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学力調査 50億円は教育条件整備に

「結局、なんのためにやるんですか?」―学力調査の結果公表の記者会見で、記者の質問に文科省の担当者は答えられなかったそうだ。「学力調査」はもう終わりにし、貧困な教育予算を増やし、子どもの貧困と教師の多忙化の解決を図ることに、しっかり向き合える――そういう新しい政治が必要だ。
平成21年度全国学力・学習状況調査 調査結果について
正答率の地域差固定 全国学力テスト結果公表 赤旗8/28
社説:学力テスト もっと有効な手だてを 毎日8/28
[全国学力テスト] 教職員の授業力向上を 沖縄タイムス8/28

 しかし、50億円あったら何ができるだろう。年間50万円の給付型の奨学金1万人分、教員(年収500万円として)千人分。 学校図書費を25%増額できる。耐震改修なら10数棟・・・

【社説:学力テスト もっと有効な手だてを 毎日8/28】  「携帯電話の使い方で家の人との約束を守っている子供の方が正答率が高い傾向が見られる」  全国学力テストの結果分析で、文部科学省はこのように成績と生活の相関を示す。「読書が好き」「宿題をする」「朝食を毎日食べる」「家の人に学校の出来事を話している」……。これらは「正答率が高い傾向が見られる」子供たちという。  大切だが、改まって全国調査をやり初めて知るような事柄ではない。  今年が3回目の学力テストはこれまでと同様、全国の小学6年生、中学3年生全員を対象に、国語、算数・数学の2教科で4月に一斉実施された。それぞれ知識の「A」と活用の「B」に分かれる。今回も成績は過去2回と大きな変化はなく「知識はあるが活用の方は苦手」という平均像がまた描かれた。  そして冒頭に例示したように、質問用紙で普段の勉強ぶりや生活のアンケートをし、成績と照合した。  肝心なのは、では子供をどう読書好きになるよう導くか、家族とのコミュニケーションをどう促すかなど、具体策だ。文科省は調査結果に授業の工夫例も付けてはいるが、学校現場に必要なのは、より細かく多様で有効な処方せんである。  そもそもこの学力テストは、国際学習到達度調査で読解力の成績が低下したことを契機に導入された。第1回で今回と同傾向の結果は出た。なのに毎回50億円以上もかけて全員参加方式の調査(悉皆(しっかい)調査)を続けるのは無駄と言わざるを得ない。昨年、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」もこれを挙げた。  学力実態掌握は抽出調査で足りる。悉皆だと順位を意識し準備学習する学校も出て、調査目的にそぐわなくなる可能性も生じる。文科省は「全国での位置が分かり、指導に生かせる」と言うが、膨大な答案処理で4カ月かかり、最終学年の2学期にこれをどう生かせよう。  学力とともに緊急の教育課題は、格差などによる「機会不均等」だ。こうした問題こそ速やかな調査と対策が求められる。実際、最近文科省の委託調査で、親の年収差で学力テストの正答率に差異があることが裏づけられた。小学校100校、保護者5800人を抽出した結果だ。  都道府県別順位にまた関心が集まりそうだ。ほとんどが平均正答率の+-5%以内で、ばらつきは小さいと文科省は説明する。市町村別などで正答率を公開し奮起させようとする地域もあるが、順位の上下だけに注目してもさほど意味はない。  衆院選後、教育政策の中で、このテストのあり方や、着実で有効な学力向上策について抜本的に論議されることを期待したい。
[全国学力テスト] 教職員の授業力向上を 沖縄タイムス8/28  全国学力テストの結果が公表され、沖縄は3年連続最下位だった。今回を含めて課題は明らかになり、全国一斉テストの役目は終えたといえる。学力向上に必要な基礎づくりに移行する段階にある。  経済協力開発機構(OECD)が実施する国際的な学習到達度調査で、成績が不振だった日本の学力問題がクローズアップされた。学力の底上げを狙い2007年から学テが実施されている。  国際基準に合わせるように、従来行われてきた「知識」を問うテストに加え、「思考力・判断力」を試す問題も出題されている。唯一無二の答えを解答用紙に書く知識偏重の学力観を大きく変えた。その意味で学テがもたらした効果は評価したい。  もちろん賛否ある。学テは毎回ほぼ同傾向の結果を得ており、毎年60億~70億円を使うのは税金の無駄遣いとの批判がある。民主党は政権交代後に全国一斉でない「抽出方式」へ転換する方針だ。自民は継続を主張している。  抽出方式でも傾向は把握できる。毎年行う必要はない。  学テについて多くが指摘する懸念は学校が序列化されるという恐れだ。文部科学省の行政資料は当然、情報公開の対象になるため、成績の公開・非公開をめぐる論議が各地で起きている。  現状のまま学テを実施して学校の序列化を生めば、教育現場はその対策に翻弄(ほんろう)されてしまう。結果を全面公開している英国では成績優秀な学校区に親が殺到するという社会現象を誘発している。地域社会が崩壊してしまう。  地域の中の学校教育をこれからも守っていきたい。学校と親の信頼は子の成長を確認し合うことで築かれる。それは一義的には教師がいかに多くの発見と感動を子に与え、好奇心と集中力を高める手助けをしているかではないか。  沖縄では約20年前から学力向上対策を推進し、全県的な達成度テストを続けている。それでも3年連続最下位という結果を教育行政がどう受け止めるかが問われる。  学校運営が弱いためか、教師に力量がないのか、全国最低の所得水準に起因するのか。犯人捜しはきりがない。  学テ連続上位の秋田県教育庁は「多忙化防止検討会」を設置し、事務の効率化を図っている。文科省などから依頼される調査・報告、会議の資料づくりに追われると、教師の本務である授業づくりに支障をきたす、という悪循環を断ち切るためだ。  教師の質向上を図る手だてとして参考にしてほしい。  日本の教育費(GDP比)は昨年、OECD加盟国の中で最下位だった。政府支出に占める予算割合は9・5%でOECD平均13・2%を大きく下回った。  これでは教育効果が高いとされる少人数学級の実現はおぼつかない。沖縄では臨時採用教員の多さが指摘されており、学力対策の上でも早期の是正が必要だ。  教員の授業力を高め、子ども一人一人に向き合える環境づくりが教育行政の課題だ。学テの結果に振り回されると子どもを見失う。


