「私たちの街からゴミを減らす」 岩佐恵美 備忘論
昨日に続いて、ゴミ手数料有料化問題・・・を考えるうえで、日本共産党の国会議員として、ゴミ・環境問題に長く取り組んできた岩佐さんの最新の著書からの備忘録。
昨日紹介した熊本氏の著作は、汚染循環社会の現状と、それは拡大生産者責任によってしか転換できないことをテーマとしてつきだしており、岩佐さんの著作は、自治体のゴミ・リサイクル行政の現状から問題点と運動論も含め提起している。視点が立体的にひろがり、教えられることが多い。
【「考えててみませんか? ゴミ問題」 岩佐恵美 09.7】
◆ゴミの焼却と温室効果ガス
・現在 産廃4億1850万トン 一廃5204万ドン 多くが焼却・埋め立て
温室効果ガス 年13億4千万トン → ゴミの焼却量、ゴミの量そのものを減らすことが重要
・温室効果ガスの実態 廃棄物分野4481万トン(06年) 全体の3.3%
うち二酸化炭素は、90年比で49%増 2270万トン→3380万トン
増加の原因は、プラスチックゴミの焼却量の増加
・食品残渣 年2100万トン(06年)、約半分1100万トンが食品産業から。
リサイクル率が低く、1500万トンが捨てられ、燃やされている
・韓国 5万人以上の市で、すべての生ゴミは飼料化・堆肥化、バイオ利用を義務化。全国で92%の資源化
◆日本のゴミは出し放題
・ゴミの発生抑制でなく、焼却によって減らす方針 (廃棄物を技術的対応で「解決」する)
焼却率 85年に70%越え 06年77.7%/ドイツ25%、オランダ32%、フランス34%
①大型ゴミ処理施設の建設 ~ ダイオキシン対策を名目に、「大型化」「最新鋭化」
・大型化 ~そもそも燃やすゴミが大量にあることが前提/発生抑制に結びつかない
建設の借金、ゴミ不足で運営費の負担増
・もやすゴミが足りない
「循環型社会形成推進基本法」2000年 /適正処理・リサイクル優先 → 資源の有効活用へ転換
リサイクル率 96年10% → 06年19.6% /燃やすゴミの減少
全国の焼却炉の処理能力 19万トン/日 ―― 実際のゴミ量 10万トン/日
~ 焼却炉の縮小/東京、横浜 ⇔ 一方で、対策として、廃プラスチックを燃やす方向転換
・広域化計画のおしつけ ~ ゴミ問題を住民から遠い問題にした。
②焼却炉メーカーの談合と住民側の勝利
③自治体にのしかかる巨額の経費負担
・ある2つの自治体の事務組合(11万人)
144億の事業。起債84億。年8億円を越える元利償還、運営コスト年10億など20億円の出費
・能力過剰の対応で、産廃も処理可能に /経済界の「あわせ産廃」の要求、財政難の自治体
しかし、産廃の排出者責任のあいまい化、また企業秘密にされる産廃の有害物質
◆大型ゴミ処理施設の実態
・国による灰溶融炉のおしつけ ~焼却灰、飛灰の嵩を小さくし、最終処分場の負担を減らす、との理由
・愛知県東海市の爆発事故 通常では考えられない「超高温」の作業にともなう危険
灰溶融炉 コークス代など維持費3億円、運営委託2.7億円、事故による費用負担と・・・
青森県下北、青森県弘前地区、千葉県流山市、静岡市沼上での爆発事故
~ 未熟な技術であり危険
灰溶融炉… 平均出費年9億円、「ノミ退治をするため核兵器を使うような大げさな装置」
・ごみ固形化燃料 ゴミを加工してゴミを作り出す欠陥商品(詳細・略)
・自治体のお荷物となった各種のモデル事業(詳細・略)
・破綻した従来のゴミ行政 ~ 発生抑制と資源分別による回収リサイクルの徹底を
◆プラスチックゴミは燃やしていい?
