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診療報酬 実質ゼロ改定の矛盾 

 結局、診療報酬増を「偽装」し、実質ゼロ改定なのに、医師不足が集中的に現れている急性期にシフトしたため中小病院、診療所など慢性期や初期医療を受け持つ部分が削減された、という格好ではないか。
【読む政治:診療報酬増を「偽装」 「長妻氏主導」空回り  毎日1/31】
2010年度診療報酬改定に対する談話(医科) 保団連2/12

 保団連は「これでは医療崩壊は止められない」と言い、医師会は、実質ゼロについて、選挙前の大幅増の公約は裏切られ、「財務省は、早くから『診療報酬自体は、底上げではなく大胆な配分の見直し』が必要であると述べており、厚生労働省は財務省に押し切られることになった」と評価している。
 
 療養病床など急性期の病院の患者さんの退院先が確保されなければ機能しない。そうしたことがすでに問題になっているが、いっそう悪化する危険性がある。実際、知り合いの療養病床の院長さんは、最近は医療の必要度の高い患者が増えていると言っていた。(1対25の報酬を大きく下げ、1対20の制度を新設したのは、そのためだろうか。)

 また、90日を超えて入院する患者の報酬が包括される後期高齢者特定入院基本料は、「差別医療」として怒りをかっていたが、「廃止」の公約は、同制度を、全年齢に拡大し、低い方にあわせる方向で「解決」し、「追い出し」に拍車がかかることとなる。

 特養ホームの待機者が42万人もいる。在宅での待機者は約19万9千人で、比率も実数も3年前より増加しているが・・・ どうなるか。

 今回の改定の影響を、あらためて関係者に聞く必要がある。
 
 それにしても朝日の社説が、「報酬全体を増やす中で開業医の再診料を引き下げたことは評価できる。」「この一歩から、さらに大股で進むことを『長妻厚労省』に期待したい。」と、ほぼ手放しで評価しているのには、違和感を感じる。
【「診療報酬改定―医療再生へさらに大股で」朝日2/13】



【2010年度診療報酬改定に対する談話(医科) 保団連2/12】
 中央社会保険医療協議会(遠藤久夫会長)は2月12日に、長妻昭厚生労働大臣から諮問があった平成22年度診療報酬改定について答申を行った。
実施日は4月1日からで、改定幅は厚生労働省発表では0.19%(本体1.55%+薬価・材料費▲1.36%)だが、「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出される600億円分(▲0.16%)が総枠0.19%からさらに削減されるため、10年ぶりのプラス改定ではあるが全体の改定率はわずか0.03%(+100億円)にとどまる。
答申にあたって全国保険医団体連合会の武田浩一医科診療報酬改善対策委員長は下記の談話を発表した。

1 これでは「医療崩壊」を止められない
 2010年改定にあたって保団連は、「医療崩壊を食い止めるために10%以上の引き上げが必要」と主張し、医療関係団体、患者・国民、政党・国会議員、マスコミに訴えを広げ、昨年の総選挙では、診療報酬引き上げが各政党のマニフェストや公約に掲げられた。特に民主党は、INDEX・医療政策詳細版で「総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げる」ことを明記して総選挙に勝利した。
 しかし、新政権発足後、医療費削減を求める財界や財務省の大攻勢の結果、昨年12月23日に政府が発表した改定率は総枠で0.19%(本体1.55%+薬価・材料費▲1.36%)の引き上げにとどまった。
その上、「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出される600億円(▲0.16%)が総枠からさらに削減され、全体の改定率が0.03%にしかならないことが判明。1月31日付毎日新聞は、「診療報酬増を『偽装』」と報道した。
 先発品の追加引き下げは、処方せん様式の変更等によるこれまでの後発医薬品の使用促進策による医療費削減とは違って薬価そのものの引き下げであり、当然診療報酬改定財源とすべきである。
 そもそも三党連立政権合意書では、「医療費(GDP比)の先進国(OECD)並みの確保を目指す」とされている。これを踏まえるならば、先発品の追加引き下げで捻出される600億円はもちろん、従来の手法による「調剤薬局が後発品を使用しやすい環境を作る」ことで捻出される760億円の薬剤費削減分も当然技術料の改定財源に入れるべきである。

