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「福祉ガバナンス論」備忘録

「新しい公共空間」論にかかわって、市民運動やNPOの活動をどう位置づけるか、ガバナンス論とは・・・
 原則を明確にしておくことが大事だと、前々から感じていたが、二宮厚美氏の最新著「新自由主義の破局と決着」は分権論、ガバナンス論に挑戦的な議論を展開し、学ぶところが多い。以下は、備忘録

「第五章 ポスト新自由主義の新福祉国家か福祉ガバナンスかの選択」より
 ~ 新自由主義に対する決着の付け方、現在の破局の克服の方向の検討

1.憲法に立脚した福祉国家原則と新自由主義との対決点
★新自由主義VS憲法体制の視点
・新自由主義を克服するために、その評価を確定する必要(これまでの整理)
①階級権力の再構築に向けた支配階級の戦略的プロジェクト
②帝国主義化への内的必然性(内的衝動)を有する
③先進資本主義国では、戦後福祉国家の解体を歴史的使命として登場
④グローバルな規模での資本蓄積・循環上の新たな構造を呼び起こした
⑤格差・貧困の深刻化等など一大危機としてあらわれ、国民の反撃を招いている
 ~ こけらはポスト新自由主義を構想する理論的前提

・日本では、憲法体制がたたかいの国民的陣地~ 2重の意味
①9条 新自由主義の帝国主義的性格への反撃の武器
②25条    〃  戦後福祉国家解体の階級的戦略
~「9条+25条」は改憲的構造改革に対する国民的な武器
  → 現代の新自由主義は、生活、教育、労働の三大社会権に襲い掛かっている。
  (今後の本書の展開は、25条にもとづく福祉国家の検討に進む)

★生存権保障の万人妥当性の無条件性=ナショナル・ミニマムの基準
・福祉国家においてまず重要~ナショナルミニマム「国民生活の最低限保障」
①水準の問題 ~ 2つの方向
 ネガティブな捉え方~生存ぎりぎりの最下限、世間対の悪い水準にとどめるべき
 ポジティブな捉え方~人間らしい生活としての水準は誰にでも保障
    憲法はポジティブ論「健康で文化的な最低限度の生活」

・「ハングリー精神論」を前提~新自由主義/スティグマを烙印する水準
  救貧法に由来する思想~ ワークフェアの徹底/働いて稼ぐほうがましだと思わせる役割
    「ウェルフェア(福祉依存)からワークフェア(雇用依存)へ」

・憲法原則~ 2つの大事な点 ①無条件の保障 ②万人妥当性、普遍性

・新自由主義に妥協的見解~ ①②の2つの大事な点をあいまいにする傾向
  イギリス「第3の道」ギデンズ 「権利には必ず責任が伴う」
     例)失業手当の支給には、積極的に職探しする義務が伴う、という見方

★ナショナル・ミニマム保障の領域と方法
②領域と分野は多方面にわたる~ 少なくとも、労働、教育、所得、社会サービス、住宅・環境

③保障の方法の問題  /THマーシャル 社会的権利の普遍化、平等保障の福祉国家の姿
・憲法の予定したナショナル・ミニマムの方法
 1 現金給付による所得保障  ~ 資本主義では、貨幣所得の最低限保障が必要
    児童手当、生活扶助、各種年金、失業手当、最低賃金
 2 現物給付による社会サービス保障
 保育、教育、介護、看護、医療、保健等のサービスが公的に保障される体制
   → 単に、現物給付する人、施設が存在しているだけでない。そう捉えるのは誤り
 現物給付の体制(原則)とは、公的責任のもとで供給・給付する仕組み、方法のことを指す
 3 生存、教育、労働権を保障するための公的規制、ルール・基準の設定
    耐震偽装、産地偽装、偽装請負などの事例を見れば明らか。

★ナショナル・ミニマムに襲いかかる新自由主義の攻勢
3つの方法に対する新自由主義の攻勢
 1.規制の緩和、撤廃 ~ 最近の特徴は、規制緩和を「分権」と結びつけて推進
 
  2.「民間委託→営利化→ 市場化」  現物給付原則の空洞化
   例) 「保育の准市場化」 そのためには、現物給付型の社会サービスを現金給付型に転換するバウチャー制度など
  ~これらは「所得保障一元化論」「負の所得税」(フリードマン)と同一
  注) 「ベーシックインカム」構想には、「所得保障一元化論」に足をすくわれる危険性がある。
 
