小選挙区制で子どもの貧困、世襲議員が増加
子どもの貧困率の増加、世襲議員の増加・・・どちらも「小選挙区制」のなせる業ではないか。
15年前に、弁護士の志田なや子さんが参考人として小選挙区制の問題点について意見陳述しているが、そのとおりになっている。
参議院・ 政治改革に関する特別委 94年01月11日 意見陳述
国会議員(比例部分)を削るというのは、弱肉強食のアメリカ型社会を選択することだと思う。
・・・・「政治と金」の問題が、ひきつづき騒がしいが、小選挙区制で、民意をゆがめ、当選する政党・議員が固定化されていくので、買収(企業献金)が効果を発揮するのである。
北欧が社会福祉を充実させ、高い生産性を確保しているが、国会も地方議会も、比例代表制である。
意見陳述から関係する部分をようやくすると・・・・
①民意をゆがめる
イギリス 保守党が4割前後、労働党が3割前後、自由民主党が2割前後の得票。小選挙区制のため、保守党が過半数の議席をとって政権を担当。他方、自由民主党は2割前後の得票で3%の議席。世論調査では、小選挙区制の問題点について、半数の支持も得ていない政党が政権を担当すべきではないとの回答が66%。
②当選議員の固定化
小選挙区制では当選政党が固定化、大部分の選挙区が無風選挙区化。イギリスでもアメリカでも再選率は約九割。無風選挙区での選挙が事実上意味のないものに。当選政党以外の政党を支持する有権者が自分の意見を代表する議員を出せない。
(日本では、地盤、看板、資金力のある世襲議員の増加として現れている)
③貧しい人達の排除
アメリカでは投票率は三割台にまで低下。貧しい人たちは民主党、共和党のどちらに投票しても変わらないと政治に絶望して投票にすら行かない。
経済学者ガルブレイス教授は著書「満足の文化」の中で、国民の中では少数派ではあるが投票者の中では多数派である、そういう上位2割程度の満ち足りた人々、この支持を得て行われる政治が、ホームレス、飢餓、教育の不備、麻薬の苦しみ、貧困など、いかにアメリカ社会を傷つけ破壊しているかと厳しく批判。
④子どもの貧困率
ユニセフの1993年度版の「国々の前進」
先進資本主義国の中で貧困ライン以下の子供の割合が最も高いのがアメリカ。2位がカナダ、3位がオーストラリア、4位がイギリス。はいずれも小選挙区制。
(日本は一人親家庭では第二位に「躍進」)
【参考】
『アメリカで「革命」が起きる ワシントン解体を迫る新ポピュリズム』、
ケビン・フィリップス著、1995.6.9発行、日本経済新聞社、2300円
著者は二大政党制について「勝利者たちが騒々しく変化をがなりたてた。しかし主な現実はといえば、特殊利益グループにカネを迫り、その言い分を立法化する政治家の一団が一方から他方に変わったに過ぎない。」
「多数の投票者は、新しい時代の到来を見る人はほとんどいない。・・・95年3月のタイム誌の全国調査によれば、アメリカ人の56%は依然として新たな第三党を望んでいた」
『ニューズ・ウィーク』96年11月13日
「小選挙区制のもとで保守二大政党制が固定化しているアメリカでは、貧しい人々や社会的弱者はどちらに投票してもたいしてちがいはないと政治に絶望して投票に行かない。投票率は年々低下し、大統領選挙と同時に行われる連邦議会選挙で50%、連邦議会選挙が単独で行われる中間選挙では30%台に下がっている。投票率は、収入によってまったくちがう。年収1万5000ドル以下の低所得層(下位20%程度)の投票率は、1988年14%、92年11%、94年は7%に下がっている」。
レスター・サロー『資本主義の未来』
「低所得者層は投票率が低いことから、憲法でどう保障されていようとも、事実上、平等な投票権をもってはいない。低所得者層が多数投票する国では当然ながら、政府は低所得者層の所得を押し上げ、高所得者層の富を押し下げることに積極的に取り組んできた。ヨーロッパの福祉制度がアメリカと違っているのは、まさに福祉制度がなければ貧困に苦しむ人たちが投票しているからである」(313ページ)
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