非正規の異常な多さは社会的損失 労働政策研究機構
労働政策研究・研修機構のコラム
「コールセンター職場が示すものとは?」8/21 日本は非正規が87%。米は20%、英は30%、仏は30%、独は40%、スペインは50%、韓国は60%、各国平均で29%~ その非正規の異常な多さ、正規との賃金格差、非正規の離職率の高さという3つの問題を示し、それが結局、社会の生産性の低下をもたらすとし、非正規労働者の組織化、均等待遇の課題を取り上げている。
日本共産党は「正社員があたり前の社会を」といっているが、社会の活力にとって重要なことなのである。
なぜこんなに非正規が多いのか・・・ 賃金格差である
10年前になるが「日本人の賃金」(木下武雄著)の中で、日本には、ヨーロッパの協定賃金(アメリカの市場賃金として)のようにある業種について、一定の水準が社会的合意としてないということが指摘されていたように思う。日本にはそれがない。
これは脆弱な福祉を企業内福祉が補い(年功型の直接賃金が主軸で、社会保障など間接賃金が貧弱)、企業社会が社会統合の主軸として機能してきたこと密接にかかわっている。
さて、雇用の規制緩和、そして企業社会の崩壊とともに、従来型の賃金形態が残っている公務員賃金体系が攻撃の的にされている。公務員バッジングが盛んだが、結局、正規・非正規の均等待遇と社会保障の問題に収れんされると思う。
教育や子育て、介護を個人の収入が支える社会から、社会全体で支える社会になれば、年功型賃金、正規・非正規の格差も、そもそも不必要の方向に向かう。
企業主義的な社会統合が崩壊することは、全体としては均等待遇と福祉(間接賃金)が全国民的課題になるという点で、階層間の分断の手段がなくなっていくという点でも新しいページを開く過程での問題と受けとめている。
その解決の仕方・・・みんな非正規のようになるのか、みんな正規のようになるのか・・・当然、非正規の待遇改善こそが主軸にならないといけない。
後藤道夫氏の試算では、生活保護水準の収入は、5人家族で540万円となる。賃金が安すぎるのである。
24日付けの赤旗に湯浅誠氏の「企業優先社会を突破したい」という発言が載っている。この主張はコラムの主張ともシンクロし、財界中心の政治の転換という点で日本共産党の主張と共通の方向である。
その中で政権交代にかかわり、「貧困と向き合う政治のためには政権交代を望んでいます。ただ、民主党は、党全体としては貧困問題への関心が必ずしも高いわけではなかったので、あまり多数になると、逆に貧困問題が落ちてしまう心配もあります。」「この4年間のように、多数で何でも決められるのはよくないですからね」「貧困問題では日本共産党が早い時期から積極的に取り組んできたことは高く評価しています。今後も訴え続けてほしいでいね」と・・・語っている
「コールセンター職場が示すものとは?」8/21 研究員 前浦 穂高 ◆コールセンターが抱える3つの問題 87%。この数値をご覧になって、皆さんは何を想像されるだろうか。答えは、日本のコールセンターで働く非正規労働者の割合(非正規比率と呼ぶ)である。国際比較をすると、各国平均で29%、米は20%、英は30%、仏は30%、独は40%、スペインは50%、韓国は60%である。日本のコールセンターの非正規比率がいかに高いかがわかる1。 このデータは、アメリカのコーネル大学のRosemary Batt教授を中心に組織されたコールセンターの国際比較調査「Global Call Center Project2」(21カ国)によるもので、私は2006年から日本班(主査 仁田道夫教授)の一員として参加している。そこで本コラムは、上記のデータや関連資料を基にコールセンター職場の実態を紹介したい。◆非正規比率の高さ
最近私たちの身近な職場となったコールセンターであるが、この職場がいくつか問題を抱えていることが明らかとなった。その1つが、非正規比率の高さである。非正規労働者は労働条件や雇用保障の両面で正社員より劣るため、非正規比率が高ければ、それだけ不安定な労働者を生み出すことになる。ところで何故これほどまでに非正規化が進んでいるのだろうか。
調査によれば、主因はコスト削減である。彼らを雇う理由では、「コスト圧縮のため」と回答するセンターが圧倒的に多い。そこで顧客接点スタッフ(いわゆるオペレーター)の一般的な年収を見ると、正社員は約500万、フルタイム有期は約260万円、パートタイム有期は約130万、派遣社員は約260万円である。調査の限りでは、正社員を雇用するより、非正規労働者を活用する方がコスト削減につながっている。◆賃金格差
しかしここに2つ目の問題が存在する。それは正社員と非正規労働者の賃金格差の問題である。正社員の一般的な年収は、フルタイム有期と派遣社員の2倍、パートタイム有期の4倍に相当する3。他方で平均労働時間を見ると、正社員は38.1時間、フルタイム有期は36.7時間、パートタイム有期は22.9時間、派遣労働者は35.5時間であり、パートタイム有期を除けば、雇用形態によって平均労働時間はそれほど変わらない。このように日本のコールセンターには、同じ職場でほぼ同じ時間働いているにも関わらず、雇用形態別に賃金格差が存在するのであるが、現場ではこの現実に対して納得感が得られているのかという問題が残される。これは、言い換えれば、正社員と非正規労働者間の均衡処遇に関わる問題である。◆離職率の高さ