 3.「現金給付型」の分野~ 「限定化プラス水準抑制」
   生活保護の母子加算、老齢加算廃止、児童扶養手当の削減、介護認定の水準切下げ、年金切下げ
       →「限定化プラス水準抑制」がもたらす3つの問題
       1. 「真の弱者に絞り込んだ福祉」
       2.劣等処遇の原則 (メモ 「子どもの貧困」克服の視点でも問題になっている)
       3 「ウェルフェアからワークフェアへの転換」
         ~ 福祉でなく自ら稼ぐ生活を推進/アクティベーション・アプローチ
         →同主張は、新自由主義の浸透過程で浮上してくる点に注意が必要

2.ポスト福祉国家論から福祉ガバナンス論
 神野直彦、宮本太郎氏の議論~ 新自由主義に一線を画しながら、新自由主義に重なるように、戦後福祉国家を根本のところで見直さなければならない、という方向に向かうから取上げる
  その基調は「戦後福祉国家の見直し → 福祉ガバナンスの構想」という論理

★憲法のナショナル・ミニマム保障からみた「福祉ガバナンス論」の特質
 ナショナル・ミニマム原則よりも、地方分権化を重視する 
   ~二宮/新自由主義との攻防戦は、福祉レジームの分権化でなく、ナショナル・ミニマム原則を重視

①公的規制・ルールのあり方
 全国的統一性、共通性、普遍性よりも、地域的多様性・柔軟性・自主性を重視する/規制緩和に迎合
  ~二宮「憲法にもとづく地方自治は、古典的市民自治とはちがって、ナショナルミニマム保障を全国共通の土台とした上での地域自治、つまり現代的地方自治という性格を持っているから、地域的多様性や自発性は、ナショナル・ミニマム保障を前提とした上での話」 「地域の多様性、自発性は、ナショナルミニマムの土台の上に開花する」やせた土地に地方自治の花咲かない」
  ⇒ 地方自治を、現代的地方自治ととらえるか、古典的自民自治の延長線上でとらえるか、の違いに遡る
     ~ 現代的地方自治の立場=現代社会を階級社会としてとらえる
       古典的市民自治の立場=市民社会(市場社会)として把握する。
        ~ なぜなら、生存、教育、労働権は、階級対立から生まれてきたものだから

②現物給付原則
 社会サービスの給付は重視するが、方法は現物給付原則を曖昧にして語る
    サービスが十分に提供されていることは主張するが、その主体が公務が民間かは問わない
 ~ 多様・多元化が望ましいという「供給主体のミックス論」⇒「現物給付の現金給付化」へと向かう

③所得保障
 二宮 ~必要充足・応能負担原則(憲法原則)によるナショナルミニマムの普遍性・無条件性、という立場
 福祉ガバナンス論~ 所得保障を自己目的的に位置づけず、手段として活用
            「ウェルフェアからワークフェアへ」の流れの中に位置づけなおそうとする
   例)宮本「従来の受動的な所得保障を能動的な参加保障に転換」する
    宮本、神野「ミニマム保障は、自立と参加を下支えするもの」「セーフティネットというよのもトランポリンである」

★「福祉ガバナンス論」の出発点としての戦後福祉国家の総括
 宮本/戦後福祉国家は、十分にその機能を果たさなくなった、というのがおよその結論
  「世紀をまたいで、レジームの如何を問わず、よりドラスチックな波に現れている」「これまで福祉国家がリスクやニーズに対応してきたその基本的な方法が通用しなくなっている」

・レジーム~ エスピン・アンデルセンの保守主義、自由主義、社民主義の3つのレジームのこと
・その中心は、ケインズ主義的な20世紀型福祉国家
   → 最も転換を求められるのは保守主義という「新自由主義」におされ気味の見解

★3つの福祉レジームの相互関連
 エスピン・アンデルセン 福祉レジームの3つの指標
1.脱商品化の水準(脱市場化) ~ 社会権の定着度合い
    人権原理が、市場原理をどの程度抑え込んでいるか。福祉レジームの型を決める決定的要素
2.福祉諸制度の階層的構造 ~ 年金・医療など福祉的給付の普遍化の程度
3.脱家族主義の水準 保育・介護などが家族責任から解放され社会化されている程度/脱ジェンダー化
     → 2つの道 ①公的な社会化(直接的社会化) ②市場ベースの社会化(間接的社会化)
 
・自由主義 ~ 脱商品化の程度が低く、階層的であり、脱家族主義には中立的
    *中立的~ 間接的社会化という面はあるが、私事化(家族責任)を維持・再生する
・保守主義 ~ 脱商品化の水準は比較的高い。階層性が強く、脱家族主義は弱い
・社民(北欧)型~ 脱商品化、脱階層化、脱家族主義化 で 相対的に高い水準

