い
遺児の大学進学率 09年3月卒50.5%⇒10年3月卒41.2%に減
2.就職率は23.5%で全国平均の1.3倍
遺児の就職率09年3月卒27.8%⇒10年3月卒23.5%に減
進路未定は09年3月卒1.9%⇒10年3月卒8.4%に急増
3.「生活苦」理由に進学断念しての就職希望は
09年3月卒40.1%⇒10年3月卒49.6%に上昇
4.就職内定率は2月時点76.5%、全国平均81.1%(1月末)より4.6ポイント低い
就職内定率 09年3月卒81.5%⇒10年3月卒76.5%に減
就職未定 09年3月卒18.5%⇒10年3月卒23.5%に上昇

  2010年度も継続して奨学金を受ける高校奨学生 
1.就職希望が27.1%で、10年3月卒業者(23.5%)よりも3.6ポイント高い
2.「生活苦」で進学を断念し就職を希望する者50.0%。1年生が54.9%と最も高い
3.既に授業料減免を受けている公立高生59.7%、私立高生55.0%、全体で58.1%

Ⅳ.集計結果
1.2010年3月卒業の高校奨学生の進路状況等
 (1)大学進学率は41.2%で全国平均より12.7ポイント低く、
昨年の遺児と比べても9.3ポイント低い。
就職率は23.5%で全国平均の1.3倍。昨年の遺児と比較して4.3ポイント下がり、
未定が8.4%で昨年の1.9%より6.5ポイント上昇。
高校卒業後の進路について有効回答した1,036人のうち、「大学進学」は35.3%(366人)、「短大進学」5.9%(61人)、「専門学校進学」22.7%(235人)、「浪人」2.8%(29人)、「就職」23.5%(243人)、「未定」8.4%(87人)、「その他」1.4%(15人)だった。
   「大学進学」と「短大進学」を合わせた大学進学率は41.2%(427人)で、09年3月高卒者の全国平均53.9%(文部科学省学校基本統計=浪人を除く)よりも12.7ポイント低く、遺児高校生の就職率23.5%は全国平均18.2%(09年3月)の1.3倍だった。
   ちなみに、1年前(09年3月)の遺児高校生卒業者(回答582人)では「大学・短大進学」50.5%(294人)、「就職」27.8%(162人)、「未定」1.9%(11人)だった。昨年の回答者数が少ないため単純にはいえないが、これと比較すると、今回は大学進学率(41.2%)も就職率(23.5%)も前年度を下回り、「未定」(8.4%)が6.5ポイントも増えている。
遺児高校生は、経済的な事情で大学進学をあきらめざるを得ない傾向がさらに強くなる一方、さりとて就職しようにも就職難に阻まれ、進学も就職もままならない状況に追い込まれているものと思われる。

 (2)「生活苦」理由に進学断念しての就職希望49.6%、昨年度より9.5ポイント上昇。
   就職希望者243人のうち、就職する理由について答えた236人の内訳は、上位から「自立するため」37.7%、「家計を助けるため」33.1%、「進学したいが経済的に難しい」16.5%、「進学の必要性を感じない」10.6%、「その他」2.1%だった。
「家計を助けるため」と「経済的に難しい」とを合わせると49.6%にも上り、昨年度の40.1%よりも9.5ポイント上昇している。生活苦の深まりの反映と思われる。

 (3)就職内定率は2月時点76.5%で全国平均81.1%(1月末)より4.6ポイント低く、昨年3月
卒の遺児高校生の内定率81.5%より5.9ポイント低い。
就職未定は23.5%と昨年の18.5%より5ポイント高い。
   就職希望者243人の10年2月末の内定率は76.5%で、10年1月末の全国平均81.1%(厚生労働省発表)よりも4.6ポイント低く、昨年3月卒の遺児高校生の内定率81.5%に比較しても5.9ポイント低い。また、未定率は昨年の18.5%よりも5ポイント高く、新年度を1か月後に控えた2月末にもかかわらず、「未定」が23.5%も占める状況は深刻である。
   内定先を記入している者に限って、その業種別を見ると、「製造・生産工程」が37.3%と最も多く、続いて「サービス業」20.7%、「事務職」12.7%、「福祉関係」8.7%、「運輸・通信」6.0%、「保安職」5.3%などだった。
なお、厚生労働省が10年3月31日に発表した「毎月勤労統計調査」によると、年末賞与の減少率が最も大きく1人当たりの平均支給額が最低だったのが飲食店・宿泊業というが、サービス業に就く遺児高校生の内定先で目立ったのはホテルや旅館、飲食店などだった。家計を助けようと就職しても、十分な給料をもらえず、依然として苦しい生活から脱出できないのではないかと心配される。
   さらに、内定者186人のうち、内定先に「満足している」は69.9%だった。この問いについての比較対象はないが、決して高い割合だとは思えない。

