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郵政見直し 1社化・公的形態が核心 備忘録

 高知市でおこなわれた公聴会で、郵政民営化に「配達がおそくなった」「年金の受け渡しが頼めなくなった」などサービス低下を指摘する声が相次いだことが報道されている。
・サービス低下の指摘が相次ぐ=事業見直しで初の地方公聴会-日本郵政 時事12/20
 こうした問題の解決には、民営化・分社化をやめ、金融のユニバーサルサービスを義務づけた一社・公的形態での経営しかない。
 以下は、郵政問題に詳しく、今度も来高している山下正志国会議員秘書の論考の備忘録。
 ジリ貧論、資金の流れ論など民営化を進める「論」の欺瞞がよく分かる内容となっている。

◆郵政民営化をめぐる情勢と改革の基本方向【概要】

1.今日の情勢の特徴—見直しの内容が争点に
 見直しするかどうかではなく、どういう見直しかが問題になる時期に入った。
 連立与党は、臨時国会に、民営化凍結法案とともに、見直しの基本を定めた「郵政改革基本法案」を出す予定だった。与党合意では「速やかに作成し、その成立を図る」となっていたが、2010年の通常国会に先送りされた。その背景には、「三社への再編案」(総務大臣)、「事実上の『再公社化』」(国民新党、社民党)など、与党内での意見対立があったと考えられる。

2.見直しをめぐる3つの基本方向
 鳩山政権は、基本法の先送りのかわりに、10/20に「郵政方針の基本方針」を閣議決定した。
日本共産党の立場は、①郵政ネットワークで提供されてているサービスを生活に不可欠なサービスと義務づけ、全国にあまねく提供する ②そのために三事業一体の運営を堅持し、利権を許さない公的な事業として再生する
、というもの。
 閣議決定は、“郵貯、簡保をユニバーサルサービスと法的に担保できる措置を講じる”としたのは当然だが、経営形態は、再編成の具体にはふれず「株式会社」とすることだけ明記されたことは重大な問題。これで与党内に4分社化をどう見直すかの一致点がないことがあきらかになった。
 この事態を受け日本共産党は、国会質疑で見直しの3つの基本方向を提起した。①郵貯と簡保のユニバーサルサービスの復活 ②1社体制にもどすこと ③株式会社でなく、公共の福祉の増進を目的とした公社形態に見直すこと。

3.公的事業体―― 公社形態への見直しこそ、見直しの核心
 公共事業体による1社化体制こそ、民営化によるサービス低下の現状からも、理論的にも、国民本位の見直しの基本方向となるもの。
なぜか。ユニバーサルサービスの確保の点では政府と方向は一致している。民営化で、ユニバーサルサービスの義務づけがなくなった。もうからない地域から撤退することが可能となった。将来にわたり基礎的な金融サービスを保障することはできない。民営化の見直しの第一がこの点になるのは当然だか、問題は、それにふさわしい経営形態の見直しがセットで行われること。
そもそも金融のユニバーサルサービスの義務と利潤追求の株式会社は両立できない。もうからない地域から撤退できないと利潤追求はできない。日経新聞も「公益・収益 両立難しく」との見出しで報じたのは象徴的。この矛盾の解決は、ユニバーサルサービスを義務づけするなら政府が責任を負う、公的事業体にすること。この見直しはワンセット。

4.4分社化の1社体制への見直しも、ワンセットの見直し
 4分社化の1社体制への見直しも、ユニバーサルサービスの義務付け、公社形態への見直しとワンセット。持ち株会社、郵便事業会社、郵便局会社を統合することは、既定の事実となっているが、問題は、金融二社も含めた1社化を行えるかどうか。
 なぜか。民営化による分社化の核心は、郵貯、簡保を切り離す点にあった。ユニバーサルサービスの義務付けをなくし、利潤追求する株式会社にする。株式会社になれば、同一の条件での競争が求められる。銀行などの金融事業は、リスク遮断のため自ら事業を行うことが禁止されているので、分社化が必要となった。政府との関係も断ち切ることが必要となった。郵貯、簡保だけ政府の後ろ盾のある有利な条件は許されない。郵政民営化が、金融二社の分社化の形態をとったのは、民間金融機関のルールに従った必然の結果だった。
 公社形態の見直しは、金融二社を分社化する必然性そのものがなくなる。なにより4分社化によるサービスの低下が1社化への見直しを求めている。

5.サービスの後退が求める民営化、分社化の見直し
 国民が見直しを求める直接のきっかけはサービスの低下。民営化でサービスが向上するという宣伝の大嘘が明らかになった。
 全国郵便局長会が2月に実施したアンケートで浮き彫りになっている。サービスの低下にたいする苦情が7割近い郵便局に寄せられている。その内容は、証明・書類が複雑92.5%、手数料値上げ46.7%。複雑化は、民間銀行並みの規制が適用され。値上げは、収入印紙税が課税されることになったから。
 ワンストップで行われていたサービスが分社化でズタズタにされた。アンケートで連携が低下したは13-30%、よくなったは数%。

