地域循環型経済と中小建設業
建設政策研究所・副理事長の辻村定次さんと2名の女性研究員の方が、9日から3日間、地方の公共事業と建設業の状態についての調査で来高。昨日は、午後から市と勉強会。夜は、「中小零細企業の会」の主催した勉強会で調査の内容も踏まえて講演。
ヨーロッパ、韓国では、建設業がものづくり、まちづくりを支える産業として位置づけられている。しかし、商業でも大型店舗と地元の商店の役割が違い、振興計画があるのに、建設業は、ゼネコンから地元の零細建設業が公共事業の枠の中で一くくりで論じられ、産業として振興計画の対象とされてないし、検討する部署すらない。・・・など目からウロコの話でした。
以下、私が学んで講演内容の備忘録
【高知における中小建設業の振興のために 講演大要】
東京にいると、地方の建設業や建設労働者の実態がなかなか掴めないので、高知の実状を詳しく知ることを目的に来た。
本題に入る前に自己紹介をすると、学校を出て飛島建設に入り、最初の現場が高知。四国のチベットといわれた大豊村の永渕で国道32号線の拡幅工事に従事した。半年位は「大変なところにきてしまった」「いつやめようか、こんなはずじゃなかった」と考えていた。しかし、現場の労働者と接し、カルチャーショックを受けた。建設工事は大変な仕事だ、頭がよくないと出来ない仕事だと思った。道路の下を流れる吉野川の中腹に杭打機を据える作業など、どのように据えるのかと思っていたら、簡単に据えつけてしまう。仕事ができるとはこういうこと。そして仕事が終わると損得抜きに人のために行動する。そういう人が建設業の労働者に多い。しかし、その割には働く環境が極めて悪い。今も悪いが40年前はもっと悪い状況だった。現場で働いている人は、地元の農家の人が多く、その方たちに大変お世話になった。社会の仕組みとか全然わからなくて、なぜこんないい人が貧しい生活をしないといけないのかと考え、半年たったころ建設会社を辞めたらダメだと考え出した。建設労働者の役に立つために働くことをライフワークにしようと、建設現場には文化的なものがないので現場にわらび座の公演を実施する運動をしばらくした。その後、現場に役立つ労働組合を作りたいと思い、まず飛島建設の中で労働組合をつくる活動を始めた。10数年前に会社をやめて、建設政策研究所に入り、あらためて建設労働問題などを勉強してきた。私の人生観を変えてくれた高知は私にとって第二のふるさとであり、その高知で話ができるのは大変光栄である。
今日の集会の主催が「中小零細企業の会」となっているが、すばらしい会ができたと思う。これからの地域の発展は大企業や行政に依存する時代ではなく、みずから立ち上がり、地域の中を変えていく運動が大事な時代になっている。これまでの新自由主義的経済が破綻し、新しく地域から内需拡大型の経済をつくっていく、そういう時代の幕開けだ。地域の中小・零細業者が団結し、立ち上がって、自らの職域を守っていく時代。「中小零細企業の会」は大変良いタイミングでつくられたと思う。
今日の午後、高知市役所で担当の方と懇談会をもった。印象としては、東京など都市部の自治体と比べ、まじめで地域の業者を守っていくという姿勢を感じられた。しかし、残念ながらどのようにして守っていくかの展望が見られなかった。行政だけではもう展望をつくれない。地域で働いているみなさんが一緒になってつくっていくしかないのかなと思う。
これからの時代は「地域からものづくりを、産業の振興を図る新しい内需拡大が求められる時代」になっている。去年、アメリカ発の金融危機、投機マネーの暴走で経済が破綻。政府は「日本には影響が小さい」と言っていたが、先進国で一番経済が落ち込んでいる。震源地のアメリカよりも落ち込んでいる。
なぜ日本の実体経済がこんなに落ち込んだのか? 日本の経済は、これまで自動車、電機、機械など一部の巨大輸出産業によって支えられてきた。輸出先の中心はアメリカ。そのアメリカは金融・投資型経済で世界から得た富を国内で消費した。国内でも証券やカード社会で実需以上に無理やりものを買わせた。お金の無い人にもローンや証券化で車や住宅を売った。それが破綻するとアメリカ向け輸出に依存していた日本の自動車や電機産業などが大変な損失をうけた。日本国内においても金融や証券業務の規制緩和が進み、世界の投機マネーが日本国内で動き回る経済をつくった。それが破綻して投機マネーが一挙に日本から脱出し、不動産投資などが急速に縮小し、マンションなどを建設していた建設業者が倒産するという事態になった。
