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地域資源を活かした内需型産業振興と地域再生政策 備忘録

 吉田敬一・駒沢大教授(自治と分権 09秋)による「地域資源を活かした内需型産業振興と地域再生政策」の備忘録。
 世界同時不況とともに破綻した外需依存の経済体制から、持続可能な国民経済の柱は、振興内需型産業振興である。それには地域の歴史・風土を徹底して生かした文化型の産業が重要であり、それは、記憶に残る街づくりであり、担い手は、中小商工業と農林漁業と述べている。
 自治体政策の基本視点を示していると思う。

【地域資源を活かした内需型産業振興と地域再生政策】  
      吉田敬一・駒沢大教授(自治と分権 09秋)
◆はじめに
・大企業のグローバル循環型の新たな利潤蓄積構造のもと、雇用の8割を占める地域は疲弊を深め、貧困と格差の拡大を内容した「地獄のサイクル」が生み出されている。その元での地域再生の基本的方向を提示

・一部の輸出大企業依存した経済構造
 07年の輸出に占める割合 一般機械と電気機械40%、自動車21%
 産業の鉱工業生産に占める割合48.4% /アメリカ20.8% /しかもアメリカ市場向けが大きい
 とりわけ自動車は素材、部品の国内調達率が高い 94.5% /アメリカ66.6%

・金融恐慌に端を発した世界同時不況の諸矛盾が、中小企業に集中。「総崩れの状況」(中小企業白書09年)

◆持続可能な国民経済への構造転換の基本課題
・日本経済の課題 / 戦後の悲願~キャッチアップを、特定業種・特定輸出先に特化した経済構想を、
「グローバリゼーションを歴史的必然として位置づけた上で」
「持続可能な経済の建設」であり、それと一体化した「日本的特色に彩られた豊かな社会づくり」

・政策の基本方向 
  国民経済の土台である「地域密着型中小企業」「農林漁業」の重点的振興による「内需主導型経済」への転換

・中心課題~内需産業の担い手は誰か / 国民の最終消費需要であるが
   国内生産物への需要 → 経済活性化
   輸入品(逆輸入)の需要→ 国民経済は疲弊。大企業の利益は増大

 ⇒「内需産業の主な担い手は、国民に雇用と所得を提供する地域密着型企業でないと、国民経済・地域経済の自立性・自律性は達成されない」

・一国の産業構造の2つのタイプ
(1)人間の生命・生活の維持に必要な財・サービスの提供に関わる産業
     例)衣食住関連、環境・福祉産業 
  → これらの産業は、民族・地域の歴史性、気象条件、資源分布など地域特性に強く規定される
 *「文化型産業」として特徴づけられる。
  → 欧州諸国のように、地域資源、地域生活文化に依拠するため、国民経済ないしは地域経済を土台とし、経済循環・再投資力が基本となる分野 ~ 「豊かな社会の必要条件(土台)

(2)生活の利便性。快適性の向上に資する財・サービス 
    例)自動車、家電など人間の手足や五感の機能拡大に結びつく。
  → 科学技術の成果の全面的活用に起因する
 *「文明型産業」として位置づけられる
  → 機能面において、民族性、地域性を越えた普遍性を持つ。経済成長に大きく貢献
   その消費は先進国への仲間入りの指標 ~「豊かな社会の十分条件(上部構造)」
   ・・・素材調達・加工・組み立て・販売に関し、基本的にグローバリゼーションのシンボル企業

・競争力強化の源泉/ 2つのタイプの産業に共通する「2つの対極的方向」
①本質的な機能の高度化(ほんもの思考)を基礎に、感性的・芸術的な付加価値のレベルアップ
*「非価格競争」の重視 (本質的機能追求型)
 →使い尽くし型、使い継ぎ型のものが多く、資源・環境面では、持続可能な社会を支える経済基盤の本流を形成
 *重視する力は / 個性的で創造力・想像力のある人材と技術・熟練、地域固有の資源
  ~ 「地域密着型経営スタイル」を基本とするので、多様な層の人間が定住できる雇用と所得を形成
   例) 地場産業、農林漁業、商店街の重視するドイツ、イタリアの都市
 ・安定した個性的なコミュニティ

・オリジナリティを持った柔軟な企業間ネットワーク
  → 地域内での経済循環と地域内再投資が活発化、経済の自立・自律性が高まる
 *少なくとも目指すもの/ 衣食住では「地産・地商・地消」型の再構築
     ~ 大型店(「地産・地消」の運動に含まれる)は、地域経済進行に結びつかない
 
②海外生産に軸足を置いた「価格破壊指向型」の方向 ~ 渡り鳥的な立地戦略
   → 地域経済の自立性・自律性が衰弱化。コミュニティの空洞化
   → 環境・資源の点で/ 早期のモデルチェンジ、「使い捨て型」という問題

・日本経済の問題
①文明型産業の肥大化と文化型産業の疲弊というアンバランス

②文化型、文明型産業を問わず「とりわけ、内需の主流を占める文化型の生活必需品産業において地域に根ざした本質的機能追求型の経営が駆逐され、コストダウン偏重のグローバル戦略にもとづく価格破壊指向型の大企業が内需の担い手、経済活性化の旗手として前面に押し出されていることにある」

◆日本的生活文化の土台となる地域経済と中小企業
・豊かな社会を支える経済的十分条件を構成するのは、暮らしに直結する衣食住産業
 ~ 個性豊かな社会(ドイツ、フランス、イタリア、スイス、スウェーデンなど)では、固有の文化・伝統を踏まえ、徹底的に民族性・地域性を大切にしたモノづくりと流通システムが地域に根ざした中小企業によって保持されている分野
 →徹底的に民族性・地域性に特化した高級品であることによって、高度な国際性をもつ分野