2.2010年度も継続して奨学金を受ける高校奨学生の状況
(1)就職希望が27.1%で、10年3月卒業者(23.5%)よりも3.6ポイント高い。
  公立高校生は私立高校生よりも大学進学希望率が低い。
高校卒業後の進路について有効回答した2,155人のうち、「大学進学」は33.5%、「短大進学」4.3%、「専門学校進学」13.7%、「進学予定だが進学先未定」9.7%、「就職」27.1%、「進学か就職か迷っている」11.7%だった。
   「大学進学」と「短大進学」を合わせた大学進学希望は37.8%とかなり低い。しかし、「進学予定だが進学先未定」を合わせると47.5%となり、特にこれまでと違った傾向は見られない。
ただ、明確に就職を希望している割合が27.1%と、卒業を1~2年後に控えている段階ですでに10年度卒業生の割合(23.5%)を超えていることから、結果的には進学率がさらに下がることが予想される。
なお、設置者別でみると、公立高校生は「大学・短大進学希望」36.3%、私立40.4%だった。「就職希望」では、公立高校生29.2%、私立23.3%で、公立高校生の方が、大学進学希望率が低く就職希望率が高い傾向にあった。

(2)「生活苦」が理由で進学を断念し就職を希望する者50.0%とさらに上昇。
1年生が54.9%と最も高い。
   就職希望者585人のうち、就職する理由について答えた567人の内訳は、上位から「家計を助けるため」36.9%、「自立するため」34.7%、「進学したいが経済的に難しい」13.1%、「進学の必要性を感じない」12.7%、「その他」2.6%だった。
   10年3月卒業生と比較すると、卒業生では第2位だった「家計を助けるため」(32.1%)が、奨学金継続者では第1位となり、「経済的に難しい」と「家計を助けるため」を合わせた割合も50.0%と、卒業生の49.6%をわずかだが上回っている。
経済事情で就職を希望する割合を学年別でみると、1年生が54.9%と最も高く、続いて2年生47.4%、3年生以上22.7%だった。ただし、3年生以上は母数が少ないためデータとしては信頼性が低い。いずれにしても、1年生のうちから家計を心配して就職を考えなければならない状況であることが顕著に表れている。

 (3)既定の制度で授業料減免を受けている者は公立高校生59.7%、私立高校生で55.01%、全体で58.1%と約6割。
   既定の制度で実施されている「高校の授業料減免制度」の利用状況について有効回答した1,966人の内訳は、「全額免除」35.5%、「半額等一部免除」22.6%、「受けていない」41.9%で、「全額免除」と「一部免除」を合わせると58.1%に上った。
   設置者別にみると、公立高校生では「全額免除」46.7%、「一部免除」13.0%、合計59.7%。私立高校生は「全額免除」14.2%、「一部免除」40.8%、合計55.0%で、当然のことといえるが公立高校生の減免の割合が高い。
 昨09年11月に行った調査(アンケート回収数385)では、公立高校生のうち「全額免除」が48.8%、「一部免除」11.8%、合計60.7%。私立高校生では「全額免除」12.4%、「一部免除」38.1%、合計50.5%。全体では「全額免除」38.4%、「一部免除」20.2%、合計58.6%で、今回の結果と大差はなかった。
10年4月から高校授業料無償化が実施されることになったが、遺児高校生の約6割はすでに授業料が減免されていても教育費が不足しているために奨学金を利用している。高校授業料無償化だけでは、遺児の進学は依然として困難であるといえる。

Ⅴ.まとめ
 (1)現代は、遺児を含む貧困世帯の子どもにとって過酷な時代である。
   遺児家庭にとって貧困の連鎖を断ち切る唯一の手段は、遺児自身が力をつけ一家の働き手となることである。しかし、我が国においては、大学等の高等教育を受けなければ安定した職業に就くことは極めて困難である。
   それにもかかわらず、政府は「子ども手当て」や「高校授業料実質無償化」政策によって子ども支援重視に大きく舵を切ったとはいえ、貧困世帯の子どもへの配慮に欠け、皮肉にも貧困世帯の子どもが平等に教育を受ける機会を結果的に失いかねないような方向に向かっている。
その兆候が今回の集計結果で浮き彫りになったといえる。すなわち、
①遺児高校生の6割は既定の制度で既に高校授業料減免を受けており、「高校授業料無償化」でも教育費負担は従来とほとんど変わらず、依然として経済的に苦しいため、高等教育を受けようという希望を抱きにくい状況である。
②その結果、一般高校生はもちろん遺児高校生同士で比較しても大学進学率が下がる傾向にある。
③経済事情で大学等への進学を断念し、高卒で就職を希望する割合も増えつつあるが、内定率は2月時点でも76.5%と低く、遺児は進学も就職も非常に困難な状況に立たされている。
   政府は「子ども手当て」や「高校授業料無償化」によって生じる一般世帯と貧困世帯の子どもの教育格差是正に早急に取り組むべきである。

