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人を大切にする経営 中小企業調査

中小企業家同友会が、千社を超える会員企業から、大不況の影響と対策を調査している。
【「リーマンショック」から1年、会員企業の影響と対策】あらゆる手段を追求するも、人員削減は優先せず1/14 】 
 人減らしは最終の手段とし、“人を大切に”している状況として、「人件費削減」(6位、11.5%)「人員削減」(8位、9.0%)といずれも上位には入らず、しかも人員削減は人件費削減と比べても後位であることは注目に値する、としている。

大企業が、予防的に、いっせいに派遣切り、雇い止めを実施したのと比べると、中小企業が人を大事にしていること、経営方向としては、①価格競争に巻き込まれず自社商品・サービスならではの価値をみがく取り組み、②社員と経営実態を共有し、ともに前途を切りひらく立場で全社一丸体制を構築していること、で不況に対応している姿が見えてくる。

調査の中身は、昨年の志位さんの講演内容とシンクロしている。

“虚業”でなく“実業”栄える日本に 志位委員長、京都で経済改革語る(講演大要)より
2009年3月7日(土)京都・西陣織会館

日本企業の99・7%、働く労働者の69・4%が中小企業に働いており、日本経済の主役として、4つ役割に光をあてている。
①「利益の最大化」よりも、「雇用の場の確保」、あるいは「社会への貢献」を重視する経営行動をとっている
②中小企業の仕事は、地域経済への波及効果が非常に大きい。
③高いものづくりの技術を持っている。
④経済のみならず、地域社会への責任というのを果している。
として、政治の側がしっかりと位置づけて、本格的な本腰を入れた対策が必要だと、語っている。

【「リーマンショック」から1年、会員企業の影響と対策】あらゆる手段を追求するも、人員削減は優先せず1/14  中同協景況調査(略称「DOR」、2009年7-9月期)オプション項目では2008年9月の「リーマンショック」と世界同時不況の中で、自社への影響をどのようにとらえ、どのような対策をとっているのか会員企業に記述での回答をお願いしました。返信のあった1,033社のうち「影響」には567件、「対策」には536件の回答があり、不況のなかで企業を守る取り組みの貴重な資料となりました。このたび記述内容の分類(複数回答形式)と集約を行い、傾向の把握を試みました。

1 「影響」大不況が中小企業を直撃、需要が激減
1)製造業で大きな影響、全業種に急速に拡大

まず「リーマンショック」の自社への影響についての回答内容を6項目(複数回答形式)に分類しました【図1】。地域経済や業界の一般論的な記述については除外して、自社への影響の具体的記述を扱いました。

仕事量・客数減少、売上減少、客単価の減少の記述をまとめた「需要減少」は実に83.9%に上りました。リーマンショックにより圧倒的に需要が減退し、そのことによる劇的悪化を業種問わず訴えています。業種ごとでは、製造業91.0%、サービス業83.1%、流通商業80.2%、建設業75.8%の順になっており、製造業への影響が深刻であることがうかがえます。

記述でも「お客様の中で自動車関連が多く、大幅な売上減になった(福島・高圧ガス販売)」「客先である大手企業の主力製品が生産量減となった。また、鋼板の生産量も激減し、客先の購買力が大きく低下した(和歌山・機械部品製造)」など、輸出型大企業の減産による直撃的な影響を受けた記述が目を引きました。

需要減少の内容を詳しくみると、「仕事量・客数減少」が最も多く52.3%、「売上減少」25.4%、「客単価の減少」6.1%が続きます。「仕事量・客数減少」では製造業(58.2%)と建設業(52.4%)が多く、経済波及効果が大きい業種がもっとも仕事量が減少している点に深刻さが表れています。「売上減少」では建設業(32.9%)と流通商業(27.9%)が多く、「客単価の減少」では流通商業(7.1%)、サービス業(6.3%)が多いという結果でした。流通商業・サービス業での同業者間価格競争とデフレ化の進行が懸念されます。

地域ごとに「需要減少」を見ると、関東97.9%、近畿87.5%、北陸・中部83.3%、九州・沖縄81.0%、中国・四国77.6%、北海道・東北68.5%の順となっています。一見は関東の高さが目を引きますが、「同業者間競争激化」と「取引先の設備投資延期・中止」の回答は他地域と比べて低い水準となっており、北陸・中部において「同業者間価格競争激化」(6.9%)と「取引先の設備投資延期・中止」(8.8%)がトップとなっていることから、「トヨタショック」の下での北陸・中部地方の深刻さがうかがえます【図2】。

一方、「直接の影響なし」との記述が多かったのは北海道・東北(13.7%)でしたが、「北海道は、リーマンショック以前も景気があまり良くなかった。そこから、リーマンショックにより観光客の減少等の影響が出てきており、我社の顧問先も減少しています(北海道・税理士事務所)」との回答があるように、以前からの深刻な不況が慢性化しているのが現状です。いずれにせよ全業種・地域において仕事量と売上減少の記述は非常に多く、「リーマンショック」と世界同時不況は国内中小企業を直撃し、仕事と売上に大穴をあけたといえます。