今、政府や財界も金融や輸出産業中心ではなく「内需拡大を」と言い出した。イタリアで行われている先進国首脳会議でも各国で「内需拡大」に取り組む決議を行った。歴史的に見て経済が不況局面になった時に必ずでてくるのが内需拡大。1980年代前半の不況局面においては、アメリカから日本の内需拡大を要請され、都市再開発や不動産投資、民活型投資に走りバブル経済を招いた。90年代初頭のバブル経済の破綻後は、やはりアメリカから10年間で630兆円もの公共投資するように言われ、財政赤字を省みず公共事業をどんどんやった。そのツケが今日の国・地方自治体の財政危機に繋がっている。今日の経済危機打開のためには、過去の内需拡大の失敗の教訓を生かした内需拡大を行っていく必要がある。それが地域からものづくりを産業の振興を図る新しい内需拡大である。
日本の地方自治体を見た場合、繁栄しているのは東京圏だけ。大企業の本社が集中し税金が入ってくる。国は、東京を国際金融都市にすると、大規模な都市再開発政策を行い、高速道道路などの公共投資を行っている。しかし、東京はいまや超高層ビルばかりで庶民が住めない都市になっている。ヒートアイランドと称し、超高層ビル群が海からの風を遮断し、夏は40度くらいになる。こんな都市をつくってしまった。またその結果、高知県など地方都市に財源が行き渡らず、地方経済が疲弊している。
内需拡大は、都市部だけの繁栄ではなく地方がそれぞれ繁栄する新しい内需拡大にしなくては、日本経済のバランスよい発展ができなく、全国的に雇用を守ることができない。
今なぜ、地域からものづくり産業を発展させる必要があるのか? もちろん金融は大事だ。しかし、金融の本来の役割は、ものづくり産業の資金が順調に回転するようにお金を貸す血液の役割を果たすことである。いま、その銀行がお金を貸さないで、お金を投機にまわしている。それが今日の金融危機をもたらした。経済は金融中心でなく、「ものづくり」が経済の中核とならなければならない。ものづくりといえば製造業。そして建設業もものづくりの本家といえる。その本家が大変になっている。これをどう本来の姿につくり変えていくか。本来、金融で得た富は富ではない。本当の富はものづくりから生まれる。そのものづくりを、大企業に依存するのではなく、地域からどうつくっていくか。このような新しい内需拡大が求められている時代になった。
これまでのように大型公共事業をどんどん行うような財政状況ではない。国と地方で1千兆円にものぼる借金をかかえた状況で、上から内需拡大をする時代でもない。またそんな事業では雇用を創出することもできない。
象徴的なのは全国的にも問題になっている東京外郭環状道路の建設。東京都内の16kmの区間。世界一の直径16mのトンネル。1mあたり1億円の工事費がかかるといわれているが経済危機対策にもならない事業。用地買収だけで2、3年かかり、内需拡大にも雇用創出にもならいない。政府はこの事業を経済危機対策の一環として急遽着工させた。このような経済危機対策では中小企業の仕事は増えないし、雇用効果も望めない。
国と地方の関係では、国が大きな力で地方自治体を従わせようとしている。国が地方を締め付ける大きい力がお金。小泉内閣の三位一体改革で、財政力の弱い地方ほど被害にあった。日本の税金の仕組みは先進国と比較して国税部分が多く、地方税が少ない。国に一旦税金を納めて、それを地方交付金や補助金として地方に出す。この操作によって地方自治体をコントロールしてきた。小泉内閣はそういうやり方は間違いだといって、税源をもっと地方に移し、そのかわりに地方交付金、補助金を減らすがトータルでは変わらないといって三位一体改革を実行した。しかし、実際には地方交付金や補助金だけが減らされ、中山間地の地方自治体ほど厳しい財政状況になった。もともと財政力の弱い自治体が地方交付金でバランスをとっていたにもかかわらず、地方交付金をどんどん締め付けた。このような国が財政政策により地方をしめつける仕組みを転換させる必要がある。