(2)教育格差の拡大により、懸念される遺児の教育機会の喪失。
   高校授業料の無償化は遺児の進学支援には不十分であるだけでなく、一律無償化によってもたらされる次のような事態が懸念さる。
①一般の高校生は授業料が無償化された分を学校外教育費(塾費・家庭教師の月謝など)にさらにつぎ込めるため、遺児と一般の子どもとの教育格差はさらに拡大し、遺児にとって大学等への進学はさらに困難になる。
②特に地方の公立高校の受験倍率が高くなり、遺児はやむを得なく教育費の高い私立高校に進学せざるを得なくなる。貧困層ほど高い教育費を負担しなければならないという皮肉な時代になる。
③「子ども手当て」も一般との教育格差を拡大する。文部科学省は「ゆとり教育」と決別し、小学校教科書のページ数を25%増やす。塾に通えない遺児は小学校段階から不利に立たされる。
④「高校授業料無償化」「子ども手当て」策のため、医療費負担増や、扶養手当減額など母子福祉が削減される一方、財政難の地方自治体は独自奨学金等を縮小・廃止する傾向にある。教育や福祉の面でも遺児家庭はさらに厳しい状況に追い詰められるのではないか。

Ⅵ.高校生の声――2009年度生活状況報告書から

 自動車整備士の夢をあきらめ就職
 僕の夢は自動車整備士になって自分の整備工場を開くことでしたが、4月から就職することになりました。体の弱い母と祖母を残しては、家を出ることができませんでした。母と祖母は、まだまだ頑張れると言ってくれましたが、3年間高校に通うことができただけでも本当に感謝の思いでいっぱいです。夢の形はかわるかもしれませんが、心のすみに残しておいて、これからの一日一日を大切に、決めた道を迷わずにまっすぐ歩いていきたいと思っています。(山形・高3・男)

弟のためにも就職します
 私は進学したかったのですが、経済的に難しくてあきらめました。まだ弟もいるので、わたしが働いて自立しようと思い、就職することに決めました。これから先、後悔することがあるかもしれませんが、母のためにがんばろうと思っています。(高知県・高2・女)

 早く就職先見つけ母を助けたい
 私の父は、私が中学1年生のときに病気で亡くなりました。それ以来、母は私たちのために職場をかえて一生懸命働いています。私の下には中学3年生の妹がいます。今年、高校受験なので、まだまだ生活が安定することはありません。母は、時に帰ってきて食事の後、疲れて眠ってしまうこともあります。そんな母の姿を見て、私は早く就職先を見つけて少しでも手助けをしてあげたいと思います。そして、安心させてあげたいです。これからも、私たちを見守ってください。(大分・高3・女)

 春から仕事、母のように笑顔で頑張る
 僕が小学校2年生の時、父が死亡し、母は子ども5人を育てるのに、大変苦労しました。朝早くからパートに出かけ、帰ってきたら家の中の仕事をして、自分の時間もなく、ただ働きづめの毎日です。母は、仕事で良いことばかりではないと思いますが、僕は母の背中を見て、高校を卒業できました。高校を卒業して仕事に就いても、母のように笑顔で頑張ります。兄弟にも、母にも感謝でいっぱいです。ありがとう。(青森・高3・男)

おかあさん、ありがとう。親孝行するねっ!
 母はお料理がとても上手で、和洋中華をありあわせの食材で作ってくれます。私と弟の誕生日には、手作りケーキでお祝いです。我が家は外食をしません。母は「うちは“内食(ないしょく)よ」と笑い飛ばします。そして母は、節約が上手です。使わない電気や製品のスイッチをまめに消したり、古い洋服を自分でリフォームしたりして、私や弟にかかる教育費や生活費を捻出しています。おかあさん、ありがとう。親孝行するからねっ。(福岡県・高1・女子)

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