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林業を通じた地域再生 ~四万十市の実践

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 昨日から出張していた四万十市で、知人より「集落再生と日本の未来」(自治体研究社)をプレゼントしていただいた。中村地区の「林業を通して見える地域再生」という章があり、取り組みに深くかかわっている方である。
自治体の役割、自治体職員の誇りを感じさせる内容である。
スケッチ的に紹介すると・・・

・85%をしめる森林を生かす。100年かけて幡多ヒノキの大径木を育成する長伐採期施業を方針とする。神社、仏閣に不可欠なもので、高い価値をもつ。
・皆伐までの管理費をどう確保するか。住宅に仕える40年生以降の木を収入間伐とする。そのために四万十式の作業道を設置する。
・四万十式の作業道は、大まかな設計図しかなく、現地を見ながら、所有者の意向を反映させながら作業するので、技術力とともに作業員と森林所有者の話合いが不可欠である。
・市有林をつかいながら研修をかさね、担い手としての森林組合での常設施業班づくり、林業に新規参入する市内建設業者の育成。
・08年間伐出荷量は、2125立米から09年4000立米の見込み
・しかし、原木を大消費地に販売するだけの林業では産地間競争しなければならない構造はかわらない。低迷する原木価格に対応した林業にかわるだけ。
・原木は、分類、乾燥、製材され、最終的に住宅、家具としての消費者に。製材されたヒノキ材は1立米10-13万円と、原木価格の8-10倍となる。この過程を地域で行えば多くの雇用を生み、地域経済効果も大きい。
・共販所でなく、直接、企業に直接出荷する動きもあるが、その傾向は、地域の共販所、製材所の経営はきびしいものにする。市は、価格が安くとも共販所に出荷。長期的に地域のためになるから。大消費地に近い生産者の原木生産量が大きくなると価格競争では負ける。そのときに地元に共販所、製材所がないと他の選択肢がなくなるから。
・四万十ヒノキのいえづくり-- システムづくりで林業関係者が話し合い。地元大工の共同、地元建築士が元受に。また流通過程(共販所、製材所)で各地の材が入って作業をしており、地元ヒノキを識別する仕組みがない。
・材を識別する仕組みづくり。また手間と時間がかかるが自然乾燥にこだわる。
・プレカットとのセットである人工乾燥は、均質化できるがそれぞれの木の特性に合わせた大工の手刻みが発揮される。また人工乾燥では、ヒノキの特徴である芯の赤み、油成分が失われる。
・こうして出来たシステムを活かし、地場産ヒノキを住宅に使う、公共施設には必ず地場産ヒノキをつかう住民の合意をひろめていきたい。

・取り組みの出発点は自治体職員が、森林所有者、森林組合、共販所、製材所、建築士、大工などの聞き取り調査から「山を活かしたい」という共通の思い、仲間の存在に気付き、それをつなぎ、勉強会を重ねる中で、地域の中で地場産ヒノキを活用される仕組みづくりをめざし取り組まれた。それは、林業だけでなく、自治体職員の仕事のすべてに通じること。
・取り組みの中で、それぞれの関係者の成長、変化しようとする姿もスケッチされている。
・旧大正町の四万十式作業道や県の県産杉のモドル住宅づくりはすでにあったが、それぞれの取り組みは先頭を走ってるものではないが、1つ1つの取り組み、新しい人間関係が絡み合って、林業という枠を超えた地域再生につながる取り組みとなっているのでしょう。と結んでいる。


◆ 同書の他の構成は・・・
・はじめに  地域再生か可能だ   中嶋信・徳島大教授
・集落間連携で中山間地農業を守る 上越市清里区櫛池地区農業振興会
・「私の家族の将来像」調査から集落計画づくり 長野・阿智村
・林業
・活気を取り戻す漁業集落  徳島・美波町 伊座利・木岐
・移住希望者の行列ができる 京都美山町・田歌集落
・終章 集落再生の論理と運動


「はじめに」の中で編者は、「地域再生は現に可能です」と言い、「重視すべきは事業の外見ではなく、集落や自治体の取り組みかた」、「ただし地域づくりの理念が厳しく問われます」と指摘している。
経済優先の国土づくり、地球規模で利潤を追い求めるグローバリズムが、地域、集落に深刻を招いた。よって地域づくりの対抗軸は、使い捨てでない「持続可能な社会」への転換であり(当然、経済のグローバリズムの規制が必要)、それは国土構造のゆがみをただす意味をもつ。としているが、各レポートを読むと、取り組み方、理念の大事さが浮き彫りになっている。
最近、岡田知弘・京大教授・自治体問題研究所理事長の「一人ひとりが輝く地域再生」という本も出ているが、大企業中心、アメリカ中心という政治経済の2つの異常とたたかう舞台が地域になっているという意味合いがより深く理解でする。   

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