介護施設との懇談の特徴
高知県では、党国政対策委員長、県議、地方議員を先頭に、日本共産党の介護保険制度の抜本見直しを求める提言をもって、介護施設を訪問し、実状の聞き取り調査、懇談を実施しています。
「介護保険10年目を迎えるにあたっての提言」
人手不足・職員の待遇の低さ、介護報酬の低さと加算条件の厳しさ、入所待ちが多い、書類・実務が多すぎるなど、地域に必要な介護サービスを供給することが困難な実態や多くの要望がだされました。
全国の10年先を行く高齢化先進県であり、若者の働く場が少ない高知県にとって、介護制度の充実は、全県的な課題です。 以下、懇談で出された特徴的な声を紹介します。〔写真は、施設で説明を聞く春名氏〕
〔時間がとれなくて懇談ができなかったところにも、提言、アンケート用紙をお届けています。〕
■高知市・北部/老人介護施設、グループホーム、デイサービスなどを併設。
・「介護保険は制度あってもサービスなしになっている。重倉地域などはサービス過疎地域。措置制度の時には生活保障の観点からエリア割をしてどこでもサービスが受けられるようになっていた」
・加算が非常に受けにくい。リーダー研修を受けている比率が10人に一人なら加算がとれるが、うちは60人中1人。5人をふやすには膨大な時間が必要。リーダー研修は二週間通い詰めになる。
・特養ホーム(老人介護施設)の入所待ちは170人に及ぶ。認知症専門30床。平均介護度4、5で重度ばかり、対応しきれない。
■高知市・北部 デイサービス施設
・加算取るのは厳しい。三年以上の職員が多ければ加算がとれるが、うちは開設して3年、まったく受けられない。上がっているのも下がっているのもある。したがって3%アップといってもさほど変わらないだろう。
・2階がデイサービスで定員15人、4階が有料老人ホーム(15人待ち)、5階は住宅型(老人マンション 2、3人待ち)
・職員は募集してもなかなかあつまらない。月収は12万程度。「あまりに地位が低い」。
・「お年寄りがもっと住みやすい社会を望む。介護保険をなんのために作ったのか。無駄なお金の使い方を辞めてもっと介護や福祉に使ってもらいたい」。
■高知市・北部 特養ホーム
・独居の方は精神的に不安定な方が多い。介護サービスの中に「話し相手になる」という項目も必要ではないか。
・書類が多すぎて実務量がたいへん。
・加算について。たとえば独居老人支援の加算について、住民票をとって証明しないといけない、これが手間がかかる。よけいな仕事が増える。
・介護職の地位は低い。いまは資格がなくてもOK、経営者は安上がりの方に動く。これでいいのかと思う。給与の水準をアップしてもらったらある程度人員を確保できる。そうするとそのなかで競争も働いて質も上がってくる。地位向上にもつながってくる。やはり給料アップが大切だと思う。
■高知市・西部 グループホーム、デイサービス
・08年12月開設。9人のユニットが二つ、定員18名。すでに60人待ち。本体の施設では200人待ち。
・要介護4の重度の人が入っている。在宅にいて要介護3の人などはどこも受け手がない。
・加算はとりにくい。日常生活継続支援加算は65%の基準に合致しているのでそれのみとれる。3人に一人が基準だが夜勤があり18人で6人では無理。うちは9人にしている。だいたい2対1か1、8対1。
・本体が経営している介護福祉士専門学校は今年から一クラス定員を減らした。
・特養では50床以内の小規模特養が奨励されているが、その規模では現在50%の施設が赤字。特養はとくに食費も居住費もすべて国が定めていて身動きが取れない。
・介護の仕事は究極のサービス業。排泄、着替えなど人間まるまるお世話しているのですから。体力的にもきつい。その割には地位が低い。ここの職員もだいたい10万から12万、6万くらいの方もいます。
■高知市・西部 グループホーム、小規模多機能型施設など複数施設を運営。
・土地と建物を自分たちでやるとなりたたないのでオーナーを捜してたててもらい、家賃を払っている。利益があまりでずリスクも高い。評価は高い。
・職員の報酬は低い。09年1月16日付でいままで非常勤だった職員を正社員にした。約100人。非常勤は4、5名だけ。
・加算はとれるところがない。とるために人員がいる。基本報酬が変わっていないのが問題。グループホームには常勤がワンフロアに7名づつ。人員配置は厚くしている。夜間ケア加算のみ復活。一日60円アップの常勤75%の加算のみ取っている。
・職員の募集をかけても人がこない。08年夏頃から派遣切りの方がぽつぽつきだした。40、50の男性が多い。研修期間なんてとてもとれない。平均職員の年齢は30代後半。
・リーダーや主任で手取り15万ちょい。一人もんならなんとか生きていけるでしょうが家庭を持つことはできない。
・2ヶ月の一回グループホームの運営推進会議がもたれている。地域の方、施設側、行政、家族の代表が一同に集まる。これは各施設ごとにやられている。
■高知市・西部
・加算で報酬アップしているというが、結局それをとれば利用者負担が増えるものが多い。だから取れない。
・若者に仕事がないことが一番問題。いまの政治ではどこがやっても同じと思う
■高知市・西部 特養ホーム
・特養50人、ショート10人、デイサービス30人。職員30人。
