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高知県の建設業 /メモ

 建設政策研究所の
国土交通省「建設産業政策2007~大転換期の構造改革~」に対する見解」(07年8月)
機関誌「建設政策」09年9月号に掲載された7月の高知市の調査のレポート
5月の「建設産業フォーラム2009」の提言
を導きの糸に、高知県の状況にも触れながら、少し整理してみた。

主要点は「過剰供給論」には根拠がない。建設業はものづくりの地域産業。インフラの維持・補修の役割と担い手育成などの視点から、大型開発から生活密着への転換をしめしている。

1.大きく減っている建設投資
◆高知県の公共工事の資本金別受注金額  01―07度比較
・県全体     
 2005億円→ 820億円  59.1%減    全国平均44%減
資本金1~3千万円クラス
  951億円→ 333億円  65.0%減
・市町村から受注する公共工事
 217億円→ 141億円  72.7%減    全国平均50%減
うち資本金3千万円未満クラス
 292.5億円→71億9500万円 約76%減
 ~ きびしい状況に対し、方向性を明確にした振興策が早急に求めてられている。

◆高知市・ランク別発注実績 (百万円)
  2001年 構成比 2006年 構成比 2008年 構成比 08/01比
総計 30239   17214   10241   33.87
共同体 8431 27.88 5626 32.68 2192 21.40 26.00
A級 9247 30.58 3030 17.60 2567 25.07 27.76
B級 4612 15.25 2987 17.35 1577 15.40 34.19
C級 4047 13.38 2734 15.88 1673 16.34 41.34
D級 1278 4.23 1323 7.69 1184 11.56 92.64
 ・資本金3000万円未満は、主にCDクラス

2.政府の「過剰供給」論には、根拠がない。
◆事業所数が減らないのは、小規模・零細業者は、減っていないから
・全国的な傾向(1996年―2004年 中分類)
・事業所数は、64万7千件から56万4千件へと、8万3千件(12.8%)の減少にとどまっている。
・それは、1~4人、5~9人規模の事業所数の減少が7.0%および11.9%と少なかったためである。
・10~19人規模の事業所では事業所数は、21.3%の減少。20人以上の規模の事業所では、建設投資の減少に匹敵する3~4割の減少率。
・従業員数も、特に20人以上規模の事業所において、3~4割の減少を示している。
・1~4人の事業所は、この間に2万2千件の減少にとどまっているが、2001‐04年だけで、廃業は4万1千件、新規開業が2万4千件であり、「再編・淘汰」は相当に進んでいることがうかがえる。
(高知県 96-99年 9人以下の事業所は166減だが、新設233件、廃業431件にのぼっている)
・したがって、建設業者はすでに大きく「再編・淘汰」されてきているのが事業所・企業統計が示す実態である。

(高知の現状)
・9人以下   事業所数で91.88%、従業員数で89.95%
・20人以上  事業所数で51.45%、従業員数で50.94%

◆過剰供給は「選択と集中」、低価格受給競争の結果
零細事業所の供給構造における位置は、完工高で見れば、全体のごくわずかに過ぎず、これらの事業所が過剰供給構造を生み出している、ということは言えない。
「政策2007」の添付資料中には、約30万社の中小・零細建設業者は、年間完工高が100万円未満である。
約30万社全体で、完工高は3000億円に未満であり、52兆円の建設投資全体の0.6%を超えていない。
・この零細建設業者における事業所数の減少が相対的に少なくなっていることは、重層下請構造が末端に向かって拡大させられてきた結果と考えられる。つまり、事業所数の減少がわずかにとどまっていることは、低価格受注競争政策の結果を示しているのである。
・過剰供給の元凶は、都市部への「選択と集中」とりわけスーパーゼネコン5社で07年度の建築投資見通し31兆2800億円の16.8%を独占している、ことにある。

