My Photo

« 「財界本位」の保育改革 鳩山「経済対策」に明記 | Main | 後期医療 保険料は年2―7千円増の見込み 高知県 »

保育・給食・介護を一括委託 土佐市・社会福祉事業団構想 

 土佐市が直営で実施している保育、介護施設、学校給食を、非常勤職員の劣悪な状況を改善し、公的責任も明確にするとして社会福祉事業団を立ち上げて、一括委託させる構想をすすめている。
 詳しい内容は把握してないが、大きな流れとしては、関係者の「思い」はどうあろうと、自治体のスリム化、市場化の中に位置づけられるのではないか、と懸念をもっている。

そうしたもとでどう考えるか
①土佐市の財政は「健全財政」が目標かと思われるような状況で、財政的に逼迫しているわけではない。本来は、きちんと正職員を配置して、「公務」に専門性を蓄積するという本筋で対応すべきではないか。ということ。
 財政が健全というのは、それだけで「良い」とは判断ではない。市民生活を守るために、ぎりぎりの運営をすることがそもそも求められている、と思う。

 非常勤職員の問題は、地方自治法、地方公務員法も、自治体業務を「非常勤職員」が担うことを想定してなく、オールジャパンの問題である。
 社会的問題となり、総務省内部でも検討が開始されてる(裁判の敗北続きに、「継続した雇用への期待」をもたせてはならない、という後ろ向きの通知が出されているが)。全国的なたたかいと力をあわせて改善すべき課題だと考える。

 また、非常勤にも一時金を払ったり、専門性の蓄積を評価した上乗せを実施している自治体も存在する。その額は極めて不十分で、個々の自治体での努力も大切と思う。
枚方市の住民訴訟では、「実質常勤と変わらない仕事、労働時間も正規の3/4以上は「常勤の職員」の給与、手当てを適用できると大阪地裁判決が出ている08/10/31。
ただし、「具体的な金額を条例が規則に委任したのは違法」として形式論での敗訴(控訴中)だが・・

参考)203条 非常勤の職員は「報酬」「費用弁償」 204条 常勤の職員は「給料」「手当」を支給できる。よって、非常勤には、報酬しかはらえない。期末手当、退職手当ははらえない、との「解釈」
 
②本当につまった計画か
 公的責任を担保すると、市長が「事業団」のトップをつとめると聞いていますが、それは、三役、議員が関係する会社との請負契約を禁止した地方自治法に抵触するのに、と思っていた。すると、先日、「指定管理者制度」にすると報道されていた。
 指定管理は「契約」でなく行政上の「指定」なので、その縛りがない。だから慌てて「指定管理者制度」に変更したのではないか。
 だだし、それでも民法上の「双方代理」の禁止――委託料を決定する市と受け取る事業団の代表が同じ、に抵触する疑念がある。結局、トップには、市のOBをつけることとなるのでは・・・

 指定管理者制度にしたことで新たな矛盾が出てきた。
 指定管理者制度の対象となる「公けの施設」とは、一般市民が利用する施設のことで、庁舎、研究所、給食センターなど一般市民が利用しない施設は対象とならないはず。よって、指定管理の対象とならないし、別途、事業団と委託契約をしても、双方代理の問題が発生する。

 また、委託先の職員に、市は直接指揮命令できない(責任の所在を明確にし、労働者を保護するため)。今いる市の職員を事業団に出向すると聞いているが、その職員が管理的地位につくと、事業団の指揮命令か市役所からの指揮命令か、わからない状態となり、偽装請負の疑いが濃い状態となる。

③指定管理者は、リストラのツールにつかわれており、市長が替わり、一般公募を実施すれば、大手の自治体関係のサービス提供業者が入ってくる危険があり、そうした枠組みをつくることとなる。

 また、指定管理者は、通常3-5年の契約期間であり、契約が更新し続けるという前提がないので、正職員の配置に適せず、雇用の安定につながるのか。
 さらに契約締結、委託料の予算だけが議会にかかり、議会への報告義務もなく、関与、チェック機能が著しく低下する。

④雇用の安定、給与の改善ができるか
 社会福祉事業団については以前は給与は自治体職員にあわせるとなっていましたが、02年8月の厚生労働省の通知で、その規定がなくなり、「指定管理者制度」導入にあわせた改定がおこなわれてきた。当初の構想段階では、この点がはっきりしてなかったように感じている。
 
 そうしたもとで、委託費についての透明性の確保についてどうか。
 事業団を指定管理者と「直指定」とし随意契約をするとしても、その算定根拠は、個々の事業は、介護保険は、介護の報酬の範囲で事業をする。民間保育園は自治体から出る運営費で実施される。学校給食調理については、交付税算定され、それぞれに、その内容が不十分でも一定の根拠がある。

 地方自治法は、契約の公正、透明、競争性を規定しており、随意契約については、きびしく条件を制限している(これが、良いかどうかは別問題)。

 それを大きく越えるような委託料を随意契約で出すことが、可能か。

 法的根拠として、公契約条例で規定をすれば、または介護・福祉事業者に給与改善として市独自の補助制度をつくり一般施策化し、他の民間事業者も支援すれば可能だと思うが、そうでなければ、住民監査請求・住民訴訟がかかると、持ちこたえられないだろう。
 
 公益法人「改革」の流れとして、独立採算が基本となり、補助金依存型公益法人の解消が目標とされている。公立病院改革ガイドラインなどもその流れであり、よって、直営で担わない限り、一般財源を投入することなどは不可能となり、結局、サービスの低下、ワーキングプアを生み出す危険がある。

⑤問題点解決は、全国のたたかいと力あわせ
 保育、介護・福祉職員の待遇改善、公契約条例の制定、非常勤職員の待遇改善、自治体の市場化反対などの全国的なたたかいと合流しながら、一歩一歩改善していくことが大道だと思う。

 新政権は、介護職員の月4万円の給与改善、非常勤職員の待遇改善をマニフェスト、政策集でかかげており、その実行が大切である。

« 「財界本位」の保育改革 鳩山「経済対策」に明記 | Main | 後期医療 保険料は年2―7千円増の見込み 高知県 »

雇用・労働」カテゴリの記事

地方自治」カテゴリの記事

公務の民営化」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

« 「財界本位」の保育改革 鳩山「経済対策」に明記 | Main | 後期医療 保険料は年2―7千円増の見込み 高知県 »

September 2024
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