国際競争力を強化するといって大都市に財政力を集中させ地方を切り捨てる政策の転換が必要。東京都はお金がありあまっている。だから東京都がみずから銀行を作ったりしている。東京にオリンピックを誘致して、それを名目にさらに大規模開発を行おうと考えている。一方、都民の一人当たりの社会保障費は、全国最低クラスになっている。都市部では財政は豊かだが住民一人あたりの社会保障はまずしい。住民から見ると大企業にだけは様々な特典を与え、企業活動がスムーズにできるように道路や港湾などの基盤整備の公共事業をしているところ多い。このような財政の使い道を都市から地方に、大企業から中小企業・住民向けに転換させる必要がある。
地方自治体が財政再建の柱に企業誘致を掲げているところが多い。高知は企業誘致しようにも大企業が乗ってくれない。しかし、今は自治体がお金を使って基盤整備して外から企業を誘致する時代でもない。営利を目的とした企業だから経済状況や国の経済政策が変われば、簡単に撤退する。企業が撤退するとまちは廃墟になる。そんな自治体が全国にいっぱいある。高知県は、外から企業が来てくれず、ある意味よかった。
また、開発型事業で雇用を拡大しようとする自治体が多い。高知市の財政再建プランを見ると、都市再生という項目がある。開発型事業で雇用や税収拡大を図ろうと考えているようだが、そんな時代ではない。開発型事業は大手ゼネコンやデベロッパーが喜ぶだけだ。このような地域にお金がまわらない事業では地域の経済の再生はできない。
あらためて、地域の特徴ある産業をどう発展させていくかが大事だ。高知ではどんな産業を育てていくかが問われている。私は高知県の特色ある産業として1つは林業。そして農業、建設業だと思う。もちろんそれだけではだめだが、これら産業が基盤となって、ここで基本的な雇用をつくり、他の産業を発展させていく必要がある。
建設事業は経済波及効果が高い。しかし大規模事業になれば高くない。なぜなら大規模事業ほど労務費より材料費の占める割合が高くなる。その材料も鉄、セメントと大企業が作っている製品が多い。そのため地域に波及効果が及ばない。中小規模の事業は労務費の比率が高い。従って雇用創出効果も高い。材料も鉄筋とか木材とか地域で産出した製品を使うことが多い。そのため地域内での経済波及効果が高い。
地域建設業の振興が大事だ。規模は小さいが中小建設業者はきちんと労働者を雇用しているところが多い。企業規模が大きくなるほど下請け業者に依存し、現場労働者を直接雇用していないところが多い。零細業者では受注した工事を直接施工するのできちんと労働者を雇用している。
このような地域建設業は地域の経済発展にとって重要な産業である。地域建設業に投下した資本は地域内でお金が循環していく。このような地域内循環経済が、新しい経済の柱とならなければならない。
高知市の経済政策には地域内循環型経済の位置づけがない。経済政策としては、地域に根ざした業者を育成し、地域で循環させる仕組みが必要なのだがその展望がない。市との懇談の中で県の産業振興計画の説明を聞いて驚いた。県の計画では建設業者や就労者を他産業にどう転出させるか、農業、林業、介護事業などに転換させることが計画の柱となっている。地域循環型ものづくり経済をつくる上で、地域建設業をどのように据えるのかが問われているにもかかわらず、そこが見えてなくて、逆に建設業を淘汰する対象と捉えている。建設業を淘汰したら建設労働者はどうなるのか。いっそう失業者または半失業者となるのではないか。災害が多い県なのに、今後緊急の災害復旧をどうするのか。地域建設業の存在を軽視しては住民の安全も守れない、雇用も守れない、そのような計画が県の産業振興計画だ。県の計画のすべてというわけではないが、地域内循環型経済発展の方向が見えていない計画だと思われる。
県の計画では地産池消ということも言っている。また聞きなれない言葉だが地産外商とも言っている。地産外商が悪いとは言わないが、地域の中で基幹的産業が再生し、地域内で経済がまわっていく仕組みをつくった上で地産外商が生きてくる。例えば観光開発を重視しているが、基本的な産業である林業、農業、建設業が自立していないままでは経済が再生していかない。そこをやらないで、新分野との挑戦という政策では逆効果になる可能性がある。
