働くルールの確立で雇用創出と 労働総研が提言
「働くルールの確立で雇用の創出と内需拡大を」 昨年末、試算を発表していた労働総研が、提言を発表している。国内総生産の55%を占める家計の消費を暖め、暮らしと経済、さらに社会保障の安心を築く方向と言える。
解雇規制と失業保障、雇用創出のための緊急提言 3/5 労働総研サービス残業根絶で118.8万人。完全週休二日制と年次有給休暇の完全取得で153.5万人の雇用が創出。
労働者の賃金は13.2兆円増、消費需要が9.9兆円増え、国内生産は15.0兆円誘発される。
企業の賃金支払い総額は13.2兆円増えることになるが、内部留保(2007年時点で403兆円)の3.3%をあてるだけで可能だ。というもの。
また、国と自治体に対し、企業に「働くルール」を守らせ、雇用責任をはたさせること。自らも、公務非正規の安易な解雇をやめること。雇用対策法や地域雇用開発促進法、雇用保険法、生活保護法等、現行制度をフル活用し、失業防止・失業時の生活保障、就業支援に責任を果たすこと。さらに、抜本的な解決へ、法的整備を求めている。
「内部留保は自由に使える金ではない。取り崩せない」との「説」に対しても
「大企業が保有する現金・預貯金等の換金可能な資産は莫大だ。トヨタ自動車の換金性資産は、現金預金595億円、売買目的の有価証券1兆630億円、「投資その他の資産」中の投資有価証券2兆3187億円、自己株式1兆2126億円で、計4兆2126億円。さらに特別な目的を設けず、経営者の裁量で使用できる別途積立金が6兆3409億円ある。これらの合計10兆5000億円に対し、5万人の労働者を年収300万円で雇用して1500億円、1.4%の取り崩しで足りる。なお、「内部留保は設備投資され機械になっている」との主張もあるが、設備投資には巨額の減価償却費が使われており、内部留保の一部取り崩しをしても問題ない。」
大企業の「ワークシェアリング」論に対しても、現実に行っているのは、「非正規切り」と正社員の賃金カットであり、「ワークシェアリング」をいう前に「働くルールの徹底を」と述べている。
中長期的な対策として、「働くルール」の確立とともに・・・
・「少子・高齢化」社会にむけた医療・福祉分野での雇用拡大
当面「社会保障国民会議」の試算(B1のケース)を目標に雇用拡大をはかる。
①医師 4.2~ 5.6万人増
②看護職員 47.5~ 55 万人増
③医療その他職員 16.4~ 21 万人増
④介護職員 132.9万人増
⑤ 介護その他職員 41.8万人増
計 242.8~256.3万人増
・「30人以下学級」等で教職員の雇用拡大
義務教育の「30人学級」実現 約11万人増(小川正人放送大学教授の試算)
長時間過密労働(不払い時間外労働)解消のため、約17万人増(全教試算)
・待機児童の解消へ、施設拡充や学童保育支援等による保育士の雇用拡大をはかる。
・企業数が多く雇用吸収力の大きい中小・零細企業の技術開発支援、不正取引に対する賠償請求制度、公契約法制定など公正取引ルールの法制化など経営基盤の強化支援をはかる。
・国民生活と国内需要重視への政策転換で雇用の安定と新たな雇用を
(1) 地域活性化につながる地場・伝統産業、農林・水産業の支援・振興、後継者育成をはかる。
(2) 災害対策や、老朽化した上下水道、橋梁改築工事等など地域の「安心・安全」につながる生活密着型の公共事業を実施する。
(3) 太陽光・風力など再生可能エネルギー開発や環境優先施策による新規産業分野を育成する。
としている。
この中で、中小企業の役割について、7日、志位さんは京都の講演会で、
~ 労働者の7割を雇用する中小企業は「日本経済の主役」であり、中小企業が担っている内需振興への4つの役割として
① 政府も「中小企業白書」で認めている通り、中小企業の経営者は「利益の最大化」よりも「雇用の場の確保」「社会への貢献」をはるかに重視しており、「中小企業支援は最大の雇用対策」となる。
②もうけが本社に逃げたり、投機に走る大企業と違い、中小企業のもうけは地域に還元され、波及効果が大きい。
③高いモノづくりの技術力を持つ中小企業は日本経済の中での「資源」であり、かけがえのない歴史的・文化的財産。
④中小企業は地域社会に責任を果たしている。
を指摘している。
さて、こうした社会への転換だが、社会的連帯による社会的反撃で、きちんと政治の責任でルールをつくることが求められる。
かつて、ソニーの会長だった盛田さんは「『日本型経営』が危ない」(「文芸春秋」92年2月号)の中で、
①労働時間の面で欧米と格差が広がってしまった。②従業員にたいする成果の配分が欧米とくらべてたいへん悪い。③、株主の配当が非常に低い。④取引先・下請け企業との関係が対等・平等でない。⑤地域社会への貢献に積極的とは言いがたい。⑥環境保護および省資源対策に十分配慮しているか?
と日本的経営の問題点を指摘し、この是正のためには、「日本の現在の企業風土では、敢えてどこか1社が改革をやろうとすれば、その会社が結果的に経営危機に追い込まれてしまうような状況が存在しています」「日本企業の経営理念の根本的な変革は、一部の企業のみの対応で解決される問題ではなく、日本の経済・社会のシステム全体を変えていくことによって、初めてその実現が可能になる」と言っている。
ルールある経済社会をつくるためには、「大企業にモノを言われる政治」か、「大企業にモノが言える政治」かが、問われてる、という点で、シンクロしている。
シンクロという点では、元東邦生命社長・﨏川利内(さこがわりだい)さんが、日本共産党ととも平和、民主主義、生活向上の日本をつくる「革新懇」に参加したことがが、1日の「しんぶん赤旗」に載っていた。
元日経連常務理事、経団連理事などを歴任された方。
経済同友会終身幹事の品川正治と同じく、まともな経済をつくろうという点での一致点の大きな広がりを感じる。
記事の中で、﨏川氏は「もともと、私の人生のバックボーンは、戦後すぐに文部省が出した『新しい憲法のはなし』です。中学生のときでしたが、実に新鮮で、非常な感銘を受けました。平和主義、民主主義、主権在民、これこそ日本の進む道だと思いました。」
「この青年時代の正義感が呼び戻されたといいますか、自公や民主党ではない、もっと革新的な勢力がイニシアチブをとる時代が来なければいけないと思うようになりました。」
「そんなときに、革新懇という平和、民主主義、生活向上の大きな三つの目標を掲げている組織があることを知り、呼びかけて下さる方もあって、じゃあやってみようかと。思想信条にとらわれず、三目標で連帯できる革新懇運動が広がっていけば、日本を変える大きな力になると思います。」
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立保育園で保育士としてかれこれ20年働いています。正規職員との格差、不安定雇用などの改善を求め、組合を結成して5年が過ぎました。結成で改善されたこともあり働きやすくはなったものの、格差や賃金に関しても成果はこれといったものはなく、賃金は下がるばかりです。
自治体職場からワーキングプアをなくそう、と組合でも運動を続けていますが、「年毎に減る賃金増える責任」が現実です。
このようななかでの、「保育制度改革」
「保育士倫理綱領」には「子どもの利益最優先」と謳われています。現在ほど子育てについて語られた時代はなかった、なのに大人の都合が優先して一番の被害を受けるのは何もいえない子どもです。
本当に大事なものは何か、十分検討してほしいです。
Posted by: さざなみこ | March 08, 2009 05:39 PM