・欧米の先進国と違う日本の特徴
①衣
和服…機能的ではないが、自己実現・自己表現に最適なもの、体重変化にも融通がきく
  時間的なゆとりのある社会では、「機能面」の弱点は消え去り、和服の個性を発揮できる

②食
五味に加え「旨味」という独特の味覚表現  南北に長く多様な自然条件に恵まれた条件による。
「目で味合う」という食文化 ~ 料理やお茶の作法まで文化に昇華

③住
木と土の文化~ 低温乾燥、高温多湿という四季の大きな気象条件の変化による

◆持続的な地域づくりの基盤としての文化型産業の現状と展望
・文化型産業の疲弊化の現状
①食料自給率 カロリー40%、穀物30%以下
  純輸入世界一(第二位から五位までの合計額に匹敵)
  ~エネルギーの浪費、他国の水資源の略奪(国内利用量900億㎥、外国から640億㎥輸入)
 *長野県川上村の実践~持続可能な農村の構築

②住宅関連産業
 富山県 年間消費される木材の9割が外材、ハウスメーカー使用の8割が外材
 日本固有の建築方式を軽視した法整備
   建築基準法では、職人、大工棟梁についてなんら触れていない。
 家の洋風化が、家具・調度品の洋風化 ~ 地場産業の衰退/中国からの輸入
 *山形工房 フェラーリなど手がけたデザイナー 一本14万円のコート賭け
    先進国にとって時代は、量産量販から質産質販へ 
    和のトレンドを世界に発信する地場産業の構築が地域再生のキーワード

③繊維
 繊維製品出荷額 90年代初13兆円→05年 4.6兆円 輸入浸透率34%→77%へ

・地場産業がコスト重視の政策の下で海外依存・移転が進んだ結果
→ 生活文化の画一化がすすみ、文化型産業の文明化が、地域密着型経営を駆逐

◆記憶を消し去る街づくり VS 記憶を重ねる街づくり
・昨今の街づくりが、子どもの成長、高齢者のふれあいと安らぎを感じられる生活空間であるか・・・

・問題点~ 地域の公的空間を効率性、経済性偏重の観点で捉え、歴史的な町並みを規格化された空間へ建て替え、安易に地名変更を行うなど「記憶を消し去る街づくり」が中心
 →都市空間が「消耗品」として扱われている―― 地域の文化、雰囲気の断絶、地域密着型の工務店、小売店の存立基盤がさらに崩壊する危険

・文明は断絶と飛躍、文化は連続性と成熟が特徴 →日本の地域文化が危機に瀕している

・商店街、自営業の急速な疲弊 →地域内経済循環でも、大型店より優れている
 04年アメリカ シカゴのアンダーソンウィン地区の調査 
 1ドル消費 地元商店73セントの波及効果 大型店・チェーン店43セント
 ~実際上は、二次、三次波及効果はもっと大きくなる

・大型店 雇用者が少ない、利益は本部に送金、地元からの仕入れず少ない、地域行事への参加少ない

・持続可能な地域内経済循環力を強める街づくりを再考する
①歩いて楽しく暮らせる街、記憶に残る街づくり
街の規模が人間の身の丈にあい、コミュニティ形成の基盤となる/安心感、生きがいにつながる

②歩いて暮らすことで、市民が街を自分のものと認識
移動の途中の出来事に関心が生まれる ~歴史的景観をまもるためには、歩いて暮らせるような街づくりを支える都市空間の利便性・計画性の確保が必要 

③昼夜を問わず歩いて暮らせる。安全・安心の街

・記憶を消し去る街、「消耗品」としての街づくりでは、消耗品としての人間しか育ちようがない 
 ⇔記憶を重ねる街づくりは成熟志向で、安定した持続可能な地域経済基盤が形成されやすい
  例)長野県小布施町、大分県湯布院

・先進国の中で日本だけが自営業が激減
 自営業者は、労働と生活の場が一体化した24時間市民、地域コミュニティのコアになる経営
 → よって、その衰退は、コミュニティ機能の空洞化に重要な要因
 *所得税法56条(家族の労賃を認めない)は、地域密着型の事業継承に否定的作用
    /多くの先進国は、家族の賃金は必要経費と認めている
 → 憲法25条の一翼を担う課題、まちづくりに関わる課題

◆むすびにかえて
・内需型産業の根幹を形成する「文化型産業分野」の再評価・再認識と地域に根付いた発展は、日本独自の文化的トレンドを発信するものであるがゆえに、逆に国際的な評価を高める方向に作用すると考えられる。

・真の国際化とは・・・
 生産の高度化(外への国際化)と、徹底した民族性・文化性に特化した個性を社会経済的に形づくる面(内なる国際化)を兼ね備えたときに達成される。

・豊かだが幸福だったか、という問に直面している社会から「豊かで幸せな生活を地域において、どう構築するか」が21世紀の課題
 → その経済基盤は、中小商工業と農林漁業 ~ 地域に根ざした経営体だからこそ、地域特性に根ざした記憶を重ねる街づくりに兆戦できる。

・内需主導型の経済は、国づくり、地域づくりのあり方を抜きにしては考えられない
 → その最の重要課題
 ①地方自治の本旨にもとづく地方自治の再構築
 ②中小企業憲章策定や自治体の中小企業振興基本条例の制定などの運動の成長
 

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