無料低額診療所から見える「貧困」の実態
この10月から高知市内の医療生協・潮江診療所で県下で初めて無料低額診療事業がはじまっている。
つれあいが師長をつとめており、実態をレポートしてもらったが「現代の貧困」の実態が浮かび上がる内容となっている。
◆無料低額診療所から見える「貧困」の実態
10月からの相談件数は20件弱、無料低額診療事業の認定した数は10名超え、重症の事例もあり、医療にかかれてないところで深刻な実態があることがわかってきました。
・60代・男性。今年に入って、めまい、脱力感、息苦しさなど体の不調を自覚し、6月に生活保護の申請が受理されなかった方です。無収入、無保険で、食事は差し入れやカップラーメンなど1日1食で、他はコーヒーや水ですます状態で、身長170cm体重35kg。10割減免で外来にて治療開始、生活保護が先日受理され少しずつ元気になっています。
・20代・男性。母子家庭で以前より喘息があり、2週間ぐらい前に喘息の症状と血痰あったそうです。右目が見えないことが心配で、福祉課へ相談したところ当診を紹介された。収入は母親が稼ぐ月6~10万円で、家賃、国保料とも滞納、預金もほとんど無い状態でした。10割減免にて診察すると、血圧280 /180 重症高血圧、心肥大、心不全、腎不全をおこしている、このままでは命も危険、緊急入院が必要と判断されました。即、福祉課に状況を伝え、生活保護受理の方向を確認し、翌日入院が決まりました。入院当日、母親も診察を受けようとして待合室で倒れ、共に入院となりました。
・40代・男性。2か月前から息苦しさがあり、3~4日前より症状が悪化、起きておれない状態となった。福祉課に電話相談すると、潮江診療所を紹介された。2年ほど契約社員で働いた会社を3月に契約がきれたことで解雇。3カ月間は雇用保険(月7万円)で暮らし、友人の仕事の手伝いなどで月1万円に満たない程度の収入しかない状態だった。預金残高11000円程度だった。10割減免で診察、血圧192/150 心不全にて入院必要と判断、生活保護申請し入院となる。
この事業を行う中で、問題として感じたことは
①仕事を奪われ、仕事が見つからず、収入が途絶えたとき数カ月で極貧状態になっている。
②母子家庭(一人親家庭)が抱える深刻な貧困が見えてきた。子供の貧困が子供の健康と将来の問題までもかかわってくる。子供の貧困の背景に女性の貧困がある。
③高い保険料を頑張って支払ってもいざという時に3割負担が払えないと結局は医療にかかれず、役に立たないという現実がある。
④国保証を持っていても命を守れない社会になっている。
国保法44条にある窓口負担の減額または免除の措置を、今の現実に即したよう実際に利用できるようにしていくことが必要である。
この事業を通じて日常の診療では見えない深刻な実態がわかってきた。私たちのアンテナにかからないところで命にかかわる事態がおこっている。ぎりぎりまでがまんしている。現代の貧困の実態を目のあたりにし、今の私たちの取り組みに確信を深め、今後もネットワークを広げ進めていかなければならない。
◆無料低額診療事業とは・・・
社会福祉法のなかにある「生計困難者のために無料または低額料金で診療を行う」もので、医療の中では診療報酬で一律に料金が決められており、一部負担金はもらわなければならないことになっており、勝手にまけることはできないが、一定の条件にあてはまる医療機関は、届けをだして認定を受けることができる。
無料低額診療の対象の基準は、2通りで、10割減免は世帯所得が生活扶助基準+住宅扶助基準の130%未満、5割減免は世帯所得が生活扶助基準+住宅扶助基準の130%以上150%以下です。減免の決定をするために、世帯収入や保険料、税金などの金額が確認できる資料が必要となる。
(尚、レポートは「新婦人高知市支部」のニュース用に整理したものから)
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