2 診療所の報酬引き下げは、地域医療を疲弊させる
 診療所の再診料が2点引き下げられ、再診料は病院・診療所とも69点に統一された。
2007年6月実施の中医協医療経済実態調査で約17%だった収支差額赤字の医科診療所は、2009年6月調査で約28%に急増しており、医療の再生産すら困難な診療所が増えている。再診料以外にも検査や処置、アナログでのエックス線撮影料等も引き下げられた。
 診療所再診料引き下げ阻止の取り組みの結果、再診料引き下げと引き換えに、標榜時間以外も患者からの電話問い合わせに対応可能な体制を確保している診療所に「地域医療貢献加算(3点)」が新設された。
 しかし、重要なことは通常の診療所の体力を引き上げることである。再診料を引き下げて加算を設定するのではなく、再診料を引き下げずに加算を設定すべきであり、地域医療を守るため、診療所・病院とも再診料を71点に引き上げるよう、強く求めるものである。

3 外来管理加算の時間要件撤回は運動の大きな成果だが、新たな要件導入
 外来管理加算の時間要件が廃止された。これは2年にわたる運動の大きな成果である。
しかし、時間要件は廃止されたが、「多忙等を理由に投薬のみの要請があった場合で、簡単な病状の確認等を行ったのみで継続処方を行った場合にあっては、外来管理加算は算定できない」との要件が追加された。現時点では詳細が不明だが、3月に出される通知の内容によっては、時間要件撤回の効果が薄れてしまう。新たな要件の撤回を求めるものである。

4 運動器リハ(Ⅰ)は引き下げ、維持期リハビリに介護サービス情報の提供が要件化
 運動器リハでは、8000医療機関が算定する運動器リハ(Ⅰ)が(Ⅱ)に変更されて5点引き下げられた。維持期リハは医療保険で給付すべきとの要求を行った結果、月13単位までの提供が継続されるが算定要件に「介護サービスに係る情報提供」が追加された。
リハビリは要介護状態をつくらないために重要であり、医療保険で十分なリハビリが実施できることが必要である。報酬引き下げや介護保険給付への転換は認められない。

5 有床診療所は、在宅支援機能を評価
 有床診療所の一般病床は、2区分の入院基本料が3区分(看護職員1~3人、4~6人、7人以上)となり、8日以上の入院基本料は全て引き上げられた。
 ただし、7日以内は、在宅療養支援診療所の指定を受けている場合は、「初期加算(100点、7日まで)」が新設され、医師配置加算も引き上げられるが、在宅療養支援診療所の指定を受けていない場合は引き下げられた。
一方、療養病床の入院基本料は据え置かれたが、在宅療養支援診療所の指定を受けている診療所が急性期病院や在宅からの患者を受け入れた場合に算定する「初期加算(150点、14日以内)」が新設された。
8日以上の点数の引き上げや在宅療養支援診療所の評価は、有床診療所の報酬引き上げを求める長年にわたる運動の成果である。しかし、有床診療所をめぐる最大の問題は、入院点数の著しい低さである。病院負担を軽減するためにも、7日以内の有床診療所の入院料を引き上げるとともに、8日以上のさらなる引き上げを求めていく。