その他、市役所との懇談会で感じたことをいくつか述べてみたい。緊急対策として中小零細業者向けの事業を前倒しで発注することを考えている。6月補正予算が通過したので、年度前半で公共事業の9割を発注するといっている。ただ、年度後半は大丈夫かと言う気がする。もう少しバランスをとらないと急にドッと発注されると受注側の体制も大変ではないかと心配する。行政の担当者はまじめに地域建設業のことを考えている人が多いのではないか。ただ市長の戦略がハコモノ行政にこだわっているため、担当者も困っているような気がする。市長が都市再生になぜこだわるのか。大手ゼネコンや不動産会社など様々な圧力があるのではないか。そこを見極めて運動をすることが必要だ。
もうひとつ気になるのは公共事業の発注政策。工事量が少ないという問題もあるが、驚いたのは最低制限価格ぎりぎりで受注している業者が多いことである。最低制限価格も低い。80%~83%程度ではないか。今、多くの自治体では最低制限価格を90%にしようとしている。高知市はまだその手前のところで努力している。予定価格自体が下がってきており、その価格ら2割も削って受注したら利益が出ないのは当たり前だ。予定価格が適正価格というのなら100%近くで受注してもおかしくない。高知市の競争政策はすこしやりすぎのような気がする。
予定価格の中で設計労務単価づくりにはいろいろ問題がある。不況の中で労賃が下がってきているにもかかわらず、その下がった労賃を調査して国は設計労務単価にしている。これではやっていけないと、独自の設計労務単価づくりに取り組んでいる自治体もある。大手ゼネコンの団体、日本建設業団体連合会も、設計労務単価が低すぎると言っている。実際の賃金の調査でなく、標準生計費とか、家計のあるべき収入を積算の根拠とすべきと提言している。また、設計労務単価は積算のためにあるだけで、実際の労賃を拘束するものではないと国土交通省も高知市も言っているが、日建連は実際の賃金に影響を与えているとも言っている。民間の工事も設計労務単価を参考にしているので、設計労務単価が下がると民間工事の積算も下がる、といっている。国交省の設計労務単価は地方自治体でも準用してくださいといっているが、必ずこれを使って積算すると義務づけているわけではない。
高知市発注の工事は中小規模の工事が多い。小規模の工事は、資材を少量で購入するので平均より高い。設計単価は、材料を言って程度使用することを前提にした価格である。材料費、労務費、経費についても大規模工事と小規模工事が同じ基準でいいわけがない。この点でも「会」がとりくむべき課題がある。
公共事業政策の中では、全体の発注量が少ないなかで、Bランク以下が少ない。基本的にランク分けした業者数に見合う発注量がないと競争にならない。Cランクで100社あるのに発注が50では、0か1か。大変な過当競争になる。発注者がランクを決めたからには、ランクの業者が生きていけるように業者数と発注金額・件数のバランスを考えないといけない。
小規模な工事はお金がかからない。総合あんしんセンターの事業金額は40億円。市の担当者の話ではすべて市内業者に発注したとのことだが、40億円も出して行う事業は緊急性を要する事業なのか、これを既存施設の維持・補修に分けて出すと雇用効果は断然ある。今日の経済危機の状況ではそういう発想が必要である。
不要不急の大型事業は休止、中止して、その事業費を、細かい災害対策、維持補修など中小業者の仕事確保にまわす、公共事業の思い切った転換がいま必要である。
では、中長期的にどうするか。
当面の危機を切り抜けても、中長期的には後継者もいないし、若者が入ってこない。公共工事が増える見通しがない。展望がもてない。これが中小零細業者の状況ではないか。やはり、国や自治体の中小建設業振興計画づくりが求められている。高知市は庁内に建設業振興課をつくるべきだ。製造業や商業には振興課があるのに、建設業はない自治体が多い。地域建設業の問題をどこで議論しているかといえば契約課や工事課で対応している。中長期的に建設業について考える部署がない。高知市の地域経済の展望を考える上で、そうした部署をつくり、行政と業者が一緒になって将来展望を考える必要がある。
レジュメにいくつかの資料を添付しているので紹介する。
① 政府の危機対策(資料5ページ)の内容の紹介記事。
