高知市と定住自立圏構想
高知市長が6月に検討を表明した「定住自立圏構想」について12月議会で正式議題となる。
同構想は、「国と地方の役割分担」論にたって、権限委譲の受け皿となる基礎自治体の大型化、そのために桎梏となっている小規模自治体対策として出てきたものだが・・・
【定住自立圏構想 ~道州制への仕掛け 08/5/16】
欲張らず、適切な使い方(例えば特別交付金をバス路線の維持・拡充に使うなど)に絞れば、少しは役に立つかもしれない。概要、問題点などを少し整理してみた。
◆総務省の「目的」の説明は・・・
大都市への人口流出の防止に向けた自治のあり方を検討する、というもので、人口5万人以上の「中心市」に都市機能を重点的に集積させ、周辺町村との連携で自立可能な「圏域」の形成を目指す。中心市は病院やショッピングセンターなど都市機能を整備し、自然環境や食料生産などを周辺市町村が担って互いに連携しながら「圏域としての利便性を高めていく」ことで「大都市への人口流出を防ぐ」」と説明されている。
◆手続きなど
1.中心市が中心地宣言を行い、中心市と周辺市町村が「1対1」の関係で協定を結ぶ
2.協定
・協定期間は定めがない。だだし一方の市町村から議会の議決を経て、2年後に廃止される。
・中心市と協定を締結する周辺市町村とは「中心市に近接し、経済、社会、文化及び住民生活等において密接な関係を有する市町村」となっている。
3.定住自立圏共生ビジョンを中心市が策定
定住自立圏の将来像や、定住自立圏形成協定に基づき推進する具体的取組を記載した「定住自立圏共生ビジョン」(概ね5年。①生活機能の強化 ②結びつきやネットワークの強化 ③圏域マネジメント能力の強化 の3つの視点ごとに具体的取組を1つ以上規定する)を策定し、公表する。
素案については、中心市が開催する「圏域共生ビジョン懇談会」において検討を経る(医療・福祉・教育・産業振興・地域公共交通等各分野の代表者。大規模集客施設、病院等都市集積が生じている施設等の関係者等)。その後、各周辺市町村と当該市町村に関連する部分について協議。
◆財政措置
・特別交付金(毎年) 中心市 4千万円、周辺自治体 1千万円
・地域活性化事業債の上乗せ
・民間投資促進交付金 民間投資総額の40%
◆個々の問題点など
①住民への説明責任
合併のような「自己決定権」の消滅ではなく、定住自立圏構想については、賛否については、具体的な内容にそって検討する必要がある。しかし、協定を結んでから、具体的な内容の「ビジョン」を策定する(協定は議決が必要だが、ビジョンは議決の必要はない)という手続きで、これでは住民への説明責任は果たせない。もう少し、内容を関係市町村で、十分メリット、デメリットを明らかにしてから議決するというのが、スジではないか。
②役割分担(中心地に都市機能、周辺部は生活)というが
高知市には春野、鏡、土佐山と農業地帯、中山間地を抱えている。市内のそうした地域と周辺市町村との関係はどうなるのか。定住自立圏がかかげる農産物の地産池消など広域サービスとして追求されれば、切り捨てられる部分が手で来るのでは・・・。
そもそも高知市は市町村合併によって、そうした地域を含めた一体的な行政を創設したのではないか。
③中心市への機能集中で、地域格差が拡大しないか。
・「医療」分野では「病院と診療所の役割分担による切れ目のない医療の提供、地域医療を担う医師の育成や派遣、ICTを活用した遠隔医療その他の医療を安定的に提供できる体制の確保等に向けた連携」とある。こんなことは医療センターを軸とした県の医療行政が責任を負うことで、そもそも最近の医師不足の中で、「役割分担」という名目で中心市への集中が進む可能性もある。
・「宣言中心市等における人材の育成」では「中心市等における外部からの行政及び民間人材の確保」となっており、周縁部が中心市に優秀な人材を集中させ、格差を拡大するのではという懸念がある。
・交通網に関しては、より広域的な対応が可能となるが、これも県が本来担っていることである。
④ 真に有効な施策にしぼれるか
地域活性化事業債の上乗せは、「協定又はビジョンに基づく基幹的施設や、ネットワーク形成に資する道路、交通、通信施設等であって、圏域全体で生活機能等を確保するために必要不可欠なものの整備」となっており、対象事業を慎重に選定しないと「有利な借金」という過去の失敗を繰り返すこととなる。(地域活性化事業債は、定住自立圏構想に関係なく利用できる)
また、特別交付金についても、新たに実施する事業との関係で有利かどうか、判断が必要。
⑤ 広域連合、市町村合併・・・過去の総括は・・・
08年12月26日付の総務事務次官名の通知で、定住自立圏構想とともに、「広域行政圏計画策定要綱」と「ふるさと市町村圏推進要綱」は平成21年3月31日をもって廃止することとします。と一方的な宣告がされた。
そもそも総務省は広域連合について「様々な広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応するとともに、権限委譲の受け入れ体制を整備するため、平成7年6月から施行されている制度です。 広域連合は、都道府県、市町村、特別区が設置することができ、これらの事務で広域にわたり処理することが適当であると認められるものに関し、広域計画を作成し、必要な連絡調整を図り、総合的かつ計画的に広域行政を推進します」となっている。
広域連合のとりくみは何だったのか。どこが違うのか。なぜ、特別交付金など飴を用意してまで、国は、進めようとするのか。(市町村合併と同様に)
「合併していいことはなかった」・・春野、鏡、西土佐などから聞こえてくる声はそうしたものばかりである。
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