・利用者の合意がないまま加算をとるのはできない。
・小規模他機能型は条件が厳しい。
・提出書類が煩雑膨大、簡素化を。
■高知市・西部 特養ホーム
・特養80名、ショートが6名。
・今回の加算では、在宅ではメリットがない。二回連続のマイナス改定から1、3%戻っただけ。正職員の賃金アップにはつながらない。非常勤の時給アップ、手当てくらいか。
・特養に入っている方は要介護4、5ばかり。3もいるがそれは在宅ではリスクが高い人。申し込み順ではなく緊急度にあわせて入所してもらう。
・法人としては平成20年度は2000万の赤字。
・専門学校の定員は80名だが昨年は21名のみ。今年は61名。うち15人はハローワークを通じてリストラにあった方。
■高知市・西部 グループホーム
・ワンフロアに9人で三階までで27人、デイ15人。
・病院と違って介護制度ができてから年数が浅く、地位が低い、給与が低い。
・3%アップといっても施設系は1、7%、そのまま給与に反映させることはできない。常勤の割合が多い、少し時給をアップできれば・・。
・スプリンクラーは秋に設置予定。三年以上の勤務の人が加算、しかしうちは職員の30%程度しか3年以上はいない(8名)。
・介護の点数を一律に引き上げて欲しい。加算の条件がキツイ。加算を取るためにあらたな職員を雇わねばならない。メリットがない。
・認定制度は厳しくなっている。
■高知市・西部 療養病床
・70~80%が医療、病院内に居宅がありそこに30名ほど入っている。病院が丸がかえで支えているので賃金も病院職員と同じ。
・病院ベッドの全てが介護・医療病床で310人(半分が介護)。入院患者の平均は85~86歳。
・医療区分1~3の機械的な区分けはおかしい。受け皿を減らすべきではない。うちは新型老健への移行を検討している。
・病院代の未収が増大しており頭を悩ましている。
■高知市・地域包括支援センター 施設長
・サービスに制限が加わって、受けたい内容が受けられないことが心配。
・介護で働く職員の待遇は悪い。もっと改善が必要。
・国は介護保険を介護を社会的に担おうとのうたい文句ではじめたが、サービス利用が予想より多く、国の持ちだしが増えた。だからいかにサービスを制限するのかばかりに目がいっているように思えてならない。
■大月町
・ディーサービスは月400名程度の利用。政府が、介護報酬を3%引き上げる対象は、月利用が700名以上なので該当しない。
・特別擁護老人ホームは自治体の広域組合で、グループホームは社協で運営。
・グループホームは現在、弘見1箇所。近く春堂の旧小学校跡にグループホームと有料老人ホームを新設予定。
・グループホームは、定数が9名までと限られる。弘見の施設は、3年前にできた施設。入居は認知症の方に限定。料金は、グループホームは特老と違い所得で分けることなく一律料金、月に約9万円程度。地元食材を利用して安くおさえている。地元に居たい要望にこたえて設置。入居待ちは多い。利用料が下がればもっと増えるはず潜在的な希望者はかなりある。
・ケアマネージャのプラン作成枠を制限されてからよけいに困難になった。赤字になる。ケアマネージャが介護予防プラン作成を担うことは賛成。ただ報酬が少ない。
・認定基準の改悪について、寝たきりだから移乗・移動が自立になったり、頭髪がなければ自立などは、状態で判断したもので肝心の必要性から判断しないものだ。
■黒潮町 特養ホーム、グループホーム
・特養ホームは定数50名の中規模施設。効率でいえば70~80名必要。4人部屋が中心で入居料は、4万から5万円。
グループホームは定員は9人、個室で料金は10万円少し切れる程度。いずれも入居待ちがある。多人数の方が入居費も安くすむ。田舎では必要だ。コミュニケーションがとれ認知症対策にもなる。政府は個室中心に転換させようとしているが、柔軟な対応が必要だ。
・介護報酬が3%あがるといっても、さまざまな条件があり2.6%~2.7%程度しか報酬があがらない。
・要介護4,5の入居者が65%以上に支給される日常生活継続支援加算は適用される。介護の必要度が重い人ばかりで、介護認定新方式の改悪による影響については、ないだろうと思う。
・介護報酬と別枠での公費投入による賃金の月3万円引き上げ実現(日本共産党の政策)は賛成。3%の報酬増については、介護事業所は赤字経営が多く、赤字補填に回り、職員の報酬増にならない。
・経管栄養の必要な入居者をむかえた。看護師でないと対応できないので増やしたい。新たな加算が付くが、全額はまかなえない。今後、療養ベッド削減がすすむ。医療が必要な入居者が増えるのに、看護師の報酬が不十分。
・現在、利用者3人に1人以上の職員を配置している。2対1にするのは賛成だ。
・地方に対し、独居老人が増加するような過疎化をすすませておいて、国は地方への交付税を減らしている。福祉対策が求められているなかで全く逆だ。
・介護制度では、様々なわかりにくい制度になっている。国民の目からみてわかりやすい制度づくりにかえてほしい。
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Posted by: 介護人 | May 31, 2009 08:36 PM