政府の危機対策も良く見ると中小建設業向けの政策が多数出されている。今回の市への質問項目は国の危機対策の内容を並べ、市がどのように実行しようとしているのか聞きただした。この内容を国や県の補助金を使用して市がキチンとやるだけで中小建設業は相当潤う。この実施状況をキチンと追跡することが必要。
② 中小企業向け発注政策では、市は「件数の9割、金額の8割が中小零細。全国に比べても高い」というがあたりまえ。高知には3億円以上の資本金の業者がほとんどいないのだから。ただ中小企業といってもきめ細かく零細業者と言われる所にまで事業を出していくことが今求められている。
③ 国土交通省の入札発注制度についての通達(資料7ページ)。
低入札調査基準価格。最低制限価格の基準価格にもなる価格なのだが、予定価格の70~90%とするよう指導している。国も最低制限価格を90%と言っているのだから市に対して強く求めることが必要。
④ 国の経済危機対策には学校の耐震化も入っている。
市は学校の耐震化に努力している。今年度に入って1千万、2千万円の学校耐震補修工事が発注されている。今後、小零細業者が耐震補修事業にどうかかわっていくか。特殊な工事だから、工法も研究していく必要がある。受注できる方向で「会」としても努力しなくてはならない。
⑤ 建設関連資材部門の減産が続いている。(新聞報道)
自動車や電気業界は生産回復の見通しが出ている。政府は減税、エコポイント、高速道路割引など税金で自動車産業、電気産業の面倒みている。建設業は引き続き低迷し、その結果資材業界も低迷している。
⑥ 各県で県産材に助成。
建設業から林業に転出する政策ではなく、建設と林業が連携してやっていくことが大切。県産材の利用に助成し、リンクして仕事をすれば補助を出す仕組みを持つ自治体もある。高知県は建設業をなくする計画だが、長野県では、木の橋や法面工に木材を使って施工している。建設業と林業の組み合わせだが、長野県と高知県は中山間県で似ている。高知県でも積極的な林・建連携が必要だ。
最後に、行政は公共事業政策だけでなく、中小建設業への直接的な経営支援施策が求められている。ただ、国がやっている経営資金融通対策の高知版をつくる程度ではなく、市が独自にやれる経営支援を考えるべきだ。中小零細建設業が多いのだからこれらがバタバタと倒産すると市の経済全体が疲弊する。直接支援の対策を考える必要がある。
これからの経済は地域からつくっていく新しい経済づくりが必要。そのときに、中小委細業者が団結して行政に迫る。迫るだけでなく提言をしていく。新しい経済づくりに、業者、労働者、市民が一体となり行うものづくり、経済再生に向かうことが必要な時代になっている。「会」をどう発展させていくのか、その存在意義を確認しながら、高知から全国のモデルとなる運動をつくって下さることをお願いして話を終わりたい。
【質問に答え】
・小規模工事の予定価格について
工事規模による設計単価にすべき。国の積算方式は、工事規模により経費率で差をつけているのだが、材料費、労務費とか直接工事費の単価については差をつけてない。小規模事業の場合はあげていくことが必要。
労働者を直接雇用した場合、労務費の他に、法的福利費や福利厚生費が必要となる。しかし、積算では法定福利費は工事費の率で計算されるのでいくら積算されているのかわからない。そもそも社会保険料の料率は国で定められた基準なのだから、法定福利費は、消費税のように請負工事費と別立てにして算定する必要がある。率でなく金額で入れる方法も考えなくてはならない。
また積算労務費は日雇い労働者の賃金として計算されている。仕事がないと給与がないことが前提として積算されている。そのため、労務費には労働基準法で認められた有給休暇や育児休暇分の労務費は含まれていない。行政側が労基法を守って積算してないことになる。受注業者が法律を守って労働者を雇用すると持ち出しとなる問題がある。このような問題も改善が必要。
・入札コストだけでなく、全体コストで考えるべきでは
コスト問題については、「入札価格が安ければよい」と考えていいのか。構造物の本当のコストは、ライフサイクルコスト。いくら入札価格が安くとも、30年もつものが10年しかもたない。維持補修にものすごく費用がかかるのでは結果的には高くつく。
