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学力テスト 自治体判断での公表容認へ

 全国一斉学力状況調査の問題を考えると、教育を「商品」ととらえるか「人権」ととらえるか、弱肉強食の国をめざすのか、人と人とが支えあう連帯にもとづく国づくりをめざすのか、という根本問題につきあたるように思う。
【学力テスト:自治体が公表判断 文科省、市町村別集計せず 毎日12/28】
【来年の学力テストは4月20日 文科省、対象1万校を選定 共同12/28】
 新政権のもとでの学力テストの見直しは、その根本のところがはっきりしない。
むしろ抽出率の高さ、希望すれば参加できること、また、市町村教委や学校が独自に集計したデータを公表することを認めるとしている点で、序列化と競争を下から「自発的」に煽る仕掛けになっているように思う。

高知県の抽出率が58%で全国一なのは、「悉皆」にこだわった知事の「成果」でしょうか?

 自治体への申入れなど、新年から積極的な働きかけることが必要だ。

さて、日本の教育のゆがみは、北欧と対比すれば、「毎夕家族がそろう国、そろわない国」「学費のかからない国、『世界一の高額費』の国」「受験競争のあまりない国、つよい国」「保護者、子ども、教職員が運営する学校、トップダウンで運営される学校」に特徴的に現れている。学力については、下位層の増加、勉強嫌いの多さという大きな問題を抱えている—「教育の新しい探求」(日本共産党の文教京委員会責任者の藤森氏の新著)より。 
根本からの議論が必要である。

先の県議会で「悉皆調査による全国学力・学習状況調査の継続を求める意見書」が出された。日本共産党と緑心会のつかじ議員の反対討論は以下のとおり、です。 

【学力テスト:自治体が公表判断 文科省、市町村別集計せず 毎日】 文部科学省は28日、全員対象から抽出方式に変更する来年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の実施要領を公表した。都道府県ごとの学力比較が可能な最低限の抽出率(小学校25%、中学校44%)を設定したことから、比較精度が落ちる市町村ごとの結果は文科省で集計しないこととした。独自に集計したデータを公表するかどうかは自治体の判断に委ねる。  小6と中3の全員参加方式だった今年度まで、市町村や学校ごとのデータも文科省で集計し都道府県教委に提供してきた。都道府県が市町村・学校別データを公表することは実施要領で禁じていたが、大阪府や鳥取県など学力向上を図りたい一部の府県では要領に反して公表してきた。  来年度から学校には児童生徒の結果を返却し各市町村教委には管内抽出対象校の児童生徒の結果を提供する。都道府県教委には全国と都道府県別データのみ提供。都道府県が管内の市町村・学校の結果を知りたければ、市町村に協力を要請して提供を受けなければならない。  市町村教委や学校が独自に集計したデータを公表することは認め、実施要領で▽序列化や過度の競争につながらないようにすること▽情報公開条例などとの関係--などの「配慮事項」を示した。都道府県が市町村・学校別データを集めて公表することも明確には禁じていない。  抽出から漏れた学校も、市町村教委(国私立は法人などの設置者)が希望すれば、問題の提供を受けて利用できる。採点や集計は各市町村教委の責任で行う。抽出分と同様、結果を公表するか、都道府県教委に提供するかなどは各市町村教委が判断する。  文科省は「序列化につながると思えば都道府県は市町村からデータ提供を受けなければいい。地域の実情に応じて判断してほしい」としている。抽出対象校には28日に連絡し、来年1月15日までに希望利用状況を調べる。
【来年の学力テストは4月20日 文科省、対象1万校を選定 共同12/28】  文部科学省は28日、小6と中3の全員対象から抽出方式に変更する来年の全国学力テストを4月20日に行うなどとする実施要領を決定、都道府県教育委員会などに通知した。抽出率約30%に当たる対象小学校5539校、中学校4784校の計1万323校も選んだ。  文科省は都道府県別の調査結果を集計、公表するが、抽出調査となったのを理由に市町村別、学校別の集計はせず、対象校も公表しない。ただ、調査対象となった市町村教委や学校が独自にデータを集計、公表するかどうかは、それぞれの判断に委ねる。  統計上、傾向が分かるよう各都道府県の抽出率を決めた結果、全体の抽出率は約30%となった。このため最高の高知県58%から最低の愛知県15%までばらつきが大きくなっている。  対象外の学校も希望すれば問題用紙が配布され、自己採点は可能。都道府県教委などが希望校をまとめ、来年1月15日までに文科省に回答する。  テストの対象教科はこれまでと同様、国語と算数・数学の2教科で、いずれも知識を問う「A問題」と活用力を問う「B問題」の2種類がある。
【日本共産党と緑心会・つかじさち県議の「悉皆調査による全国学力・学習状況調査の継続を求める意見書」議案に対する反対討論】 今日、格差と貧困の広がりは、こども達の成長と発達にも大きな影を落としています。 平成21年版自殺対策白書で、日本の年間自殺者は11年連続して3万人を越えたこと。そしてその中には5歳から14歳の59人を含む1000人におよぶ生徒・学生がいると報告されています。少なくとも毎日数人の子ども達が自らの命を絶っている。その日本の現実は私たち大人に重大な課題を突きつけています。  こども達が自分自身を愛し人をも愛することができる、将来に夢と希望を持って日々の中で学ぶ意欲をみなぎらせてゆくそんな教育環境、教育条件を作り出すことが教育行政の最も重要な使命です。しかし、本来こども達が生き生きと学び、安心して過ごせる場所であるはずの学校が、差別と選別を繰り返し、過度な競争をあおることでこども達に自信を失わせ、居づらくなる場所となっている現実があり、このことがいじめや暴力行為につながる重大な要因となっていることは誰しも否定できないものとなっています。

