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学力対策 「頑張らせる方向だけ」に懸念 高知市・行政評価

 高知市の行った行政評価で、教育委員会の「学力向上対策」について、改善点が提言されている。
「学力問題の本質は、「頑張れない」「疲れている」学校・保護者・子どもにどう向き合うかである」「改革の方向性が変わらなければ、徒労感のみ蓄積し、課題は解決しない」「学力・自己実現という高次の要求をする前提としての欲求を充足させる手立てがなければ、学習には向き合えない」・・・などなど
高知市のHPでは、公開されてないので、ぜひ読んで頂きたいと思い関連部分を紹介します。

 点検・評価委員は、発達論を専門とする川崎育郎女子大教授(臨床心理学)、是永かな子高知大准教授(障害児教育学)。

《平成20年度教育委員会の事務の管理及び執行の状況の点検及び評価結果報告書》
■点検・評価委員からの意見等
学力向上対策
2 改善点等の提言
○学校現場における日々の学習環境に視点をおいた取り組みも必要ではないかと思われる。
 授業改革の事業においてなされていることかもしれないが、児童の学習に対する動機付けを高める方法についての研究分析が必要と思われる。
 極端な学力不振をきたしている中学生においては、小学校時代からの支援が必要と思われる。

○すべての事業が方向性aもしくはb、つまり現状の取り組みの方向性は良いことを前提としているので、以下の疑問が残る。
①まず、学力問題をいかに分析しているのかの全体構造の提起が必要である。これはPDCAサイクルのP(計画)の前提である。

②なぜならば、改善の方向性が、学校・保護者・子どもを「頑張らせる」方向しか示されてないことを懸念するからである。

③学力格差は意欲格差と言われている中で学力問題の本質は、「頑張れない」「疲れている」学校・保護者・子どもにどう向き合うかであり、「やり直したい」気持ちを引き出し、くみ取り、チャンスを与えること、学校・保護者・子どもすべてに達成可能な「段階的アプローチ」を丁寧に提示することが重要であると考えるからである。

④そのためには、明治以来の近代的な学校制度下における一元的な「頑張らせる」目標設定から多元的な(当事者主体)の目標設定への転換が必要なのである。

⑤多元的な目標設定に必要性を認識するには、当事者の意見を「聞く姿勢」を持つ必要がある。これまでの学校文化に違和感のある当事者の声を聞くことである。

⑥つまり、学力問題の原因分析をすすめるために、児童生徒のヒアリング、保護者のヒアリング、教員のヒアリング、校長のヒアリングを行い、現状を再度検討する必要があると考える。なぜ子どもが頑張れないのかを考える際に、中学校における部活や生徒指導の現状など、勘案すべき事項は多い。

⑦これまでの「トップダウン的手法」、頑張らせる「一元的な価値観」、回数を増やす、人を増やすの「量的支援」では限界がある。

⑧改革の方向性が変わらなければ、⑦の支援方法では、徒労感のみ蓄積し、課題は解決しない。

⑨各種アンケートも数回行われているがその労力と関係者の調査疲れが懸念される。学力・到達度把握調査やQ-Uなど、今すでに行っているものの活用が重要である。また、調査の活用は、数値の向上をめざす成果測量だけではなく、低い数値の背景要因の分析のためにも活用すべきである。

⑩トップダウンの改革のみならず、よい実践を行っている学校を紹介するなどボトムアップの改革モデルを示すことも有効ではないだろうか。

⑪「自立できる個人」になる前提条件として、マズローの発達段階説では、
第1段階、生理的欲求(生命維持のための食欲、性欲、睡眠欲等の本能的・根源的な欲求)、
第2段階、安全の欲求(衣類・住居など安定・安全な状態を得ようとする欲求)、
第3段階、所属と愛の欲求(集団に属したい、誰かに愛されたいといった欲求)、
第4段階、承認の欲求(自分の集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める欲求)、
第5段階、自己実現の欲求(自分の能力・可能性を発揮し、創作的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求)、
の段階的保障が必要であり、学力は第5段階、自己実現の欲求である。高次の要求をする前提としての欲求を充足させる手立てがなければ、学習には向き合えないのではないだろうか。
 以上から総合的に、当事者のニーズ分析に基づいて、量的拡大による支援から、質的充実による支援に方向性を転換する必要があると考える。


 実は、この「改善提言」とも関係するが、県の教育振興計画検討委員会がおもしろい議論になっているらしい。
 私学の先生がなかなか頑張っている。直近の会を傍聴した人の話では、その先生は「私は高知の子どもの学力が低いとは思わない。学力状況調査の点数4.8ポイント低いというが、それくらいはすぐ上げることができる。私は受験のプロ。必死で頑張れ、最後まで鉛筆を手放すな、とやればあがる。しかし、それをやれば失うものもある。大らかさとか。それらの影響は高校のあとから出てくる」というものらしい。
  
 「どう頑張らせるか」「どう効率的に詰め込むか」みないな「非教育的」な議論が横行する学力議論のなかで、「自立できる個人」となるという視点からの、本質的な議論が必要だとあらためて感じる。

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