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福祉国家型内需拡大による『経済的破たん』の打開」備忘録

 鳩山政権が、深刻な不況・税収減と、「構造改革」による傷の手当のための歳出増に直面している。どう打開するか ――
 昨年末、渡辺治、二宮厚美、岡田知弘、後藤道夫という当ブログでは馴染みの研究者の共著「新自由主義か、新福祉国家か 民主党政権下の日本の行方」から、二宮氏の論文のうち「福祉国家型内需拡大による『経済的破たん』の打開」、後藤の論文の中の「福祉国家の財源を企業が大きく負担すべき理由」の備忘録

【政権交代後の新福祉国会の課題】 
 二宮「新自由主義か、新福祉国家か」09.12より

・新自由主義の「経済的破たん」が「社会的破局」(失業、生活保護急増など)をますます深化しつつあり、その上、「経済的破たん」が「財政危機」を深刻化しつつある。

・よって、課題は、「社会的破局」の克服、「経済的破たん」の解決、「財政危機」の打開―― この3点を整合化し、統一する方向 ―― 打開の方向として、「新福祉国家」ついて、アウトラインを検討

(1)新たな福祉国家の3本柱
・第一は社会的破局」からの回復――生存権、労働権等の現代的社会権の確立。憲法を生かした国づくりの追

①現金給付型の所得保障
・生活扶助、年金、児童手当、最低賃金など貨幣所得のナショナルミニマム保障
→ 鳩山政権も公約に掲げているが、今後の重要課題

②現物給付による社会サービス保障
・保育、教育、介護、医療、看護など社会サービスの公的保障を図る
→ 鳩山政権の大きな弱点。市場化路線に妥協的。しかし有力な雇用分野であり経済効果も高く、思い切った財政投入が必要

③生存権保障のための公的規制、基準・ルール化
・解雇規制、派遣労働禁止、環境保全、食品安全衛生基準、住宅耐震強度、教育・福祉・医療施設最低基準、混合診療禁止など。巻き返しをはかる新自由主義派とのたたかい
→鳩山政権は「規制緩和」に妥協的(例えば保育基準の緩和)。
  「地方分権」の名の規制緩和、「脱官僚依存」の名の公的規制見直し、「グローバル化」の名の自由化

(2)福祉国家型内需拡大による「経済的破たん」の打開
・第二は、新自由主義の「経済的破たん」を新福祉国家型内需拡大にそって打開すること

・「輸出依存、投資主導型成長」に対し、「内需依存、消費主導型成長」
→ 外需に対し内需、投資に対し消費、私的消費に対し社会的消費、環境破壊に対し環境保全、企業本位に対し国民本位、G…G’循環に対しP…P循環プラス’W…W’循環

・単純な「外需vs内需」「投資vs消費」ではない…地球温暖化防止、自然環境保全の課題と衝突しないもの
→「先端技術を生かした環境保全型の消費」つまり「情報化・サービス化」の方向を生かした内需・消費

・主領域は、教育・保育・医療・介護・福祉・環境などの社会サービス、文化・スポーツ・芸術など情報・サービス消費で構成される

・三色旗型のニューディール グリーン(環境)、ホワイト(医療・福祉)、レッド(労働条件改善)

・社会サービスの拡充を基点にした内需拡大策は、国民経済のバランスの取れた発展に不可欠
→ 国民経済の内実を担う中小企業は、輸出・投資に依存する大企業と違い、国民の消費・内需に依存する度合いが高いから

(3)福祉国家型財政への転換による財政危機の克服
・第三は、財政危機を食い止める道を、福祉国家型財政への天下の方向で展望すること

・現状/歳入は、深刻な不況による税収減、歳入欠陥が不可欠、歳出では、景気対策・内需拡大、社会保障充実により、増大が不可欠 → ここで鳩山内閣は、一大難題を抱えることに/この対処方法が今後の試金石

・ 鳩山政権の下半身「新自由主義」部分が台頭/消費税増税、「分権化」の名による社会保障切捨てという小泉「改革」の延長線上のもの
→ しかし、この下半身部分は、上半身の「脱構造改革」と矛盾し、ネジレをきたす。

*福祉国家型財政構造への転換が「経済的破たん」と「財政危機」を整合的に打開する
①財政構造の見直しは、家計・企業と違って「量出制入の原則」に立ち返る
・「出るを量って、入るを制す」とは、公的に求められる社会保障等の支出を計測し、その後に歳入の確保を図ること。その際には、憲法を指針にした福祉国家の視点を貫く
→朝日訴訟の第一審浅沼判決で指摘された内容。地球温暖化防止の不可欠な総量規制と同じ考え