・発展の歴史的傾向  「自由主義→ 保守主義 → 社民主義」
    その原動力は「階級動員論」
・現代の「新自由主義」は・・・ 社民主義、保守主義レジームに対する反動(バックラッシュ)
   ~ つまり、戦後福祉国家の解体を意図した階級的戦略として位置づけられる

★「第3の道」に接近する「福祉ガバナンス論」
①宮本氏が「21世紀に入って、すべての福祉レジームが通用しなくなった」と、全面否定から「ホスト福祉国家」「福祉ガバナンス」という新用語で語るしかなくなった。という指摘は、過去の取り組みを弁証法的に分析し、未来につながる芽、弱点を分析的に捉えず、これまでの福祉国家にむけた努力を軽く「捨て去る」というのは、観念論だと思うし、おそらく、住民の運動への確信のなさを感じる。
 二宮氏は、宮本氏が「国家」という用語を使わず、「ガバナンス」という用語を使っていることにも注目している。
 そして「ガバナンス」という用語が流行した背景として・・・90年代のヨーロッパでの流行であって、「政府に組み込まれてない組織・・・それぞれの役割に応じて、適宜、ガバナンスに参画するのである」という紹介をしている。

 ・・(メモ)これは、プーランツァスなどのネオ。マルクス主義などの流れの国家関係論?だったか、力関係を反映して国家の性質は変わるという、階級的な抑圧機構としての国家の本質を避けた議論と、関係しているのかと感じる。

③次ぎに、二宮氏は、「北欧型の福祉レジームを、めざすべき手本の地位から引きずり降ろした」と批判。

3.新自由主義と親和的・妥協的産物としての福祉ガバナンス
 その性格「新自由主義と『同床異夢』の関係において構成されてきたこと」「新自由主義と接点をもちつつ、かといって新自由主義に迎合するというわけではないが、従来の社民主義レジームを基本にして新自由主義と対決するたけでもない」という「あいまいな立場」にたつものである。

★福祉国家概念放棄のレトリックとしての福祉ガバナンス概念
 宮本氏の説明「中央政府の統治機能が低下し、政府と他のファクターとの関係再編がすすむ名での概念」
 → ガバナンスとは、国家権力、政府機能の断片化、分散化がすすむ中であらわれた概念。
    それにより、多様な諸主体相互の調整機能が生まれるとする・・・ 国家機能の相対化

・福祉ガバナンス・・「福祉国家という病表現に収まらない新しい福祉体制」を意味する
   ~ 当然のこととして「福祉国家」の役割は縮減するとし、国家の役割を軽視する。
   ~ 新自由主義のもと、国民国家概念の揺らぎ、「国民国家の黄昏」に向かうこととなる。
  (→ 多様な諸主体が現れると、その上に立つメガ・ガバナンスが生まれるという複雑な問題がある)
  → メモ/現在社会が階級社会であり、その階級的利益を軸にした闘争という側面、もっとも困難なたたかいの要を放棄することにつながる、と思う

・ガバナンス論の流行は、新自由主義の嵐が吹き荒れた結果
  ~福祉国家の断片化は、諸制度の民営化、公的サービスの市場化し、公的諸機関を分権化したから
   → 「福祉国家のナショナルミニマム保障機能の分権的解体を意図した結果に他ならない」
    例)宮本「福祉国家を中心とした構造から・・・福祉ミックスの多元的構造への移行を示す」
       ~ 福祉ガバナンスは、ポスト新自由主義というより、新自由主義が生み出したもの。

★ガバナンス概念と新自由主義の親和関係
 ポスト新自由主義として、「福祉ガバナンス」概念を出発点にできない3つの理由
①民主主義概念と不可分一体の関係にない~営利的企業、NPOを含む構造は民主主義的統治方法でない
     政府からガバメントへの重心の移行は、民主主義の退行を物語る/ハーベイ
   ~私的な団体、組織が、住民の民主主義的統制を外れたところで、断片的、ネットワーク的に統治形態を構築することは、決して民主主義的なものでない。~ 憲法民主主義の大枠の中で論じられない
  → メモ 公における発言権の保障、主権者の権限が後退し、「金と暇」のある人々の統治に変わる

②新自由主義を敵対的な対抗路線と見なさず、戦後福祉国家の解体戦略の部分的に容認しる地点から出発
   例)宮本「福祉ガバナンス」とは「同床異夢の諸勢力の妥協的枠組み」
      ~ まさに行方の定まらない方向がガバナンス。未来を託すことができるか?

