国保料の上限を80万円に 厚労省検討
9日の毎日に国保記事の訂正がのっていた。8日の記事で、「寝屋川市では所得400万円で設定すると保険料が80万円を超える」と報道したのが、「上限の定めがあるため65万円」の誤りというもの。
しかし、これが誤りにならないことが検討されているようだ。上限を80万円に引上げるというもの。
国保保険料、上限引き上げ=中所得層の負担軽減-厚労省検討 時事 6/13
一見、道理があるように見えるが、上記のように、そんなに所得がなくても最高額になるのが国保である。
少子高齢化でこれから国保会計の負担は急速に悪化するだろうから、負担軽減にはならず、全体として国民負担を増やすだけになるだろう。
国保が「酷保」となっている実態を毎日が6回にわたって特集している。
国民壊?保険:/1 家計思い受診拒んだ妻
国民壊?保険:/2 高額なベッドタウン
国民壊?保険:/3 高齢化、人口減で格差
国民壊?保険:/4 観光地、金融危機が直撃
国民壊?保険:/5 親の苦境、抱え込み
国民壊?保険:/6止 収納率下がれば「罰」
医療保険制度は逆進性がきわめて高い。所得の低い国保での負担が重い。また協会けんぽは所得に関係ない一律の保険料率となっている。ともに限度の上限がある。
こうした全体構造にメスをいれ、累進性にもとづく、社会保障の制度として再構築が必要だ。
まずは、国保会計への削減してきた国の負担の復活、子どもの医療費無料化制度や収納率低下に対する理不尽なペナルティーの廃止が先決だろう。
【国保保険料、上限引き上げ=中所得層の負担軽減-厚労省検討 時事 6/13】 厚生労働省は13日、自営業者らが加入する国民健康保険(国保)の年間保険料の上限額(現行69万円)を2010年度、大幅に引き上げる方向で検討に入った。中小企業のサラリーマンらが加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)と同額の82万円を選択肢の一つとする。高額所得層の保険料を増やすことで、国保財政の悪化により最もしわ寄せを受ける中所得層の負担軽減につなげる狙いがある。(2009/06/14-02:33)
【国民壊?保険:/6止 収納率下がれば「罰」6/13】 ◇自治体、くすぶる不満 「このままでは収納率が90%に届かず、交付金が削減されます。納付にご協力を」。那覇市の翁長雄志(おながたけし)市長は5月下旬、国民健康保険(国保)料を滞納する16世帯に自ら電話をかけた。5月末に徴収を終える08年度収納率の試算は89・8%。90%を割ると、収納悪化のペナルティーで国に普通調整交付金を削られる恐れがあった。 その結果、収納率は90・56%に上昇。交付金約1億8700万円の削減を免れ、担当者は「どうにか切り抜けた」と安堵(あんど)した。削減ラインは加入者の規模に応じて90~93%の幅があるが、全国で約4割の自治体が危険ラインの90~94%に位置している。 毎日新聞調査で、08年度保険料が全国最高の大阪府寝屋川市。収納率引き上げのため、例年5月は幹部職員約60人を滞納世帯の戸別訪問に動員する。 07年度収納率は85・5%で、交付金の11%削減対象だった。市は累積赤字解消のため、同年度に一般会計から1億5000万円を繰り入れたが、交付金の減額は1億7800万円。09年度は値下げするが、担当者は「現行通りのペナルティーでは、とても会計がもたない」とうめく。 国保を巡る国と自治体のすれ違いは、収納対策に限らない。 大阪府内で最初に新型インフルエンザ感染者が確認された豊中市は5月下旬、無保険の344世帯に短期保険証を交付した。不安拡大への対応策だったが、厚生労働省は21日、府を通じて「法令違反の疑いがある」と指導。同じ措置を取った堺市にも同様だった。 同省は、特別扱いは専門の発熱外来に来た患者に限るよう通知。「(豊中市のように)接触もないのに一律交付するのは問題」(保険局)とする。しかし自治体には「市民の安全を考えた措置。いったい何が悪いのか」と制度ありきの国に対する不満がくすぶる。 国保の現状に対し、立教大の芝田英昭教授(社会保障論)は「運営主体は市区町村。国は国民の健康を守る責務を財政的な裏付けで果たすべきだ」と語る。 国保のほころびが、さまざまな角度から指摘される。国民皆保険が今、問われている。=おわり
