子どもの生きづらさ ~ いじめ追跡調査
国立教育研究所は、8割の子どもがいじめの被害者にも加害者にもなっているとし、いじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子どもにも起こりうることを追跡調査であきらかにしている。
小中学生の8割超がいじめ経験 国立教育研調査 中日9/26
いじめ追跡調査2004-2006 いじめQ&A
あらためて「子どもの生きづらさ」について考えてしまう。
調査は、ストレスとの関係について「いくらストレスが高くて、それを発散したいと感じたとしても、適当な相手(自分よりも弱くて、都合の良い口実・きっかけがある、等)と、適当な方法(自分にとっては簡単で、大人に見つかりにくく、見つかっても言い逃れができそうな、等)がなければ、加害行為に及ぶわけにはいかないからです。」と説明し、
「いじめの未然防止に有効となる対策は、①ストレスの原因となるストレッサーを減らすこと、②ストレスがあっても行為に及ばないようハードルを高くする(規範意識を高める)こと、の二通りが中心になるであろうということです。」と書いている。
が、①と②はそんなに区別できる課題でしょうか。
学力と新自由主義 「自己責任」から「共に生きる」学力へ 佐貫浩 /備忘録
同書の「第四章 コミュニケーションと道徳性」の中でこう指摘している。
“競争と暴力の空間で必死に生きている子どもの努力を無視して、大人世界の道徳規範を強制しても、子どもが自らの行動規範とすることはない。なぜなら、そうすればサバイバル空間を生きていけなくなるからである”
“コミュニケーションは、なぜ道徳性を成立させることができるか。規範にそった行動が利益となればルールが内面化される(パブロフの犬)。が、それだけでは不十分。”
“共感力が大きな力。他者の思いに共感し、共感するものの心の内側に再創造される。それが個人の内側から、感情をともなって突き動かすのである。道徳性の基本原理は、他者への思いやりでなく、他者への共感を媒介に、むしろ自分自身を内的な思いに突き動かされた行為として創出される。”“よって、道徳性の獲得は、共感力、すなわち他者との人間的な関係性の獲得として進められるべき”
ストレスと減らす努力と道徳性の獲得はともに、競争や自己責任論を廃し、「共感力、すなわち他者との人間的な関係性の獲得として進められるべき」という点で、共通しているように思う。
ちなみに、読売新聞の昨年末の世論調査では、9割以上で、「最近の家庭では子どものしつけがきちんとできていない」と回答し、その例として、多くの人が「社会のルールを守る」「他人を思いやる気持ちを持つ」ことを挙げたことが報じられている。
「徳育」提言案 実践に役立つ具体的な内容に(6月27日付・読売社説)
しかし、この欠如している「しつけ」の内容は、政財界が進めた「新自由主義」でしょ。「ルールをなくせ」「金儲けのため何をしてもよい」「貧困は自己責任だ」と・・・
読売は、「徳育」提言案に具体策がないとなげいていたが・・・
派遣切りや子どもの貧困への手立て、原爆症、薬害肝炎の被害者の救済、西松や先物取引の迂回献金、故人献金の徹底究明・・・ 社会がルールを示すことが第一だ。
実態をともなわない「道徳教育」の押し付けは、面従腹背の世渡り術をつけるだけになるとの指摘がある。
規範意識、道徳は、他者との人間的な関係を大事にする社会のあり方の内面化であるからだ。