◆高知の建設事業者の1―9人規模の事業所で10838人で 全従業員の39.64%、19人以下では、18189人で66.53%を占める。つまり、9人以下、19人以下の事業所が元請となれる地域に密着した住民生活に関連する公共事業を優先して発注していく政策が、地域建設産業振興政策とも適合的である。
・つまり、政府の公共投資の方向性が、「過剰」を作り出していると言える。
・国土交通省の試算でも、インフラの維持・補修費が今後増え続け、新たな投資は大きく減少する。長寿命化修繕計画にみられるような「メンテナンス」の重視が大事。

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3.地域産業としての建設業
◆建設業がそもそも地域産業いう規定を与えられる理由
①地域の自然、歴史、文化等に詳しく、社会的、歴史的知識とそれらの特性を総合的に踏まえた経験を引き継ぎながら、建設物生産を組織的にまとめ上げる産業である

②生産システムの上からは、地域建設業は何よりも各種の専門工事業種およびそれらを担う専門職業能力を持つ技能者・技術者が分業体制を取りながら、地域社会の中に集積し、集積による低い生産コストで事業実施を可能にする。それは断続的に発生する工事が必要な都度、計画的に協業体制を柔軟に構築できる特殊な生産体制を提供する

③そこでの事業者、働く労働者は、工事の態様・規模にかかわる生産システムを構築・支援するとともに、具体的に①と②とを結合する個別生産の方式を取ることに適応できる

④建設業のこうした発展経緯とその到達能力から、地域における災害時には防災システムを担ない得る、という点にある。

 それがゆえに、建設業が地域産業と呼ばれるのである。

・地域建設業を持続させる産業政策は、建設産業自体に限定された方策が必要である。さらに、現代の地域建設業政策には、地域が有する限られた自然や環境、人々の歴史に刻まれた叡智の結集を図ることはもとより、産業振興には地域文化の展開、景観の継承と新たな形成、地域に存する資源の多元的活用など、経済、生活、文化などを総合的に活性化する政策視点が不可欠である。

・この点で、生活密着型の事業とともに、林業、農業、環境産業との連携が大事となる。

・県の産業振興計画は「転出」が基本であり、維持・補修、改良を中心とした今後の公共投資の方向と結びついた、建設業の育成、または後継者、若手技術者の不足をどう克服いるか、の視点が極めて希薄。

◆人材/ 高知県独立行政法人雇用・能力開発機構運営協議会・議事概要より 20年3月
「ものづくり分野としての建設業では、鉄筋、型枠の高年齢化が非常に進んでいる。今すぐは高齢者が溢れているが、数年先は空白ができる。躯体関係の職人が不足となるだろう。この分野は建設業ですら把握していない。建設業という大きな枠で人材ニーズを考えるのではなく、小さな枠で調査をして業界が必要とする人材ニーズに合った訓練をすることが必要である。」

・「魅力ある職場」「将来を見通せる産業」にしなくては、地域から「ものづくり」の力を失うこととなる。
・人材難の大きな原因に、低価格入札や生計費を基準にしない設計労務単価の問題がある。

4 「建設産業フォーラム2009」 
★2009.6.16 「森田実の言わねばならぬ」より転載

『日刊建設工業新聞』2009年6月9日号に、去る5月28日に千葉・幕張メッセで行われた「建設産業フォーラム2009」の模様と私(森田実)の講演要旨が掲載された。以下、同紙編集部の難波悠氏の報告である。

【1】総括的報告
《「壊れはじめたインフラ・あなたの街は大丈夫か?~国の責任で地域再生を~」。そうしたテーマで今後の公共事業や建設業のあり方を考える「建設産業フォーラム2009」が5月28日、千葉市の幕張メッセで開かれた。国土交通省全建設労働組合(全建労)などが主催。全国の道路や橋梁をはじめとした公共施設が整備後40~50年という「高齢化」を迎えるのを前に、公共施設の「老朽化」やこれに伴う地方経済の衰退を防ぐため、計画的・戦略的な維持管理・補修の実行や地方建設産業の活性化の重要性を訴えた。記念講演を行った政治評論家の森田実氏は「日本を守っていくには建設業の活性化が必要だ。建設業を希望を持って入って来られる産業にしなければならない」と主張した。(編集部・難波悠)》