②税収確保は、憲法にもとづく租税民主主義の観点を徹底…「必要充足・応能負担原則」
・応能負担原則を生存権と結びつけると「最低生活費非課税の原則」が導かれる

・勤労の権利と義務(憲法27条)と結びつけると、「勤労所得軽課、不労所得重課原則」が導かれる
→ 現実に、欧州、アメリカで、金融所得への課税強化、富裕税の導入が図られている

・この方向は、住宅バブルの破裂による今回の強行を教訓として生かす道
→ 恐慌の背景には、貧困と格差社会化の中で、大企業・大銀行、富裕層に過剰なまでの資産・資金が集中し、プールされ、そのマネーが投機市場に流れたことにある。この防止には、不公正税制を所得・資産の両面から正していくことが求められている。

・日本の長期累積債務にどう対応するか。
→ 累積債務は、一種の負債残高にほかならないので、その解決の財源は広い意味での資産課税(現物・金融両面)の強化にもとめることが原則となるであろう… 財政破たんに歯止めをかけ、過剰資金を公的に吸い上げて負債を償還する意味でも重要である。

・フローとストックの両面から応能負担原則を強めていくこと

(4)財政支出の優先順位の見直し
・財政の主要機能 .①権力維持機能(軍隊、警察、外交)②生活基盤整備 ③産業基盤整備 ④金融機能(財投、外為管理)、の4つ(財政学)とされる。

・福祉国家では、②生活基盤整備(国民生活・福祉インフラの整備、充実)に第一のプライオリティ
→「憲法9条プラス25条」視点からの歳出の見直しである。
→巨大開発、軍事費のムダを省き、財政機能を効率化すること… つまり「公共性の再建」にある

*現代の社会保障が、社会保険方式で支えられている点に注目する
・社会保障財権を税にもとめるか、社会保険に求めるか一長一短あるので、当面の課題を、社会保障財源のあまりの低水準に照らして、社会保険のメリットを可能な限り生かす道を考える

・メリットとは… 雇用者としての企業に拠出義務があるということ(「間接賃金」論による根拠づけ)
→ つまり企業が労働者に払う賃金を社会化したもの・・・欧州は、この視点で高い負担率
→ よって社会保険財源の追求は、企業の負担割合を高める必要。社会的責任を明確化する

・何故なら、現代の企業は、福祉国家の3本柱による社会的サービスから広く利益を得ている
→ 企業負担の根拠は「一般的(全般的)租税利益論」による… 一般的利益論とは、公共サービスは市民社会に広く社会的便益をもたらしており、その便益を基礎に高い利益を上げている率に応じて、したがって企業等は担税能力に応じて公共サービスの費用を負担すべきである、とする考え方

・福祉国家構想では、ヨーロッパの経験などに学び、社会保障に対する企業の負担・拠出義務をいっそう明確化しなければならない。それは、企業に対する応益・応能負担原則を理論化する課題である。
 ・・・ 新自由主義的蓄積のもとでの現在の金融・過剰生産恐慌は、この新しい課題を投げかけている。

【福祉国家の財源を企業が大きく負担すべき理由 後藤道夫 /同書より】
・「社会的支出」のうち家族・積極的労働市場政策、失業・住宅・その他(生活保護を含む)のGDP比で、日本は、OECD諸国の中で、韓国に次いで下から二番目、他の国の1/3、1/2という水準

―― なぜ、企業が大きな費用負担が当然か、考察する
・市場経済システムは、企業の経済活動にあたって、膨大な「ただ乗り」によるコスト削減――「社会的費用」の企業外への押しつけ――を誘発するようにつくられている。

・環境汚染 ――被害者の運動はじめ社会的運動が国家を動かし、規制を積み上げてこなかったら企業はそのコストを払おうとはしなかっただろう。

・同様に、失業時、労働災害、労働者の傷病の費用、リタイアした元労働者の生活費も、社会と国家に強制されるまでは商品の生産費には含まれてこなかった

・現代の日本では、特に②の支払いが依然として特に不十分・・・ 個々の労働者には賃金を払うが、労働力プールを維持し、そこから必要な労働力をいつでも利用できる、その状態そのものに対して、費用を十分に払っていない。

・現代の企業横断的な労働市場の労働力プールを維持する方法は、労働規制と労働分配率の上昇、公的な保障体系によるほかない。その費用は社会が強制して払わせるべきである。

・労働力プールの使用料を払わせる方法は、企業の利潤でなく、賃金総額に課税する社会保障税・教育税のようなものであろう
→スウェーデンの企業は、法人税と別に「社会保障拠出金」として雇用している労働者の名目所得の31.42%にあたる額を支払っているが「労働力プールの使用料」と考えるとわかりやすい

・環境汚染の費用を内部化させる闘争と同じく、労働力プール維持する費用を内部化される闘争が必要
   ・・・ K.W.カップ 社会的費用の「内部化」

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