6.繰り返される郵貯破たん論
 中途半端な見直し論が出てくる背景に、民営化論への屈服がある。あらためてその欺瞞を明らかにしたい。
・郵政事業「ジリ貧」論、「破たん」論。例えば「郵政見直しで国民負担1兆円」(VOICE09.12号)、国会でもみんなの党の柿沢衆院議員が「民営化をおこない、事業を多角化しないと将来破たんする」と。
 が、この「論」は05年の郵政国会で決着済み。当時、竹中大臣が「ジリ貧」を正当化するため「骨格経営試算」を実施したが、破たんが証明されるどころか公社経営の優位性が明らかになった。「骨格経営試算」では、民営化すれば、10年後に600億円の赤字、公社形態では1382億円の黒字となることを日本共産党が暴露した。民営化による新規事業は別途計算することになっているため、公社形態の法が、預金保険料のコスト負担がない分だけ利益がおおくなる。民営化による新規事業で利益を出せば、赤字転落は避けられるかもしれないが、公社形態は、新規事業がなくても黒字経営。じり貧論、破たん論も成立しないことは明白。

7.虚妄の「官から民」への資金の流れ
 「官から民」への資金が流れるという俗論も以前からある。最近も日経が「郵貯が再び『政府の財布』となる危険」との社説で「官から民へと資金の流れを変える民営化が『官業化』へ逆走」と書いている。
 この論を公的に証明しようとする試みが経済諮問会議(03年1月30日)で民間4議員の提出した「日本経済の低迷と資金循環」。図表では、90年と2001年の比較で、家計から郵貯・簡保などへ資金の流れは270兆円から560兆円と大幅に増加している。民間金融機関から企業への貸付と株式等を通じた資金の流れは、それぞれ412兆円から326兆円、329兆円、246兆円と減少している。
問題は原因。「官業」が原因とは民間議員も主張できない。本当の原因は、民間需要の萎縮。民間議員の提出した資料にも「民間需要の萎縮、民間の貯蓄増加が拡大。貯蓄もリスク回避で安全な資産に。公的部門経由の資金が急増」と書いている。経済自体が活性化すれば、資金の流れは変わる。結果と原因を取り違えた逆立ちしたもの。
次に、05年の郵政国会に現れた。経済財政諮問会議(05年6月1日)の「資金の流れの変化について」という資料。家計資産に占める官のシェアが03年26%から2017年に5%に減るというもの。このもとの論文は、郵政の民営化が前提。郵貯が民になれば、その分、民のシェアが増えるのは当然の話。しかも、その論文は、郵貯が民になっても、肝心の民間金融機関から企業への「貸出しのシェアは15%から16%への微増にとどまるだろう」と変化のないことを認めている。その理由を「公債残高が増え、そのために民間金融機関が資金供給をせざるを得ない」からとしている。圧倒的に政府が資金不足になっているので、企業への貸出しが増えないということ。
ここでの理論的に正しい結論は、経済の活性化に加えて、財政の健全化によって、資金の流れが変わるということに他ならない。「資金の流れ」論の本質は、構造改革路線による経済失政や財政破たんの原因と責任を覆い隠す役割を果たしている。

8.郵政民営化の国民本位の見直しにむけたたたかい
 民営化によるサービスの低下の現状、「ジリ貧」論や「資金の流れ」論の欺瞞は、民営化論の中心点での破たんを意味する。 民営化のメリットと宣伝されたのは ①サービス向上 ②「ジリ貧」の打開 ③資金の流れによる経済活性化、だから。
国民本位の見直しは、民営化の現状と理論破たんの深い総括にもとづく3つの基本方向以外にないが、情勢は、その方向に向かっているとは言えない。1月から始まる通常国会には「郵政改革基本法案」が提出されるが、労働者、国民の運動にかかっている。

【サービス低下の指摘が相次ぐ=事業見直しで初の地方公聴会-日本郵政 時事12/20】  日本郵政は20日、地方の利用者らから意見や要望を聴く公聴会を高知市で開催した。公聴会は、鳩山政権が検討している郵政事業の新たな展開や組織再編などについて会社としての考え方をまとめるのが目的で、今回が初開催。これまでの民営化路線での4分社化などに伴い、サービスが低下したとの指摘が相次いだ。  参加した利用者は「民営化してからポストの集配回数が減り、配達も明らかに遅くなっている」「分社化されて配達の局員に年金の受け渡しを頼めなくなった」などと不満が続出した。郵便局の現場からも「利用者に不便をかけている」などの見解が相次いだ。
 

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Comments

法務局は統廃合が進み、総数は減少しています。
証明書交付窓口は民間委託されています。
また、商業登記は、集中化が進んでいます。オンライン化が進み、法務局が多少近くになくてもいいだろうということなのでしょうか。
ただ、一般の方が法務局を訪れるのは相談があるときや、相続登記をするため等、そう多いことではありません。いつも利用する司法書士はともかく、一般の方は必要に迫られたときに訪れます。そんなときに法務局が近くにないのでは不便ではないでしょうか?
それに、オンライン登記をするには、それなりの設備が必要で、1回だけの登記のために、そんなことをする人は、まずいません。
オンライン化により、一般の方がより利用しやすくなるはずが、逆に登記をするには司法書士を介さなければ出来ない様になってしまっているのではないでしょうか?
せめて、登記事項証明書や会社の代表者の印鑑証明書の取得は、オンラインで法務局と郵便局のシステムを接続して、郵便局の窓口で取得できるような方法を模索すべきではないかと思います。
今のままでは、国民の利便性向上のために行ったはずのオンライン化が、国民の不利益につながってしまい、失敗に終わる懸念を持っています。早急な改善が必要ではないでしょうか?

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