【2】基調報告と問題提起
《フォーラムでは全建労の葛西政策委員長が「安全・安心を守る『防災・維持管理』を―― 建設産業の必要性等の政策について」と題して講演。建設産業の労働条件の向上につながる政策として、労働協約締結・公契約法の制定、入札契約制度の改革、建設労働者・中小建設業者を保護する建設行政への転換、新たな建設業法の制定を訴えていく考えを示した。

 国土技術政策総合研究所の玉越隆史道路構造物管理研究室長は、高齢化する橋梁など土木インフラの現状と、技術面の課題などを指摘。特に地方自治体が管理する構造物について、定期点検の不足、技術者の教育・経験不足、長期的予測技術の不足などを課題として挙げ、今後の技術開発の方向性を示した。
 山形県でダム工事の下請を中心に事業を行っている拓芯工建の遠藤強氏は、労務単価が下がり続け、労働者の生活が脅かされている現状を訴えた。

 フォーフムでは最後に、▽インフラ施設を守る「基準」と「予算」づくりを国の責任で行うこと▽公共事業を「財界の大規模開発型」から「国民の生活密着型」へ転換すること▽防災とインフラの守り手である「建設技能者」を守り育成すること▽インフラ施設に対する「公共サービス」には国と自治体が責任を持つこと―を盛り込んだ。「地域の守り手『建設産業』の再生に向けた提言」をまとめた。》

【3】森田実講演要旨――公共事業が日本を救う〈公共事業で内需拡大せよ! 建設産業を希望持てる産業に!〉
《「国家の実力は地方に存する」と言われるのに、現在の国の施策は、国民の9割が住む地方をないがしろにして、1割が住む東京だけに偏重している。地方分権には税源移譲が不可欠だ。これまで税源を移譲しなかったことで地方は疲弊した。このまま分権をしたら地方は死ぬ。日本がどう生きていくべきか議論する必要がある。
 日本社会は公共と民間の活動が調和した混合経済が機能していたのに、「官から民へ」の政策や財政改革、自由競争偏重で崩壊した。日本はこの30年間、高い授業料を払ったにもかかわらず、方向転換ができていない。
 日本の失業率は算出基準をそろえると欧米同様に高く、しかも就労者の3分の1はワーキングプアで生活を脅かされている。国が公共事業によって雇用を確保すべきだ。財政赤字を理由とした反論があるだろうが、金融資産を含めて経常債務を比較すれば、日本の借金率は他国に比べて著しく悪いわけではない。全体を見ずに一部の数字だけで批判するのは不誠実で、その上に立った「バラマキ」批判はおかしい。
 政治の目的は、戦争や独立の喪失、失業、大インフレ、犯罪社会、無政府状態といった最悪事態の回避にある。日本人が蓄積した資産を、米国の国債引き受けなどに使わず、日本のために使うには内需拡大しかない。 建設産業も人手不足が深刻だ。補正予算が成立しても、就労者不足が課題になる。新型インフルエンザの大流行に備えるのと同様に、必ず来る地震に対して社会の免疫性を高める必要がある。災害時の復旧には国・地方の努力も重要だが、地域の建設業者の力が欠かせない。地域の建設業者がこんなに弱くなった社会は危ない。公共事業(に関する従来)の方針を変えなくてはいけない。
 佐賀では、大学と建設業協会が連携して、建設業に希望を持ってもらおうとフォーフムや塾を実施している。そういう運動を全国で起こしていかなければならない。今は日本人の多くがあきらめかけている。日本を守っていくには、内需産業である建設業を、若者が希望を持って入って来られる産業にすることが重要だ。》

