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2010年度地財計画の特徴と当初議会の課題は…

予算全体は、大企業中心、軍事同盟優先という「2つの聖域」を温存、一部の改善も国民の願いからかけ離れた不十分な予算と言えるが、その中で、地方自治体の予算はどうなるか・・・1.1兆円も交付税がふえたのか?
 子ども手当、高校授業料実質無償化、後期高齢者医療保険料アップ、障害者自立支援法の「地域生活支援」の取扱、学校耐震化予算の確保など当初議会の課題を探ってみた。

(1)2010年地方財政計画をどうみるか
 結論としては、二次補正とあわせ、それなりに確保したが、決して楽とはいえない。

①09年一次補正、2次補正予算と一体でみる。
*一次補正、 5.7兆円(うち基金2.1兆円/緊急雇用3千億円、安心子ども基金1500億円追加)
・地域活性化公共投資臨時交付金1.4兆円、同・経済危機臨時交付金1兆円
 (新政権になり公共投資交付金900億円など4400億円が失効停止)   
 → つみましされた基金事業の実施は2010度

*二次補正 「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」5000億円
 08年度2次補正「地域活性化・生活対策臨時交付金」6千億円
 09年度1次補正「地域活性化・生活危機対策臨時交付金」1兆円 と同様
・2月上旬に計画確定(1次配分4500億円、他は「効果が高い事業に」)
ハードのみだが、前倒しで浮いた財政を、ソフトに使える。
・さらに「安心子ども基金」200億円の積み増しや、社会保障費の自然増の対応 

②「交付税1.1兆円増」をどうみるか――地方交付税と一般財政の増額措置
*歳入
・地方交付税    1.1兆円増
・臨時財政対策債  2.6兆円増  よって、実質の交付税は、3.6兆円増
・地方税 3.7兆円減  
・地方譲与税0.4兆円増 (都市部の法人住民税の超過分を財源に配分するもの)
 → よって、一般財源は、差し引き3317億円
 →不交付団体にまわる「水準超経費」を除き、9600億円増
  
*9600億円増は、自由につかえるか
・一般行政費・補助事業2.1兆円増(子ども手当、生活保護、介護など)のうち地方負担分4171億円
・一般行政費・単独に、子ども手当の公務員家族分1457億円が参入
・公債費増1070億円
 → 計6700億円は行き先の決まった財政。つまり実質増は3000億円弱しかない。 
  
*歳出では、人件費減、公共事業減が前提
①新たな措置 「地域活性化・雇用等臨時特例費」9850億円
 しかし、「地域雇用創出事業」5000億円は廃止で実質4850億円増

②人件費 3588億円の削減
・教員1592人増、一般行政職の2万3345人減の計画。09人勧による給与水準の引き下げ
・09年末で終了する「集中改革プラン」に次ぐ、新たな計画策定を求める
(総務省・地方公共団体定員管理研究会の調査でも精神疾患増など多くの弊害が指摘されている)
 
③投資的経費・単独 1兆2千億円減(4割が地方債なので、一般財源では7-8千円)
  
*地財計画の特徴は、「人員削減、投資的経費の削減を前提にした計画で、一般財源の増は実質わずか。地域活性化・雇用等臨時特例費の上積みでかろうじてプラスにしたもの」であり、「補正と一体で、住民要求実現を求めていく」立場がもとめられる。

(3)条件不利地に配慮した今回の財政措置
 全国的な一般的傾向より、高知の自治体は手厚く配分されると予測される

①地域活性化・雇用等臨時特例費
・廃止された「地域雇用創出事業」よりも、財政力、雇用情勢、少子高齢化など条件不利地に配慮した設計

②大きいものは「段階補正」の一定の復元措置 
・「段階補正」縮減見直す 総務大臣 / 衆院総務委員会 1月25日
・財政課長会議で「段階補正、人口急減補正を見直す。詳細は今後詰めるが、過度な段階補正の削減部分を復元・修復する姿となる」と説明

③臨時財政対策債を不交付団体に一部配分しない措置を導入
・交付税は、不交付団体を除いて配分するが、臨財債はすべてに配分。これを一部修正
 都道府県 従来型 2兆5800億円、不交付団体除く 2兆2300億円 
 市町村  従来型 1兆9100億円、不交付団体除く  9700億円
・これまで東京などは1円も発行していない。そうした部分はなくし、不交付団体だけに配分を新設。
よって、財政力の弱い地域に、より多く発行が可能となると思う。

(4)その他
①公債費負担対策など  高金利の地方債の繰上げ返済・借り換え措置を3ヵ年継続
②国保財政安定事業も継続  
 →自治体では、少なくとも単独事業波及分(子どもの医療費無償化による調整交付金の減額分)と財政安定化支援事業交付金が一般財源からのきちんと繰り入れられているか点検を
③直轄負担金・維持管理部分廃止
 経過措置として、21年度1735億円、22年度579億円を、地方から負担金として徴収
④自動車重量税 税率引き下げによる減収を防ぐため、地方への譲与割合を1/3から407/1000にアップなど・・・
⑥事業費補正を廃止、単位費用に反映/新規事業から。社会資本の整備状況など踏まえ検討中

