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生きづらさの時代 「家庭教育」を問い直す 備忘録

 「住民と自治」09.12号に、特集「生きづらさの時代の支援を考える」から、増山均・早稲田大学文学学術院教授の「『家族教育』を問い直す」の備忘録
フリーライター西川敦子さんのルポと、重なる内容となっている。
・親の「うつ」で施設への入所が急増! 子どもを苦しめる“心の傷”と貧困の連鎖 ダイヤモンド12/25

 同ルポでは「雇用不安、社会不安が高まる今の時代、親たちはさまざまなリスクに取り巻かれている。平穏無事な日常を送っていたはずが、ある日ちょっとしたことで足を踏み外し、子育てができなくなってしまう――そんな“子育て力喪失症”は、今やどんな夫婦にとっても無縁の病気ではない。」と述べている。

【「家族教育」を問い直す  備忘録】
 増山均・早稲田大学文学学術院教授
 
◆子どもの教育・養育責任を構造改革に揺らぐ家庭に押し付ける「家庭教育」支援から
   福祉サービス・社会保障と一体の、地域社会に開かれた家庭の子育て・教育支援を ~

 子どもへの「しつけ」がなされてない、規範意識が教えられていないなど、親の子育て力の低下が指摘され「家族教育」を強めることが重要との流れがある。
 06年「改正」教育基本法は、第10条に新しく「家庭教育」の項目を加え、親及び保護者が「家庭教育」をよって子どもの「生活のために必要な資質」「自立心の育成」「心身の調和のとれた発展」を進めるべきとして、親の第一義的責任を問うている。

 ⇒ 家庭が教育力を発揮するのは、夢や希望を育める日々の暮らしの保障があり、安心した家庭生活を親子がともに楽しんでいく中で培われていくものであり、家庭に対する「福祉サービス・社会保障」と一体でなければ「教育」は効果をあげない。

(1)「家庭教育」政策の背景にあるもの
★しつけ、道徳心の育成、愛国心を強調する「家庭教育」と「家庭基盤」を崩す新自由主義改革は表裏一体
・「美しい国づくり」を叫ぶ安倍内閣による教育基本法「改正」・「家庭教育」条項の新設
  「家庭教育手帳」「早寝早起き朝ごはん—子どもの生活リズム向上ハンドブック」配布
・同時期に、現実ですすんだのは、格差と貧困の拡大、「家庭基盤」の崩れ。
   そのひずみをカバーするのか親の意識改革を迫る「家庭教育」政策

★緊急に求められているのは「家庭基盤」を安定させ「家庭教育力」を高めること
・深刻な家庭の実態~親の労働の不安定になり、医療費が払えない、就学援助の増加、経済的理由による高校・大学の中退など、家庭基盤が急速に崩れ、人生のスタートラインにおける不平等が拡大

(2)家庭の子育て・教育を支える社会保障
★「幸福度世界一」の北欧の手厚い家庭支援と比べ、極めて遅れている日本
・北欧~安心した家庭生活の結果、しつけ・教育がなされる
親に「家庭教育」の責任を求めるのでなく、教育・医療の費用の無償化、親と子が一緒に過ごし「家族責任」を果たせる時間保障により、親子が共に生活を楽しみ、安心した家庭生活の結果、しつけ、教育がなされる

・育児休暇 日本、子ども一歳まで・父親2%  北欧 パパ・クォータ制 90%以上
  ノルウェー 育児休業44週間・給与100%保障、6週間分を父親取得を義務化

・保育 デンマーク 待機児を出すと市長は市民に訴えられるので最優先課題。法定育児休業を父母双方がうまく組合せば、8歳まで育児休暇が可能~社会保障を通じ、親子の絆が深められ、地域の交流が広がる

(3)「家庭教育」とは何かを問い直す
①家庭の「学校化」という歪み
・「教育」の3つの形態
 「定型教育」 建物、教師、教科書が決まっている組織化されたもの。学校教育が典型
 「不定形教育」社会教育の取組みなど。一定組織的だが、場所、回数、指導者の資格も必ずしも明確でない
 「非定型教育」日常生活の場、メディアを通じての学び。図書館で借りた本を通じ学ぶ教育形態など

