次世代育成計画~人生はじめの社会保障としての保育所
浅井春夫氏の「社会保障と保育は『子どもの貧困』にどう応えるか」から「次世代育成支援地域行動計画(後期)の策定に向けての課題」についての備忘録
「人生はじめの社会保障」としての保育所の役割が大事である。阿部彩さんの「子どもの貧困」の中でも、日本版ヘッドスタートとしての役割を保育所が担うことを提言している。
その保育所の最低基準をなくすことは、地方行政には「便利」でも、真に子どものためになるのか・・・
以下、「次世代育成支援地域行動計画(後期)の策定に向けての課題」 備忘録
【次世代育成支援地域行動計画(後期)の策定に向けての課題】
はじめに ― 計画策定で問われているものは何か
09年度は、前期のまとめと後期計画づくりの本格論議の年
①住民サイドからの政策提言を
②保育制度改革の先取り的方向が示される危険性
公民比率の逆転する事態。その流れの加速 → 前期以上に民営化計画の危険
③子どもの貧困への対策
1 計画策定の基本的スタンス
・住民参加 「市町村は、市町村計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」(8条の3)
★計画策定のポイント
実は、策定時間は限定されている 「指針」の改正案08年8月、「計画策定指針」09年3月3日
・総括の視点と到達点 ~ 前進面を評価し、未達成の原因を明らかにする
・ニーズ、実態調査 ~
「市町村は、サービス利用者の意向及び生活実態を把握し、サービスの量的及び質的なニーズを把握した上で市町村行動計画を策定するために、サービス対象者に対するニーズ調査を行うことが望ましい」(「行動計画策定指針」/次世代法7条1)
~すでに国は「就学前児童票」案、「就学児童票」案を提示。それによる委託調査が進んでいる
⇒ 自治体や民間の関係団体の調査を集約し、参考資料とさせる
必要な調査を、関係団体で実施も検討(個人や団体から聞き取りなどの質的調査)
・分析
特に待機児童問題、子育て支援ニーズの地域特性の把握は不可欠/ 現状認識の共通化
・定量的目標の設定
まず必要な事業量を設定させる。「行動計画」は自治体への答申的な位置づけということであり、
すぐ実施されることが前提ではない。そのうえで、どのように実施できるかを数値化する。
~ 「指針」改定案 「潜在的需要を踏まえたサービス量の把握」「女性の就業希望の実現に伴う潜在的需要を踏まえた中長期のサービス必要量を把握する」
⇒ どのように「ニーズ調査」を実施するかがポイント
・基本理念の確認
推進主体として「養育責任は、第一義的に保護者」として曖昧にされているが
国、自治体、企業、地域社会をふく「社会全体で協力して取り組むべき課題」(策定指針)
⇒ この「協力」をどのように形成するかを計画の柱にする
また「基本理念」は、地域の特性にあわせ設定することが認められている(留意事項)
~ ①条件整備の公的責任を明記し確認する
②行政の姿勢を明示する
③目標設定の基礎
④住民への問題提起の側面を持つ
・優先すべき施策を共通認識にする
その場合、予算措置をともなうものは、行政担当者はためらう傾向がある!