2)突然仕事がなくなった

「リーマンショック」以降の需要減少の速さは前代未聞であり、特に製造業において際立っています。DORの売上高DI(前年同期比)は、2008年7~9月期から2009年4~6月期までの間に△18から△55へと37ポイント急落と、DOR開始以来、最速で落ち込みました【図3】。とくに製造業は△13と全業種でもっとも高いポイントだったものが、△64と51ポイントも急落して一気に全業種でもっとも低い水準となりました。

速さだけでなく失われた仕事量も大きなものでした。「2009年1月から仕事量が85%ダウン、4月から90%ダウン(愛知・工作機部品切削加工業)」「2008年11月頃は仕事量が120%あったが12月から10%と落ち込んだ(大阪・機械金属加工業)」など、一瞬にして大きな衝撃を受けたことが読み取れます。

「リーマンショック」以前に景気が良かったのは輸出大企業だけであり、多くの中小企業は消費不況の状況におかれていました。そこにきて「リーマンショック」は中小企業にとって深刻な打撃となり、「急激なために対応が取れなかった(京都・繊維加工業)」「3カ月は対策なし(どこまで落ちるのか予測できず)、2009年2月から損益分岐点を下げる具体策を示して来た(京都・電気工事)」など、当初、茫然(ぼうぜん)自失といった状態におちいる中小企業が広がりました。

3)同業者間価格競争とデフレに拍車かかる

「リーマンショック」は消費不況をさらに深刻化させ、同業者間価格競争とデフレに拍車をかけました。2009年1~3月期以来、DORの中小企業の経営上の問題点は「民間需要の停滞」、「同業者相互の価格競争の激化」が17項目のうち60%を超える2大巨頭として固定しています【図4】。今回の「影響」の記述でも「顧客の節約指向に伴う消費の低迷、高額商品の買い控え、当用買いの進展(北海道・生活雑貨用品卸)」「小売業の売上ダウンが、百貨店、スーパーなど、顕著にあらわれている。我々小型スーパーも前年4~5%ダウン。一方、安売店は大きな伸びを示している。生活防衛へのお客様の努力は、いろいろな店を買い回っているという状況(広島・食品・酒スーパー)」など、消費不況のさらなる深刻化が指摘されています。とりわけ生活に密着した商品・サービスでも消費停滞と低価格化が進行しており、深刻さが表れています。

同業者間価格競争の激化はDOR7~9月期の経営上の問題点から読み取れます。「同業者相互の価格競争の激化」の回答を業種ごとにみると、建設業71.8%、流通商業58.7%、製造業53.3%、サービス業52.5%の順でならび、建設業の高さが目立ちました。今回オプション調査の「影響」の記述でも「不況により延期や廃止等により仕事が減っている。また、大型物件には複数社の価格競争となり、原価割れが当たり前に(北海道・鋼構造物工事)」「仕事量が激減。少ない仕事量を奪い合う競争(愛知・建造物解体工事)」などの記述が見られました。さらに建設業は「政府の政策として、公共事業削減が実施されており、削減に企業努力が追い付かない(北海道・建設コンサルタント)」など、折からの建設不況や公共事業削減も相まった三重苦と言える状況です。

消費不況と同業者間価格競争、デフレの悪循環が進行しており、歯止めをかけ、打開するために迅速かつ確実な政策が求められます。
2 「対策」 あらゆる手段で採算分岐点を下げる
1)経費削減の取り組み

会員企業の「リーマンショック」後の対策の傾向をつかむため回答を13項目に分類しました。集計すると経費削減(1位、24.1%)を重点に、雇用調整助成金の活用(7位、9.5%)、時短・休業(8位、8.7%)が幅広く行われたことがうかがえます【図5】。「雇用調整助成金、雇用安定助成金制度を活用している。現在、毎週月曜は休業、金曜は教育訓練日としている(福島・建設機械部品製造業)」「1.一時帰休実施(週4日稼働と、毎日交替帰休1~2名)。2.雇用調整助成金の受給。3.つなぎ資金導入(運転用)(群馬・金属静電塗装)」など製造工場では「週半分も稼働すればまだまし」といった状況が広がりました。

余った時間を利用した社員教育や技能修練に注力する事例も見られました。「一時帰休、助成金申請、社員教育(4S、5S、外部の安全講習資格取得、技術練磨社内講習…)営業訪問数など増した(兵庫・金型設計製作)」「余った時間の使いかた(マシンの修理、研修、レイアウト変更、受注から製造、納品までの仕組みの再構築、コンピューターシステムの連動や変更追加)。中古機械相場下落→6台購入し、自社で整備し次へ備える(京都・電気工事)」など、将来に積極的に備える記述は多くみられました。

2)人減らしは優先せず

著しい採算悪化に対応するため人件費削減・人員削減にも手をつけざるを得ない状況も浮かび上がりました。「売上額45%減の中で従業員300人→200人へ100人減。(静岡・自動車部品製造)」など大規模な人員削減の事例、「人員の50名以上の削減、原料の値下げなどで今年6月より単月決算で黒字化したが、地獄の苦しみを味わった。もちろん役員報酬の大幅カット、給料の減、ボーナスの大幅カット(愛知・自動車部品製造業)」など苦悩をつづった記述も見受けられました。