 そうした日本の教育の異常さは、国連・こどもの権利委員会の日本についての審査結果でも異例の指摘を受けています。
 1998年に初めて、国連の機関が日本の教育を審査しその所見を報告しました。その所見では「競争の激しい教育制度が締約国(つまり日本)に存在すること、ならびにその結果として子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じていることをふまえ、委員会は、締約国に対し、条約の各条項に照らして、過度のストレスおよび学校忌避(いやがり避けること)を防止しかつそれと闘うために適切な措置を執るよう勧告する」とされています。他国への所見は、教育制度の部分問題への指摘でしたが、日本への所見は、教育の在り方の枠組み自体に問題ありとの勧告という、異例中の異例の勧告となったものです。
 この厳しい所見の根拠に、子どもの権利条約29条の教育の目的があげられています。その第1は「児童の人格、才能並びに精神的および身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」とされており、子どもの成長発達が教育の目的であるというもので、子どもの権利条約の核となる価値観です。この価値観は日本の教育基本法が戦後直後に掲げた「人格の完成」と重なるものでもあります。
 「所見」は、過度の競争的教育制度を作らないことは、「子どもの成長発達」という普遍的な教育条理に直接の根拠を持つ、世界の良識であることを示しているといえます。

 実際、欧米の教育制度は日本と相当異なっています。たとえば、デンマークでは、国民学校の7年生(日本では中学1年生にあたる)が終わるまで、点数がつくテストは行わないこととなっています。「民主主義の基本は人が人として尊重され、自分に自信を持ち、自分の考えを主張できることであると考えられているので、・・・順位や成績をつけるためのテストをしてはならないこととなっている」とデンマークに調査に入った研究者は述べています。他の欧米諸国でも、高校段階での選別を行わない、大学進学もいわゆる「資格試験」方式等をとり、日本のような各大学の学部、学科ごとの入試制度はとらないこととなっています。これに比して「これまでの日本型受験学力は、知識の記憶とパターン化された応用訓練により、一定の高さを維持してきた。受験圧力が高まるほど、『効率的』な知識の記憶と操作訓練が強められる悪循環となり、それが大量の勉強嫌いをつくりだしてきた。そして、勉強は点数をとるための苦役として耐え忍ぶこと、その訓練に耐える人格的な力が将来を保障する、との人間像が蔓延する。知識を使って、自分が直面する課題を解いたり、未知の課題を自分で調べて解決する、本当の意味での自分の生きる道を拓く学力の獲得に日本の教育は、成功していない」。こうした指摘は多くの専門家の共通した意見です。
 こうした状況を総合的に見ることもなく、本意見書は、全国学力・学習状況調査を悉皆で行うことで、世界最高水準の義務教育を実現すると述べています。何とも底の浅い議論といわねばなりません。