3つ目の問題は、離職率である。非正規労働者は、正社員に比べて、離職率が高い。そのため多くの非正規労働者を抱えるコールセンターの離職率は、必然的に高くなる。ところで離職率が高いことは何が問題なのだろうか。
それは人材育成を考えれば分かりやすい。顧客接点スタッフは顧客との接点のある業務を担っているため、彼らの対応(働きぶり)が当該企業の評判につながっていく。したがって、顧客が満足する対応のできる人材(質の良い人材)の確保が必要になるが、そういう人材ほど人件費は高い。そこでコストの安い非正規労働者に教育訓練を施すかわりに、彼らには長期勤続し、安定的に質の良いサービスを提供してもらう必要がある。しかしすぐに離職されてしまうと、教育投資が無駄になるだけでなく、十分経験を積んだスタッフが不足する事態を招き、長期的にはサービスの質の低下を招く危険性がある。また離職が頻繁になってくると、企業は教育投資が無駄だと考えるようになり、教育費用を負担しなくなるだけでなく、企業内で人的資源の蓄積が進まなくなる。その結果として、企業のみならず、社会全体の生産性を低下させかねなくなることから、離職率が高い状態は、社会全体にとっても好ましくない。◆求められる対応とは
これまで3つの問題を指摘してきたが、これらの問題を解決するには、どのような対応策が求められるだろうか。その1つが、非正規労働者の組織化(労働組合に参加すること)である。日本のコールセンターの平均組織率は23%であるが、国際比較をすると、各国平均は50%、米は10%、英は60%、仏は80%、独は50%である。国により制度や慣行が異なるため、単純な比較はできないが、日本のコールセンターの組織率は明らかに低水準にあり、ここに組織化の余地がある。では非正規労働者を組織化するメリットは何であろうか。
中村(2009)によれば、同じ職場で働く非正規労働者を組織化すれば、彼らの労働条件を改善するだけでなく、日常の不満や苦情を吸い上げ、働きやすい職場環境を整備することで、彼らの不満を軽減し、離職率を低下させることができる。彼らの離職率が低下すれば、従業員に費やした教育投資が無駄にならないし、新たに労働者を雇い、教育訓練するなどの追加的なコストを削減できる。さらに職場の中心的な存在である非正規労働者が意欲をもって働けば、生産性は向上するから、企業にもたらすメリットも大きい。また非正規労働者の組織化は、組合員の増加を意味するため、従業員の代表性という課題を抱えている組合にとっても大きなメリットになる5。
ただし正社員と非正規労働者が同じ組合に入った場合、両者の処遇格差(利害調整)も議論の対象になり得ることも忘れてはならない。例えば非正規労働者の賃金を上げるには、どこかに財源を求めることになるが、その矛先は正社員の給与原資に向けられるだろう。非正規労働者を組織化するということは、両者の利害調整を真剣に議論し、実行に移す覚悟が問われるのである。◆コールセンター職場が示すものとは?
私たちの身近な存在となってきたコールセンターであるが、その職場の存在が示すものとは、非正規化の進展、賃金格差の問題、離職率の問題、非正規労働者の組織化など、多くの問題を抱えている現実である。これらに共通するのは、正社員と非正規労働者の関係の在り方が問われているということである。今後もこの問題は大きな論点になっていくが、それは決して対岸の火事ではなく、実はどこの職場にも見られる身近な労働問題である。
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私は公務の非正規職員です。
組合を立ち上げ7年近くなります。
賃金格差・処遇の改善などを求め、組合要求・交渉してきました。この間の成果はやっと忌引き休暇と夏季休暇を得たこと(正規職員の比には大きくならずですが) それだけです。
働く誇りどころか、意欲さえも失いながら、疲弊し続けるこの街で、ほかに働く場所はありません。
そこを行政も巧く活用、雇ってあげる、的がありありと見て取れます。
正規と非正規の職員を超えての人間関係、
これは大きな問題です。
互いがどれだけ苦しみ、悩み、憎み、そして いたわりあっているのか、
行政のトップにある人はご存知なのでしょうか?
Posted by: さざなみこ | August 26, 2009 09:02 PM
私は非正規社員です。
職場での人間関係へ求めるものはもうありません。
おそらくこれからみんなそうなるでしょう。
経済的な問題で、労働者を非正規と正規にを分断したと思うのですが、日本の将来のことを考えると全員非正規にしたほうがまずしくても人間関係で救われるのではないでしょうか?
Posted by: MIYA | September 27, 2009 07:12 PM