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「地方分権改革」がもたらした「保育のいま」

  「構造改革」路線による基準緩和、補助金から一般財源化、自治体の職員定数削減の強制(行革推進法)がいかに子どもの育ちにマイナスとなるか・・・ 毎日新聞が丁寧に取材している。この方向は、民主党が「地域主権」「無駄排除」で進めようとしている方向でもある。
【保育はいま:/上 待機児童が減らない 「預け先あれば働きたい」潜む需要 毎日2/1】
【保育はいま:/中 育ちの場、環境置き去り サービス拡大に自治体が独自基準 毎日2/2】
【保育はいま:/下 進む職員の非正規化 先生、1日3回入れ替わり 毎日2/3】

 保育制度改革は、子どものためでなく、財界が求める「労働力確保」「社会保障負担軽減」「保育市場拡大」でしかない。

【保育はいま:/上 待機児童が減らない 「預け先あれば働きたい」潜む需要 毎日2/1】  ◇増設にコストの壁/政府ビジョン、財源触れず  「鬼ごっこだよ」「ワー、逃げろ」。マンションの谷間にある保育所の園庭に子どもの歓声が響く。  東京都江東区。近年、大規模マンション開発が相次ぎ、人口が急増している。子どもの数も増え、待機児童の解消が大きな課題だ。  「保育所を増やしても増やしても、待機児童が減らない」。同区の堀田誠保育計画課長は頭を抱える。  09年度、区は新たに四つの認可保育所を開設し、08年度より定員を400人増やした。08年4月1日時点の待機児童は219人。400人分増やせば「09年度当初の待機児童は、ゼロとはならないまでも、100人程度まで減るだろう」と見込んでいた。  だが、ふたを開けてみれば、09年度当初の待機児童数は312人。減るどころか逆に増えてしまった。堀田課長は「秋口に景気が急激に悪化したのが誤算だった。働きたいという保護者が予想を超えて増え、保育需要の伸びを見誤った」と悔やむ。  経済情勢の影響もあるが、そもそも、子どもを保育所に預けて働きたいと希望する人の割合は上昇を続けている。同区の場合、09年度の乳幼(未就学)児人口に対する入所希望者の割合は33・32%。伸び率は前年度の2倍だ。目前の待機児童の数だけ定員を増やしても間に合わないのだ。 10年度は認可保育所を2カ所増設、既存の施設の定員増も図る。しかし、4月からの入所希望者も前年比で200人以上増えている。待機児童を減らすのは厳しい状況だ。  保育所数と待機児童数をめぐる「いたちごっこ」は、都市部など待機児童が多い地域に共通する問題だ。  待機児童が減らない理由の一つは、いまは働いていないが働く意向があり、預け先があれば働きたいという「潜在的需要」の存在だ。保育所ができると新たに就労を希望する母親が増える「需要の掘り起こし」もあるとされる。こうした隠れたニーズは直近の待機児童数には表れてこない。  いたちごっこを止めるには、潜在的なニーズを含めた需要を予測し、計画的に保育の供給量を増やすしかないと専門家は指摘する。しかし、それには莫大(ばくだい)なコストがかかる。江東区の堀田課長は「いまは実需で精いっぱい」と語る。保育所の運営には、設置費用のほかに一つ増えるごとに年間1億7000万円ものランニングコスト(人件費など)がかかるからだ。今後5年で認可・認可外合わせて50園以上増やす予定だが、財源に限りがある中で、これ以上の負担は難しいという。      *  少子化で長期的には保育需要が減ることを見込み、増設に二の足を踏む自治体も多い。  そんななか、東京都町田市は、少子化を見越して参入に慎重な民間事業者に協力を取り付けようと09年度から「20年間期間限定認可保育所」を単独事業で始めた。土地所有者が建物を作り、社会福祉法人が借りて認可保育所を運営すると、建設費や賃貸料を市が補助する。20年後は高齢者施設などに転用することもできる。市の担当者は「国の補助事業でやるより早く開設でき、事業者負担も軽い」と自信をみせる。少子高齢社会を巧みにとらえた妙手だが、保護者らの不安は消えない。  「入所の順位は公平に決められているのか」「1歳児クラスはどこも満杯。育児休業を切り上げ、0歳から預けようか迷っている」  市内の保育園利用者らで作る保護者連絡会が昨年11月末、新規入所者向けに開いた説明会。参加者からはこんな質問が相次いだ。  4月には新事業で手当てした6カ所、490人分の保育所がオープンする。昨年4月の待機児童417人をカバーできる数字だが、これで待機児童がなくなるとの見通しは立っていない。  政府が1月29日発表した「子ども・子育てビジョン」は、潜在的ニーズにも対応するとして年5万人のペースで、14年までに計26万人分のサービスを増やす数値目標を掲げた。