【国民壊?保険:/5 親の苦境、抱え込み 6/12】 ◇高校生は保健室頼り 「息子はアルバイト先の源泉徴収で税金も払っているのに、保険証を持てない。親のせいといっても……」。千葉県の海沿いの町に住む自営業の男性(43)が表情を曇らせた。 数年前に事業が傾き、自宅も売却。税や国民健康保険(国保)の保険料も全額は払えないが、一部を納めて期限1カ月の短期保険証をもらってつなぎ、無保険転落を防いでいる。 無保険だった昨年7月、高校3年の長男(17)と1年の長女(15)がはしかにかかった。2人を病院に連れていくと、治療費全額の3万円を求められた。もっと重病で入院も必要だったら……。「払わなければ即、無保険。いつも不安です」と話した。 今年4月施行の改正国保法で、中学生以下には保険証が一律交付された。しかし、高校生世代は、18歳未満が児童福祉法で「子ども」とされる年代なのに対象外だ。毎日新聞の3月の全国調査で、無保険の高校生世代は4300人を超える。 大阪府内のある高校の養護教諭は、体調不良で保健室に来た生徒に受診を勧めるが、気がかりな時も多い。「診断結果の説明が中途半端なこともある。実は行ってないんじゃないかって」。今春卒業の女性(18)も在学中、よく保健室のベッドに頼った一人だった。 中学3年の時に両親が離婚し、パートで家計を支える母と弟2人、祖父の5人暮らし。高校1年の冬、体がだるいと訴えたが、母から無保険と知らされた。小遣いと祖父に借りたお金を握って受診すると、1万円を超えるインフルエンザの治療費を全額請求された。 母は「食費も学費もある。とても保険料まで払えない」と悲しい顔をするのが常だった。女性は当時、そんな家庭の事情を誰にも話せなかった。 生活苦で高校を中退する生徒も多い中、女性の元担任は「あの子は、厳しい中でよくがんばった」と振り返る。卒業後は正社員になり、無保険から解放された。だが、16歳の弟はもとのままだ。「丈夫だけど、もしを考えると心配」とつぶやいた。
【国民壊?保険:/4 観光地、金融危機が直撃 6/11】 ◇水揚げ激減、納付倍増 大分県の別府温泉。個人タクシー運転手の男性(58)は6月の金曜深夜、繁華街で4時間待ったが、乗客は一人もなかった。 別府市の観光宿泊客は1976年の613万人をピークに、07年は383万人。それでも、男性はなんとかやってきたが、昨秋の世界金融危機で風向きが変わった。07年は21万人に達した韓国人客が来なくなり、地域経済を直撃している。 こうした同市の個人事業主らにのしかかるのが、毎日新聞の全国調査で5番目に高かった08年度国民健康保険(国保)の保険料だ。世帯所得200万円の4人家族モデルで、48万3400円。前年度比14万3800円と急上昇した。市が9億円を超える累積赤字の解消に乗り出したからだ。 昨年6月、市が全世帯に納付金額を示した書類を送ると、「なんでこんなに高えんよ」「払いきらん」と怒りの電話が殺到した。 男性は昨年2月、軽い脳梗塞(こうそく)で倒れた。入院し、3カ月はろくに働けなかった。入院費は国保を使ったが、その後は保険料を払えず無保険になった。 すると同5月、長男(13)が下痢と嘔吐(おうと)を繰り返し、「おなかが痛い、痛い」と訴えた。次女(20)と妻(45)も同様の症状に。あわてて保険料を一部払って短期保険証の交付を受け、長男ら3人は病院へ駆け込んだ。 翌月に08年度分の保険料の通知が届く。金額は年約60万円と前年度の倍近かった。1日の水揚げは目標5000円だが、届かない日も多い。高額な保険料には「首くくろうごたる(首をくくりたくなる)」と思う。 八女茶が特産の福岡県矢部村は、65歳以上の高齢化率が43・7%(09年4月)に達する。本紙調査で保険料は全国3位の49万800円。若い世代の負担が大きい。 5人家族で約50万円を払う林業の40代男性は、「大変ですよ」とため息をついた。材木価格低迷で仕事は少なくなり、日給も1日1万円程度に減った。保険料の支払いに苦しむ。「親に借りたり、必死ですよ」。小中学校の同級生の8割は、村を離れていった。
