核廃絶 アメリカに変化を強いる世界人民のたたかい
核廃絶へ世界が大きく動いている。妨害者だったアメリカにチェンジを強いたのは世界の人民のたたかい、世界の構造的な変化である――先日、平和委員会青年部の「ピースエッグ」が高知県で開催された。そこで「激しく遊び、激しく学ぶ」の石川先生の講演の平和問題のところの話をベースに、他資料も含め備忘録的に整理。
①アメリカにチェンジを促す世界の変化
・世界の変化がアメリカのオバマを後押ししている。
・09年7月、アメリカが東南アジア友好条約(TAC)署名、第1条「締結国は国民の間の永久の平和、永遠の友好及び協力を促進する」第二条「武力による威嚇又は武力の行使の放棄」
~永遠に戦争しないという約束、そこにアジア、EU27か国、アメリカと世界人口の6-7割が参加。
・100年前 独立国20カ国、今193カ国。他は植民地~中東、アメリカの国境が直線なのは、定規で線を引いて分割したから。/二次大戦後の独立の嵐。国連51カ国で出発。AALA 12カ国→112か国
~米ソが核兵器を振り回していた世界情勢の中で、次々と独立を勝ち取ってきた。91年、ソ連崩壊。アメリカ一国覇権主義で「万歳」といっていたが、ブッシュ政権で覇権主義がゆきづまり、経済も低下。世界から孤立。
・BRICSが経済の中心に。/現瞬間 GDP 日本―5~6%、EU・アメリカ―3%、中国+7%
2035年にBRICSがG7を追い越す。
・コールドマンサックスの報告 2050年の経済力 中国がアメリカの倍で1位、3位インド、4位ブラジル、6位ロシア
・TAC(東南アジアの貧しい10カ国ではじめた運動)の前進、中南米カリブ機構(アメリカ、カナダ以外加入)の来年2月発足
ベネズエラのチャベス大統領は「もはや米国が中南米カリブ海地域に命令する存在でないことを示した」「米国の覇権は終わった」
~ その旗印がアメリカからの独立、貧困をなくすという、日本の「ルールある経済社会」「自主自立の平和外交」と同じ流れ
・世界の構造的変化にアメリカが大慌て
いま私たちは、ものすごい大きな変化のなかれの最中にいる
◆世界の変化を後追いしているアメリカ
・07年「スマートパワー委員会報告(座長アーミテージ、ナイ)「ブッシュ政権は、戦争政策ばかりで世界に対応できてない」(民主、共和党の違いを超えた支配層の共通の認識)
・米国家情報会議(08年11月)「2025年の世界」
①戦後アメリカがつくりあげたアメリカ中心の国際秩序は、ほとんど姿をとどめていない
②中国とインドが多極化時代の新たな大国としてアメリカと影響力を競い合うようになる
③中国は今後20年間、他のどの国よりも影響力を強める
④日本は現在と同じ「中の上」程度の国際的地位」「自民党一党支配の時代は完全に終わる」
・軍事であれ経済であれ、アメリカが「中心」でありえた時代はすでに終わりはじめている――アメリカ政府の公的機関の文書によってすでに認められている
~オバマ政権は、アメリカの地位低下はしかだがないが、「どう下げ止まらせるか」という戦略
・だから、強く言う相手には譲歩する。付き従う相手は骨までしゃぶりつくす
~日本には、グアム新基地建設費用の提供の具体化―― 世界の変化に対応しようとするアメリカの姿が見えず、「日米同盟基軸」とつきしたがう自民党政治の哀れさ、滑稽さ
②「核兵器廃絶」を訴えたオバマ演説
・現在、2万6千発の核兵器(2万5千が米ロに)、数千発が即時発射の態勢。消滅の危機と隣合わせの人類
・4月プラハ演説「核兵器を使用した唯一の核保有国として、行動する道義的責任」「核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします」
◆オバマ演説に先立つ政府関係者の声