【正答率の地域差固定 全国学力テスト結果公表 赤旗8/28】
 文部科学省は27日、4月に実施された今年度の全国学力・学習状況調査(全国いっせい学力テスト)の結果を公表しました。1、2年目と同様に、今回も正答率の高低について地域差が固定している傾向が続いています。
 テストは小中とも国語、算数・数学の2教科で、知識を問うA問題と活用力を試すB問題に分けて実施。調査当日に参加したのは、小6、中3あわせて約223万人でした。
 都道府県ごとに集計した公立校の平均正答率の差は、もっとも大きかった中3数学Bで、19・8ポイント開きました。最小の小6国語Aでも11・0ポイントです。
 都道府県別正答率は各教科とも、前回上位をしめた県が今回も上位をしめ、前回最下位の県は今年も最下位でした。
 一方で、小6で下位から順位を上げた県がありましたが、調査を担当する同省の岩本健吾参事官は、「順位競争が目的ではないが、正答率が低い県はいっそう努力してほしい」と、学力テスト結果による競争を露骨にあおりました。
 同日、全日本教職員組合(全教)は、競争をあおり、子どもたちと教育への悪影響をもたらす学力テストの中止を求める談話を出しました。
 小森陽一・東京大学大学院教授など7氏の共同による学力テストの中止を求めるアピールには、6952人が賛同しています。

◆百害あって一利もない
 全日本教職員組合(全教)教育文化局長 今谷賢二さんの話 3年目を迎えた「全国いっせい学力テスト」の結果は、あらためて「悉皆(しっかい)調査で実施する必要がない」ことを示しました。「算数・数学の問題のとき方がわからないとき、あきらめずにいろいろな方法を考える児童生徒、算数・数学の授業で、公式や決まりのわけ(根拠)を理解しようとする児童生徒の方が、正答率が高い傾向」という結果分析が、58億円もの巨額の税金を使って調べなければわからないことなのか。大阪のように、競争を激化させることを意図した市町村別結果の公表が行われれば、弊害はいっそう大きなものになり、百害あって一利もない学力テストになります。
 「貧困と格差の広がり」が子どもと教育に大きな影響を与えているもとで、教育行政は何をすべきなのか、問われています。税金を子どものために、教育の充実のために使ってほしいというのが国民の声ではないでしょうか。

◆なんのためにやるのか
 「結局、なんのためにやるんですか?」―記者から鋭い質問が飛びます。答えられない文部科学省の担当者。全国いっせい学力テストの結果公表にあたっての記者会見でのことです。3回目となる全国学力テストの矛盾が改めて浮き彫りになりました。
 「上位の県が固定している。順位があがった県をどう分析しているのか」などの質問に、「経年的な分析はできない」というのが文科省の答えです。昨年は全体として問題が難しく、分量も多かったといいます。昨年度より今年、全体にわたって正答率が上がったことをどう見るか、単純に比較ができないのは明らかです。そのようなテストなら、毎年、すべての小中学生に実施する意味はどこにあるのか。「たとえば、一次関数を理解しているかどうか、定着度のどこに課題があるのかを調べる」といいます。しかし、そうしたことならすべての小中学校でテストを実施する必要はありません。文科省の担当者からは、どうして全国のすべての小中学校を対象にした悉皆(しっかい)調査でなければならないのか、説得力のある回答は最後までありませんでした。
 結局、いっせい学力テストのねらいは、すべての小中学校をランク付けするためだとしかいいようがありません。
 一人一人の子どもにとって、その子の力が伸びているかどうかをその時々に評価することは大切なことです。それは、担任の教師が目の前の子どもたちに行うテストで十分であり、全国いっせい学力テストのようなものは、子どもたちにとっては意味がありません。弊害ばかりの学力テストは一刻も早く中止するべきです。(荻野悦子)

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