現在は3歳未満児で4人に1人の利用を3人に1人まで引き上げる計画だ。  保育所運営費は現行でも国・地方で計約1兆円。ビジョン達成にはさらに約3000億円の上積みが必要になるが、財源や国と地方の負担割合は示されていない。      *  子どもがすこやかに育ち、親の就労を支える保育所。最近は地域の子育て拠点、養護の必要な子どものセーフティーネットとしての役割も増すが、国の保育政策は揺れ動いている。待機児童解消のためとして、保育の質を維持する「最低基準」が一部で緩められ、子ども手当の見返りに保育所運営から国が手を引く構想も持ち上がって、保育関係者らを当惑させている。保育が直面する課題を3回に分けて報告する。
【保育はいま:/中 育ちの場、環境置き去り サービス拡大に自治体が独自基準 毎日2/2】  ◇「駅前施設」「長時間開所」…親の利便性優先  東京都杉並区の男性会社員(36)は、長女(5)が1~2歳の間、区内の認証保育所を利用した。認証保育は東京都が独自の基準で助成する認可外の施設だ。妻の育児休業明けが年度途中で認可保育所の空きがなかったためだ。施設はマンションの1LDKの一室で、広さ40~50平方メートル。保育士3~4人とハイハイする子から活発に動き回る子まで総勢15人がひしめき合うように過ごしていた。認可に移ったいま、認証保育はかなり窮屈と感じる。「次の子ができたら初めから認可にしたい」  都市部の自治体は10年程前から、保育料、環境、保育時間などの独自基準を定めて、認可外施設の助成制度を作ってきた。待機児童対策などサービス供給量を増やすのが目的で、横浜市の「横浜保育室」、仙台市の「せんだい保育室」などがこれにあたる。  都の認証保育は01年度に始まった。1月現在で480カ所、約1万5000人の子どもが利用する。認可と違い、入所は自治体を通さず、利用者と施設が直接契約する。保育料は3歳未満児月8万円、3歳以上同7万7000円(月220時間以下利用)の上限はあるが、原則、施設の自由。認可のように所得に応じた設定ではないため、低所得の人ほど負担が重くなる。定員20~120人で0~5歳が対象のA型▽30人未満で0~2歳限定のB型--の二つがある。親の通勤に便利な場所に作ると改修費などの上乗せ助成があった駅前ビルなどで増えた。都の「認証保育所一覧」には「駅徒歩1分」「徒歩2分」などの文言が並ぶ。    *  東京都府中市の認可外施設「ごんべのお宿」は定員15人。住宅や畑に囲まれた古民家だ。子どもは年齢でクラス分けされることなく、きょうだいのように遊ぶ。保護者も月1回の会議に参加して保育内容を話し合うので顔見知り。玄米中心の食事も特色だ。  0~2歳児は都の「保育室」制度の助成を受けているが、都が認証保育への一本化を促していることから、移行を模索せざるを得なくなった。ごんべが、特に大事にしてきたのは保育環境だ。認証保育への移行にあたってもこのポリシーを貫きたいが、「これまで通り」にこだわれば開設費用の助成を受けられないというジレンマに直面している。  同市は、駅から徒歩5~10分程度にA型を開設した場合に改修費用の半額を補助している。ごんべを運営するNPO法人副理事・山内俊美さんらは、これまで同様0~5歳保育を続けようとA型を目指している。  方法は二つある。一つは、改修費用の補助がないのを覚悟の上で、いまと同じような環境に認証の基準に沿った施設を開設すること。もう一つは補助を受けて、駅に近い場所に移ることだ。この場合、借地への補助がないためビルへの入居を考えざるを得ないが、「採光も不十分で、夏の水遊びなどが十分にできない」など保育環境に難点がある。定員を20人以上にすることにも抵抗がある。人数が多ければ経営は楽になるが、大規模施設の雰囲気になじめず、ごんべに避難して来た子どもたちがいるからだ。「駅に近く、開所時間も長く、保育料も安ければ、親には便利だが、それが子どもにいいとは言えない」と、山内さんは悩む。  3歳の双子の男児をごんべに通わせているパートの女性(37)は、別の認可外施設で椅子にベルトで固定された息子たちが市販の菓子を与えられていたのに衝撃を受けて転園してきた。2人分の保育料負担はむしろ前の施設よりも安いくらいだという。「便利さも大事ですが、保育の質にこだわる園にも行政の支援が必要だ」と女性は訴える。    *  国は保育サービスの量を拡大するため、保育制度を改革しようとしている。都の認証保育は、これを「先取り」した事例といえるが、駅前立地や長時間保育など親の利便性に配慮した結果、子どもが育つ環境を保障するという児童福祉の精神は置き去りにされつつある。


