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「貧困・不平等」を政治の軸に

 4月19日、東京新聞に掲載されたロナルド・ドーア氏・英ロンドン大学政治経済学院名誉客員のコラム。
 こちらでは手に入らないのでネット上で捜し見つけた・・・「政治の軸にならない『貧困』」
「よその国で、貪困・再分配の問題が政冶論争の主要軸になるのに、日本ではそうならない」と不思議がり、「いたるところで、フリーター組合をつくったり、不当解雇を法廷で争ったりする草の根の低抗が起こっている。…ところがそれに手を伸ばしているのは、共産党だけである」「なぜだろう」と締めくくっている。

 簡単な方の理由は、1つは、スポンサーの問題。財界と労使協調路線をとる民間大企業の組合に支援されている政党と、国民1人ひとりに依拠している政党の違い。そして民意を切り捨てる小選挙区制のなせるわざである。

 深い方の理由は、高度成長期以降の企業内統治の影響。良い会社に入ることが人生の幸せ、・・・「企業社会の中で、個人は、市民として社会とつながる方法、人権概念の中核として自分達の生活を組み立てる価値意識と方法を充分に鍛えることなく生きてきた」。リストラトラ、低賃金に対して、「企業と一体化した個人の意識が資本の側に同調して、この人権剥奪に抵抗する力を発揮できない脆弱性をあらわにした」〔学力と新自由主義 佐貫浩〕

 また、佐貫氏は、社会に能動的に関わる力、「参加を支える力」として、①労働能力に関する知識、技術など ②統治と共同のための能力 ③それらの共通の土台としての批判的認識とコミュニケーション・表現の能力の3つをあげ、日本の教育は、シチズンシップの視点が欠落し、①の労働能力だけに縮小し、統治能力の剥奪を行ってきた。「参加の能力を支える教育課程の全体性の回復が課題となっている。」と指摘している。

 先日のエンゲルスの話とも重なるが「理不尽を当たり前」と思わせる仕掛けをうち破るためにも、学びと連帯が必要だと思う。

【「政治の軸にならない『貧困』 時代を読む ロナルド・ドーア】  最近は株価が少し上がり、米国で銀行が倒れ続けたころの、パニックに近いムードが多少後退した。金融財産を持っている人々、株価連動の401k型年金で生活している人々などが、損失の一部を取り戻し、安心してきただろう。

 しかし、世の勝ち組の人々が少し安心してきたといっても、切られた派遣労働者、切られそうな請負労働者にとって、見通しは依然として暗い。失業率が十二月の3・9%から二月の4・6%へと着々高くなる。年末までに二桁の失業率確実とされている米国に比べて、日本は、まだ低いにしても、過去最高の失業率5・8%をはるかにしのぐだろうというのは経済学者の一般の見通しとなった。

 長期的な―少なくとも二十年来の―所得分布の不平等化傾向が、今の不況によって大いに加速されている。政府の緊急対策、「底割れ」対策が、やはり底割れの効果があるか。それこそ目下の主要な関心事である。

 「麻生政権は規制改革に再び火をつけ、危機を乗り切るための展望を示すべきだ」と、日本経済新聞の九日の社説がいう。そのような竹中・小泉路線亜流の声は依然として高く響く。しかし、幸いにして、政府は「転向」してきた。供給面の規制を撒廃するより、総需要刺激こそが景気対策として必要だという結論になった。その「悟り」が、二〇〇三年、輸出繁盛、消費停滞の時代が始まった時に得ていたならば、今ほど酷い状態になっていなかったかもしれないが、とにかく、泥縄のきらいかあっても、めでたい、めでたい自覚だ。

 失業対策として、失業者の住宅支援、訓練費の補助、雇用調整助成全、介護職員の待遇改善など、厚生労働省の役人さんたちはいろいろと工夫を練った。その努力をけなしたいと思わないが、もし私が切られた派遣労働者だったら、危機対策の予算配分を問題にするだろう。五六・八兆円のうち、雇用対策費(国費、事業費も合めて)は四・四兆円、金融対策費はその十倍の四四・八兆円である。その数字を見て、失業者たちは「麻生政権の関心の優先順位はそんなものか」と怒るだろう。
 
 当面の問題を超えて、例の 「二十年来の所得分布の不平等化傾向」も忘れてはならない。その傾向の説明は複雑だが、意識的な制度改革による分が大きい。派遣事業の解禁・拡大や企業管理職の給料決定システムなどの変化(昔、社長の給料上昇率は大体従業員のそれと歩調を合わせた。今はますます利益・株主への還元に連動する)。他の先進国でも、特にアングロサクソンの国でも、同様な制度変化、不平等化か見られる。

 しかし、他国に比べれば、日本で不思議なのは、不平等が政党政治の重要な軸にならないことだ。メディアの関心は外国と比べ強い。本屋には、「ワーキングプアの反撃」「派遣村」「反貧困の学校」など、貧困関係の本が何十点も並んでいる。

 ところが、よその国で、貪困・再分配の問題が政冶論争の主要軸になるのに、日本ではそうならない。

 いたるところで、フリーター組合をつくったり、不当解雇を法廷で争ったりする草の根の低抗が起こっている。ところがそれに手を伸ばしているのは、民主党支持の連合ではなくて、体制外の全労連である。その不満をくみ上げて地方の政党支部にその人たちを組み込もうとしているのは、今度天下を取るつもりでいる民主党でなくて、共産党だけである。

 なぜだろう。

(東京新聞 09年4月19日)

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Comments

貧困、不平等という最大の問題が政治課題とならないのはそれを正面から訴える政治勢力がないからでしょう。
本質的に同じ穴の狢の民主は自民との対立軸がないものだから、政治家の世襲制限などおおよそ施策の中味とは関係のないものを「争点」に出してきたりもしています。誰かがいっている「官僚主導から国民主導」なんていうのも施策というよりも手法の問題ですね。
でも、貧困や不安定雇用に苦しんでいる国民は多い。本当に貧困の問題、不平等の問題を正面からとりあげてくる政治勢力の出現を待っているのです。9条護持、護憲…まあ、理想論としては分かりますが、正直そんなのは腹のたしにはならない。25条、労働基準法の遵守、人材派遣業の見直し、累進税率や相続税も含めた国家の再分配施策の強化等。
民意を反映しない小選挙区制は大問題ですが、それは相当の得票率、支持率をとった次の問題でしょう。

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