「応益負担存続」に厳しい声 障害者団体
「応益負担」が存続することになった予算案について障害者団体が「『障害は自己責任である』とする考え方の転換が図られていない」「全く評価に値しない」と厳しい声をあげている。
【応益負担実質廃止に向けた事項要求の減額に関する見解 日本障害者協議会12/25】
【2010年度予算編成で示された応益負担軽減策についての緊急声明 きょうされん12/24】
この応益負担は、先行する介護保険制度、そして保育制度改革で持ち込まれようとしている公的サービスを解体し、「市場化」する制度の根幹にかかわる部分である。
それだけに応益負担をなくし、障害者自立支援法を廃止することは、すべての社会保障制度の制度設計に影響するきわめて重要なたたかいの結節点となっている。
日本共産党国会議員団が12月に、首相と厚労相に申し入れた緊急要求は以下のとおり
【障害者自立支援法の、一刻も早い廃止に向けた緊急要求」「難病・長期慢性疾患患者にかかわる来年度予算への緊急要求」12/16】
ちなみに310億円の政党助成金を廃止すれば、応益負担は廃止できる。
【応益負担実質廃止に向けた事項要求の減額に関する見解】 2009年12月25日 日本障害者協議会報道等によれば、厚生労働省が障害者自立支援法の応益負担の軽減策として300億円を事項要求としてきたもののうち、110億円しか確保されていないようです。
新政権に期待感を持っていた私たち日本障害者協議会(JD)は、このことに沈痛な想いで、今後の障害者施策について楽観視できない、極めて憂慮すべき事態と認識しています。
厚生労働大臣を始め、政務三役や与党の方々の多くは、私たちの要求を理解され、財務省との折衝をされてきたという御尽力については、感謝の気持ちでいっぱいです。でも、私たちにも生活がかかっています。
私たち日本障害者協議会(JD)は、多くの当事者・関係団体と共に、2005年に成立した障害者自立支援法に対して、多くの問題点を指摘していき、その後撤廃を求め運動を続けてきました。
その大きな理由は、応益負担(定率負担)の導入によって、これまでの障害者施策の考え方を根本的に変えてしまったことです。障害が重ければ重いほど、利用料も高くなってしまうという仕組みは、障害は自己責任であるといっているのと等しいことです。
障害者自立支援法によって、働く場においては、給料よりも実費や利用料の方が多く取られてしまう人たちが多く出てしまい、多くの人たちが、作業所や授産施設を止めていってしまいました。
その後、軽減措置や特別対策などによって、負担は相当減っていきましたが、応益負担の考え方そのものを変えたわけではありませんでした。
そのような中、全国71名の仲間たちが、日本の障害者の代表という形で、障害者自立支援法は憲法で保障する平等権や幸福追求権などに違反するものであるということで、全国14の地裁で提訴に踏み切りました。
私たち日本障害者協議会は、原告の訴えと想いを共有し、「障害者自立支援法の勝利をめざす会」に積極的に参加をし、この裁判を支援していきました。この訴訟と私たちの運動の共通の目標は、障害を自己責任とする障害者自立支援法を廃止させ、“権利”という観点から、制度の谷間のない新しい障害福祉法制度を確立することにあるといってよいでしょう。
今回の110億円の予算確保は、低所得世帯の利用料を無料にするなど、応能負担化への第一歩と見てとれないこともありませんが、私たちが障害者自立支援法の導入時、問題にしてきた自立支援医療や実費負担の問題がそのままになる可能性が極めて高く、障害者自立支援法の根本思想としての「障害は自己責任である」とする考え方の転換が図られていない、と残念ながら見るしかありません。
長妻厚生労働大臣の「障害者自立支援法を廃止し…」の発言は、前政権による市場原理主義による福祉政策との決別を宣言したものと私たちは認識しています。そうした観点に立った時に、今回の予算措置は極めて不十分というしかなく、前政権でも同様の措置が可能であったのではないかと思わせる範囲のことです。
日本障害者協議会(JD)は、障害者自立支援法の真の意味での廃止を求め、新法の制定を強く要望するものです。
そして、その本当の第一歩・証としての応益負担の実質無料化のための事項要求の満額確保を重ねて強く要求するものです。
【2010(平成22)年度予算編成で示された応益負担軽減策についての緊急声明】
2009 年12 月24 日 きょうされん常任理事会12 月23 日、長妻厚生労働大臣と藤井財務大臣の2010 年度当初予算をめぐる折衝において、低所得の障害のある人が福祉サービス利用を無料化するための予算として、約40 万人の対象として110 億円を計上することで合意したと伝えられた。きょうされんは、以下の点でこのことに対して強く抗議するとともに、再度の検討を求めるものである。