・家庭教育は「不定形教育」「非定型教育」
  48教育基本法7条は「社会教育」の範疇に「家庭教育」を捕らえていた。

・家庭の教育機能を、学校と同じ「定型教育」としてイメージすると問題が生じる
→家庭の学校化、親の教師化し、親が学校価値を中心に子どもの生活を見るようになり、子育てそのもののまなざしを歪めていく

②「子育て」における家庭の役割は何か
★求められているのは「『教育』の機能を含む家庭における『子育て』のあり方」

~ 家庭だからこそ出来る、家庭でこそ生み出せる子育ての力

・第一の力「養育が生み出す力」
 安心して寝食を共にすること――毎日、気持ちよく寝起きし、元気に学校に通い学び、友達と伸び伸びと交流するための活力の源。今日最も衰退している力。
 福祉サービスの充実と労働政策の強化で、養育に丁寧にかかわるための親の生活のゆとり作ることが急務

・第二の力「自己肯定感の育成の場」
 子どもの居場所となること、自由な空気を吸って生活できることでもたらす自己肯定感の育成にある。/家族に可愛がられ自分自身が好きになる、人間を好きになることが、仲間との交わりを広げる基礎的資質

・第三の力「生活習慣育成の場」
 一日を快適に生活するためのリズムと技術と規律は、親子が毎日、繰り返し取組む中で自然に身についていくことが「しつけ」の内容である。

・第四の力「コミュニケーション能力の育成」
 生活を通じての親子の会話、兄弟姉妹・家族とのかかわりにより、感情を言葉で伝え合い、お互いの考え、価値観を知りあい、人間同士の相互理解を学ぶ

・第五の力「社会的・公共的な行動のあり方と規範意識の育成」
 家庭の私的な関係を基礎にしつつ、家庭から社会へ踏み出す場合のふるまい方を教える必要がある。

・第六の力「生活や労働にむけて基礎的な姿勢を育成する場」
 現代は、家庭が、労働の場でなく、消費の場となっているため、親の働く姿が見えず、労働の知恵・技術や苦労、喜びを伝えにくくなっている 
→家事の分担、地域生活にかかわる仕事の体験、親の労働体験を伝えることを重視する必要がある。

・第七の力「家庭の文化を通じ、遊びや学びへの関心、地域好奇心や意欲を育成する場」
 テレビ、ゲームなど消費文化に流された時間を過ごすのか、自己表現できる文化を獲得し、創造の喜び、学びの楽しさを体験できるかは、子どもの発達にとって大きな違いが生まれる
→親の経済的格差が、家庭の文化的格差を広げ、教育的格差を生み出す社会構造の是正が不可欠

(4)家庭の限界に眼を向け<家庭を地域社会に開く>
★家庭内だけの子育てには、5つの限界がある
①少子化、兄弟数の減少で、異年齢の中で人間関係を学ぶための「集団による練り上げ」が出来にくい。

②核家族化で、祖父母、おじ・おばとの関係などが薄くなり、「多世代とり学びあい」の機会での限界

③家庭は、私的でプライバシーが尊重されるメリットがあるが、様々な人々と共に生きていくための「公的なふるまい方、集団生活のルールを学ぶ」ためには限界があること。

④家庭と学校・地域での子どもの様子は違っていることがあり、他人の見た様子をつかまないと、プラス・マイナスの両面において「子どもの評価」を見誤ること

⑤家庭で身に着けた文化(知識、技術、価値観)を問い直すためには、家庭の外の文化との突合せが必要で、「文化的価値の問い直し」の面で、両者の相互交流・往復の機会が不可欠である

~虐待の増加が示すように、プライバシーが守られる家庭は、密室での悲劇も生まれやすい場でもある。

 ネット、ブログを通じたヴァーチャル空間に開かれた交流も「閉ざされた家庭」になにらない工夫だが、より確かには、保育、学校の保護者会の取り組みへの参加、地域の子育てサークル、社会教育・生涯学習が提供する教室・講座などへの参加も視野にいれたい。
→ 親自身が、子育てしながら支えあい育ちあえるような「家庭を地域社会に開く」子育て支援が求められる。

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Comments

「生き辛さ」これがどういうことなのか、認識している人ははて?どれだけいらっしゃるのか??

子育て、貧困、派遣、福祉、医療、高齢化、みんな格差社会・・・これから・・・政権変わりながら・・・希望あるのか・・・

新しい年を迎えながら????
希望ありますか???・

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