①ごみの焼却とダイオキシン汚染
・ダイオキシンの発生は、焼却からが9割(大型化も大気から土壌、水への汚染場所の移行)
・しかも、カドミウム、亜鉛、クロム、水銀、砒素など金属、プラスチックに含まれる可塑剤、安定剤、難燃剤、防カビ剤などは、ほとんど規制されない。/測定もダイオキシン、一酸化炭素など数種類
・ダイオキシン検査は、年一回当事者の手で実施
・性能を高めても大量に燃やせば、発生量増える ~ 国会でも「都市部では廃棄物の発生量が多く、高くなっていると推測される」と答弁
②プラスチックゴミ全量焼却の問題点 /東京23区の半分で実施
・環境省 05年5月 基本方針を改定
~ 廃プラスチックは、発生抑制、再生利用を促進し、埋め立てでなく熱回収
しかし、順位は ①発生抑制 ②再生利用 が優先、それがなせ東京で全量焼却となったか・・・
・焼却炉の過剰能力が背景に ~ 分別・資源化によるゴミ減量に逆行
・温暖化、環境への懸念~ 大気汚染、ヒートアイランド現象(超高層ビル乱立の影響も・・)
重金属、化学物質の排出 / 炉の高温化による焼却炉の痛み~クリンカー(こびりつき)
◆リサイクルをめぐる課題
①容器包装リサイクル法の制定
・大量生産、大量消費をそのままにした「大量リサイクル」の矛盾
・家庭ゴミのうち容器包装ゴミの割合/容量で6割、重量で2割 しかも年々増加
自治体にとっては、嵩ばるものが多く、収集・運搬に経費がかかり、最終埋立地不足を加速
・容器包装リサイクル法 1995年制定 /目的…再資源化によりゴミ減量、資源の有効活用
特徴は、製造・利用事業者が責任を負うことを初めて明記/分別・消費者、収集・市町村、再商品化・企業
一般廃棄物のリサイクル率は、97年の11%から、19.6%へ大きく伸びた
②さらに増えたペットボトルごみ
・リサイクル率はあがったが、ゴミ排出量は減らず/焼却・埋め立ては減ったが容器包装ゴミが急増した
リターナブル容器が大幅減、ワンウェイ容器が急増/使い捨てのペットボトルが36.1%増
・原因 ペットボトル~ 容リ法以前に禁止されていた1ℓ未満を解禁
生産量は、95―06年で3.8倍、ゴミとして捨てられる量は3割増加
・自治体にとって、規制緩和と容リ法で、処理すべきゴミが増えた
リターナブル容器は、事業者が回収、洗浄、再利用したが、容リ法で「使い捨て容器」の収集、運搬、保管の処理作業・経費は自治体が肩代わりしてくれ、安上がりとなった。
③リサイクルで自治体が貧乏になる
・自治体のリサイクル費用の急増~ ゴミの急増、負担割合が自治体に重い(名古屋市調査 行政75%)
環境省試算 自治体の資源化費用 年3000億円、管理部門含めると4236億円
再商品化の事業者負担456億円(06年) /全費用の1割弱
・再商品化費用を負担している事業主の大半は大規模事業者 容リ法を「有効活用」し利潤を増やした
・自治体と住民が、ゴミを減らそうと資源化の努力をすれば、自治体負担が増え、資源化意欲を削ぐ
・資金拠出制度~05年「容リ法」改正 企業の引き取る「その他プラスチック」の状態の向上を徹底
容リ協会が、自治体が再資源化のために持ち込む「その他プら」について分別、汚れ度を判定し、きれいなものだけ引き取る ~ きれいの基準、拠出金の配分などはまったく未定
→ 「その他プラ」の分別の進展/再商品化される量の増加/企業の再商品化費用の9割が「その他プラ」/そこでランク付けが考え出された/ ランクづけを厳しくすれば焼却が増え、企業負担が減少
・一方、自治体では燃やすものが足りない。リサイクル費用もかかる → 面倒だから燃やせ!となる。
* ドイツ ワンウェイ容器にデポジットを導入し、リターナブル容器に誘導