6 中小病院の経営も困難に
 病院再診料や14日以内の入院加算が引き上げられたが、一般病棟15:1入院基本料が20点引き下げられ、90日を超えて入院する患者の報酬が包括される後期高齢者特定入院基本料が全年齢に拡大されるため、中小病院の経営は困難になる。後期高齢者特定入院基本料は、長妻厚労大臣自身が11月2日の国会答弁で、「中医協と相談して廃止していく方針」と明言していたものであり、廃止すべきである。
 病院の療養病床については、「25:1看護+25:1看護補助」の報酬が大幅に引き下げられた。7月8日の中医協分科会に報告された療養病床のコスト調査結果では、医療区分1は入院患者1人1日につき1,192円~3,217円の赤字となっていることが判明している。医療経済実態調査の結果等を踏まえるのであれば、25:1+25:1病棟の報酬引き下げを行うべきではない。
なお、「20:1看護+20:1看護補助」が新設されて報酬が引き上げられたことは評価する。

7 保団連要求等の反映
 この間の保団連や保険医協会の取り組みによって、保団連要求が不十分ではあるが、一定反映された。
具体的には、①2008年改定で大きな批判があった「後期高齢者診療料」と「後期高齢者終末期相談支援料」の廃止、②「乳幼児加算」の引き上げ、③医療安全管理関連点数の新設や引き上げ、算定要件の緩和、④入院では、「医師事務作業補助体制加算」の基準の緩和、結核病棟の平均在院日数要件廃止、療養病床における「初期加算」の新設、有床診療所入院基本料の引き上げ、⑤在宅では、往診料の引き上げや「複数名訪問看護・指導加算」の新設等である。
要求実現に向けた会員のご尽力に感謝申し上げる。

8 診療報酬引き上げと患者負担軽減運動に協力を
 医療費削減を求める財界や財務省の大宣伝と攻撃の中で、非常に微々たるものではあるが総枠引き上げが行われたことは、医療担当者のこの間の運動と患者・国民の願いを一定反映したものである。しかし、この改定率では医療崩壊は一層深刻化することとなる。
 進行する「医療崩壊」にストップをかけることは国民的課題であり、重要なことは診療報酬の底上げである。次の改定を待たずに早急に補正予算対応を行い、少なくとも総枠で3%以上の診療報酬引き上げを行うよう、強く要望する。
 なお、昨年12月24日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「社会保障実態調査」では、過去1年間に経済的理由等から医療機関にいけなかった世帯が2%(99万世帯)あったことが判明している。
保団連は、必要な医療が提供できるよう、診療報酬引き上げ・改善と患者負担の大幅軽減を求めて医療関係者、患者・国民とともに奮闘するものである。


【読む政治:診療報酬増を「偽装」 「長妻氏主導」空回り  毎日1/31】
 ◇玉虫色の数字、実質ゼロ改定 官僚、巧み操作
 「財務省との激しい交渉では、基本的な社会保障を守っていくため神経を使った」
 14日、厚生労働省の講堂に都道府県の担当幹部らを集めた会合で、長妻昭厚労相は0・19%増と10年ぶりにプラスとなった診療報酬改定など、10年度予算の成果を誇った。
 10年度予算の社会保障費はほぼ同省の意に沿う内容に落ち着いた。最近顔がふっくらし、口数も増えた長妻氏を周囲は「自信を深めている」と見る。ただ長妻氏が「政治主導の実績」と誇示する診療報酬のプラス改定を巡っては、官僚が数字を操作しプラスを「偽装演出」していたことが明らかになった。
 「プラス改定は公約同然」。昨年12月末、診療報酬の交渉で長妻氏が「押し」の姿勢に終始し、藤井裕久財務相(当時)を辟易(へきえき)させていたころ。その少し前から、水面下で別の動きが進んでいた。
 「玉虫色で工夫できませんかね。計算方法を変えるなりして」
 12月上旬、財務省主計局の会議室。財務省側から木下康司主計局次長、可部哲生主計官、厚労省側から大谷泰夫官房長、岡崎淳一総括審議官らが顔をそろえる中、最後に財務省側は診療報酬の決着方法を示唆した。
 「財務省から見ればマイナス改定でも、厚労省から見るとプラスということか」。厚労省側はそう理解した。
 診療報酬の改定率は、医師の技術料にあたる「本体」(10年度1・55%増)と、薬の公定価格などの「薬価」(同1・36%減)を差し引きした全体像(0・19%増)で表す。
 厚労省は当初、薬価の下げ幅を1・52%減と試算していた。ところがそれでは「本体」との差が0・03%増で実質ゼロ改定になってしまう。長妻氏は「プラスが前提」と強調していただけに、厚労省は財務省の示唆を幸いと、ひそかに数字の修正に着手した。
 その手口は1・52%の薬価削減幅のうち、制度改革に伴う新薬の値下げ分(0・16%、約600億円)を診療報酬の枠外とし、みかけの削減幅を1・36%に抑えることだった。制度改革で浮く金は診療報酬の内か外か--そこに明快なルールがない点に目をつけたのだ。これで「プラス改定」と説明できるし、何より浮いた600億円を、財源探しに苦心していた中小企業従業員の医療費に充てられることが大きかった。
 財務省が一転、0・19%増を受け入れたのは、真の薬価削減幅は1・52%のまま、診療報酬改定率は0・03%増で実質ゼロ改定と言えるからだ。「脱官僚」を掲げる長妻氏も、巧妙な官の振り付けで踊った形となった。
 「こういうのが役人の知恵なんだよ」
 厚労省幹部は、そううそぶいた。
 10年度予算の編成を乗り切り、自信を深める長妻氏は、硬軟取り交ぜて省内の統治に乗り出した。しかし依然、空回りも目立つ。