③自由主義と社民主義レジームの融合(第三の道)という認識を1つの根拠にして導きだされたもの。
    ~ 例)「競技の質そのものの変化」「トラック間の調整、融合がはじまった」/妥協・融合の関係

4.福祉ガバナンスと新自由主義との現実的な「同床異夢」
★前座としての「リスク構造転換」論
・「ニーズ表出型の福祉ガバナンスへ」「参加保障型ガバナンスへ」という将来構想
   転換論の成り立つ前提~従来の「20世紀型の福祉国家」が有効でなかった、という論証だが…
  →その論証の仕掛け「リスク構造転換」論
     ~リスクが変化し、普遍化・階層化・個別化している、としている。
         普遍化と個別化は論理的に矛盾するのに、厳密に論証・展開されてない
   論の中心は、「リスクの構造転換」がなぜ起こり、それが「福祉国家の限界」を招いている。という二点

★新自由主義との対決を回復したアクティベーション
 「リスクの普遍化・階層化・個別化」とは、現代社会の格差・貧困の現実を述べているにすぎない。
 → 問題の中心! この「リスクの構造転換」がどこから呼び起こされたか、という点
    二宮/新自由主義レジームに起因する
    宮本・神野/「グローバル化プラス脱工業化(知識・情報社会化)」
  
しかし
①単純なグローバル化ではなく、派遣労働の拡大など新自由主義的グローバルリズムの帰結。
②技術的基礎の変化は現実だが、その社会的意味は、その資本主義的充用から検討すべきもの
③現代の格差・貧困は、新自由主義敵構造改革の猛威を抜きに理解できない。

 ~ 例えば、ITの活用が日雇い派遣拡大の技術的基礎を用意はしたが、IT自体が派遣労働を呼び起こしたのではない。
 ~ 非正規の拡大は、90年代、多国籍企業化した大企業の新自由主義的グローバリズム化戦略の産物/95年「新時代の『日本的経営』」

 →格差・貧困問題をとらえるには、その背後を単なる「グローバル化」「脱工業化」と見るだけでは不十分。、階級関係の再構築を戦略的課題とした新自由主義を正面にすえる必要がある。
 → 現代日本の格差・貧困問題の解決には、何より新自由主義路線に歯止めをかけることが求められている。
   それは、企業の横暴を取り締まる、福祉国家の力を生かす課題である。
  
・福祉ガバナンス論は、労働市場の参入、移動の支援だけにとどまる。/「再チャレンジ」路線と同じ
   → 肝心の新自由主義路線に対する対決の視点に欠ける。

★同床異夢の新自由主義派と福祉ガバナンス派が横たわる寝台
・「福祉国家の限界」の「根拠」~ 「社会的排除」と呼ばれる問題に要約されている。
  「社会的排除」は、貧困と格差がクロスするときに起こるが・・・

・ガバナンス論は、「グローバル化プラス脱工業化」が「雇用の流動化、労働市場の分極化をおしすすめ、さらに家族やコミュニティの紐帯を弱めた」と捉え、その社会的排除問題に「20世紀型福祉国家」の限界を見る。
 ~ この福祉国家とは、ケインズ主義的な「所得再配分中心で、ニーズ決定型の福祉国家」を指す
 ~知識・情報社会化が「労働と技術の陳腐化」を進行させ、労働市場での参加、移動の困難を作ったと見る
 → よって、労働市場から排除された人々を、社会的に包摂するという課題に向けられる。

・社会的排除(二宮)とは①市場社会からの排除 ②福祉制度からの排除 ③家族、コミュニティからの排除
   ところが、「排除」に対応する包摂のうち①市場社会(主に労働市場)のみに注目する。

・しかも、包摂の「多義性」を逆用することに意味があるとし、「社会的包摂の曖昧さが、この言葉を福祉改革の焦点に押し上げ、同床異夢の諸勢力の妥協的枠組みとしているのである」とする

 → 新自由主義、福祉ガバナンス派の同床異夢のこと。つまり「派遣・請負労働者、パート・アルバイト層を不断に労働市場に包摂すること」。違いは「労働市場への参加の強制か、社会的支援か」にある
 → この両者は、失業や不安定雇用に対し、福祉国家的社会保障に包摂する方向に向かわない!

