高校授業料無料化 制度矛盾の改善を
民主党の子ども手当、高校授業料実質無償化は、基本的サービスは無償化するという福祉国家的側面をもつとともに、保育など国の義務付け・枠付けの緩和と結びつけば、市場原理主義のもとのバウチャー制度に容易に転化する構造をもつ。特に、高校授業料実質無償化は、最初は直積給付、その後、間接給付にかわったが、個人給付という枠組みにこだわっていることに、その危険を感じる。
そうした根本問題とともに、改善すべき制度矛盾がある。
公立高校の授業料無償化及び高等学校等就学支援金説明会(平成22年1月14日,15日) 資料1~8
第一は、今回の無償化の対象が「国において、これまで地方公共団体が生徒から徴収してきた授業料に相当する額を負担する」こととなっており、これまで教育の機会均等にために都道府県が取り組んできた授業料の減免分は対象となっていない。
自治体の努力を逆手にとるとともに、経済的な困窮者が多い地域を抱える自治体(減免率が大きい)ほど不利益になるもので、まったく容認できるものではない。
現在、政府は、都道府県で減免率が差があることから「調整中」としている。
第二には、「3年を超えて、定時制・通信制は4年、公立高等学校に在籍している生徒」は国費算定の対象外としていること。教育困難と経済困難の関係が広く指摘されているもと、経済困難から留年せざるを得なかった生徒を排除するもので、非教育的な措置で改善が必要。・・・これも制度として授業料無償化でなく、個人給付の枠組みをしている矛盾。
第三は、高校は実質無償化の財源として、特定扶養控除のうち16歳から18歳までについて、所得税の控除は現行63万円を38万円まで圧縮し、住民税の控除も現行45万円を33万円まで圧縮することがセットになっていること。
この改定は、特にこれまで授業料の免除を受けてきた高校生を持つ世帯には、負担増しかならない低所得者に冷たい措置となっている。
高校版就学援助制度、給付型奨学金などを整備して支援しなければ、格差がかえって拡大する
実質無料化の財源を全額を国費でまかない、都道府県が独自に減免してきた分とあわせ制度整備が必要である。
文部科学省 「公立高等学校の授業料無償制の概要」より
(制度改正に伴い)授業料不徴収とする分に係る国費負担
○ 国において、これまで地方公共団体が生徒から徴収してきた授業料に相当する額を負担することを予定。なお、具体的な算定方法については検討中。
○ 国費算定の対象外とする者については、例えば、以下の者を想定。
①一度高校を卒業している生徒
②3年を超えて(定時制・通信制は4年)公立高等学校に在籍している生徒
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