生きづらさの時代の支援/総論 備忘録
住民と自治09.12号「生きづらさの時代の支援を考える」特集の総論部分・・・ 正月で親戚が集まり話していても、子や孫の就職問題・・ 正社員のイスは4人に1人、職に就けるのは2人に1人・・イスが少なすぎる。職につけないのは、自己責任ではない。この呪縛から抜け出すことが、要をなす。
「支援」策に潜む「ズレ」を考える。以下、備忘録
【生きづらさの時代の支援/総論 備忘録】
Ⅰ.総論
▽「支援」の方向はズレていないか
・生きづらい社会の原因は、新自由主義的構造改革が、人々の生活から「溜め」(湯浅誠)を奪ったからというのが大方の見方。
・支援が必要と「ホームレス支援法」(02)、「若者自立挑戦プラン」(03)、「障害者自立支援法」(05)を始め介護支援、子育て支援、家庭教育支援、男女共同参画支援など「構造改革」下で様々な支援が実施された
・それらは、生きづらさを軽減するどころか、深刻なものにしたのは、「支援」が徹底されなかったからではなく、「支援」の方向がずれていないか。
▽どうズレているか
◆「今後の社会保障のあり方について」(06年5月)より
「すべて国民が社会的、経済的、精神的な自立を図る観点から
①自ら働いて自らの生活を支え、自らの健康は自ら維持するという『自助』を基本とし
②これらの生活のリスクを相互に分散する『共助』が補完し
③その上で、自助、共助では対応できない困窮などの状況に対し…受給条件を定めた上で必要な生活保障を行う公的扶助や社会福祉などを『公助』として位置づけることが適切」
◆「自己責任論型支援」
競争社会を自己責任で乗り切ることを基本に、生活リスクを共に支える「新しい公共」を整え、「公助」は、自立にチャレンジできないと行政が認めたものに例外的な処遇、ということ。
→しかし、この結果
・自立を可能にする基盤・条件が奪われている場合、チャレンジしても報われる現実味が著しく持ちにくい場合、「共助」からも排除される。
・そこからこぼれた層は、「意欲がなく、依存するしかない」と「公助」に固定化される。または「自己責任」論、「水際作戦」で「公助」からも排除される。
→ つまり、自立が困難な人ほど支援対象から排除される
◆「個別家族単位の生活自己責任」論
家族を奪われた人の生きづらさは、DV、ホームレスに見られるが、その背景には、早期の援助が妨げられたことがある
→ 出産、育児、教育、就労、介護まで生活のあらゆるリスクがギリギリまで家庭の中に抱え込まざるをえなくなっている。
例)子ども・若者育成支援推進法2条 「とりわけ良好な家庭環境」が重要で、「役割を果たす」べき構成員の筆頭は家庭
→ さらに家庭の責任は、女性に押しつけられることが多く、ジェンダー問題も大きく関与している。
~ 家族をおいつめない家庭支援のあり方を探る視点が必要
◆自立と依存は、対立するものではない。
・尊厳ある暮らしを成り立たせるほどに「依存」(お金で買ったサービス、公共サービス、親族・地域の共同的関係)が可能な人が「自立」している
→ つまり、支援に対し「対価を払えるか」(これが最も大きい!)「すぐに依存関係を解消できそうか」「自立への意欲を持とうとしているか」という価値観が持ち込まれて、そうでない場合は「甘え」とみなされる。
◆生きづらさに応える支援は、上記のような価値観から脱却し、社会からも本人からも「依存」が「甘え」と見られないような形で、暮らしを成り立たせられるほどに包摂的な社会的関係を築くことができる支援
⇒ このことは、社会の有り様、観念を変えていくことが含まれる
▽民主党の政策と「支援」
◆前政権に比して、それなりに「支援」拡大の方向
民主党内部には新自由主義を含む様々な潮流が混在し、どの「顔」が現れるかは政局しだい(メモ者 国民の運動しだい!、と読み替えたい)。政権奪取を発想した各論の積み上げは一貫性、実現性に疑問がのこるが、前政権に比しては、それなりに「支援」の拡大がめざされていると見なされる。
◆2つの危惧
①拡大する支援と財源確保の矛盾が地方に押しつけられる危惧
・「地域主権の確立」として、基礎的自治体に、対応可能なすべての事務事業の権限と財源を大幅に委譲
→ 「地方財源の充実」は「ひもつき補助金廃止」「一括交付金化」を挙げているが、これは自由度を高める問題で見当違い。むしろ「義務付け・枠付け等の見直し」が加われば、自治体サービスは切り下げの方向に向かう
②「支援」の方向のズレの問題が払拭されてない。
・ 母子加算復活、高校授業料実質無償化は、「市場競争に参加する資格を与えるための扶助」として、新自由主義的な社会政策制度として支持されうるもの
・ 「所得税改革の推進」では、累進課税の強化はなく「下への格差拡大を食い止める」(メモ者 つまり上の格差拡大は問題にしない)と、競争秩序は是認
◆よって、どういう支援が真に必要か。「よりまし」を選びつつ、現場から政策体系へ根付かせる創造力がもとめられる。
◆「地方分権」と自治体のあり方にも共通する
基礎自治体が規模と能力を拡大し、都市間競争に生き残りつつ、割り当てられた全ての事務を担う、という方向への「地方分権」という名の支援は、「自己責任論型支援」に他ならない。
また、小規模自治体を、自立をあきらため存在として不利な位置におかれる危惧がある
→ 住民自治にもとづく多様な自治体のあり方を認め、国、その他の自治体が支えることが当然とされる、そういう支援がもう一つの地方分権として構想されてよい。
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