貧困の拡大・連鎖示す 07社会保障実態調査
国立社会保障・人口問題研究所
http://www.ipss.go.jp/
の「2007年社会保障・人口問題基本調査」の結果の概要(12/24)をみとると、貧困と格差の拡大、貧困の連鎖という姿が浮き上がってくる。
・社会保障実態調査:「食料買えない」15%が経験 相対的貧困率と同割合に-07年 毎日12/25
・15%の世帯が「欲しい食料買えなかった…」 社会保障実態調査 産経12/24
以下、調査の概要から ・・・小見出しは「私」
◆貧困の連鎖
本人の学歴との間の関連を見ると(図Ⅲ-1)、男女ともに、「15歳のとき」に生活費用の担い手が「父のみ」であった割合は、学歴が高いほど高くなっている。一方、「15歳のとき」に生活費用の担い手が「本人、配偶者、両方」であった人の割合は、学歴が高いほど低くなっている。
◆一人親家庭 子どもへ援助も低額
18歳未満の子どものための年間支出は、親が有配偶者の場合、男女ともに、「10万円未満」「10万円~20万円未満」「50万~100万未満」とする人の割合が、それぞれ約2割。一方で、「100万円以上」とした人も男性では9.1%、女性では7.6%であった。
離別・死別者の場合は、男女ともに、「10万円~20万円」とする割合がもっとも多く、次に「10万円未満」となっている。有配偶者に比べると、離別・死別者が、18歳未満の子どものために支出する額が少ない傾向がある。
◆一人親家庭で、滞納率が高い
これを世帯タイプ別に見ると(表Ⅳ-5)、電気・ガス・電話・賃貸住宅費・その他債務の5項目については、最も高い割合で未払いがあったのはひとり親世帯(二世代)であり、それぞれ16.2%、17.1%、18.5%、18.4%、25.8%であった。
◆50世帯に1世帯で医療抑制
「健康ではなかったが、いくことができなかった」とした世帯は、全世帯の2.0%となる。いくことができなかった理由では、「自己負担の割合が高い」など経済的な理由が最も多く(38.4%)
◆暮らし向き 10年前より悪化
20歳から69歳の世帯員
・「大変苦しい」が12.5%、「やや苦しい」が24.8%、「普通」が43.5%、「ややゆとりがある」が7.3%、「大変ゆとりがある」が0.9%、無回答が10.9%。
・「10年前の暮らし向き」と「現在の暮らし向き」を比べると「大変苦しい」とした割合は、10年前の6.0%から現在の12.5%へ、「やや苦しい」も15.7%から24.8%へと増加。逆に、「普通」「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」とした割合は、現在の方が減少している。
・現在の暮らし向きの方が良くなったと感じている割合は約12.4%、変化がなかったとする割合は44.4%、悪くなったと感じている割合は31.5%
◆収入 二極化が進行
世帯員の収入の変化について見ると、5年前に比べて収入が「減った」38.9%、10年前に比べて「減った」は40.3%と、収入が減少と回答している人は約4割。一方、「増えた」とする人は、5年前に比べて16.2%、10年前に比べて20.1%。
◆低学歴ほど就業で不利
男女ともに学歴が高いほど就業者率が高くなる傾向。男性では、就業者率は「中学校以下」72.8%、「高校」84.1%、「短大・高専」90.6%、「大学以上」は89.4%。
女性の就業者率は、「中学校以下」48.8%、「高校」60.1%、「短大・高専」65.1%、「大学以上」68.2%。求職者率と求職者を除く無業者率は、学歴が高いほど低くなる傾向にある。
◆ 失業の拡大、失業の固体化
2007年現在で求職中の者で、2006年まで一貫して就業していた者(「3年仕事」の者)の割合は男女計では34.5%、男性では43.2%、女性では29.8%。しかし、求職者の中で、最も多いのは「一貫非就業」であり、男女計で45.4%、男性38.5%、女性49.1%であった。
【社会保障実態調査:「食料買えない」15%が経験 相対的貧困率と同割合に-07年 毎日12/25】
◇1万世帯から回答
過去1年間に経済的理由で必要な食料を買えなかった経験のある世帯が15・6%(07年時点)に達することが24日、国立社会保障・人口問題研究所が初めて実施した社会保障実態調査で分かった。厚生労働省が10月に初公表した相対的貧困率15・7%(06年が対象)と、ほぼ同じ割合。経済的理由などから医療機関に行けなかった世帯も2%あった。調査は07年7月1日現在で実施し、全国の1万766世帯から有効回答を得た。
「過去1年間にお金が足りなくて家族が必要とする食料が買えないことがあったか」を尋ねると、77%は「まったくなかった」と答えたが、よくあった2・5%▽ときどきあった4・5%▽まれにあった8・6%で、計15・6%が食料が買えない事態を経験していた。母子家庭など「一人親世帯・2世代」に限ると、計38・4%が経験していた。
一方、世帯内の人が医療機関に行ったかを尋ねたところ、行かなかった世帯は11・5%。うち「健康ではなかったが行けなかった」のは17・0%で、全世帯の2・0%を占めた。
【15%の世帯が「欲しい食料買えなかった…」 社会保障実態調査 産経12/24】
過去1年間に15・6%の世帯で、食費が足りず欲しい食料を買えなかった経験があることが24日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が行った調査結果で分かった。調査は平成19年7月に行われ、1万766世帯、1万7466人から回答を得た。
調査では、経済的な理由で食料を買えなかった経験について、2・5%の世帯が「よくあった」と回答。「時々あった」「まれにあった」を合わせると15・6%だった。家族構成別にみると、食料を買えなかった経験を持つのは、1人親世帯が38・4%で最も多く、次いで単独高齢男性(65~69歳)の24・7%、単独女性(20~65歳)の20・4%と続いた。
また、「衣服が買えない経験をした」と答えた世帯も20・5%にのぼり、1人親世帯では46・8%が経験したと答えた。
同研究所は「1人親世帯の生活が困窮している傾向が明らかになった。また、高齢の男性には自炊のできない人も多く、食費がかかるのではないか」と分析している。
一方、過去1年間に家族が1人も医療機関に行かなかった世帯は11・5%あったが、このうち「健康ではなかったが行けなかった」と回答した世帯が17・0%あった。理由は、「経済的な問題」が38・4%、「健康保険に入っていないため」が14・2%だった。
また、生活水準の変化を聞いたところ、37・3%の人が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答。「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と答えたのは8・2%だった。
「大変苦しい」と答えた世代・男女別の割合は、40代女性が17・2%、40代男性が16・6%、50代男性が15・7%、60代男性が12・6%-の順で、生活苦を訴える中高年が目立った。
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と、悲痛な訴えをされました。「奥さんのパートと息子さんのアルバイトでこれまでやってきたが、親父としてのプライドさえ失ったこれまでの政治、これを自己責任という人もたくさんいるけど、こういう状況になりたくてなった人間がいるんだろうか。そういうふうに思い込ませたマスコミと政治家の自己責任こそに問題がある」
と、いわれました。
我慢・忍耐のお正月です。
Posted by: うみすずめ | December 26, 2009 07:56 PM