・キッシンジャー、シュルツ、ナイ、ペリー4氏の「核兵器のない世界へ」(07年1月、ウォールストリードジャーナル)「核兵器がますます広範囲に入手可能となるなかで、核抑止力の有効性はますます低下」「危険なものたちの手に陥ることを防ぎ、世界の脅威である核兵器を最終的になくすために、全地球的な努力をおこなうよう呼びかける」
・オルブライト、ブレジンスキーなど存命の国防長官、国務長官の9割が賛成
◆核廃絶への世界的な気運の高まり①
・08年2月 ノルウェー外務省がオスロ核軍縮会議
・08年6月、イギリス外相・国防大臣経験者が「すべての核保有国は核軍縮の義務がある」と呼びかけ
・08年7月、イタリアのダレーマ元首相等が「核兵器のない世界を目指して」アピール
・08年9月、オーストリア政府が「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」創設
・08年10月、国連パンギムン事務総長「国連と核兵器のない世界における安全保障」演説
・08年12月 パリでグローバルゼロキャンペーン開始 カーター、ゴルバチョフ2010年核兵器目指す世界サミット
・09年1月 イギリスの元陸軍元帥等「核抑止力は必要ない」共同宣言
・09年1月 シュミット元首相、ワイツゼッカー元大統領「核兵器のない世界に向けてドイツの見解」
・09年2月 イギリス・ミリバント外相「核の影を取り去る――核兵器廃絶への条件づくり」政策文書
~ いずれも、オバマ演説の前
◆「核抑止力」論の変化と恐怖から解放
・キッシンジャー氏らの発言は、核拡散と核テロへの恐怖を原動力に
・オバマ新政権「政府の課題」「アメリカ国民にとっての最大の危機は、核兵器によるテロリストの攻撃の脅威と、危険な政権への核兵器の拡散」「オバマとバイデンは、核兵器が存在する限り強力な抑止力を維持する。しかし、2人は核兵器廃絶に向かう長い道を進むいくつかの措置をとる」
~アメリカは大国で核独占しようとしてきたが、影響力が低下し、コントロールできなくなった。それで「まずい、なくすしかない」となった。
※エンゲルス「軍国主義滅亡の法則」(反デューリング論)
①武器がしだいに高性能になって、費用がかかり財政的に破綻する
②相手を攻撃している武器が、その武器を自分に向ける人間をつくる
~現状を見る上で、重要な指摘
◆オバマ演説をきっかけに
・09年4月 EU会議「最終的な完全核軍縮という目標を約束すること」(EU理事会への勧告)
・09年5月 中国・楊外相「核兵器を全面禁止し廃棄する国際条約の締結にむけ、できる限り早く議論を」
・09年5月 ノーベル平和賞17氏が「ヒロシマ・ナガサキ宣言」への注目
・09年6月 ロシア大統領、米国がMD計画での懸念を取り除くなら、新条約で大幅な核兵器削減に応じる
◆2010年NPT再検討会議が焦点
・1970年発行、核保有5カ国と非核の185カ国の区別と特権。ただし核保有国に軍縮交渉を義務付け(6条)
・1995年 無条件・無期限延長。ただし5年に1度の再検討会議義務付け
・2000年 最終文書「時刻核兵器の観世移設を達成するという全核保有国の明確な約束」
・2005年 ブッシュ政権の妨害と逆行、論点を不拡散」に限定
・09年5月 再検討会議の準備会で2000年の最終文書にもとづく議論を議題と決定
・09年8月 G8「核兵器のない世界へむけた諸条件をつくる」
・10月5日 「明確な約束」の再確認と実行力のある措置の確認が課題に。5月2日NYへ
◆世界の世論で前向きの変化の促進を
・オバマ演説と軍部の不統一 「核兵器による即応反撃態勢は大切」(チルトン戦略軍司令部)
・通常兵器は圧倒的。核のない世界での軍事的優位も展望。前方配備と同盟網の強化が地域の安定に不可欠との立場に変化は見えない ~ アフガンへの軍事増強(しかし、これも米国内の戦争継続支持が低下し、「政治的解決」に向かう兆しも見える)
・前向き変化を前進させ、「核のない世界」から「戦争のない世界」へ。世論の高揚が必要、チャンス