【小中学生の8割超がいじめ経験 国立教育研調査 中日新聞6/26】 国立教育政策研究所は26日、首都圏の小中学生へのいじめの追跡調査で、8割を超す子どもが被害、加害をともに経験していることが分かったと発表した。研究所は誰でも被害者にも加害者にもなり得ることが裏付けられたとしている。 2004年から3年間、首都圏のある市の小学校13校と中学校6校の約4800人を調査。毎年6月と11月に体験の有無などを調べた。 04年6月時点で、中1だった687人のうち、「仲間外れ、無視、陰口」という被害が「ぜんぜんなかった」と答えた子は401人(58・4%)だったが、中3の11月には135人(19・7%)と減り、80・3%の生徒が被害を受けていた。 同様の加害経験をしたかどうかでは、経験していない子は中3の11月時点で18・7%にとどまり、81・3%がいじめをしていた。 小学4~6年の調査でも、6年の11月時点で被害を受けたことのない子は738人のうち97人(13・1%)だけで、86・9%が被害を受けていた。加害経験のある子も84・0%に上った。 中学3年間で「週1回以上」の被害を受け続けたのは2人(0・3%)。小学校は10人(1・4%)だった。 研究所は「被害者は常に入れ替わっている。いじめっ子、いじめられっ子は特定の子という考え方を改めてほしい」と分析。結果を基に作成した教員用研修資料をすべての小中高校に配布する。 文部科学省の問題行動調査によると、07年度に全国の小中高校が認知したいじめ件数は約10万件で、前年度よりやや減ったものの、高止まりの状態になっている。 ◆気付かない子多い <教育評論家の尾木直樹法政大教授の話> どの子もいじめの被害者になり得ることが調査で裏付けられたのは一定の意味がある。ただ、どうすればいじめを防げるかを考えるのが大切だ。文部科学省はこの数年、「ゼロ・トレランス(非寛容)」という米国流の指導法を広め、いじめる子を押さえ込む厳しい対処を軸にしてきたが、排除が中心になり、かえっていじめが見えなくなっている。「ふざけているだけ」と考えて自分がいじめていることに気付かない子も多いのが実態で、豊かな人間性を育て、いじめを認識できる力を付ける教育が必要だ。
【「徳育」提言案 実践に役立つ具体的な内容に読売社説6/27】 子どもの徳育に責任を持つのは、すべての大人だ――。そんなメッセージとなる提言案がまとめられた。 文部科学省の有識者会議「子どもの徳育に関する懇談会」が審議内容を整理したものだ。 大人が次代を担う子どものために、具体的にどう行動すべきか。7月中にも出される最終提言までに、より役立つ内容となるよう議論を詰めてもらいたい。 提言案では、徳育を「社会が理想とする人間像を目指して行われる人格形成」と定義づけた。 懇談会委員の意見は多様だが、家庭の役割、特に人格形成の基礎となる乳幼児期の育て方が大事だという点では一致している。 核家族化や少子化で、祖父母との同居世帯や兄弟姉妹が減っている。このため、地域や学校の役割が大切なことにも言及し、すべての大人が「徳育の当事者」という意識を持つよう求めている。もっともな指摘だろう。 だが、どうすれば良いのかが、今ひとつ伝わってこない。 読売新聞の昨年末の世論調査では、「最近の家庭では子どものしつけがきちんとできていない」という回答が、9割近くあった。 「できていないしつけ」の例として、多くの人が「社会のルールを守る」「他人を思いやる気持ちを持つ」ことを挙げた。 こうした不満や不安の解消につながる提言であってほしい。 提言案は、学校とPTA、地域の有志が連携した活動、自治体の取り組みを紹介しているが、より多くの実践例を盛り込みたい。 情報化が進む現代社会では、子どもが自然と接する体験活動などの機会を、大人が意識的に作る必要性にも触れている。そうした取り組みこそ、例示すべきだ。 「メッセージ」と言うなら、構成や文体にも工夫がほしい。中央教育審議会が11年前に出した徳育関連の答申のように、国民に呼びかける形式も参考になろう。 懇談会は、昨年の中教審答申や教育再生会議報告が徳育充実を掲げたのを受け、設けられた。その経緯からすれば、学校での道徳教育に関する記述も不十分だ。 新学習指導要領では道徳教育を重視し、小中学校では、今年度から推進役の教師を中心に充実した体制で臨むことになっている。文科省は、各校の体制を調査して課題を把握し、参考になる授業を紹介していく必要があろう。 大学の教員養成課程でも、道徳教育を充実させ、教師の力量を向上させることを検討すべきだ。
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