④徹底した分別・リサイクルの取り組み
・名古屋市 分別の徹底 98-200年で23%減 現在3割減、焼却量21%減、埋立て62%減
資源化率25%
・横浜市 ゴミ削減計画「ゴミ30」38%減 一般廃棄物の64%を占める家庭ゴミで32.8%、事業系で46.8%
ア、分別を5分別7品目→10分別15品目 発生抑制にも寄与と当局
イ、事業者に、減量・資源化計画提出を義務づけ、市が立ち入り調査し条例にもとづく指導。
ウ、資源化可能なプラスチック、金属くず、ゴムくず、木くず、瓶・缶などの持込禁止
焼却場でチェック~ 05年、15万台以上をチェック
・和歌山市 有料化計画を撤回/低い資源化率の改善などの根本からの改革へ転換
ア. 組成分析の公表
イ.生ゴミ減量~電動生ゴミ処理機の活用、水切り、生ゴミに紙・布を混入しない
かつらぎ町 家庭ゴミ「ギューと絞って1千万円」のとりくみ
橋本市「生ゴミ堆肥化・減量化集団実施奨励金」(コンポスト、電動処理の購入補助。生ゴミ収集を週2回か1回へ。年1200円の奨励金)。30%の区で実施、1千万円の節約
ウ、事業系ごみ減量・リサイクル促進/計画書提出、組成分析公表、CO2削減目標を設定する
長野市 多量排出事業者減量計画 9割の事業者か提出
資源分別・リサイクルの提案 集団回収を実施し財政効率を高める、7分別の拡大
→ 思い切った減量ができれば、焼却炉の建替えは不要になる。
◆ゴミ処理手数料の有料化を考える
環境省 05年改正の「基本的な指針」で「経済的インセンティブ」で減量化をはかる
①有料化でゴミは減ったか
・ある住民「お金を払えばいくらでも出せる。節約する人は、ゴミを細かくして一杯につめるだけ」
・よく例に出される日野市 有料化とともに、分別を徹底、個別収集を開始、資源ごみステーションを大幅増加させて減量化させている。その日野市でも2年後にリバウンドで、あらたな対策が必要となった。
また不法投棄のパトロールで1500万円。スーパーは汚れたトレイ回収が増え、パートを雇う
・八王子市でもリバウンド、
②自覚と自主性を高める方向で
・有料化しなくてもゴミ減少できる方法はいらでもある。
説明会をするなら、行政の「有料化」の結論おしつけでなく「知恵と工夫」を組織する努力を
例)「排出量に対する負担の公平」というなら一定量まで無料にし、削減の努力を促す。余った分は、トイレットペーパーなどと交換できるようにすると、インセンティブがはたらく
③ごみ有料化の本音は財政問題
・国は、大型炉推進、容リ法での自治体負担増など「金くいゴミ行政」にした責任をとるべき。自治体の自主性にきかせ、おしつけるべきだはない。
・「ゴミをおおもとから減らしていく」という基本に立った対策を。
◆事業系ごみはどうなっているか
・一般域物 排出量内訳(集団回収306万トン除く)
生活系3316万トン(64%)、事業系1582万トン(36%)/06年
スーパー、商店街、商業施設、官庁、学校、一般事務所など・・まちの様相でゴミの構成割合が違う
・ゴミ減量には、事業系ごみの対策が必要。ごみの性格、実態をよくつかんだ取り組みがいる
家庭ゴミは分別・リサイクルで減っているが、事業系ごみが増加し続けているなど…
例)横浜市 焼却される家庭系ごみ、事業系ごみの組成を毎年分析し対応策を決めている
大規模事業者への立入り調査1036事業所、搬入検査での指導79、搬入物検査15万2314台
名古屋市 事業系ごみ・資源の状況を調査し公表04年
~ 内容が明らかになれば、対策がとりやすくなる
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