【地域の守り手『建設産業』の再生に向けた提言】

 「建設産業フォーラム2009」は、「壊れはじめたインフラ・あなたの街は大丈夫か?~国の責任で地域再生を~」をテーマに、5月28日、幕張メッセにおいて、753名の参加で開催した。
フォーラムでは、①地域の建設産業は「建設投資の急激な減少」と「ダンピング受注の横行」などにより倒産が相次ぐなど深刻な状況にあり、建設技能者の継承維持も困難な状況にあること。②道路橋、河川管理施設、下水道管路、港湾岸壁などのインフラ施設は、建設後50 年を迎えて老朽化しており、放置するならば、国民生活に大きな支障をきたす深刻な状況にあること。③地域の防災・災害復旧とインフラ施設の維持管理で建設会社が重要な役割を担っていること。④そして「財源なき地方分権」によって、国の責任が放棄されようとしていることを確認した。

 米国の金融危機に端を発した世界同時不況の中で、公共事業による内需拡大の気運が高まり、政府は、大型補正予算も含めた財政出動をすすめているが、その事業の多くが「財界の求める大規模開発事業」であり、大手ゼネコン向けの公共事業である。
私たち実行委員会11 団体は、国民の安全・安心を確保するためにも、地域の守り手である「建設産業」の再生に向けて、次のとおり提言する。

・提言1 インフラ施設を守る「基準」と「予算」を、国の責任で行うこと。
 すべての国民が安全・安心に暮らせるように、道路橋や下水道などのインフラ施設を守るために計画的な「維持管理・点検・補修」を行う「基準の制定」と「必要な予算と人材」を確保すること。
このことは、憲法第22 条及び第25 条の「国民の自由と権利」であり、第13 条により「国の責任」で行うこと。「国の責任」を放棄し、地方自治体に押し付ける「地方分権」は行わないこと。

・提言2 公共事業を「財界の大規模開発型」から「国民の生活密着型」へ転換すること。
 景気対策・内需拡大として行う公共事業は、地域の建設会社を通じて地域経済にまわるように、インフラ施設のメンテナンスや自然再生エネルギー施設など「生活密着型」へ転換すること。
当面、景気回復を目的に、財界が求める「大規模開発型事業」を一時中断して、中小建設会社の経営の安定と建設技能者の労働条件改善に結びつく「緊急雇用対策事業」を地方に創出すること。

・提言3 防災とインフラの守り手である「建設技能者」を守り育成すること。
災害列島の日本で地域の建設技能者は、防災の面からも災害復旧の面からも「地域の守り手」であり、インフラ施設を補修できる「お医者さん」である。インフラ点検、地質・機械・通信などの建設関連技能者も含め、行政・経営者・労働組合が協同し「技能者育成システム」を構築すること。
そして、建設技能者の人材確保と育成のために、建設会社の安定的な経営を保障する入札契約制度の改善をめざし、当面、元請企業に対し①ダンピング受注の禁止、②下請企業に地元企業の採用、③建設技能者賃金からのピンハネ禁止、④建設業退職金制度の完全適用を求める。

・提言4 インフラ施設に対する「公共サービス」は、国と自治体が責任を持つこと。
インフラ施設の「維持管理・点検・補修」は、公共サービスです。今国会で成立した「公共サービス基本法」に基づいて、防災体制に組み込まれている運転手の業務委託や下水道管路の一括業務委託などの民営化を行わず、公共サービスは、国と自治体が責任を持って実施すること。公共サービスの実施機関は、インフラ施設の特性を踏まえ、国と地方の効率的な役割分担で行うこと。
以上 提言する。

2009 年5 月28 日 建設産業フォーラム2009 実行委員会
(実行委員長 永山 利和・建設政策研究所理事長、建設政策研究所、生活関連公共事業推進連絡会議、建設関係労働組合首都圏共闘会議、全日本建設交運一般労働組合、全運輸省港湾建設労働組合、国土交通省全建設労働組合、他 )

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