第一に、新政権の軸となっている民主党は先の総選挙においてマニフェストに「障害者福祉制度を見直す」ため「400 億円程度」として選挙公約に掲げていた。厚労省は、福祉サービスと自立支援医療、補そう具の低所得者の利用料を無料にするためには300 億円が必要であるとし、きょうされんは応益負担廃止の第一歩として、何としても最低300 億円の予算確保が必要だと訴えてきた。これは言いかえれば、300 億円を来年度予算で確保できるか否かが、応益負担廃止を表明している鳩山内閣の本気度を測るバロメーターでもあったわけだ。それが結果的に110 億円に「値切られた」となると、応益負担廃止そのものが怪しくなったと言っても過言ではない。いくら良い政策を口にしても、予算編成段階でここまでトーンダウンするということは、鳩山内閣の中で障害保健福祉施策の優先順位が極端に低いことの現れとして見ざるを得ない。
第二に、今回は自立支援医療が無料化の対象から外されようとしているわけだが、医療を必要とする障害の重い人ほど、今回の軽減策を受けることができないということになるのである。そもそも、福祉サービスも自立支援医療も補そう具もすべて、障害のある人が地域で暮らすために不可欠な支援なのだから、これら3 つのすべてを負担軽減の対象とすることは当面講じるべき最低限の措置である。また、利用料の月額上限額についても3 つの合算額をもって設定する仕組みは、今回見送られることになりそうであるが、これは、先の旧与党による「自立支援法改正案」より後退するもので、由々しき事態である。
第三に、今回の措置では軽減策が届かない人が相当数、残ることになる。例えば、きょうされん東京支部が2009 年11 月に行った調査では住民税課税世帯は約24%もいるのだが、この人たちは今回の軽減策の対象外となってしまうのだ。また、収入認定の際に配偶者及び未成年者の親の収入が合算されてしまうという不備も残されたままなので、この人たちの負担も軽減されない。今回の措置を「自立支援法廃止に向けた第一歩」などとする向きもあるが、今日明日の生活がかかった上記のような問題を放置したままであり全く評価に値しない。
折しも、障がい者制度改革本部が設置され、新たな法制度についての本格的な検討が始まろうとしている今だからこそ、その出発点である2010 年度当初予算の検討は鳩山内閣の意気込みを示す絶好の機会でもあるはずだ。また、障害者自立支援法訴訟の70 名の原告も300 億円の予算確保を心から願い、その動向について固唾を呑んで見守っていた。こうした中で、負担軽減に必要な300 億円を110 億円にまで減額することは、これまで政府と訴訟団などが重ねてきた検討の到達を突き崩すことになる。鳩山内閣は、原告を始め全国の障害のある人と関係者に与えた希望を落胆に転化させてはならない。
私たちは、今般の大臣折衝の結果について強く抗議すると共に、閣議決定に至っていない現時点にあって「300 億円復活」に一縷の望みを持つものであり、わけても民主党を中心とする政権政党の格段の奮起を求めたい。同時に、マスコミを中心とする広く国民の理解と支援を要請する。
【障害者自立支援法の、一刻も早い廃止に向けた緊急要求】 日本共産党国会議員団
障害者自立支援法の廃止と新たな法制度の制定は、障害者、家族、関係者の切実な願いです。政府は、障害者、家族に過酷な負担と苦しみを押しつけてきた障害者自立支援法を一刻も早く廃止し、障害者が真に人間らしくくらせる法制度を確立するために、全力でとりくむべきです。同時に、この機会に、雇用、年金、所得保障など立ち遅れている日本の障害者施策全般を抜本的に見直すことは、政府に課せられた重要な責務です。国連の障害者権利条約の批准をおこなうためにも前提となる課題です。
日本共産党は、障害者自立支援法廃止後の新たな法制度について、日本国憲法と、国連の障害者権利条約の趣旨にそって、障害者が人間らしく生きる権利を国の責任でしっかりと保障するものとすることを求めています。
日本共産党国会議員団はさる12月9日に「障害者・患者団体との懇談会」を開催し、障害者団体や当事者、家族のみなさんから切実な要望をお聞きしました。新しい法制度についての提案は、すでに昨年12月にしめしていますが(「障害者自立支援法を廃止し、人間らしく生きるための新たな法制度を」08年12月)、今回はその提案と「懇談会」での要望をふまえ、当面する課題にしぼって、その実現をつよく要求するものです。1、来年4月からの緊急対策の実施を
自立支援法廃止は「一刻も早く」というのが障害者、家族の願いです。新政権は「4年以内」としていますが、一日も早く実現すべきです。
