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真の安全保障とは・・ 「日米同盟の正体」(孫崎享・著)

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 外務省でイラン大使や国際情報局長を務め、今春まで防衛大教授であった孫崎享氏の「日米同盟の正体」(講談社現代新書)が極めておもしろい。
インテリジェンス(情報)のプロが、アメリカ追随をやめ9条を持つ国として生きることが最大の安全保障だということを、冷戦後のアメリカの世界戦略を多様な資料、証言で裏付けながら明らかにしているからである。

“アメリカ一辺倒では国益を損なう大きな理由”というのが本の帯に書いているが、冷戦後のアメリカの戦略が、西側が獲得してきた「国家の主権を尊重し、既存の政府と必要がある」という知性を否定し、「自らが世界のリーダーになり、必要に応じ軍事力を利用しつつ自己の価値観を実現することこそ、世界に貢献する」との認識をもってきたこと。それはブッシュだけが特別でないことを各種の発言、資料を駆使して浮き彫りにしている。

また、なぜイラク攻撃か・・・について、石油は理由ではなく、冷戦後の軍事態勢維持の口実がいること、米国内のイスラエル関係者の力が巨大化し中東政策を歪めていることを解明している。その点で、オバマ政権についても、その主張、人的配置から、継続の面の強さを指摘している点も、興味深い。

同書は、05年の在日米軍再編の合意「日米同盟・未来のための変革と再編」という文書で、安保条約を事実上死文化させ、日本を、アメリカの戦略と一体化させるものに大きく変質させたものであることを条文などの比較から明らかにしている。しかも、日本の国民のほとんどは、そのことに気づいていないという。

「米国の要求をできるだけ実現するのが国益とみなす」今の政官界の潮流を批判しながら、そうしたアメリカに追随が起こる背景として、「理屈が政策をきめるのではない。力の強いものにつくのが得、が政策決定の価値基準になった」ことをあげている。
驚いたことに、高知新聞の県警裏金追及にあたっての「新聞記者なのか、新聞社員なのか」がいう朝日総研リポートが紹介されている。組織の中での出世、影響力の拡大にとって損か得かだけで動くという力が働くことの引き合いとして・・・アメリカはそれを見越して楔をうってきた。アメリカが国内だけでなく、日本などにたいしても事実と情報を操作し「謀」を行ってきたこと。90年代からの大蔵省バッシング、霞ヶ関バッシングの背景… アメリカの要求に対する障害をなくすことなどにも迫っている。

 アメリカとヨーロッパでの価値観は同一ではない。安全保障の方向が違い、アメリカ追随が唯一の道でないことを示すなど、様々な「常識」を丁寧な検証している。米軍は国益を賭してまで日本を守るか、いわゆる安保ただ乗り論の根拠がないこと、日本核武装やミサイル防衛、敵基地攻撃能力保持論の非現実性などなど・・・

 そうした上で、安全保障についてキッシンジャーの「抑制とは、得られる利益とは釣り合わないリスクを押し付けることによって、相手にある行動方針をとらせないようにする試みである」を引いて、その可能性は「非軍事の分野にある」と指摘する。

 「どの政権も生活水準の劇的悪化には耐えられない」とし、「日本が近隣諸国と綿密な経済関係を構築」し、「経済への打撃という迂回手段で、大きな抑止効果を生み出す」と主張している。そして、これは米国防省も同様の見方を中国に対してしている(国防年次報告2008)と指摘する。
北朝鮮についても、米国が自らの国益から政策が大きく変化したこと、日米で認識がずれていたことを示しながら、自ら判断することが大事だと主張し「自分たちと敵対する国を出来るだけ国際経済の一員にし、日本がその中で尊敬される位置を占めること。じつはこれが極めて有効なわが国を守る手段である」と言う。

 そして、“軍事力を行使する「普通の国」でないから、日本は尊敬されない”というのは正しくない。「国際的に尊敬を得る地位を獲得するという点では日本は極めて有利な地位にいる」とし、06年のBBCの世界34カ国の世論調査の結果を示す。

★ その国の影響力の拡大をどう評価するか
    日本 仏  英 印 中国 露 米 イラン 
肯定 31 28  28 22 20 13 13  5
否定  2  4   4  6 10 16 18 24  
(否定の2カ国は中国と韓国)

★ 日本と米国の影響力拡大を肯定的に見ているか(%)
     加  英 独  仏 ブラジル トルコ インドネシア 韓国 中国
 日本 62 57 54 47 73    42   85      44  16 
 米国 34 33 16 24 29     7   40      35  28

「日本に対する好感度は日本が米国と同じ政策をとってきたからではない」「日本が米国の戦略と一体化していくことは、日本の評価が米国に近づくことを意味する」「対日好感度は下げる結果になろう」

 日本が、かつて国内外で弱者に手をさしのべてきた。国内では農林漁業、農村、中小企業を支援するシステムをつくった(このあたりは、品川正治氏の「利益を国民みんなで配分してきた」「修正資本主義だった」とつながる)。国外では、円借款での発展途上国支援(ODAの内容の問題はあるにしろ・・)、天安門事件後の「孤立化を防ぐ」ための首相の中国訪問・・・「この努力は今日の日本に対する好意的視線を形成する上で貢献した」。
 ところが、支援の中核となった円借款の資金源は郵便貯金であったが、それが民営化された。地方、農村、農林漁業支援のシステムは今後崩壊・・・「われわれは本当に弱者救済のシステムを捨てなければならなかったのだろうか。将来、弱者切捨ては社会不安として必ず反動がでるだろう」と、批判は「構造改革」にも及んでいる。

 「日本が持つ日本的なものの価値を見直してもよいのではないか」と主張する。

 この本には明示的には書いてないが、9条と25条をもつ憲法が「日本的価値」であることは間違いない。

 個々の論点はいろいろあるが、権力側の中枢にいた人物が、大局として、アメリカいいなり、異常な大企業中心主義という2つの歪みの是正に取り組む日本共産党の立場と、シンクロしているのが興味深い。それほど90年代以降の日本の政治が異常になっているのだろう。
  
 この書のモチーフを示すものとして、孫子の兵法が、たびたび出でくる。
「故に上兵は謀(はかりごと)を伐(う)つ。その次は交(まじわり、「同盟」)を伐つ。その次は兵を伐つ。その下は城を攻む」

最上の策は、敵の謀を見抜き、それを封じることであり、それは政治・歴史・心理等の熟知が必要である。
「城を攻む」とは、日本の歴史が評価してきたものだと筆者は言う。現代では、陸の匍匐前進、海の面舵・取舵、空のドッグファイトであると。それに近い議論が戦争論、戦略論と思われているのではないか、として、安全保障をもっと総合的に深く捉え考えることを呼びかけている。

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