行政と交渉するときには、「コストをトータルコストで見てほしい。労務費を削って、優秀な職人がかかえられない単価では、いい仕事ができない」と主張する必要がある。
【講演レジュメ】
高知における中小建設業の振興のために
1.地域からものづくりを産業の振興を図る新しい内需拡大が求められる時代に
1)新自由主義的「構造改革」が破たん
①金融・投資マネー暴走経済の破綻
②自動車や電機産業など輸出産業に支えられた経済繁栄の破綻
2)地域からものづくり産業の振興で地域内の経済循環を図る経済に
①国が地方の行財政を指示し締め付ける時代ではない
・三位一体改革と称して財政力の弱い地方自治体の政策の転換
・都市部に重点化し中山間地方を切り捨てる政策の転換
②外部から産業を誘致する開発型行政の転換を
・外部産業は地域に根付かない
・開発型事業では地域の雇用創出に役立たない
③地域の特色ある産業、地域の雇用を創出する産業の育成を
・地域産業振興のための中長期計画が必要
・投下した資本が地域内を循環し、地域の所得が向上する経済を
3)地域に根ざす中小建設業の振興は新しい経済成長の柱の1つ
①地域建設業の仕事は経済波及効果が大きい
地域産材、地域労働者を活用
②地域建設業の存在は地域住民の身近な福祉や安全、生活向上に役立つ
・住宅や公共施設の点検、維持補修、リフォームに役立つ
・災害防止や緊急時の災害復旧に役立つ
③地域建設業むけの公共事業を重点に発注
・大きな財政負担にならない
・投資資金が地域の所得増大につながる
2.高知市の聞き取り調査を参考にどのような政策が必要なのか
1)質問項目に対する回答内容
2)求められる政策内容
①財政赤字策を自己目的にするのではなく住民生活向上を目的に財政政策を行うべき
②財政健全化のためにも不要不急の公共事業を休止または中止し、緊急に必要な事業に振り向ける
③開発型公共事業から維持補修、災害予防、農林業など振興などに転換
④公共紙業発注政策の公正な競争、中小零細業者振興の立場からの転換
・小規模事業の積算単価の見直し、設計労務単価の見直し
・ランク別業者数に見合った発注件数づくり、ランク内での公正な競争を
・予定価格の事後公表が望ましい
・最低制限価格の引き上げを
⑤行政の直接的な中小零細業者、建設就労者への支援策
・建設業振興課の必要性
・公契約条例制定の必要性
« 委託業務 疑わしきは採用せずが本来の姿では | Main | 政党助成金増額 インド洋給油黙認 民主党の本音 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 202408地方議員学習交流会資料+α(2024.08.15)
- 「原発」固執は、脱炭素の障害 再エネ普及の足かせに (2024.08.08)
- 「消滅自治体」 なぜ「若い女性減」だけ? 若い男性も同様に減少(2024.06.01)
- 2405地方議員学習交流会・資料(2024.05.16)
- 地消地産、医療介護福祉 産業政策で党県議団の提案生きる(2024.05.09)
「高知市政」カテゴリの記事
- 「よいところは継続」 桑名新市長の当初予算に賛成 日本共産党高知市議団‣声明(2024.03.23)
- キャンセルカルチャー 「大衆的検閲」の行く先(2024.03.13)
- 高知市長選 なせ岡崎市長の支援を決めたか(2023.10.04)
- 2023年3月 高知市議会メモ(2023.05.15)
- 生活保護 冬季加算「特別基準」(通常額の1.3倍) 高知市「抜かっていた」「速やかに実施」 (2022.12.28)
「雇用・労働」カテゴリの記事
- 「消滅自治体」 なぜ「若い女性減」だけ? 若い男性も同様に減少(2024.06.01)
- 地消地産、医療介護福祉 産業政策で党県議団の提案生きる(2024.05.09)
- 日本のジェンダー平等を考える ~家族モデル、政治、教育、賃金格差、DV(メモ)(2024.05.05)
- 最高裁元判事のコメント・考 ~「司法における固定観念化とジェンダー差別」克服の重要性(2024.05.04)
- 「新しい生活困難層」 正規雇用に「内付け」された日本型生活保障の崩壊と改革展望(2024.04.25)
Comments