偽装請負の新Q&Aと学校給食民間委託
やっぱり給食調理の民間委託と、学校栄養職員の業務は両立しないのではないか。
31日に、厚生労働省が偽装請負についてQ&Aを出している。
「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集
その「作業工程の指示」で「仕事の順序・方法等の指示」や「作業の内容、順序、方法等に関して文書等で詳細に示す」ことも「偽装請負と判断される」としている点だ。
一方「学校給食衛生管理の基準」(97年4月1日制定 03年3月31日一部改訂 文科省)では・・・
「ア 学校栄養職員は,献立ごとに調理作業の手順・時間・担当者を示した調理作業工程表や各調理担当者の調理室内の作業動線を示した作業動線図を作成するなどして,学校給食調理員に対して,それらを示し,確認すること。」
この点についてこれまで文部科学省はどういってきたか。
「学校給食における調理業務の民間委託と労働者供給事業について」(84年の文部省文体育局給食課)
「2.委託者側が調理作業を直接指揮監督することはしない。
ただし、委託者側の栄養士が献立を作成し、それに従って調理するよう受託者側の責任者に求めることや、作業の開始前に受託者側の責任者に対し、当日の献立表等によって作業に関する指示を行うことにより、その結果として委託者側の意思が受託側の労働者、主として調理員に反映されることがあってもよい」
この間の偽造請負の実態と、その改善をもとめるたたかいが反映して、25年前の文部科学省の通知は、通用しなくなっているのではないか。
なお、こうした場合に、重大事故(死亡事故)が起こった場合に、結局、学校栄養職員、学校長が「学校給食衛生管理の基準」に照らして刑事責任を問われるのではないか。
高知市議会の団の勉強会で、教育長に、この点をたずねたら明確な答えは出ず、「勉強してみる」と宿題になっているの。その後の確認をしなくてはならない。
「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集
7. 作業工程の指示
Q 発注者が、請負業務の作業工程に関して、仕事の順序の指示を行ったり、請負労働者の配置の決定を行ったりしてもいいですか。また、発注者が直接請負労働者に指示を行わないのですが、発注者が作成した作業指示書を請負事業主に渡してそのとおりに作業を行わせてもいいですか。A 適切な請負と判断されるためには、業務の遂行に関する指示その他の管理を請負事業主が自ら行っていること、請け負った業務を自己の業務として相手方から独立して処理することなどが必要です。
したがって、発注者が請負業務の作業工程に関して、仕事の順序・方法等の指示を行ったり、請負労働者の配置、請負労働者一人ひとりへの仕事の割付等を決定したりすることは、請負労働者が自ら業務の遂行に関する指示その他の管理を行っていないので、偽装請負と判断されることになります。
また、こうした指示は口頭に限らず、発注者が作業の内容、順序、方法等に関して文書等で詳細に示し、そのとおりに請負事業主が作業を行っている場合も、発注者による指示その他の管理を行わせていると判断され、偽装請負と判断されることになります。
【 学校給食に関する各種の通知 】
(一)学校給食の内容
文部省体育局長通知(要旨)(1986.3.3 文体給76)
1. 栄養バランスのとれた魅力ある多様なもの 、2. 料理に即した食器具、3. ふさわしい喫食場所、4. 調理後、短時間、適温で 5. 衛生的、安全と示されている。(二)学校栄養職員の職務
①学校給食法 第5条の3(要旨)
学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員は、栄養士の免許を有するもので学校給食の実施に必要な知識又は経験を有するものでなければならない。②「学校栄養職員の職務内容について」文部省体育局長通知(1986.3.13 文体給88)
~「栄養に関する専門的事項」の具体化としてだれた通知では~
(栄養管理)
4.学校給食の調理、配食及び施設設備等に関し、指導、助言を行うこと。
(衛生管理)
7.調理従事員の衛生、施設設備の衛生及び食品衛生の適正を期するため、日常の点検及び指導、助言を行うこと。
(検食等)
8.学校給食の安全と食事内容の向上を期するため、検食の実施及び検査用保存食の管理を行うこと。
(物品管理)
9.学校給食用物資の選定、購入、検収及び保管に参画すること
~ と調理全体に直接責任を負うようになっている。(三)学校給食衛生管理の基準
(97年4月1日制定 03年3月31日一部改訂 文科省)
★Ⅰ.学校給食設備 2 学校給食設備
教育委員会等は,随時設備の点検を行い,その実態の把握に努めるとともに,次の事項に留意し,早急に設備の整備,改善,更新,修理等の措置を講じること。
★Ⅲ 学校給食関係者
・1 学校給食従事者の健康管理
① 教育委員会等は,以下の点に留意し,学校給食従事者の健康管理を期すこと。
・ 3 学校給食調理員
(1)研修