・アクティベーション論
 職業訓練、生涯教育、職業斡旋等の積極的労働市場政策が、重要な課題 ~当然の主張。その上での問題点
①「脱商品化」(福祉レジーム概念)でなく「労働市場への包摂」の枠内の主張→新自由主義との共通面
②能動的な参加保障への転換→ ナショナルミニマム保障をそれ自体として尊重していない
   「ナショナルミニマムは自立と参加の下支え」(神野、宮本)でありセーフティネットでなくトランポリン
     →安部政権「再チャレンジ」雇用獲得能力を高める新自由主義的職業訓練政策に向かわざるを得ない
③この危険性は2つの問題を呼び起こす 
  1.ナショナルミニマム保障原則があいまいになる 例)失業時の所得保障、生活扶助の無条件的保障
  2.「雇用獲得能力」を高め、自立した生活を、という思想~「生活の自己責任論」に手を貸すことに。
   ⇒「生存の自己責任」論の克服を、「無条件の生存」「生きさせろ」という貧困最前線の闘いにとって「ワークフェア」「アクティベーション」の主張は、「貧困・格差問題解決の第一歩とはならない」

★「新しい公共空間」と同じ「福祉の准市場化論」
 「社会的包摂=参加論」のもう1つの問題~ 現物給付型社会サービスの再編成
     → 社会サービスの供給体制をどうするかが、大きな問題点
・論の特徴「現金給付の所得再配分よりも、現物給付型社会サービスの重視」とともに「保育・医療・介護・福祉などの社会サービス体制は分権化し、地方自治に委ねるべき」
 → 問題は、福祉ガバナンス論が、社会サービスの「准(擬似)市場化」論を主張し、新自由主義と共鳴する。
 → つまり、総務省の「新しい公共空間」論と同じものになり、「社会サービスの現金給付化」に向かう

なぜなら 
①「ニーズ表出型」への転換/ 公共では選択の幅が狭い。供給主体の多元化が必要
② そこで、福祉ミックス論に向かう ~「新しい公共空間」論(行政の多元化、複合化)と同じ
  注)供給主体の多元化 ~2つの方法
     1.市場化テスト方式(民営化) 2.利用者補助金方式(介護保険、障害者支援費制度)
    → 「社会サービスの現物給付原則」を厳密におさえる大切さ
       民間委託は、まだ公金支出によって事業を直接維持(サービスの買い手は自治体)
       利用者補助金方式は、直接契約型(サービスの買い手は利用者)
③福祉ガバナンス論は、利用者補助金制度による「准市場化」を主張する
    神野氏の「3つの政府」論では、この点はあいまい。宮本説は、一線を越えている
     ~「対価をとることはできない」「公的な資金による准市場のもと」自治体、NPO、営利企業が連携

★現物給付型社会サービスの現物給付化の問題点
 現物給付が大事といいながら、現金給付化に傾斜してしまう、ことに重大な疑問 ~ 3つの観点
①「保育の准市場化」の主張(社会保障審議会、駒村氏) ~ 直接契約制度 
②介護保険、障害者福祉の改革課題(利用からの排除、事業破たん、ワーキングプア)に逆行 
③「新しい公共空間論」と同じ構図で、「福祉国家の分権的解体」の動きに手を貸す
    ~福祉分野の課題は、分権化でなく、ナショナルミニマムが危機に陥っていること。
    ~供給体制の多元化が進んでないことに社会サービスが行き渡らない原因があるのでなく、公務労働から市場労働に転換しようとする動きにその原因があること
 
  ⇒対人社会サービス労働は、コミュニケーション労働であり、仮に「ニーズ表出型」のものとして発展する場合も、現物給付の公務労働に位置づけることが相応しい
    ~ メモ/応答関係を通じた、個人の発達保障を抜きに「参加」は保障されないから。
   結論~「現物給付原則に担い手は、福祉ガバナンスでなく、憲法をもとづく福祉国家である」

【エピローグ・新自由主義に対する決着、より】
・新自由主義を相手にたたかう政治主体をどこにもとめるか・・・
  ~ 福祉国家的公共圏に生きる住民 /なぜ、市民、国民でなく住民か

①地域社会の住民は、住民自治の担い手
  現代の地方自治は、単なる分権化、市民自治でなく、住民自治の徹底が求められる
 ~メモ 補完性の原理とは、国と地方の役割分担でなく責任分担という二宮氏の指摘。「充実した地方自治」論の全権限性の原則から住民自治をとらえる必要あり
②国民国家単位の住民は、国民主権の担い手である。福祉国家の国民
③国際社会に生きる住民はインターナショナリズムの担い手。
  地球市民でも、新自由主義の難民でもなく、帝国国民でもない。国際社会に生きる住民
 
・住民が3つの舞台でめざましい活躍を始めていることが重要
  ~きらりと光る自治体づくり、地域循環型経済の構築、反貧困ネットワーク、3つのGをキーワードとして新生福祉の追及、持続可能な社会構想、反グローバリズムの運動、反核・平和運動、地球環境救えの運動などなど
  ~ 新自由主義の破たんに実践的決着をつれるのは国民自身。実践的決着をつけてこそ理論的決着も、けりがつく。

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