【診療報酬改定―医療再生へさらに大股で 朝日2/13】  医療崩壊を食い止めることを公約にうたった鳩山政権のもと、初の診療報酬改定の答申がまとまった。4月から実施される。  長妻昭厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が答申した改定の柱は、医師不足が深刻な救急、小児、産科に診療報酬を重点配分するというものだ。勤務医の負担軽減のため、人の配置を増やしたり、チームでの取り組みを後押ししたりする施策も拡充する。  最大の焦点は、病院よりも高い開業医の再診料をどうするかだった。690円にそろえることになった。切り込み不足の感は否めないが、報酬全体を増やす中で開業医の再診料を引き下げたことは評価できる。  休日・夜間などの診療時間外に「電話対応」する開業医の再診料には、新たに「地域医療貢献加算」を30円上乗せすることも盛り込まれた。  開業医が夜間や休日も患者に対応すれば、病院の救急窓口への集中が緩和されるかも知れない。だが申告だけで加算されるようなことになれば、再診料の穴埋めに終わりかねない。実施状況の検証は欠かせない。  医療費の明細書を無料で、原則としてすべての患者に発行するということも、前進だ。患者などが求めていたが、これまでは医師会の抵抗が強くて実現できなかった。  明細書があれば、実際には行われていない診療や検査がないかを患者がチェックしたり、過大な請求やミスを防いだりする効果が期待できる。医療費を節約し、財源を医療再生策に振り向ける余地も生まれるはずだ。  医療現場では今後、明細書をみた患者からの質問が増えるに違いない。医療機関はていねいに答えなくてはならない。診療と報酬について納得してもらうことは医療の基本だ。  診療報酬の体系も、患者にわかりやすいような仕組みに一層簡素化されるよう望みたい。  鳩山政権は中医協から日本医師会の代表を排除し、政治主導の姿勢を示していただけに、思い切った見直しが注目されていた。  むろん、今回の診療報酬改定だけで医療崩壊と呼ばれる深刻な状況に歯止めがかかるわけではない。医師を育成する仕組みを抜本的に強化したり、地域や診療科ごとに偏っている医師の配置を是正したりするための政策努力が問われ続ける。  病院と開業医、病院間の役割分担と連携を見直すことも、引き続き考えていかなければならない。  医療の再生とそれに必要な費用と負担はどうあるべきか。財源を含む広い視野からの検討と対策が大切だ。  この一歩から、さらに大股で進むことを「長妻厚労省」に期待したい。

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