【国民壊?保険:/3 高齢化、人口減で格差 6/10】 ◇「国で運営一元化を」 北海道の市町村が所得200万円の4人家族をモデルとした毎日新聞の国民健康保険(国保)の08年度保険料調査で、高額順30位中の半数を占めた。寒冷地のうえ面積が広いため、冬は万一を考えての入院も多く、医療費増の原因となっている。全国2位の50万2500円と回答した羊蹄山のふもとの喜茂別町を訪ねると「緩くねえ(厳しい)。国保の高さには怒りたくもなるさ」と、無職の男性(68)がつぶやいた。 08年度は年金からの所得約170万円のうち、保険料27万円を支払った(65歳以上のため一部負担免除)。腰痛と糖尿病を抱え、治療費は月約1万9000円。医療向け出費は年50万円に届く。 運送会社に勤めていた8年前の春、糖尿病を悪化させた。薬で抑えていた血糖値が1デシリットルあたり400ミリグラムにはね上がり、声も出なくなった。40日連続で通院し、点滴を受けた。この間の治療代は20万円以上になった。 「あれが再発してみろよ。保険証がなければ負担額は3倍を下らない。払うしかないんだよ」。あきらめ顔で、男性は天を仰いだ。 町人口は07年度で2608人。65歳以上の高齢化率は、全国より約10ポイント高い32%。国保加入の455世帯(798人)中、世帯主の職業は年金受給者が最多の240人(52%)を占める。同町の一般会計の規模は年25億円程度。町存続に直結するため、保険料軽減を目的とした国保会計への繰り入れは難しい。 本社調査で7番目に高かった津軽海峡北岸の北海道福島町。家族5人分で53万円の保険料を払う経営者の食堂は、週末の昼時というのに一組の老夫婦がいるだけだった。 「青函トンネル工事(71年起工)のころはねえ……」と、経営者は衰退を嘆く。当時、工事拠点で1万1500人あった人口が、5400人に減った。05年と比較した国の将来推計では、2035年には人口が約6割減る。イカの群れが消え、基幹産業の漁業の漁獲量は2割以下に減少、不振を極める。町の担当者は「市町村では、国保は現実に成り立たなくなっている。国が運営を一元化すべきだ」と語気を強めた。
【国民壊?保険:/2 高額なベッドタウン 6/9】 ◇高度成長の影、顕在化 最盛期の従業員10人が2人に減り、がらんとした大阪府寝屋川市の自動車修理工場。経営者の安田光義さん(66)は国民健康保険(国保)の納付を促す書類を並べ、吐き捨てるように言った。「腹立たしい金額ですわ」 年間所得160万円に対し、08年度の保険料は約30万円。うち約9万円を滞納した。大手に押されて経営は苦しく、借金も残る。 世帯所得200万円をモデルとした毎日新聞の08年度保険料調査で、寝屋川市は全国最高の50万4030円だった。隣の守口市とともに、最も安い自治体の3倍を超える。ともに、高度成長期に膨張したベッドタウンだ。 万博景気に沸いた70年ごろ、全国から大阪に仕事を求めてきた人の多くが、当時は家賃が安かった両市周辺に住んだ。寝屋川市の人口は70年までの10年間で4倍増。その世代が老齢を迎え、医療費は増加の一途をたどる。 団塊世代の退職も、国保財政悪化に拍車をかけた。同じモデルで、守口市の07年度保険料は48万9170円。00年度から4万6280円上げたが、徴収総額は2億5400万円も落ち込んだ。 似た現象が、首都圏の千葉県八街(やちまた)市で短期間に起きた。バブル期に割安な一戸建て住宅が売り出され、90年までの4年間で人口が1万人増加。07年度は国保加入者のうち、退職世代の65~69歳が最多の11%を占めた。 同市は04年度に保険料を上げたが、収納率は1・8ポイント低下して75・8%に。