子どもの権利条約と教育 備忘録
本日、学力調査の結果が発表される。今回で最後になる公算が強いが・・・ 子どもの貧困、人生前半の社会保障がようやく国政の一段争点となったのは極めて大きな前進。そして、子どもの権利、女性差別、教師の地位…国際的な勧告への対応も新しい国会では大きなテーマとなる。
地方自治体でも「次世代育成支援行動計画」の前半の取り組みを総括し、後半5年の計画づくりの年である。
以下、前衛の三宅良子さん、松村忠臣さん、石井郁子さんの座談会からの備忘録
【子どもの権利条約を教育にどう生かすか 09/9 前衛】
・国連採択20年、日本政府批准15年
◆後ろ向き~日本政府
・94年文部事務次官通達「『児童の権利の関する条約』について
「本条約の発効により、教育関係について特に法令等の改正等の改正は必要ない」
・94年、政府見解「日本の子どもたちは憲法によって、この条約に書かれている権利は保障されている」
~ これらの見解が、その後の大きな足かせになっている。
◆市民と子どものとりくみが浮かび上がらせた実状
第一回審査 予備審査 NGO報告書「豊かに日本における子ども期の喪失」
第二回審査 子どもたちが報告書をつくり発言
~ この指摘が
・日本政府への「最終見解」
「過度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、かつ、その結果として余暇、身体的活動および休息を欠くにいたっており、子どもの発達のゆがみをきたしていることを懸念する」
「社会のあらゆる領域において、とりわけ学校制度の中において、その参加の権利(第12条)を行使する際に直面している困難に、特別の懸念を表明する」
・勧告「子どもの意見の尊重を制限していることを依然として懸念」「子どもに影響をあたえるすべての事柄について、子どもの意見の尊重および子どもの参加の促進」「学校その他の施設において方針を決定するための…会合に子どもが継続的かつ全面的に参加することを確保すること」
◆意見表明権
・3つの子ども観
無権理論である「客体的子ども観」~ 大人の言うことは聞け、というもの
小さな大人とする「自律的子ども観」~ 自己決定権がある→ 自己責任論と親和性
「人間関係論的子ども観」~無視されず、人間関係の中でその存在をありのままに受容されること。
そしていまを豊かに生きること
・子どもの意見表明権 ~
/「総理大臣にメールすることではない。
/自分と関わる大人に「自分はこうしたい」「本当はこんなこと考えている」と言葉、態度、行動で訴えかけれること ~ 権利の主体として、ありのままの欲求を大人にぶつけ、それに誠実に対応してもらう権利、ありのままの自分を受容される人間関係を求める権利」
→ 「意見」は、原語では、「オピニオン」でなく「VIEW」
人間としての自己表現、欲求や意思の表現
乳幼児の権利 泣き声を受けとめてくれる権利/それを尊重しようとする立場
・それが子どもが成長・発達できる「子ども期」の保障~ 「子ども固有の権利」(堀尾輝久)
◆教育に生かすシステムを
・世界人権宣言 子どもも人格をもった1人の人間/子どもは特別に保護をうける権利がある
・子どもの権利条約 権利行使の主体/願いや思いを表明し、その願いを大人とのあいだで実現させていく
しかも、発達する主体であり、社会を構成する主体
・憲法13条「個人の尊厳」が権利の基礎 「すべて国民は…」 /個人の尊厳を人間の尊厳に読みかえる
~ ありのままに認めてもらう権利、人間は条件付で生きていることを許されているのではない。生きていていいんだと認めてくれる人がいることが一番重要、それがなかったら「生きていけない」というのが「子どもの権利条約」の真髄・・・
◆日本の教育政策をどう変えるか
・事務次官通達の見直しを/ 第三回政府報告書の特徴 4割が第一回、第二回報告参照となっている。
なにもまともに検討していない。
~ 新しいところは「(若者)人口減で、過度の受験競争は緩和されつつある」というふざけたもの。
*実際は、学区の自由化、定数減で、競争は激化している。そんな実態はなにも触れず
・不真面目さの象徴 パラグラフ205
「校則やカリキュラムの編成等は、児童個人に関する事項と言えず、第12条1項でいう意見を表明する権利の対象になる事項ではない」→ 第二回勧告を正面から無視。意見表明権の解釈を歪曲
~ 政府解釈の誤りを明らかにし、正していく運動が必要
・子どもの参加、意見を聞く取り組みの重視を 大阪・千代田高校の実践
「自分の生き方に自分自身を意識的に参加させるための学習の援助」
06年大阪「子ども調査」 高校生
勉強することの意味がわか授業78%、生き方につながる授業65%
~ こうした子どもの意見は、従来の教育政策への批判。だから一方で・・
・子どもへの保守的抑圧的姿勢 ~ 教育再生会議路線~ 規範意識の上からの押し付け
第二回勧告「子どもに対するこれまでの(トラディショナル)姿勢が、家庭、学校、その他の施設および社会全般において、子どもの意見の尊重を制限していることを依然として懸念する」
◆妨害を許さず、まず権利条約を知らせる
・このままでは権利条約が棚上げされ、何もかわらない。反転攻勢の時期
靖国派のまきかえし、週刊新潮3/19「『子どもの権利条約』で日本は滅びる」
・まず知らせる運動を 42条「成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する」
子どもが読める、親子で読める冊子などつくり、意見を聞き、尊重する動きを
◆極度に競争的な教育から学ぶ喜びのある教育へ
・学力調査の廃止を
・「子どもの貧困」の克服~ 第三回NGO意見の中心
子ども調査 将来の進路84.6%、家計・くらし70.4%、戦争64%
・学ぶ喜びのもてる学校を
学校のありようを心身で持って告発 不登校~ 全国で、教師、保護者が、子どもをありのままうけいれること、そんな大人と家族との関係、生きること、学校に行く意味を問い続け、人間発達の可能性を切り開いてきた。
CEART報告 「教師の権利の確立・労働条件の改善が子どもの教育条件である」
◆子どもの貧困、荒れにどう向き合うか
・1、2回の「勧告」で指摘されたことは改善せず、むしろ深刻に 不登校、中退、いじめ、学テ導入
世界と日本が何故違うのか、ちゃんと見る必要
・子どもの貧困~ 政府通知は「世界の多くの児童が飢えと貧困」といって、子どもの権利条約はそうした国のもので日本にはあてはまらない、という姿勢。
→ しかし、日本の現実は、「子どもの貧困」「社会的排除」が大問題になっている。そこの認識をきちんとさせる運動がいる。
NGO報告書づくり~ 387本の基礎報告書/貧困、生活の劣化で深刻な影響、うつ・無気力の拡大
学力テスト 平均点より悪い点数の子が「みんなに申し割れない。迷惑かけちゃって・・うちがアホなんはがんばらないから」というメール。そうした追い詰められた状況
・「ねえねえ、なーに」の関係づくりが最も重要~ 子どもの権利条約そのもの
第12条 3つの意味 ①人間としての尊厳をもっていることが大切にさせる ②ありのままの姿が認められること ③自己肯定感をもつことにより成長・発達が可能となる
~しかし、今の競争と管理の中では、人間関係は破壊される。しかも、子どもを支える福祉、家庭が新自由主義のもとで、破壊され、虐待の横行、貧困の拡大と、大人との人間関係が破壊されている。
・こうした実態をリアルに出して、第三回の「勧告」に生かし、教育を根本から変える力にしていくことが必要。
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