(5)2010年度の展望   
①2つの「聖域」にメスを入れないかぎり、消費税増税の危険
・国債44兆円、税外収入9兆円(いわゆる埋蔵金)にたよった2010年度予算案
・民主の財源手当は、庶民の中での財源の移動(子ども手当と庶民増税のように)
・地方団体は「地方消費税充実」を一貫して要望。
・2010年度税制改革大綱に「地方消費税の充実」など「新たな地方税体系の構築」を明記
 → よって参院選でのたたかいが重要に
   
②「地域主権戦略」による国のナショナルミニマムの責任放棄に注視を
  とくに保育分野での突破をゆるさないたたかいを(後述)

3.個別課題
(1)子ども手当 
①制度の概要
・月1万3千円  6月、10月、2月に支給
・申請/子ども手当の支給要件に該当する者(以下「受給資格者」という。)は、住所地の市区町村長に請求を行い、認定を受けるものとし、市区町村長は、認定をした受給資格者に対し、子ども手当を支給する。9月30日まで申請したものに4月から支給 (児童手当受給者は、新たに認定申請は必要ない)
・子ども手当の認定請求について、郵送による申請は市町村の判断。
・非課税所得扱い
・生活保護については、収入認定を行った上で、子ども手当の効果が被保護世帯に満額及ぶよう所要の措置を講ずる予定
・性格としては、低所得者に薄いもの

②所得税・住民税の増税
・年少扶養親族(0-15歳)の控除(所得税38万、住民税33万)、16-18歳の特定扶養親族に対する控除の上乗せ分の廃止(所得税25万、住民税12万)
・連鎖的な負担増の危険・・・保育料や私立幼稚園就園奨励費補助、国民健康保険料など23項目
・就学援助から外れる事態のないように・・・
・民主「税制改革大綱」では、基準の見直し、経過措置と明記。経過措置は負担増路線であり問題

(2)高校授業料無償化
・公立高校12万円、
 私学も12万円(年収250万円未満は24万円、350万円未満は18万円)、入学一時金の減免も追加予定
・特定扶養控除の縮小で、現在、授業料免除になっている家庭の負担増
・給付金の新設など恩恵をうけない、むしろ負担増となる世帯への援助が必要/給付市奨学金
 
(3)子育て支援策の一般財源化
・私立保育園運営費の一般財源化
・保育の給食の外部搬入(三歳以上)、園庭・避難階段の設置義務の緩和
「地方分権改革推進計画」(2009年12月15日閣議決定)にもとづき、通常国会に法提案
→ 面積・人材基準が緩和される東京ではオフィスビルの空き部屋を認可保育所に出来る!
・全体「義務づけ・枠付け廃止」につながる危険性/ お金を出す根拠がなくなる⇒新型交付税に

*安心子ども基金
 この間、積み増しされてきたがハードだけではソフトと一体、新規事業であることなどから使い勝手が悪く、空き教室を利用した分園設置、家庭保育の条件整備など運用改善はされているが、県でも一定額が残っている。

(4)一括交付金化の頭だし
・金額が保障されれば、公共事業の細かな基準の廃止は、一概に悪いものではないが・・・
 公共事業の補助金は、3.8兆円から3.1兆円に減
①「社会資本整備総合交付金」 既存1.1兆円+新規1.1兆円
・道路、治水、海岸、まちづくり、下水道、住宅、港湾の補助金の原則廃止
・新事業からで今制度設計中。自治体が3-5年の計画を立て交付を決定する方向
②「農山漁村地域整備交付金」1500億円 
・農業農村基盤、森林基盤、水産基盤、海岸保全施設の整備費の統合
 
(5)障害者自立支援法改定   
・市町村非課税世帯の利用料無料
・低所得①(本人収入80万円以下) 月額1.5万円、低所得②月額2.46万円
・自治体が主体となる「地域生活支援」は対象外/高知市は、国の制度とあわせ無料に
 ガイドヘルパー、デイサービスの見守りなど日中一時支援、訪問入浴、日常生活用具給付事業
  
(6)学校耐震化予算など
①概算要求から6割減
・耐震化上乗せ措置(2010年度末まで)による自治体の要望 5000棟、2700億円
・予算は、2200棟、1000億円に大幅減(高校授業料無償化の財源確保のため)
・予算確保、上乗せ措置の継続・拡充(今はIS値0.3以下)の声。 

②投資的経費の大幅削減の影響
・政府予算案18.3%減 / 対自治体では、補助事業費12.5%減、地方単独事業費15.0%減
・2010年度は、09年度2次補正の繰り越しなどで補えるが、2011年度からは本格的に厳しく

(7)後期高齢者医療制度
・軽減措置は継続。
 ・厚労省の通知 広域連合の剰余金、都道府県の財政安定化基金の活用(積みまし)で対応
・2次補正予算編成時には「保険料の上昇を抑制するための措置を別途講じる」としていたにもかかわらず、予算措置がおこなわれてない。

(8)その他
①女性特有のガン検診推進事業、肝炎対策基本法の自己負担限度額の拡充を交付税措置
②学力調査
・高い抽出率、希望する自治体の参加・・・弊害は大きくかわらず
・実施要綱からデータ公表の禁止の削除/自治体の判断による。

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