~ 平和の声で、オバマを飲み込むなら戦争のない世界へ。そういう時代に私たちは生きている
◆非核地域を広げた世界の努力
・1959年 南極条約 非軍事化
・1967年 トラテロルコ条約 キューバを除く中南米地域、5保有国が議定書批准
・1985年 ラロトンガ条約 豪州、ニュージーランド、南太平洋諸国
・1995年 ベリンタバ条約(調印・未発行)アフリカ統一機構による64年非核地帯宣言を条約化
・1992年 モンゴル 非核地帯宣言。98年の国連総会で承認
・1995年 東南アジア非核地域条約
・2006年 中央アジア非核地帯条約 5カ国
③日本の核兵器政策の問題点
・唯一の被爆国でありながら「核抑止論」「核の傘」にしがみつく日本
・95年 再検討会議 「無期限・無条件延長」を提唱。インドの期限を切った核兵器廃絶提案に「究極的廃絶」決議を提出
・09年4月 北朝鮮のロケット発射に「迎撃命令」の軍事的対応のみ
・09年4月 中曽根外相「ゼロへの条件」演説。オバマ演説は支持、日米安保体制下での核抑止力の重要性を再確認
・北朝鮮の核問題は「核兵器のない世界の」をめざす取り組みの中でこそ解決できる。
~大量の核兵器を持つ米軍が日本に5万、韓国に3万駐留。「北」が怪しいと警戒し、体制をとっている。そうした包囲網の中にいる北の緊張を外交で解いていくか。
◆政府の根本にある核密約
・71年 非核三原則決議に反する゜密約」
・軍用機、艦船の立ち寄り(エントリー)は事前協議の対象としない。「討論記録」
・有事については「持ち込み」の権利を有している。
・密約は公開し破棄すべき
村田氏ら元外務次官4人の証言「密約は歴代外務次官に間で引き継がれた。密約以降首相23人外相34のうち知らされたのは5人」
◆非核の日本を日本政治の重大課題に
・自民、河野太郎 密約はある。抑止力はかんがえなくてはならない/非核2原則でよい
・民主 鳩山代表
7月15日「非核三原則のうち『持ち込ませず』について、将来的課題として米国側と見直しを含め協議」
④鳩山新政権のもとでの動き
・8月テレビ討論での鳩山代表の「核密約は蓋然性が高い」「持ち込ませない方向で交渉」発言を引き取り日本共産党の志位委員長が調査の協力で合意。現在は非公開になっている文書も含め米公文書など全資料を提供。
・9月10日両党会議。/逃げられなくなった民主党/外務省のチーム設置
◆3党文書 ~ 外交、防衛関係は、極めて曖昧でどうとでもとれる内容
――検討をくわえるべき視点
・自衛隊の海外派兵を否定していない
・非同盟でなく日米同盟の「緊密化」を語る
・沖縄の負担軽減が本土の負担増大を否定するものとなってない
・東アジア共同体というが、必須条件の侵略と植民地支配への踏み込んだ反省がない
・憲法の平和主義を守るというが、9条を守ることが示されてない
・全体としてアメリカの世界戦略に従属するという大枠はでていない。
◆はたらきかけの基本的視点は日本国憲法
・選挙が終わっても政治が語られづづけている初めての状況
~ 安保が必要か、米軍5万人が必要か、軍事費5兆円が必要か、が大きな視点で議論していくことが必要
・その基本は憲法「前文」「9条の1項、2項」
・鳩山内閣にもとめていく、それで出来なければ違う政権をつくる
~世界から貧困と戦争をなくそうという日本国憲法前文の精神にもとづく国づくりは、私たち日本国民の大きな使命になっている
◆もっと政治通、外交通に
・世の中を動かすには知恵がいる。情勢の急速な動き、延長線上でない柔軟で創造的な運動がもとめられる。
・個々の局面に乗り遅れないだけでなく、あわせて日本と世界、さらに平和と安心の視点から改革していくためにも、そもそも論・社会発展の歴史と展望をしっかり学ぶこと。
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