高齢者支援センター 「請負」で機能するか? 高知市
地域高齢者支援センターについては、公平性・中立性の観点から高知市は直営を選択したのだが、「財政難」からアウトソーシングが検討されている。その問題もあるが、地域ケアをマネジメントするネットワークの中心となる組織が、市が直接指揮命令も共同作業もできない「請負業務」でできるのか、根本のところに疑問がある。
地域高齢者支援センター(地域包括支援センター)については、厚生労働省は、「包括的支援事業(4事業)を地域において一体的に担う中核拠点」と説明している。その内容は・・・
1) 介護予防のマネジメント(介護予防事業のマネジメント事業と新予防給付にかかる指定介護予防支援を一体的に実施)
2) 介護保険外サービスを含む総合的な相談・支援
3) 被保険者に対する虐待の防止・早期発見等の権利養護事業
4) 支援困難ケースへの対応などケアマネジャーへの支援
「高知市高齢者保健福祉計画」では、地域包括センターの役割をどうしているか
・保険・福祉・医療の連携。利用者の相談・情報提供
・在宅復帰、病院と施設の連携
・高齢者虐待に関する相談・通報
・成年後見制度、権利擁護に関する総合相談窓口。他の事業者への啓発
などなど・・
では、そうした役割を発揮するのはどういう条件が必要か・・・
①専門性ときめ細かな対応
地域にいる一人暮らし高齢者や虐待を受けている恐れのある者の支援
成年後見制度やアルコール依存症等医療依存度の高い者
認知症高齢者で保護ざれ居所や名前がわからない者などの生活支援、相談・支援
これらは、地域福祉の基本であり、市が責任者として、仔細に指示・指導する必要がある。
②地域との信頼関係
地域の一人暮らしや高齢者世帯など要援護者の情報の把握し、地域支援を実施するには、民生委員や自治会・町内会、ボランティアがセンターを軸に信頼関係を築くことが前提である。
例)夜中の虐待対応や土日・休日の認知症高齢者の保護、地域でのみまもりなど
・・・ という指摘がある。つまり高度に「公的」な役割の発揮がもとめられると考える。
では、「委託」で可能だろうか
①高度のネットワーク機能が「請負」で実施できるのか・・・
地域ケアの中核となるセンターを「業務委託」すると、「請負契約」となり市からの「直接の指揮命令」は不可能となる。センターの職員と、市の担当部所が個別に相談しあうことも出来なくなる。共同して仕事することも当然できない。
さらに、地域を総合マネジメントするには権限が必要ではないか。身寄りの無いお年寄りの成年後見制度の申し立ては市町村長。虐待への介入や措置権発動などは直営だからこそ力が発揮できるのではないか。
ネットワークの軸となる組織が、そうした制限のもとで機能できるはずはないと思う。
②専門性
昨年6月議会で、市は「現在,同センター3年目に入りましたけれども,実際に取り組む業務の範囲,これは多岐にわたっておりまして,職員は日々実践を重ねる中で専門性を高めるとともに,センターの基本的機能の向上に努めておるという状況でございます。」と答弁している。
こうして市としても専門性を高めている段階であり、この方向を強化すべき時ではないか。そもそも地域ケア、地域の総合的マネジメントは新しい課題であり、ノウハウをもっている団体があるとは思えない。
③独立性・中立性
社会福祉法人といえども一事業者であり、そこに委託されれば、その法人が大きな力を手にする。従前のサービス事業は展開したままでの委託・・・ここが高知市が直営を選択した理由である。
④個人情報、信頼性
センターが機能するためには、地域との信頼関係が不可欠であるが、虐待の疑い、認知症など極めてデリケートな個人情報が集積することとなる。こうした地域を包括する情報は公的部門が把握すべきである。委託となれば、④ともあわさり地域への大きな影響力を持つこととなる。
これでも「委託」するというなら、機能の本格的発揮を考えてないからだとしか思えないのだが・・・
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