専門性の重視へ 指定管理者制度見直し 広島市
広島市が指定管理者制度の方針を変更 自治労連 09.4.1
広島市現代美術館 指定管理もっと議論を 中国新聞2/23
昨年6月の総務事務次官通達「地方財政の運営のあり方について」でも、専門性を重視した方向での見直しが言われていたが、「構造改革」路線の破たんが明確になる中、あらためて専門性と公共性の確保が問われてきている。
同時に、「公務員バッシング」とは一線を画し、批判すべきは批判する、評価すべきは評価するという、公務労働に対する市民の評価能力が問われていることでもあると思う。
自治労連・地方自治問題研究機構の角田英昭氏が抜本的見直し課題などを提起している。
指定管理制度の抜本的な見直しに向けて(パート2)
【広島自治労連の住民との共同運動、4年間の要求交渉が制度改善、雇用確保への一歩をつくる】 2009年3月26日、広島市議会は、指定管理者制度の大幅な変更を含む09年度予算議案を可決しました。地元紙「中国新聞」も、社説で指定管理者選定に市民の目線を、専門性と公共性の確保が必要と書くなど、制度導入3年で、指定管理者制度をめぐる状況は大きく変わり始めています。今回の「変更」は、
第一に、「専門知識や経験のある職員により継続・安定的なサービスを提供する必要がある」ことを理由に、重要な施設を公募から非公募に切り替えたこと。
第二に、利用料金制を拡大し、指定期間中の運用を柔軟化したこと。
第三に、公募基準を経費節減重視から事業内容・専門性重視に大幅に変更したこと。
第四に、公益法人職員の雇用問題について、指定を取れない場合は「解雇」と明記していた部分を削除し、雇用確保を基本方針にさせたことなどです。広島自治労連は、前回の「指定管理者」選定と3年間の「指定管理者制度」下で明らかになってきた問題点を踏まえ、広島市に四点を要求し、基本方針の改定を要求しました。
第1に、「公の施設」の理念と、「公の施設」の管理運営のために広島市が100%出資で多くの外郭団体を設置してきた経過を踏まえ、外郭団体が管理する「公の施設」はすべて「非公募」とすること。
第2に、指定管理者の選定基準が「経費節減」に偏り、経費・人件費を削減した事業者を有利にし、広く「住民の福祉」を担う「公の施設」の趣旨に反していることから、選定基準を「事業内容・管理運営能力」優先に切り替えること。
第3に、広島市の事業を担うために設置した外郭団体に事業の担い手として雇用した外郭団体職員への雇用責任を受け止め、外郭団体職員の雇用を保障するとともに、定期昇給を含む賃金・労働条件を確保すること。
第4に、指定管理者制度に関わる事業内容、労働条件等については、事実上の管理者である広島市として、外郭団体労働組合と真摯に労使協議を行い、合意に努めること。同時に、広く市民に訴えて、市民自ら「公の施設」を守る主体になってもらおうと、住民への情報提供、施設や事業に関わる住民団体との共同運動に取り組んできました。「指定管理者制度」「公務公共サービス」「介護保険と後期高齢者医療制度」「市立保育園民間移管問題」など、これまでに6回、延べ57万枚の市民ビラを全市に届け、市民シンポジウムや学習会を開催、署名・街頭宣伝・市民パレードなどに市民とともに取り組んでいます。市民との共同運動の力は、「指定管理者制度」の見直し・改善を求める2回の広島市議会決議に結実し、今回の「基本方針」見直しに結びついています。
利用料金制拡大という問題点はありますが、今回の「改定」は指定管理者制度の大きな方向転換であり、4年に及ぶ私たちの運動の到達点を反映したものと考えています。
【広島市現代美術館 指定管理もっと議論を 中国新聞・社説 09/2/23】 広島市現代美術館の「指定管理者制度」による運営が、一部見直されることになった。 その柱は、四年に一度募ることになっていた指定管理者を「非公募」に切り替えることだ。それに伴って、入場料をそのまま美術館の収入にし、経営努力を促す「利用料金制」を二〇一〇年度から採用する。 民間のノウハウを生かし、運営を活性化しようと導入されて三年。どうして今見直しを迫られたのだろうか。 公募で選ばれ、これまで管理、運営に当たってきたのは市文化財団である。魅力ある展覧会などの企画、運営をするには専門的な知識や経験のある職員がいて、サービスを継続的に提供する必要がある。それが、非公募に転換し、今後も財団に託すことになった主な理由のようだ。 「官から民へ」という小泉改革の一環として始まった指定管理者制度。これまで自治体が導入する際には、どちらかといえば経費削減ばかりに目が向きがちだった。 だが、美術館や演劇ホールなどの文化施設には、本来の目的や市民に提供すべきサービスの内容がそれぞれにある。そうした面を含めて、どうやって中身を向上させていくのかが、十分議論されないまま制度が導入されたのが実情ではなかったか。 現代美術館の場合も例外ではないだろう。見直しは当然だ。これを機に根本から考え、市民の合意を形成すべきではないだろうか。 指定管理者制度の導入で、美術館の運営管理費は四年間で計十一億六千万円と、〇四年度基準では二割減った。人件費を削るため、市から出向していたベテランの学芸員三人を引き揚げさせ、嘱託で埋めた。 一方で、例年、十万人前後の入館者数を十五万人以上に増やす目標もある。予算の縮小で、派手な特別展をしにくくなっている中、手持ちの収蔵作品を紹介するコレクション展で切り口などを工夫しているが、目標には遠い。 ヒロシマに刺激を受けて、作品を制作する現代アーティストは多い。二十年前、広島市が全国に先駆け、比治山に現代美術館を建てたのは、アートによるヒロシマ発信が目的の一つだった。 このため展示や運営のレベルにこだわり、入館者をいかに増やすかが、なおざりになっていた面もあった。幅広い市民にどうやって目を向けてもらうか、知恵をしぼる必要がある。 山の上で待っているだけではなく、例えば市中のギャラリーなどと協力し、美術好きの市民と交流を図る。金沢21世紀美術館のように、市内の全小中学生を招待するのもいいだろう。ファンを開拓していきたい。 利用料金制では、客がたくさん入れば館の予算も増える。頑張りどころだ。ただ、少なければ予算が縮み、魅力的な展覧会が開けなくなる恐れもある。それが市民の望むことなのか。市民も一緒に考えるべきだろう。
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