 すでに3回悉皆による学力・学習状況調査が行われ、その都度約60億円もの予算が投入されてきました。そして、文部科学省が示したのは、正答率が高い傾向として「算数・数学の問題の解き方がわからないとき、あきらめずにいろいろな方法を考える児童生徒、算数数学の授業で、公式や決まりの理由を理解しようとする児童生徒」「宿題をする」「毎朝朝食を食べる」「家の人に学校の出来事を話している」などというもので、あえて今更巨額をかけて調査する必要がないばかりか、「携帯電話の使い方で家の人との約束を守っている子どもの方が正答率が高い傾向が見られる」などとして徳目を押しつける指導にまで踏み込もうとしています。
 そもそも、教育施策の成果をテストで測定できるのか、テストは学力を反映するのか、学力とは何かという根本問題は置き去りにされたままこれまでの調査が実施されてきました。どのような科学的根拠を持って作成したかも明らかでない学力調査の平均正答率という単純な指標で各都道府県や自治体を競争においたて、各教育委員会は、その調査結果を1点でも引き上げようと、テスト対策ともいえる「学力向上」対策を学校現場に迫り、学校現場でのこども達に向き合った自主的・創造的教育活動の豊かな発展を阻むものとなっています。そのことは、文部科学省が示した調査内容に義務教育を画一化し従わせる手段として用いられていると言っても過言ではありません。 全国47都道府県の公立小中学校の教頭(副校長)約32000名から構成されている全国公立学校教頭会が発行している「学校運営」の07年4月号が「教育と数値目標」という題で特集を組んでいます。その中では「教育目標の数値管理の問題性」、「数値化」を強制する「教育改革」の問題など佐貫浩氏、田中孝彦氏ら名だたる研究者が批判を展開し、警鐘を乱打するものとなっています。現場からの告発ともいえるもので、真剣な検討こそ必要です。

 また、本意見書では、悉皆調査であるからこそ、子ども一人一人の課題が把握でき、高度な分析、検証に関する調査研究も可能になると述べています。しかし、調査結果が返されるのは、テスト実施から4ヶ月も後で、子ども達はすでに小学6年生、中学3年生の2学期を迎えており、課題解決といっても全く意味をなしません。しかも、そうした課題は現場の教職員が全国の一斉テストなどを経なくても、日々の教育実践の中で子どもと向き合い、専門家としての教職員集団とともに検証し、そこに生きているこどもの表情や日常の暮らしに目を向けながら実践を続けており、それでこそ一人一人を大切にした教育活動の基本原理を発揮できるのです。

 今、教育現場に求められるのは、多くの問題を抱えている日本にあって、せめてOECD参加国並みの教育予算を確保し子ども達に向き合う時間を教職員に保障し、学びからの逃避を生み出す排他的競争主義をあおる平均点や順位に振り回される現状を抑制していくことに他なりません。
 イギリスにおいては、日本の全国一斉テストと同様のナショナルテストを実施していましたが、あまりに多くの弊害が生じ、一斉テストをすでに取りやめています。この全国学力学習状況調査は、OECD参加国の国際学力調査結果で日本のいわゆる低学力がクローズアップされたことがその導入の理由とされています。そう考えるなら、他の参加国の教育政策から、日本政府も悉皆テストにこそ解決の道があると思いこんでおられる方々も真摯に学ぶべきことがあると考えます。・
 いま子ども達と学校現場が抱える課題を解決するどころか、教育の自主性・創造性を阻み、子どもも家庭も巻き込みながら競争主義に追い立てる全国一斉学力・学習状況調査の悉皆調査はもとよりその一切の廃止を求め、私の反対討論といたします。

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