逆風にあえぐ地方の公共交通
再び高速道路無料化について・・・
公共交通は大変になる・・
逆風にあえぐ地方鉄道、高速値下げが大打撃、フェリー・高速バスも苦戦《鉄道進化論》東洋経済8/06
1000円高速:損失5億円 渋滞や新幹線利用減 毎日8/8
現在、高知県は、どのくらい公共交通に補助を出しているか・・・
県の補助金は、バス路線維持1億5千万円、これに市町村の補助金が加わる。・・たとえば、高知市のバス路線維持の補助金は1億4,400万円。第三セクターの鉄道は、本業は08年度1億6千万円の赤字。この赤字は、県と関係市町村の基金で対応している。11億円あった基金は底をつき、05年に6億円の追加積み立てを決定した。フェリーへの県補助1千万円ある。
この金額が増加するのはまちがいない。
逆風にあえぐ地方鉄道、高速値下げが大打撃、フェリー・高速バスも苦戦《鉄道進化論》8/06 「ゴールデンウイーク(GW)が明けたら、お客さんはちいとも乗りゃあせんね」 松山市内のタクシー運転手がため息をつく。政府の景気対策の目玉の一つだった高速道路の料金値下げ。四国でもGWは瀬戸大橋など3本の本四架橋が軒並み渋滞の大にぎわい。地元の観光業界も特需に沸いた。 そのあおりを食ったのが中小フェリー会社やJR四国、そして現地のタクシー業界だ。「自家用車ばかりで電車に乗らないから、駅前のタクシーも使わない。市内は大小51社のタクシー会社が競合するが、稼働率が悪いので車庫に眠ったままの車もある」(前述のタクシー運転手)。 松山だけではない。高速道路・自動車優遇に偏重した景気刺激策は、長い景気低迷にあえぐ地方都市に光と影の両方の影響を与えている。全国地方各地の生の声を追った。長野は訪問客の6割が車,青森も県外ナンバー増加
冬期オリンピック開催を契機に高速交通網が整備された長野では、東京―長野間は車なら3時間程度。長野県を訪れる人の約6割は自動車利用だ。GW中は目玉観光地、善光寺(長野市)の御開帳効果もあり「411万9000人(前年比約1・8倍)の観光客でにぎわった」(長野県観光部観光企画課)という。
家族単位での移動なら、ガソリン代を含めても新幹線を使うよりずっと安い。さらに高速道路値下げで、「週末の高速道路利用は間違いなく増えている」と、長野経済研究所調査部の野崎光生上席研究員は語る。
また、東北新幹線の延伸を待つ青森でも、県外ナンバーの自家用車が目立って増えているという。「県内の電車・バス網は貧弱なうえ、マイカーでないと行けない秘湯などの観光地が多い」(観光業業界関係者)。
値下げもそうだが、高速道路の地方への延伸自体が鉄道にとっては大きなネガティブインパクトを与えている。北陸地方では、東海北陸自動車道の開通で名古屋圏へのアクセスがよくなったことを受け、観光業界が中京圏をターゲットにした観光戦略を打ち出している。「名古屋駅のコンコースに巨大な富山県のPR横断幕を下げた。旅行客が増えただけでなく、物流でも名古屋との結びつきが強くなっている」(富山県庁)。
ウォーキングを目的に関西からバスが20~30台来る石川も「能登の旅館に1泊すれば、能登有料道路や白山スーパー林道の片道料金を無料にしている。能登島水族館や和倉温泉への観光客は間違いなく増えた」(石川県庁)とほくほく顔だ。高速道路延伸がJR直撃 旅客増へ反撃策も乏しい
守勢に立たされるのはJR。景気後退や新型インフルエンザの影響もあり、どの程度が高速値下げによるものか限定するのは難しいが、JR各社は新幹線の低迷などで4~5月は旅客が1割以上の減少ペースだ。
もともと四国や九州は鉄道より自動車で移動したほうが合理的だ。四国を例にとると、高速道路の総延長と鉄道輸送量がものの見事に逆相関になっている。
GWの旅客数が前年同期比11・2%減だったJR九州は、高速道路への対抗策として、九州新幹線の全通後は博多―鹿児島中央間1時間20分の速さを挙げる。大阪から熊本まで3時間強、鹿児島まで同4時間となれば「自動車利用との競合は限定的では」(JR九州)と期待する。開業までは回数券や週末限定割引、通勤割引といった施策で魅力向上を図るが、遠方からの観光客の誘引力には乏しい。新車両「さくら」の咲く日を待ち望む日々が続く。