【保育はいま:/下 進む職員の非正規化 先生、1日3回入れ替わり 毎日2/3】
 ◇役割、増える一方/自治体任せで予算減
 「もうすぐお迎えが来るからね」。群馬県高崎市の認可施設、私立おひさま飯塚保育園。ベテラン保育士の佐藤八重子さん(55)は、おやつをほおばる子どもに目配りをしながら、急な発熱で横になっている子を気遣った。
 「小さな子どもがいる家庭でも、働き方がとても過酷になった」と佐藤さんは胸を痛める。パート勤めの母親は解雇などで仕事が頻繁に変わる。正社員の父母は長時間労働が増え、過労でどちらかが体調を崩す家庭も珍しくない。「子どもには早寝早起きをさせてくださいね」。そんな一言でさえ、帰宅が遅くなりがちな親を追い詰めないようにと言葉遣いやタイミングに細心の注意を払う。
 雇用劣化のしわ寄せは幼子を育てる家庭に向かい、保護者を支える保育士の役割は重要性を増した。
 保護者対応の難しさは多くの保育園に共通する悩みだ。少し対応を誤れば役所に苦情が行く。経験とスキルがよりいっそう問われるようになっている。
     *
 公立保育園の保育所運営費補助は、04年に従来の国庫補助から一般財源化され、地方自治体にその配分が任された。財政難の自治体は保育分野に十分な予算を回せなくなり、保育士の非正規化が進んだとされる。
 子育て支援の充実で知られる石川県。ある公立園(定員120人)は職員28人のうち、市の正規職員は園長を含め7人。園長、主任保育士の3人を除くと、クラス担任ができる正規の保育士は4人だけ。2~5歳のクラスに1人ずつ付けると、0、1歳児の担当は非正規保育士を充てるしかない。
 園内で10~11時間過ごす子どもも多いが、保育士側は4時間などの短時間労働で朝、昼、夕と入れ替わる「つぎはぎ」状態だ。園長(59)は「時間決めなので、行事の途中でも『お先に』と言って家に帰ってしまう。これでは責任ある対応がとれない」と嘆く。
 数少ない正規職員は長時間労働で負担が増えた。3歳児クラスは27人。家庭の養育力の低下で、おむつが取れず、スプーンもうまく使えないなど、手のかかる子どもが増えているが、担任1人に非常勤1人を付けて、ようやく国の基準を満たしている。「被虐待児のケアなど保育時間外の支援も必要になり、保育園に求められる役割が大きくなったのに、最低限の人の確保さえ難しい」と窮状を訴える。
 汐見稔幸・白梅大学学長は「いま大事なのは子どもの育成と、支援が必要な保護者の増加に対応するための政策だ」と指摘する。厚生労働省は、専門性を高めようと保育士資格などの見直しを検討しているが、現場の実態はこれとは程遠い。
 日本保育協会が全国807市区で行った調査によると、一般財源化前の03年と比べ、07年の保育所運営費を削減したと答えた市は6割を超えた。減らした経費でもっとも多いのは人件費で59・4%を占めた。全国保育協議会の08年の調査では、公立園で非正規保育士の割合が7割以上との回答が6・3%もあった。
 駒村康平・慶応大教授は「保育の基準や財源を自治体任せにすればお金のない所は安く済ませようとする。地方に任せようとの動きもあるが、国が責任を持つべきだ」と話す。

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Comments

こういう記事は認証保育室を作ると言う時点で書いて欲しかったです。10年前からこうなるだろうと、保育関係者はわぁわぁ言っても「財政難」「コスト削減」が最優先です。新聞はいつも制度ができて矛盾が吹き出てから、あとから「おかしい」って書くんじゃないかな?さも知っていたかのように。書くだけまし?

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