同時に、障害者自立支援法の廃止、新法制度の制定を待たず、障害者の苦しみを少しでも軽減するために2010年4月から、次の施策を緊急に講じることを要求します。(1)応益負担を廃止すること――障害者の福祉・医療は本来、無料であるべきですが、当面、応益負担はただちに廃止して、支援費制度時代の応能負担に戻し、住民税非課税世帯は無料とすべきです。そのために、定率1割負担を規定している自立支援法29条の削除をおこなうことを求めます。
(2)給食費など実費負担は廃止すること
(3)報酬の「日額払い」を「月額払い」方式に戻すこと――利用者が希望する場合には、複数の事業所を利用することを妨げない仕組みをつくるべきです。
(4)報酬の大幅引き上げをおこなうこと――障害者事業所の報酬を大幅に増額し、職員の賃金・労働条件の抜本的な改善をはかることを求めます。複雑多岐にわたる加算を本体報酬に組み入れ、底上げをはかるべきです。
(5)障害程度区分認定の抜本的見直し――知的障害や精神障害など障害の特性が正確に反映するしくみにあらためるよう求めます。
(6)小規模作業所と地域活動支援センター問題を解消すること――小規模作業所にたいする自治体補助金の廃止が各地で相次ぎ、一方、地域活動支援センターの国庫補助が低水準であるために、多くの小規模作業所が危機に直面しています。緊急に、地域活動支援センターにたいする補助金を実態に見合った水準に引き上げることを求めます。
(7)サービス対象者の障害者手帳要件を外すこと――新法が制定されるまでの間、障害者手帳要件を緩和し、障害者手帳がない難病等でも、医師の診断書の提出、障害程度区分認定などで要支援であることが確認された場合は、対象とする措置を講じるべきです。(8)その他、第171通常国会(09年)で廃案となった「障害者自立支援法改正案」のなかで、現状の改善に通じるような施策―福祉サービスと補装具負担の合算方式の導入、相談支援の充実、移動支援の義務経費化などは、ただちに実施に移すことを求めます。
2、障害者自立支援法廃止後の新たな法制度の制定は、幅広い障害者の参加のもとに、その声と実態を反映させるよう求めます
障害者、家族、関係者が訴え続けたのが、「私たちぬきに、私たちのことを決めないで」というものでした。この声に応え、新たな法制度の制定は、障害者の参加のもとにおこなうことを徹底的に貫くことが必要です。
政府の「障がい者制度改革推進会議」は、障害者施策にかんするすべての分野が対象とされることからも、「推進会議」の人員構成等は、それに対応できるものとすべきです。また、広く当事者の声を反映させるため、中央、地方で公聴会などをきめ細かに開催すべきです。
政府として、障害者(児)の生活と、事業所経営の状態などについての実態調査をおこなうことも求めます。
【難病・長期慢性疾患患者にかかわる来年度予算への緊急要求】日本共産党国会議員団
日本共産党国会議員団はさる12月9日に「障害者・患者団体との懇談会」を開催し、患者団体や当事者、家族のみなさんから切実な要望を受けました。5000から7000もあるといわれている難病そして長期慢性疾患の患者やその家族は、苦しい病気とたたかいながら医療の負担軽減、内部障害者としての福祉利用、雇用や教育の保障・拡充などを求めています。以下の要望は、最低限の政治の責任が問われているものであり、必ず2010年度予算に反映するよう申し入れるものです。(1)難治性疾患克服研究事業費、特定疾患治療研究事業費、研究奨励分野などの難病対策予算の減額はおこなわないこと。それぞれの事業の対象疾患数を拡大するとともに、研究奨励分野は1年限定とせず来年度以降も研究を継続すること。
(2)未承認薬・適応外薬問題を早期に解決するため、補正予算で執行を停止された開発支援予算を来年度に計上すること。
(3)小児慢性特定疾患患者が20歳以降も医療費助成を受けられるよう、必要な措置を講ずること。
(4)子ども手当の財源として、扶養控除の廃止などが検討され、これによって難病患者等の医療費や税負担が増大しようとしている。病気でも生活でも苦しんでいる患者に負担を押し付ける税制「改正」はおこなわないこと。
(5)「事業仕分け」の対象となった入院時の「食費・居住費」の負担増や漢方薬などの市販類似薬の保険外しは中止すること。
(6)障害の枠に入らない難病患者などについても障害者自立支援法の福祉サービスを利用できるようにすること。
(7)自立支援医療は「応益負担」を廃止し、応能負担に戻すこと。負担上限額は世帯単位ではなく本人所得のみで判定すること。住民税非課税世帯をただちに無料にすること。「重度かつ継続」および育成医療の中間所得層の負担上限をさらに軽減すること。
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