また、公立保育所の民営化などは“必要なサービス量”とは関係ない話で、入れるべきでない
2.策定のベースとなる「子ども観と保育観」について
①政策づくりの基本的観点
・自治体全体の政策/子どもの行動圏、保護者の子育て圏 を基本にして策定する
つまり、地域、ブロック政策が必要になる
・現物給付と現金給付の組み合わせ政策
現金給付では、就学援助の基準、父子手当ての創設(全国11自治体で創設)
・「人生はじめの社会保障」としての政策づくり ~ 子どもの貧困の克服
②子ども観と、発達の特性に発達過程の視点を整理する必要、乳幼児の権利(国連子どもの権利委員会報告書05年)の視点
*抜粋「乳幼児は条約に掲げられたすべての権利の保有者である。乳幼児は、特別な保護措置の対象とされ、かつ、その発達しつつある能力にしたがって自己の権利を漸進的に行使する資格を有する」
「出生から8歳までの時期を、乳幼児期の適当な作業定義として提案する」
「乳幼児期を、未熟な人間が成熟したおとなの地位へと向かっていく社会化の時期としてもっぱらとらえる、伝統的考え方からの転換が必要である。条約は、もっとも幼い子どもを含む子どもが人としてありのままに尊重されることを要求している。乳幼児は、独自の関心、興味および視点を持った、家族、コミュニティおよび社会の積極的構成員として認められるべきである。乳幼児は、その権利を行使するために、身体面の養育、情緒面のケアおよび配慮のこもった指導、ならびに、社会的遊び、探求および学習のための時間および空間を特別に必要とする。これらの要件を満たすための計画は、乳幼児期を対象とした法律、政策およびプログラムの枠組みのなかでこそ、最善の形で行なえるものである。」
③保育・子育て観
・保育の目的/自己肯定感をはぐくむ、主体的に生きる力を養う
・保護者、保育者、地域住民の共同の取り組みとして位置づける
・保育、子育ては地域づくりの視点
・子どものしあわせ、希望づくりが保育、子育て観に問われている
④保育所像をどう描くか
・子育ての拠点。地域における子育て機能をどう持つか。ベテラン保育士の役割
・地域の子育てネットワークの要として計画を検討する
・専門職と保護者が体等に子育てを語る場としての意義
・公立保育所がなぜ必要性かの合意づくり /これまでの役割と今後の発展方向
3.保育・子育て支援における地方自治体・保育所の役割
①「計画」の内容と推進に関して、地方自治体の役割をどう位置づけるかが大きな分岐点
行政の政策推進における位置づけの明示/地方自治法 自治体の役割「住民の福祉の増進」
例)「幼稚園や企業の活用等により、待機児対策をすすめる」とかなっている計画もある。
②保育所の役割をどう位置づけるかが分岐点
・子どもの権利条約18条「親の第一次的養育責任と国の援助」は「親及び法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与え、かつ、子どものケアのための機関、施設及びサービスの発展を確保する」と、親をバックアップに「財前の努力を払う」ことが明記されている。
・児童福祉法24条 「保育に欠ける児童を保育しなければならない」と自治体に公的責任
・これらを踏まえて、政策方向を検討すること~ 最近の政策理念は、法的規定を片隅においやって、政権の政策方針が優先されている現実がある。/政策理念の法的規定を踏まえること
③それぞれの子ども関連の条例を踏まえて検討する
4.次世代育成支援政策の柱をどう規定するか
(1)子育てに対する経済的支援
・児童手当の上乗せ ・家庭保育手当て(一人働き世帯への支援)・離婚家庭における養育費の立替
・一人親の援助(父子家庭の排除なくす) ・税上の優遇措置 ・育休中の所得保障
(2)子育てとしごとの両立支援
・育休の父親割り当て(パパクォータ制) ・勤務時間の短縮 ・介護休暇の実施状況
(3)保育・子育て支援
~根幹に位置づけるべきは、保育所施策と地域の子育て支援策
①待機児童が多いところでは、公立、認可保育所の増設/企業参入の規制
②地域子育て支援センターの適正な設置(中学校、小学校区)
③認可外施設の認可化事業の具体化
④保育時間の拡大
⑤保育料の軽減措置の改善
⑥多様な保育ニーズの整理と対応策――障害児、夜間、一次、病児・病後児など
⑦職員配置の最低基準の改善
5.本気で子育て先進自治体にするために
~ 求められるのは、本気で実現すべき施策を検討する姿勢
・特別財政対策をとらす ・子育ての拠点としての保育所の充実策を根本に据える(職員の条件整備)
・子ども施策評価委員会の設置(施策推進のPDCAサイクル)
・子どもの権利オンブズマン制度の創設~運営、問題点にすぐに対応できるシステム
・保育の「質」向上委員会(現場保育士、園長、保護者、研究者、行政など)の創設
・自治体での子どもの権利条例の策定
6.緊急課題に対する提案
①耐震化の推進
②医療費の無料化/国保三割負担に対する軽減策
③待機児童解消
④その他 多様な保育に対応するための保育士プール制(かつての京都市)
保育園の図書の整備、お出かけ用バスと運転手の確保
フィンランドの「赤ちゃんキット」プレゼントなどなど
7.今後のとりくみで具体化すべき課題
①これまでの調査結果を生かしきること―― 行政のリストの一覧をつくる
②中間まとめ、中間報告会の開催~ 住民参加の推進
③報告書策定へ運動団体が自ら分担執筆する。意見集約、公報、そして最終報告へ
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