しかし同時に人減らしは最終の手段とし、“人を大切に”している状況も浮かび上がりました。「人件費削減」(6位、11.5%)「人員削減」(8位、9.0%)といずれも上位には入らず、しかも人員削減は人件費削減と比べても後位であることは注目に値します。記述の中でも「経費削減対策の実施、役員20~30%、管理職10%、社員5%の給与カットを含む(福島・地質調査、さく井工事)」「人件費30%(社長50%、役員30%、社員10%)等行った(千葉・機械工具卸販売)」と役員報酬削減を先ず行い、その削減比重も役員・管理職がより大きくなっていることは見逃せません。

3)売上を確保する課題

「対策」の上位項目は何かを見ると、いずれも売上を確保する努力でした。顧客・販路開拓(2位、22.8%)、営業強化(3位、14.6%)、新商品・新サービス・新事業展開(4位、14.1%)、商品・サービスの付加価値向上(5位、12.1%)などです。

2008年7~9月から2009年7~9月期の1年3カ月間で「仕事量・客数減少」あるいは「売上減少」と回答していても採算を好転させた企業は56社存在しますが、DOR2009年7~9月期で採算好転理由をみると「売上数量・客数の増加」が63.9%で「人件費の低下」の27.8%を大きく上回っています。「“人には手をつけない”を前提に、不要不急の経費の圧縮。また、営業方法の再教育と訪問頻度の確保(愛知・機械工具の輸入販売)」の記述もあるように、採算好転企業は営業努力も経費削減もありとあらゆる手を尽くしながら、最後まで人員削減には手をつけないことが特徴です。これらの事例は、今回のような突風的不況に見舞われても、耐えて、一定期間の後には反転攻勢できる強靭な経営体質を常日頃から身につける必要性を教えています。

4)今こそ同友会型経営の深化と、中小企業憲章制定運動の前進を

また見方を変えれば今回の不況は、今後の中小企業経営の在り方を鋭く問う機会となりました。記述の中にもそうした主張が見受けられました。「この不況は、我々の業界にとって決して悪い事ばかりではないと思います。限界利益の中でのサービス・技術向上には最高の環境であり、それを追い求め、やり遂げなければ消えなければならないだけですから。成長の絶好のチャンスと考えています(愛知・自動車ガラス販売)」「厳しい経済状況だからこそ、良い人材を採用できると考え、新卒採用に力を入れた。結果として昨年は、応募もなかった大卒技術系社員を2人採用できた(埼玉・電力変電所各種工事)」「企業内訓練の実施・日頃できない高度専門知識の企業教育を実施し、社員1人1人の職業人としての能力を高め、景況回復時1足早く競争力を上げる(広島・ソフトウェア製造)」など、劣悪な経営環境のなかで活路を見極め、自社を鍛えるチャンスとしてとらえる記述も少なからず見受けられました。

すでに多様な取り組みが実践されています。特徴の1つは「価格競争の激化に対して、製品の付加価値を上げる事によって、値下げ競争に巻き込まれないための努力をした。(北海道・昆布巻、佃煮製造)」「新規分野での取組み、新製品への取組み、新顧客への取組みに実行中。価格競争はしない(大阪・光学用硝子生地製造)」など、価格競争に巻き込まれず自社商品・サービスならではの価値をみがく取り組みです。

もう1つは「第3回目の経営指針書の見直しを行ない、前年度達成致しましたので、それ以上の目標を定め、方針、計画を7月に発表し実行に移したばかりです(京都・DM発信代行、メール便・宅配便等発送業務)」「中期経営指針を作り、目的をはっきりさせ、問題点を明確にし、“人を生かす経営”の実践。社内勉強会の定期的な実施(大阪・セキュリティ企画提案・施工)」など、経営指針や経営計画の作成あるいは見直しをはかりながら、社員と経営実態を共有し、ともに前途を切りひらく立場で全社一丸体制を構築していることです。これらは同友会がめざす「自立的で質の高い企業づくり」の実践です。

5)立ち直りの早い企業と経営環境づくり

今回のように突然の不況に見舞われた時こそ、企業力が試されます。あらゆる手を打ち採算分岐点を下げるために、臨機応変に経営計画を見直し、全社あげてこの不況を乗り切る構えをいち早くとったところは売上がいったんは急激に低下しても、1年経ったところでほぼ前年並み位の水準にまで戻しています。ここでは常に経営指針の作成を全社一丸となって行っている企業ほど立ち直りが早いことを示しています。

また日本経済への影響が最も大きかったことは、日本経済の構造が機械器具などの輸出偏重であるという問題を浮き彫りにしました。

だからこそ、中小企業と地域の暮らしが中心となった経済構造への転換をめざした中小企業憲章の制定運動がますます価値あるものとなり、意義を増しています。
「中小企業家しんぶん」 2010年 1月 15日号より

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