07年度は77・3%で全国最低だった。担当者は「滞納に直結する値上げも難しい」と頭を抱える。 糖尿病の安田さんは、高血圧の妻(63)の分を含め、薬代に月2万3000円かかっている。保険料を合わせると、医療向けの出費は所得の3割を超す。「別に税金もある。食わずに払えというようなもんや」と憤った。 こうした声に、寝屋川市は09年度の値下げに踏み切った。40歳代の夫婦と子供2人の世帯で4万4510円の負担減となる。減収対策で、病院への後発医薬品の使用要請などを検討中だ。国保会計の累積赤字は、07年度で37億円に達する。担当者は「努力はするが、国も国庫投入などで国保の課題に取り組むべきだ」とこぼした。=つづく
【国民壊?保険:/1 家計思い受診拒んだ妻 6/8】 「無保険」という言葉は、公的には存在しない。国民健康保険(国保)料の滞納で保険証を失った世帯は、代わりに交付される証書の名から、「資格証世帯」と呼ばれる。運営にあたる行政側が、人命にかかわることが直感される「無保険」の語を遠ざける中で、日本の「国民皆保険」制度は崩れつつある。保険証があれば救えたと思われる命があり、抜本的な制度改革が放置される中、保険料が高騰して支払い能力に見合ったものかが疑われる水準に達した自治体もある。国保の現状を、全国各地で探った。 ◇救える命だった… 大阪府守口市の古びた賃貸マンションの屋上に、造花が供えられていた。07年6月、この屋上に放置された冷蔵庫から、衰弱死した女性(当時58歳)の遺体が見つかった。夫(61)が死体遺棄罪などに問われ、翌年春に懲役3年6月の実刑が確定、服役している。公判中、近所の住民約50人は情状酌量の嘆願書を大阪地裁に提出した。その一人でパート従業員の女性は、判決に執行猶予が付いて街へ戻ってくると信じ、新居まで探していた。 地裁判決によると、07年5月下旬、ぜんそくなどに苦しみながらも診療を拒んだ妻は自室で息を引き取り、夫は数日後、冷蔵庫に葬った。所持金はほとんどなかった。判決は罪を指弾しつつ、「夫は愛情を持って介護していた。妻が病院行きを拒んでいたのは、家計の窮状をおもんぱかって我慢したため」と述べた。 捜査関係者によると、夫は妻の足元に頭を置いて寝ていた。手を伸ばせば、おむつの状態が分かるからだ。弁護士によると、夫婦は無保険だった。 保険証があれば、医療費は原則、3割負担で済む。なければ全額が必要だ。夫は清掃員で、収入は月十数万円。介護代もかかり、保険料を払えなかった。 今回の毎日新聞の調査で、守口市の保険料は全国6番目に高かった。夫婦は自己破産しており、医療費が免除される生活保護を受給できた可能性もある。窮状を訴えれば、保険料が減免されたかもしれない。しかし、市への相談はなかったという。 パートの女性はつぶやいた。「救えた命だったかもしれないね」 ◇ 京都市で昨年9月に大腸がんで亡くなったトラック運転手の男性(当時61歳)も、無保険だった。相談を受けていた同市内の病院のソーシャルワーカー(27)によると、男性は体に異変を感じて区役所で国保加入を相談したが、「保険料は2年分さかのぼった50万円が必要」などと窓口で聞いて断念。3カ月後に病院の門をくぐった時は、手遅れだった。 同市南区にある建設会社寮。宮崎県出身の男性は14年前、東京から移ってきた。日給1万3000円の仕事があるのは、月10日ほどだ。1日2100円の寮費を払い、食べるのに精いっぱいだった。 約10年前から職場の健康診断で「心臓肥大」を指摘されていたが、無保険のため病院には行かなかった。動悸(どうき)が激しくなった昨年5月、意を決して区役所へ向かったが……。 ついに病院へ駆け込み、入院したのは昨年8月。病院側が生活保護を手続きし、医療費は免除になった。しかし、がん末期で手術の12日後に死亡した。 ソーシャルワーカーは「せめて5月時点で、保険証がもらえていたら」と悔しがった。=つづく
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