JR四国は観光客の掘り起こしのため大阪方面の旅行会社を訪問、観光素材作りに取り組む。域内向けにはホテルと組んだ日帰り旅行割引「あじな散歩道」のほか、都市への通勤・通学需要を取り込むべく、特急定期や定期券保有者向けの特急回数券を企画している。地元在住者は「四国内の都市を回るのでなく、本州など四国外へ出ることを旅行と考える人が多い」(矢田栄一・営業部担当部長)ため、関西や東京旅行向けに割引切符も販売するが、JR四国への貢献はわずかだ。
愛媛・西条にある四国鉄道文化館には0系新幹線の初代モデルが展示され、鉄道ファンには聖域的な人気があるが、観光客全体の底上げにはなかなかつながらないのが実情だ。
むしろ四国が期待するのは「NHKの神風」だ。9月末からの朝の連続ドラマは徳島に住むヒロインの「ウェルかめ」。さらに松山を主な舞台にした司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」が今年秋から断続的に放映、そして来年の大河ドラマは高知を舞台にした「龍馬伝」とあって、現地では地元のPR攻勢が熱を帯びてきている。各駅前にパビリオンを設けるほか、「ドラマゆかりの各地域を回遊して四国の魅力を知ってもらえるように、周遊型の共同PRを考えている」(松田清宏・JR四国社長)。
観光業界が中心でも、地元にカネが落ちれば、それがやがて地域経済の回復につながる芽もあるだろう。ただ、今回の高速道路値下げが、本当に地方景気を潤したのかどうか、疑問視する声もある。
「宿泊客は思ったほど増えていない。安い高速道路で高知や徳島まで足を延ばし、日帰りしてしまう客が多いのでは」(松山商工会議所の塩崎桂事務局長)
いよぎん地域経済研究センターの原正恒社長も「経済対策だからプラス効果はある」と前置きしたうえで「他の交通機関に与える影響など影の部分にも優しい目線を持つことを忘れないでほしい」とくぎを刺す。高速値下げは日帰り旅を増やし地方格差を助長か
高速道路だけ値下げしたため、鉄道だけでなくフェリーや高速バスの経営には大きな打撃を与えている。中小フェリーは減便や廃止が相次ぎ島の生活者の移動の足を奪う。
JR四国は香川県内の高松―多度津を除いて単線区間。ほとんどが非電化で、ディーゼル車が地域の交通弱者の貴重な足だ。愛媛県南部と高知県西部を結ぶ予土線には特急もなく、1時間に1本程度の1両編成のワンマン車両が山間の線路をつないでいる。利用客はほぼ高齢者と学生のみだ。「特急や列車の本数が減れば乗客も減る悪循環だ」(原社長)。
民主党は高速道路料金の恒久無料化を公約に掲げる。JR四国の松田社長は「企業努力だけではもう限界」と悲鳴を上げる。その声は地方鉄道事業者すべての本音だ。環境に優しい公共交通機関をどう活用するのか。CO2大幅削減を世界に誓う日本の政治の真価が問われる。
(週刊東洋経済)
【1000円高速:損失5億円 渋滞や新幹線利用減 毎日8/8】
高速道路料金を上限1000円に割り引く制度で、東京-名古屋間では今春の大型連休(4月25日~5月6日)に最大で5億円近い社会的損失が生じたとの試算を、有村俊秀・上智大准教授と岩田和之・日本学術振興会特別研究員がまとめた。渋滞による移動効率悪化や東海道新幹線の利用者減が主な要因という。二酸化炭素(CO2)排出量も昨年同期に比べ5割以上増えた。制度はお盆期間の平日も実施中だが、地球温暖化と経済対策の両面で検証を迫られそうだ。
分析は東名高速を対象に実施。プラス効果では、割引の東名高速を昨年同期比6%増の111万7200台が利用したことで、利用者は計25億4200万円の得をした。
最もマイナス影響を及ぼしたのは渋滞による時間ロスだ。10キロ以上の渋滞が昨年同期の39回を上回る82回発生。車1台の移動にかかる1分当たりのコストを約40円とした国土交通省の「費用便益分析マニュアル」などに基づき、昨年同期比で19億4700万円の損失と分析した。ガソリン代の支出増や同区間の新幹線の利用者減などで、マイナス分は30億1300万円となった。その結果、制度による社会への影響は4億7100万円のマイナスと見積もった。
さらに、渋滞時の速度が時速40キロになったと仮定すると、ガソリン消費量は2353キロリットル増えた。それに伴いCO2排出量は昨年同期より、1000世帯の年間排出量に相当する5500トンが上乗せされたことになる。
有村准教授は「全国でみれば、損失はさらに膨らむだろう。高速道路の無料化が議論されているが、混雑が生じる可能性のある区間や時間帯には適切な料金設定が必要だ」と話す。
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