ア 教育委員会等は,学校給食調理員の衛生意識の高揚を図るため,別紙2「学校給食調理員の標準的研修プログラム」に掲げる内容項目を参考にして,学校給食調理員に対する衛生管理に関する研修機会を積極的に設けること。この際,パート職員も含めできるだけ全員が等しく受講できるようにすること。
・Ⅶ 食品の検収・保管等
学校給食調理場及び共同調理場の受配校においては,以下の点に留意して,食品の検収,保管等を行うこと。
1 検収の方法
ア あらかじめ検収責任者を定めて,食品の納入に立会し検収を確実に実施すること。なお,検収の確実な実施のため必要な場合には,検収責任者など立会する者の勤務時間を納入時間に合わせて割り振るようにすること。
ウ 納入業者から食品を納入させる場合は,検収室において,食品の受け渡しを行うとともに,検収責任者が必ず立ち会い,検収表(簿)に基づき,納品時間,納入業者名,品名,製造年月日,数量,品質,鮮度,包装容器等の状況,品温(納入業者が運搬の際,適切な温度管理を行っていたかどうかを含む。),異物の混入,品質保持期限(賞味期限)等の表示などについて十分に点検を行い,記録し,これを保存すること。
・Ⅷ 調理過程
「学校給食調理場等においては,学校栄養職員と学校給食調理員が相互の役割分担と連携協力のもと,以下の点に留意し,調理過程における衛生管理の充実を図ること。」
3 二次汚染の防止
ア 学校栄養職員は,献立ごとに調理作業の手順・時間・担当者を示した調理作業工程表や各調理担当者の調理室内の作業動線を示した作業動線図を作成するなどして,学校給食調理員に対して,それらを示し,確認すること。
イ 学校栄養職員は,学校給食調理員に対し,特に,調理作業中の食品や調理機械・器具類の汚染の防止及び包丁,まな板類の食品別,処理別の使い分けについてその徹底を図ること。
・ⅩⅠ 衛生管理体制
1 衛生管理責任者
ア 学校給食調理場においては,学校栄養職員(学校栄養職員が現にいない調理場にあっては,調理師資格を有する学校給食調理員等)を衛生管理責任者として定めること。
イ 衛生管理責任者は,学校給食調理員の衛生,施設・設備の衛生,食品衛生の日常管理などに当たるとともに,特に調理過程における下処理,調理,配送などの作業工程を分析し,それぞれの工程において,清潔かつ迅速に加熱・冷却調理が適正に行われているかを確認し,その結果を記録すること。
2 関係職員等による衛生管理体制
イ 校長又は所長は,食品の検収等の日常点検の結果,衛生管理責任者から異常の発生の報告を受けた場合,食品の返品,メニューの削除,調理済み食品の回収等必要な措置を講じること。
ウ 校長又は所長は,施設・設備等の日常点検の結果,改善に時間を要する事態が生じた場合,必要な応急処置を講じるとともに,計画的に改善を行うこと。
エ 校長又は所長は,学校栄養職員の指導・助言が円滑に実施されるよう,関係職員の意思疎通等に配慮すること。
~ このように検収、調理、衛生管理、点検など直接、公務の責任がとわれている。(四)民間委託での事務連絡より
「学校給食における調理業務の民間委託と労働者供給事業について」 84年の文部省文体育局給食課
職業安定法第44 条は、「何人も、労働者供給事業を行い、又はその者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」として、労働者供給事業を禁じており、調理員等の人的要素のみが民間委託されている、いわゆる派遣方式の委託を行う場合、次の点に留意する必要がある。
1.契約書により委託の内容を明示し、受託者が「作業の完成について事業主としての財政上、法律上のすべての責任を負うものであること」を明確にしておく。
これは、学校給食の民間委託は、調理業務、配送業務などが主な委託内容となるが、仕様書において法令を遵守した安全衛生管理などを、委託者の責任として明記した上で、委託契約を締結することが条件である。
このため委託者の責任として、文部科学省の衛生管理基準や保健所の指導に適合する施設、設備を整備した上で委託することが必要である。2.「委託者側が調理作業を直接指揮監督することはしない」
「ただし、委託者側の栄養士が献立を作成し、それに従って調理するよう受託者側の責任者に求めることや、作業の開始前に受託者側の責任者に対し、当日の献立表等によって作業に関する指示を行うことにより、その結果として委託者側の意思が受託側の労働者、主として調理員に反映されることがあってもよい」
・・・また、調理職員が1~2名以下の規模では、受託者側の責任者の配置が難しく、また調理作業を直接指揮監督しなければならないことが想定されとある程度の規模を求めている。3.「自ら提供する機械、設備、器材、作業に必要な材料、資材を使用すること」となっており、委託者から借入れ又は購入する場合、請負契約と関係のない双務契約(契約当事者双方に相互に対価的関係をなす法的義務を課す契約)による必要がある。
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